side渡我被身子
私たちはヒーロー、警察たちによって避難誘導させられてしまった。
流水さんを置いてきてしまった。何が出来る……何が……
「……あ!?出久!?何で居んだあいつ!?」
「え……?緑谷君?入院は……」
「リカバリーガールのお陰で傷はもう完治してたんだ。……退院したとは聞いていたが……ここに居たとは……。」
「……緑谷ちゃん……いても立っても居られなかったのね。オールマイトのこと大好きだから。」
「……大好き……でも……」
何かそれだけじゃない気もするんですけど。
「……フン。おい!出久!」
「あ……え?かっちゃん!?……と皆!?」
「こっちこい。あんまりバラけるとなんかあった時大変だろ。」
「え。う……うん!」
緑谷君が人の波をかき分けてこちらに来る。
「あっ……渡我……さん。」
「…………。」
「…………。」
「……?何かあったのかい?」
「……別に?」
「……チッ。……は?」
皆の目線が画面に行く。
オールマイトの……ガイコツ姿。……平和の象徴が……なんて……
「なんだ……なんだあの姿は……」
「……聞いてねぇぞゴラァ!!」
「…………オールマイトッ…」
「…………。ふーん。」
緑谷君は……知っていたみたいですね?
『私は……なんて言うことを……うわあああああああああっ!!!!』
オールマイトの激情。
見えるNo.1ヒーローの弱さ。心の乱れ。
でも……だとしても!
「……勝って。」
「勝って!」
「勝てや!」
「「オールマイトォ!!」」
私たちは今あなたに縋るしかないんです!!
「流水さんの為にもっ!!勝ってください!!オールマイト!!!」
エンデヴァー……エッジショット……知らないヒーローも駆けつける。流水さんは……ベストジーニストさんが助けてる。……良かった……。
……良かった?本当に?
「っ……私!!やっぱり行きます!!」
「はぁ!?」
「何処に!?」
私は走り出す。流水さんの所に。最愛の人の場所へ。
人混みをかき分けて。
目の前に……ヒーローと警察の人……公安の……あっパパ!!
「パパ!!!」
「……え!?被身子!?」
パパは心底驚いている様子だ。
「パパ!流水さんが!!流水さんが!!!!」
パパに縋り付いて願う。
「くっ……わかっている。……わかっているが……自分たちには何も出来ないんだよ…っ…。」
……わかっていたんだ。わかっていた。
「それでも私は……流水さんの為になりたい!流水さんの為に傷付きたいっ!!流水さんと同じ傷を負いたい!!流水さんのところに……行かせて。……パパ。」
初めて……親しい人に吐露する私の本音。我慢していた。嫌われたくないから。言わないでいた。あの日を……また過ごしたくないから。見ないようにしていた。……1人の夜は……すごく寂しいから。
「被身子……君は……」
「被身子ちゃん!!」
「渡我君!!」
飯田くんと……梅雨ちゃん!?それに皆……
「ダメだ!渡我君!仕事の邪魔になっているぞ!!」
「ごめんなさい。私たちの友達が……。」
「オイ渡我ァ!!俺たちを置いていくってどういう了見だよ!?」
「私達は……皆一緒ですのよ?何かあったらみんなで責任を取りましょう。」
「あー……あんまり気の利いた事言えないけど、やっぱりいても立っても居れないよな。俺たち……ヒーローの卵だし。」
「…………。」
……緑谷君も来たんですね。
「被身子……君は……本当にいい友達を持ったんだね。」
「……はい!」
パパが1歩前に出る。
「やぁ。僕は公安委員会の飼田一狼……って言うんだ。渡我被身子の身元引受人をやらせて貰っているよ。」
「「!!」」
「公安委員会!?……渡我さんの身元引受人!?」
飯田くんと梅雨ちゃんもびっくりしてる。
「……公安っつーと……傷原先生の所属してる場所か?」
「ああ。傷原流水も僕が身元引受人だね。」
「「「えぇ!?!?」」」
「…………ってことは渡我さんと……傷原先生は……」
「一応姉妹って事になるね。」
「…………。被身子ちゃん。頑張って欲しいわ。」
皆さんからの優しい目。……なんでしょうか。
「?……はい。分かりました。」
