side傷原流水
「……やりすぎちゃいましたかね?」
「そんなことないよ。あんたはあの子たちの指標になったさ。知らない。分からない相手がどれだけ怖いか。理解できたと思うよ。」
廊下。とある場所へ歩きながらリカバリーガールと話す。
「そうですかねぇ……もうちょっとどうにかできたような……」
「安心をし。こういう時あんたが手を抜く方が良くないんだから…あんたは今のままで充分さね。」
「……ありがとうございます。……午後はA組ですよね?」
「……そうさね。……あんたの代わりにあのバカがきっちりやるから大丈夫だよ。」
「……チッ。」
「あんたは学生の頃から本当にオールマイトの事が嫌いだねぇ……。」
「自分勝手で強迫観念に囚われてる人は嫌いなので。」
「強迫観念……ねぇ。世間では崇高な魂とか言われてるよ?」
「それはあの人が最上限の実力があるからです。……実力がない者が……同じ事をしてどうなるか……わかっているだろうに。」
「……結果が爆豪勝己ってわけかい?」
「……あの子は憧れただけですから。まだ……」
『やらなきゃあんたを越せねぇならやるだけだ。』
『じゃあ頑張るしかないね。』
『ああ。……オールマイトは出久を何かと気にかけてる。きっと何か通ずるものがお互いにあるんだろうな。……俺にはねぇ。』
『……。』
『だから越えるだけだ。……憧れてちゃ……越えられねぇのがわかった。俺はオールマイトも越えるヒーローになる。』
『…だからまずは私?』
『……。ナンバーワンになるために…あんたが1番俺に足りないものを理解してると思った。それだけだ。』
『ふーん……?いい傾向ね。』
『?』
「最近はその呪いすら取っ払やってるような気がします。」
「はぇ〜……あの子が…変わるもんだねぇ。」
「ま……少しだけぎこちないですけどね。」
そんな話をしながらノックもせずにドアを開ける。
「オールマイトォ!!」
「うぉわっ!?傷原くん!?……とリカバリーガール……。」
「僕もいるのさ!!」ヒョコ!
「校長も!?!?」
そう。根津校長は私のコスチューム……フードがあるんだけど、そこに入ってた。相澤先生の捕縛布程じゃないけど狭くていいらしい。
そのまま根津校長は私から降りる。
「ちゃんと休んでるかい?」
「……はい。ある程度回復できました。」
「……。」
「傷原くん……そんな目で見てくれるな……。本当にすまない。」
「一応B組の期末試験は上々だったさ!みんなしっかり取り組んでくれたよ!」
「そうですか!良かっ……」
「……。」
「……本当に申し訳ない。」
「自業自得さね。」
「HAHAHA!そうだね!ちなみに傷原ちゃんは君の代わりをしっかりと成してくれたよ!……少し教師陣にもみくちゃにされてたけど……まぁ許容範囲だろうね!」
「有名になりたくないからメディア露出を極力無くしてもらってるのに。やれ教師になれだの、やれ期末試験やれだの……私への尊重は無いんですかね?このナンバーワンには。」
「ほんっとうにすまない!」SMASH!
「土下座にまで出るんですねそれ。……まぁいいです。とりあえず1個だけ。」
「……なんだい?」
「あなた……緑谷出久に自己投影してませんか?」
「……え?」
「……緑谷出久は緑谷出久です。あなたはあなたです。同じ道を……歩ませようとしてませんか?……それは……エゴですよ。」
「……。」
「傷原……。」
「それでは。私はこれから警察の方と打ち合わせがあるので失礼します。……くれぐれも同じことが無いように。」
「……任せてくれ。」
「どうだか。」
はぁ〜やっと終わった。
ご飯の時間は……ほぼないね。途中でコンビニに行って何か食べよ。
……予定以上にバタバタしてるね。
許せないわ。オールマイト。
side渡我被身子
「「「鬼ごっこぉ!?」」」
「2人1組に別れて教師1人から逃げてもらう。わかりやすいだろう?既にペアは決まってる。組み分けを言うぞ……」
期末試験……実技。鬼ごっこが試験だったなんて……学科試験の方は何とかみんな出来てそうで安心。実技……どうなるんですかね。
私のペアは切島くん。相手は……セメントス先生。
「セメントス先生か……ヤバそうだな。」
「ハンデがあるとはいえ……フィールドがフィールドですし……何も出来ない可能性すらあります。戦闘は避けましょう。」
「何かあったら壊すしかないしな!」
「……何かあったら負けですね。絶対に接敵はしないように。」
「??わかった。」
わかってるんですかね?
