私のヒーロー   作:おいーも

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白体教

 

 

 

 

 

side渡我被身子

 

 

「大きな……家……流水さん?ここは?」

 

 

私は今日、流水さんがあってもらいたい人がある……と言われ、一応菓子折を持って流水さんと挨拶をしに来た。

 

 

「ここはね。私が助けた人が教祖をしてる宗教団体の本拠地。」

 

「宗教……団体?あまりいいイメージが無いんですけど……」

 

「ちょっと色々手伝ってもらってるからね。感謝しとかないと。」

 

「?……わかりました。」

 

 

流水さんは作法も何も無くスイスイと入っていく。私も着いていく。

 

 

「こんちはー。白ちゃん。来たよ〜。……居ないの?」

 

「白ちゃん?」

 

 

女の匂いがします。

 

玄関から長い廊下と長く連なる襖。その襖のひとつから白い仮面をつけた女の人が顔をのぞかせる。すごい……巫女服だ……。

 

 

「おや。傷原様……とそちらは?」

 

「あ、右腕ちゃん。私の彼女。例の子連れてきたよ。挨拶と様子見に来た。」

 

「こっ……こんにちは。渡我被身子といいます。こちら……つまらぬものですが……。」

 

 

菓子折を受け取ってもらう時、手が虫っぽかった。虫の個性の人かな?よく見ると髪の毛にも触覚が混じってる。

 

 

「おやおや。これは御足労おかけします。きっと教祖様も喜んでくださいますゆえ……申し訳ありません傷原様。渡我様。少し手が離せぬ状況でもありまして……。」

 

「おーん……タイミング悪かった?1回引き返した方がいいかな?」

 

「いえいえ。お待ちいただければと。数分で終わりますゆえ。……傷原様を帰らしたとなると私が叱られてしまいます。」

 

「……そうだよね。嫌な返ししてごめんね?」

 

「傷原様は少々意地悪なのは皆知っておりますゆえ。こちらへどうぞ。お部屋をひとつ準備いたしますね?」

 

「ありがとう。おもてなしは要らないからね?」

 

 

右腕さんはひとつ襖を開けて部屋に案内してくれる。畳といいお香の匂い。なんだろう。ホワイトセージ?そんな感じのスッキリした匂い。窓はないね。珍しい……

 

 

「いえいえ。そういう訳にはいきません。何もなしで待たせていると私がこの家から総スカンを受けてしまいます。」

 

「えー……別にいいのに。」

 

「しかも本日は傷原様が交際相手様を連れてこられたと知ったら……他のものも腕をふるっておもてなしするに違いありません。受けていただければ幸いです。」

 

「んー……わかったよ。美味しいの期待してるね?」

 

「はい。身命にかけて。……渡我様。ご挨拶が遅れました。白体教(はくたいきょう)の生重院 千棘(きじゅういんちとげ)と申します。傷原様には色々と手助けをしていただいて……交際相手様とご挨拶に来られることを今か今かと待ちわびておりました。」

 

 

畳に正座して丁寧で綺麗にお辞儀……確か座礼ってやつだったと思う。私も慌てて頭を下げる。

 

 

「はっはい。よろしくお願いします。」

 

「はい。傷原様。大変可愛らしい御方ですね?」

 

「そうだよ。手ェ出しちゃ許さないよ。」

 

「おお怖い。怒られない内におもてなしの準備させていただきますね?」

 

 

そのまま生重院さんが部屋を後にする。

 

 

「……流水さん。なんであの方は仮面されてるんですか?」

 

「個性だよ。個性。」

 

「個性?」

 

「彼女たち……白体教の本家の人たちはみんな女の人なんだけど、異形個性とか自分の個性のせいで色んな迫害を受けた人たちなんだ。」

 

「……ここでも……異形個性ですか……。」

 

「そうだよ。私は自分の個性で嫌な思いしてる人いたらすぐ助けちゃうからね〜…。彼女たちもその一環。」

 