「…………何人か来てくれ。この子達を1番安全で1番近い距離まで連れて行ってくれ。」
「……え!?」
「責任は僕が持つ。委員長にも伝える。見させてやってくれ。No.1ヒーローを。」
「……いいんですか!?」
「良いも何も……僕は流水に任せて被身子に何もパパらしいことをやれてない。こんな時だけでも……パパの全てを使って娘のわがままを聞く。間違っているかもしれないけど……これは僕の親としての意思なんだ。」
「パパ……ありがとう!」
私はパパに抱きつく。
パパも抱き返してくれる。
「ははっこれくらいでいいなら役得だね。もっと権限いっぱい使っちゃおうかな?」
「パパはお仕事しっかり休んでください。」
「……それ流水にも言われたんだよね。……怒られそうだからそろそろ休んでおくか……。」
「…………皆!近付くのはいいが!ヒーローの邪魔にならないように!」
「皆さん!決して近付きすぎないように。何かあってからではヒーローの皆さんの首を絞める結果になりかねません。」
「わかってる。手出しはしねぇ。」
「……うん。」
警察の方々に先導されて少し。
オールマイトが少し見える。
「存分に悔いて死ぬといいよ、オールマイト……先生としても君の負けだ!」
大きい……腕。
オールマイトと拳がぶつかり合い、すごい衝撃波なのか……こちらまでビリビリ感じる。
「そうだよ、先生として叱らなきゃいかんのだよ」
オールマイト……
「私が叱らなきゃいかんのだよ!」
「醜い!」
「象徴としてだけではない!お師匠が私にしてくれたように、私も彼を育てるまでは…それまでは…」
上手い!衝撃を去なして懐に入った!
「まだ……まだ死ねんのだよ!」
左の一撃。
まだ相手は動ける!
右腕は……もう……
「らしくない小細工だ。誰の影響かな!?」
ダメージが……入ってないの!?
「浅い!」
オールマイトッ!!
「そりゃァ、腰が入ってなかったからな!!」
オールマイトの右腕に力が漲る。
壊れた……腕で……
「UNITED STATES OF SMASH!!!」
「次は……」
「君だ。」
私たちはパパの近くまで戻っていた。
ヒーローが倒れた一般市民……他のヒーロー達を連れてくる。
その中に……流水さん……いた!!ベストジーニストさんが連れてきてる!
「流水さん!!!」
「うわっ……なんだ君は……るみ?」
当然の疑問ですよね……。すみません。
「ごめんなさいベストジーニスト……この人……私の大切な人なんです!!」
「……そうか………なるほど…ブラッドロータスは君を守ろうと……わかった。救急車まで来てくれ。」
「……!はい!!」
後ろから声をかけられる。
「渡我。俺も着いてってやろうか?」
「……いいです。爆豪くんが着いてきたいだけでしょう?」
「そいつに死なれると困るからな。」
「……ふん。私だけで充分です。」
「…………君は。雄英高校体育祭の……爆豪勝己か。」
「……すみませんでした。せっかく職場体験……誘ってくれたのに。」
爆豪くんが頭を下げる。
「頭を…………君は。変われたのか?」
「…………はい。お陰様で。」
「…………君とは……今の君とはいい話が出来そうだ。……インターンがあれば君のことを呼ぶ。次……来なさい。待っているよ。」
「……はい!その時は…よろしくお願いします。」
爆豪くんは去っていった。
「彼。……強いだろう?心も。技も。」
「……憎たらしいですけど。とっても。」
「いいじゃないか。将来有望な若者は……未来への必要な財産だ。……もちろん君もだ。彼が知っていたという事は……雄英高校なんだろう?」
「……はい。……流水さんを守って頂いてありがとうございます。」
「……守られていたのは私の方だ。……ヒーローブラッドロータス。彼女はこの戦場においての影の功労者だな。」
「……はい。私の流水さんですから。」
「……いいじゃないか。青春したまえ。今じゃないと経験出来ないこと。やれないこと沢山ある。経験は糧だ。」
「……はい!」
ベストジーニスト……いい人ですね。
救急車まで運んでくれてから救助活動に戻って行った。
あれがプロヒーロー……
ああいう道もあるんですね……
私は行きませんけど。