位置に着いた。……ここからの鬼ごっこ。
何がタチが悪いってどう進もうがセメントス先生と接敵すること。……切島くん……突っ込まないと良いですけど。
操縛布を握りしめて……
「ふーっ……行きましょう。切島くん。」
「おう!」
『START!!!』
……言わんこっちゃない。
開始から10分。セメントス先生と接敵。
コンクリートの波に囚われないように逃げる私と、迎え撃った切島くん。今状況は最悪だ。
「うおっ!?ずっと壁だ!!なんだこれ!」
ガキンッ バキィッ
切島くんはコンクリートのドームに包まれつつある。
「はぁ……本当に……」
おかげで道はほぼ塞がれて、このまま進もうものなら私まで捕まってしまうことはほぼ確定。
「…………どうしましょうね。」
「いいかい?戦闘ってのはいかに自分の得意を相手におしつけるかだよ。」
セメントス先生が一言。
「……得意を……おしつける……。」
……横……ビル。道端…狭い…操縛布……
「やるしか……無いか。」
私はビルに急いで入る。察されたら無理だ。スピード勝負。
side切島鋭児郎
「うぉおおお!壁が消えねぇ!!!」
壁紙何層も何層も出来る。壊しても壊しても……このままだとスタミナ切れで負けるっ!渡我の言う通りだった!
このままだと……
「何を……」
セメントス先生の声に俺も手が止まる。セメントス先生の目線を追う。
隣のビル。屋上に渡我。……いつのまに?
そのまま落下。体を丸めて落ちていく。
「何をっ!!!!」
セメントス先生が地面から手を離す。
渡我は足を伸ばし、ビルの外壁を蹴って横に飛ぶ。そして相澤先生の布を使って横のビルに飛び移る。そのまま速度を乗せてどんどんビルに飛び移って逃げてしまった。
「まさかっ……なるほどな……。……このまま私が追いかけても切島くんが私を止める。あの距離を離されたら切島くんを止めながら渡我さんを止めに行くのは不可能……と。」
セメントス先生が少しだけ嬉しそうだ。
「してやられたな。捕縛布を持っているんだ。空中機動を多少なりとも警戒するべきだったな。個性の範囲外に逃げられたらどうしようもない。」
「やったぜ渡我〜!!」
作戦……なんてものは無かったけどどうにかなったな!
やるじゃねぇか!
side渡我被身子
そのまま私はゴールして、A組最速でクリアになった。
「何とかなりましたね……」
切島くんを見捨てて正解でした。ごめんなさい切島くん。
「よくやったね!渡我。」
「リカバリーガール!……見てたんですか?」
リカバリーガールが出迎えてくれた。ちょっと嬉しい。
「カメラがあるからね。見るかい?」
「みたいです。」
そのまま私はみんなの試験の鑑賞会に。
「セメントスは相当辛い相手だと思ったが……よくやったね?」
「途中で切島くんを見捨てました。」
「はっはっは!あんな無策に突っ込んでいく方が悪いよ!」
「他の人は……」
すごい。爆豪くんが全力でオールマイトから逃げてクリア。手甲が1個無いので……どこかで壊れたんでしょうか?戦わずに逃げる。格上との戦いにおいて鉄則ですね。あれ?……緑谷くんは?
「緑谷出久と爆豪勝己は本来緑谷出久が逃げ切る予定だったみたいだよ。それでオールマイトを何度か爆豪勝己が足止めしてたんだけど……途中緑谷出久が爆豪勝己を助けに入っちゃってね。そこで爆豪勝己が逃げる方向にシフトしてそのまま逃げ切って勝ちってわけさ。頭の回転が早いね。」
「緑谷くんがそのまま逃げてたら勝てました?」
「分からない。爆豪勝己が足止めしたと言ったが、光の目潰しや視界妨害が主だったからできて数秒だ。」
「うーん……それなら爆豪くんの方が逃げれそうですね。……結果としてゴールが近くなったから逃げれたってのもありそうですけど。」
「……そうさねぇ。オールマイトもだいぶ手加減してたみたいだし……。どうなったかは分からないけどクリアはできたね。」
正直あまり心配はしてなかった。緑谷くんはともかく、爆豪くんは今流水さんと訓練してるんだから負けることは許されない。
私から流水さんとの時間奪っておきながら負けるなんて……ねぇ?
あってはなりませんよね?