「それで………でも仮面を?普通の異形なら……」

 

 

「虫だよ。虫。色濃く出ちゃったんだ。虫の個性が。特に顔にね。」

 

「………確かに。人によっては虫が無理な人居ますもんね。」

 

「私はそれも人の個性だと思うし、虫嫌いじゃないからよく分かんないや。」

 

「流水さんは好き嫌いの定義がはっきりしてますよね。見た目なんて二の次三の次。……だからみんな流水さんのこと好きなんですよ。」

 

「そうかな?……そうかも。」

 

 

タッタッタッタッ…

 

走る音…?

 

バン

 

急に襖が勢いよく開く。

 

 

「傷原様〜♡」「きゃ〜傷原様♡」「お待ちしておりました〜」

 

誰?この女ども。

 

仮面つけてるから多分白体教の人たちなんだろうけど。

 

 

「こんにちは〜。全然来れなくてごめんね?最近彼女できちゃって。仕事もあって忙しかったんだ。」

 

 

「交際相手様!?可愛い!」「お人形さんみたい!」

 

私に皆寄ってくる。さっきの右腕さんとは大違いにフレンドリーだ。

 

「こらこら。変なことしたら私許さないよ?」

 

流水さんの注意も虚しくもみくちゃにされる私。別に嫌な感じしないですね?

 

 

 

「みなさん。いつから白体教は動物園になったのですか?」

 

「「「ひっ」」」

 

 

顔を上げるとまた別の人……大きい人……。

 

「あっ左腕ちゃん。こんにちは。」

 

 

「はい。傷原様もご機嫌いかがですか?…………傷原様がお越しになって……交際相手様を連れてこられると知り。その上でその対応を取るのであれば……教祖様にお伝えしなくてはなりませんね?」

 

「なんですかそれ!断固拒否します!」「怒られちゃいますよ!糸重さんのケチ!!」「ご自身も可愛いもの大好きなくせに!!」

 

「……へぇ?」

 

ズモモモモ……

 

「「「申し訳ありませんでした〜!」」」

 

 

すごい……皆帰っちゃった。

 

 

 

「申し訳ありません。傷原様。交際相手様。私が変わって謝罪申し上げます。」

 

「大丈夫ですよ?撫で回されただけですし……。」

 

 

「私ちょっと嫉妬しちゃったけどね?」

 

少し口をむくれてる流水さん。

 

「え!流水さん!ごめんなさい……。」

 

そんな……嫌われたくないです……。

 

「ふふっウソウソ。心配した?」

 

「もう!流水さん!?」

 

「ふふっ……」

 

笑われちゃった。

 

 

「あっ……すみません。」

 

「大丈夫ですよ。傷原様。本当にこの方がお好きなのですね。」

 

「そうだよ。私の自慢の彼女だから。今はまだね?」

 

今はまだ……って事は何れ……ふふっ。流水さん流水さん♪

 

「今は……なるほど。こちらも色々用意しなくてはなりませんね?」

 

「お願いね?」

 

「かしこまりました。上質なものをご用意いたします。……改めまして交際相手様。ご挨拶が遅れました。私白体教の止九ノ院 糸重(どくのいん いとえ)と申します。」

 

また綺麗な座礼。見惚れちゃうね。

 

 

「はい。私は渡我被身子といいます。よろしくお願いします。」

 

「それではおもてなしの準備がありますのでこれで。もう暫くお待ちください。」

 

襖が静かに締められる。

 

 

 

「あの人も……ですか?」

 

「そう。全員。何かしら個性で迫害を受けていた人たち。本当に許せないよね。」

 

「……思ってる以上に根深いですね。……そういえば名前が…。」

 

「……。全員いい所のお嬢様だよ。個性が個性のせいで親から見放されちゃったけどね。」

 

「そんな……」

 

「それだけ深いの。……被身子ちゃんはやらないでね。お願いだから。」

 

「当然ですよ。私は流水さんの嫌がることは絶対しません。」

 

「ふふっ心強いね。ありがとう。」

 

 

 

 

おもてなしとして……茶菓子とお茶が出てくる。茶菓子多くない?みんな綺麗だし……食べていいんですかね?

