side渡我被身子
おはようございます。2日目です。
「ふぁ〜……」
「眠い……まさか補習が……」
「2時までやるなんて……」
瀬呂くん。芦戸ちゃん。上鳴くん。……切島くん。
期末試験で赤点を取っちゃった人達。
切島くん……見捨てちゃって本当に申し訳ありません。
「切島くん……。」
「あっ……いいってことよ!俺が突っ込んだのが悪ィよ。」
……今日の訓練……しっかり出来れば良いですけど。
ヂューッ……
「ぷはっ……ぐぅ〜……頭痛い。」
少しづつ……本当に少しづつだけど他人の個性の扱い方が分かった気がする。動きを真似るなら……それ相応の肉体が必要だ。
今の私の身体のスペックで……流水さんと同じことは出来ない。
でも。それは言い訳にはならない。
1時間と半分。これ以上は個性を使えなくなってしまうので、そろそろ虎さんのブートキャンプに行く。
「……1番あそこが声大きいんですよね……。」
何処からでも聞こえる阿鼻叫喚を含めて。
「「「イエッサーッ!!!」」」
「イエッサー!虎さん!渡我被身子参加します!!」
「とっとと入れ!筋繊維を痛めつけろ!!」
「イエッサー!!」
これ……本当にすごい。全身鍛えるってこういうことなんだなって感じです。
いつも実践的な鍛え方しかしてなかったから、こういう只管に全身を痛めつけるのは新鮮。
今まで使ってこなかった筋肉まで使えてるイメージ。……これ普通のトレーニングに取り入れようかな……?
「そこ!1発打ってこい!!」
虎さんからの指名。今日こそ!
「イエッサー!!」
当然躱される。確か彼女(?)は全身が柔らかい個性だったはず……にしてもこのブートキャンプ中に1発も当たらないのは何なんだ?実践の賜物か……凄い。
「まだまだ痛め甲斐が有りそうだな!!」
彼女からの一撃。
「くっ!!!」
何とかガードする。衝撃が凄い。これが大人のヒーロー……。
「貴様の筋繊維は本当によく動く!もっと強度を上げても良さそうだな!!」
「イエッサー!!」
強くなるんだ。強く。強く。
理想の人に!
「……。」
「渡我さんって何でそこまで自分を追い込めるの?」
訓練終了。へろへろで宿に戻ろうとしていた矢先、緑谷君に声をかけられる。
少しの警戒。
「……何でとは?」
「いやっ!言いたくなかったらいいんだけど……みんなも必死にやってるのは伝わるよ。強くなりたいって気持ちが溢れ出てる。……でも渡我さんのは何か違うって言うか……なんて言ったらいいんだろう……。」
察しがいい……んでしょうかね?人の悪意に気付きやすい?よくわかんないですけど……
「……。邪だからじゃないですか?」
「よ……邪?」
触れちゃいけないものってあるんですよ。緑谷君。
「私は皆さんみたいに、理想とする『ヒーロー』がいる訳でもないですし、崇高な志……もしくは何かしらしょうがない理由でヒーローを目指してる訳ではありません。……皆さんのようなオリジンは私にはありません。……気にする時間が無かったので。」
「オリ……ジン……。」
……自業自得ですよね?緑谷君?
「私が強くなりたいのは……流水さんを自分のモノにしたいからです。」
「傷原先生を?それは……」
「はい。わかっていますよ。流水さんはモノじゃない……など浅ーい思考は。」
緑谷君がピクっと反応する。
「物じゃなくても。アクセサリーじゃなくても。道具じゃなくても。私は流水さんのモノです。顔も。体も。指も。爪も。内蔵も。髪の毛1本でさえ。余すこと無く。……ですが。」
私は深呼吸をする。貴方には……分かり得ない私のオリジン。
「あの人はまだ私だけのモノじゃない。」
「!!」
「あの人はみんなに優しいんです。みんなのことを助けたいんです。みんなのことを守りたいんです。……だから私も流水さんが守りたいものを、助けたいものを一緒に助けたい。守りたい。そして……。」
流水さん……流水さん流水さん流水さん流水さん!!!
早く同じ苗字になりたい!早く流水さんを管理したい!!早く流水さんのっ!流水さんでっ!