 

流水さんは流水さんで躊躇いが無さすぎる……口いっぱい頬張って……かぁいい。

 

 

「そういえば……白体教ってどんな宗教団体なんですか?」

 

「簡単に言うと個性で困ってる人……見た目とか身内とか自分が〜とかでね?……に、あなた達は悪くないですよ。あなたたちの体と心は潔白。清いですよ〜っていうのを諭してる宗教団体。最近だと大きめの会社の令嬢さんを助けたって聞いたなぁ………。」

 

「へぇ……知らなかったです。」

 

「まぁ調べないと出てこないからね〜しょうがないしょうがない。」

 

「……ここにも流水さんは?」

 

「もちろん支援してますよ?筆頭です。」

 

「流石です。」

 

本当に私の自慢の彼女さん。何れ私も……頑張らないと。

 

 

 

「失礼します。」

 

この声は……生重院さんの声。

 

襖が開く。

 

「傷原様。渡我様。教祖様が大変申し訳ないが、部屋に来てくれないか……と。」

 

「ありゃ?体力使わせちゃったかな。行く行く。ごめんね。」

 

?身体の弱い方なんでしょうか。

 

「いえ。こちらこそ申し訳ありません。こちらです。」

 

 

部屋を出てまっすぐ進む。奥の大きな襖。

 

「白ちゃん。入るよ。」

 

「どうぞ。」

 

綺麗な声。一体どんな……

 

スパーン

 

流水さん!?もっと静かに……

 

 

「白ちゃん。おひさ。」

 

「流水ちゃん。待ってたわ。」

 

流水さんが流れるように部屋の真ん中に座る。

 

……仲良しさんですか?

 

部屋に入ってから、すぐに目を奪われた。頭、身体を白い布で覆い、口元には白い布…フェイスベールって奴。すごく綺麗な人……。

 

「身体無理させちゃった?ごめんね?」

 

「ううん。大丈夫。流水ちゃんとお話出来て嬉しいわ。……そちらの方が彼女さん?」

 

「うん。そうだよ。被身子ちゃん。挨拶してあげて?」

 

 

「あっ……はい。私渡我被身子っていいます。流水さんの彼女です。」

 

「ふふふっ可愛らしい子。流水ちゃん好みの顔ね?普通に一目惚れしてたでしょ?」

 

「…………。」

 

知らない情報です。

 

「え?そうなんですか?」

 

「知らない。」

 

 

「もう。……私の名前は白灘 珠世(しろなだ たまよ)。よろしくね。」

 

「はい。白灘さん。よろしくお願いします。」

 

「うんうん。いい子ね。……ごめんね?せっかく来てもらったのに……」

 

「……大丈夫。貴方の体の方が心配。」

 

「昨日少し日光に触れちゃって。まだ気分があまり良くないの。」

 

「……大丈夫?無理だけはしないで。」

 

「……日光?」

 

「そうね。被身子ちゃんは知らないわよね。……。」

 

流水さんが白灘さんに目配せする。

 

「私から話すわ。流水ちゃん。……私ね。光線過敏症なの。太陽光を浴びるだけで身体中に蕁麻疹が出るの。……そこまで酷くは無いんだけどね?」

 

「蕁麻疹が……?……大丈夫なんですか?」

 

「だからこの家は窓が無いでしょう?」

 

「……そういえば……。」

 

「それに……個性の都合もあってあまり人前に出れないから、体力もどんどん落ちちゃって……。今や少し活動すると息が上がっちゃって……。」

 

「そうなんですか……流水さんからある程度聞きました。」

 

「そう!良かったわ。実は私ゴキブリの個性で……」

 

「え?」

 

そこまでは聞いてないかも。

 

 

 

 

 

 

 

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