「いっぱい私を傷付けて欲しい♪」
「っ!?!?」
「理解出来ませんよね?理解されようなんて微塵も思わないので良いですけど。私は流水さんから大切にされる度……私は宝石か何かかと……流水さんを彩る何かにしかなれないと思いました。……でも!今!流水さんのために傷付けてる今!!私は流水さんの事をいつも以上に愛している!だから!!この学校に入ってから……いつも異常に愛せているんです。」
「き……君は……」
怖いですか?怖いですよね!でももう止まらない!あなたは触れてはいけなかったんですよ。
……貴方だけは。
「私にとって流水さんは星……太陽……何者にも変え難い存在……。そんな存在を私で汚している自己嫌悪ッ……ハァ!!たまらないです!!そんな存在のために私は自身を痛めつけてるッ!!消えない傷をいくつも残しているッ!!届くかも分からない!無駄になるかも分からないのに!!未来に無様にしがみついて!希望だけしか見えてない私ッ!!ほんっっっっっっっとうに……。」
私の顔は……笑顔に歪む。
「馬鹿でかぁいいですよね?」
「っ!!!君はっ!!」
「おかしいですか?知ってます。意味がわからないですか?知ってます。私の感情を。オリジンを。そんな陳腐な言葉で表現しないでください。反吐が出ます。……貴方には分からないんですよ。自分のどうしようもないコンプレックスを救われた経験のない貴方には。」
「…………。」
納得していないんでしょうか?……私の事敵か何かだと勘違いしてます?……もう……本当にあなたは……
「どうせ。無個性もあなたにとってはちょっと難しい足枷にしかなってなかったんでしょう?」
人の感情を理解出来ない人ですね?
「!?なんで……それを……。」
「なんででしょうね?怖いですか?私が。気味が悪いですか?…私が。ふふふっ……私は貴方のことが大嫌いです。緑谷君。理想を語り、周りを掻き乱す貴方のことが。……理想だけじゃ…憧れだけじゃ手に入れれるものも手に入れれませんよ。……それでは。」
「…………。」
立ち尽くす緑谷君。顔色はとても悪い。いい気味です。あなたが私に問いかけたのは……開けては行けないパンドラの箱。
普通の学生が飲み込めるものじゃ無いんですよ。
あなたみたいな理想屋には特に……ね。
「……チッ。」
晩御飯を食べて。
あとはお風呂。昨日は峰田くんが覗きに来ようとして……あの人本当に変わりませんね?
Plus ultraじゃ無いんですけど。
「……にしても。」
「?」「?」「?」「?」
八百万ちゃん。芦戸ちゃん。蛙吹ちゃん。麗日ちゃん。
「……発育の暴力ッ。」
「あはは……言いたいことは分かりますよ?耳郎ちゃん。」
皆スタイル良すぎなんですよね。何食べたらそうなるんですか?私も……もっとスタイルが良ければ……。
「何言ってんの渡我!あんたもそっち側だからね!?」
「え!?こんな傷だらけの筋肉女!どこが発育良いんですか!?」
元々の傷跡はいざ知らず……最近筋肉がもっと付いて……腹筋とか太ももとか凄いことになってきてる。
「……自分の魅力に気付いてないタイプだ……。」
「…………傷原先生も大変ね?無自覚で魅了してくるタイプだわ。」
「?」
「……私の目線ですが……渡我さんも充分魅力的ですわよ?」
「……そうかな?流水さん嬉しい?」
「ええ。絶対。」
「そっかぁ〜へへ……だと嬉しいなぁ〜。」
「「「「「かわいい。」」」」」
「そういえば葉隠!あんた透明だけど凄い身体してるわね!?」
「お風呂に浸かってるとよく分かるよ!」
「へぇ!?私ィ!?急な飛び火!」
「みんな敵だ!ウチだけっ……ウチだけっ!」
「競うな。持ち味を活かせッ!」
「持ってる奴が言ってもなんも響かないよそのセリフ!!!」
「耳郎ちゃん……小さいのもかぁいいから良くないですか?」
「傷原先生と付き合ってるから…心から言ってくれてるのは本当にわかる……わかるんだけど!!ウチは今!あなたたちのソレを……もいでやらないと気が済まない!!」
「耳郎ちゃん!?キャラどうしたの!?」
「キャラとか言うな!ウチは今鬼になった!!」
「じ……耳郎さん!?冷静になって……」
「ちょっと疲れてるからやめて!やめろぉ!!!」
「私もう逃げるね!!」
「葉隠卑怯だ!!うわああっ!!」
「……大変ですねぇ。」
「渡我!」
「……流水さん以外が私の裸に触れたら許しませんよ?」
「アッハイ。」
夜は更けていく。明日は……もっと……もっと
ふふっ……楽しみですね。