side渡我被身子
「必殺技!!!」
「学校っぽくてそれでいて、ヒーローっぽいのキタァア!!!」
必殺技。今やヒーローの代名詞。流水さんの『クロユリ十断』とか『エスコルチア』がそれにあたりますね。
「必殺、コレスナワチ必勝ノ型・技ノコトナリ。」
「その身に染みつかせた技・型は他の追随を許さない。戦闘とはいかに自分の得意を押しつけるか。」
「技は己を象徴する。今日日、必殺技を持たないプロヒーローなど絶滅危惧種よ。」
エクトプラズム先生。セメントス先生。ミッドナイト先生の説明が続く。
……必殺技を……持たないプロヒーロー……。
私の必殺技ってなんでしょうか。
「詳しい話は実演を交え合理的に行いたい。コスチュームに着替え体育館γへ集合だ。」
相澤先生は何も言わずに準備を促す。
反発することも無いので手早く準備。私のコスチュームは見た目重視なのであまり着るのに苦労しない。
うん。今日もかぁいいですね。
「トレーニングの台所ランド……略してTDL。」
「ここは俺考案の施設。生徒一人一人に合わせた地形や物を用意できる……台所ってのはそういう意味だよ。」
セメントス先生。わかったのでTDLは……あんまりよくないんじゃないですかね?
「質問をお許し下さい!」
飯田くん?
「何故仮免許の取得に必殺技が必要なのか、意図をお聞かせ願います!」
……そういえばたしかにそういう話でしたね?
「順を追って話すよ。」
と相澤先生。助かります。
「ヒーローとは事件・事故・天災・人災、あらゆるトラブルから人々を救い出すのが仕事だ。取得試験では当然その適性を見られることになる。情報力・判断力・機動力・戦闘力、他にもコミュニケーション能力・魅力・統率力など、多くの適性を毎年違う試験内容で試される。」
色んなものを見られるんですね。……尚更必殺技がよくわかんないんですけど。
「その中でも戦闘力はこれからのヒーローにとって極めて重視される項目となります。備えあれば憂いなし、技の有無は合否に大きく影響する。」
ミッドナイト先生が補足する。……備えあれば……流水さんがそれっぽいこといつも言ってる気がする。
「状況に左右されることなく安定行動を取れれば、それは高い戦闘力を有している事になるんだよ。」
セメントス先生も続く。常に安定行動……流水さんがお酒を飲まないのはこういう事にも繋がるのかな。
「技ハ必ズシモ攻撃デアル必要ハ無イ……例エバ、飯田クンノレシプロバースト。一時的ナ超速移動ソレ自体ガ脅威デアル為、必殺技ト呼ブニ値スル。」
なるほど……勝てる形を作る訓練ってことですか。確実に決まる。確実に倒せる。……確実ってすごく簡単なようですごく難しい。何度実感したか。
「先日大活躍したシンリンカムイの『ウルシ鎖牢』なんか模範的な必殺技よ、わかりやすいよね。」
うーむむむ?
だとしても私の個性じゃ難しくないですか??
「中断されてしまった合宿での「個性伸ばし」はこの必殺技を作り上げる為のプロセスだった……つまりこれから、後期始業まで残り十日余りの夏休みは、個性を伸ばしつつ必殺技を編み出す圧縮訓練となる。」
……どうしたものか。どうするべきか。1回悩む期間に入っても良さそうです。流水さんにも相談してみましょうか。
「尚、個性の伸びや技の性質に合わせてコスチュームの改良も並行して考えていくように。プルスウルトラの精神で乗り越えろ、準備はいいか?」
私は早速頭を悩ませた。
「渡我。アマリ手ガ動イテナイヨウダガ。」
「エクトプラズム先生。……なんというか必殺技……というのがピンと来なくて。」
「確カニ。君ノ個性ハ見テワカリヤスイモノジャナイ。必殺技考案モソレ相応ノ難シサダロウ。」
「はい。そもそも私の個性は人の姿になれる……だけだと思ってましたけど、なった人の個性も使える事がわかったので……その方向で伸ばしたいんですけど……それもなんというか曖昧で……。偽物にしかならないじゃないですか?私だけの……ってなると難しくて。」
「フム……。君ノ個性ハ見タ目ダケヲ変エレルノカ?」
「見た目だけ……?いいえ。服もその人のものにできます。……条件がありますけど。」
「……条件?」
あまり言いたくないですけど……しょうがないですよね。
「………………全裸です。私が。」
「…………。難シイナ。ソレガコスチュームデモ出来タラ必殺技ニナリカネナカッタ。」
カッカッカッ……
?…誰かが近付いて……
「全裸!?どうしたの?変な話が聞こえたわ!」
「ミッドナイト先生!」
「ミッドナイト先生。実ハ……」
「なるほど。渡我の個性は全裸だったら相手の服も変身対象……と。」
エクトプラズム先生はミッドナイト先生に説明し、その場を任せて別の生徒に着いた。
「流水さんの変身した時しかやってないですけど。多分みんなにも変身出来ます。」
ミッドナイト先生が少し悩んだあと……
「……もしかしたら私のコスチュームが参考になるかもしれないわ!」
「ミッドナイト先生のコスチューム?……肌面積が……。」
少し恥ずかしいというか……。
「そういうことじゃないわ!私のコスチューム……実はすごく薄いけど全身タイツを着てるの。それにこんな見た目でタイツ無しで歩いていたら公然わいせつよ!」スパァン!
「それは……そうですよね。配慮が足りませんでした。ごめんなさい。」
「いいわ!素直な子は好きよ!……だから私と同じように薄いカラータイツだったらその上から変身できないかしら?っていう案よ!」
なるほど!経験者しかできない発想!
「なるほど!試したことありませんでした!…………今は実践難しそうですけど。」
そんなもの手持ちにないのである。ミッドナイト先生の予備……とも思ったけどスタイルが違いすぎる。敗北感。
「そうなのよね。……サポート科のパワーローダー先生に相談してみましょうか?」
「サポート科……そうですね!行ってみたいと思います。」
サポート科かぁ……行ったことないんですよね。
「被身子ちゃーん。頑張ってる〜?」
あっこのかぁいい声……
「流水さん!」
「ブラッドロータス先生。いらしてたんですね?」
ミッドナイト先生は流水さんと話す時少し屈む。お姉さんみたい。
「ミッドナイト先生。タメ口でいいですよ?被身子ちゃんの訓練どんな感じですか?」
流水さんが流れるように私の横に近付く。……歩き方もかぁいいんですよね。無意識でしょうか?私をキュンキュンさせるのやめてください。
「そうさせてもらうわね?この子……全裸だったら服まで変身できるって言われたから……一旦はその方向に伸ばすためにコスチュームの再考が1番近道だと思うの。1回私と同じような全身タイツを着てみて変身できるか試すのはいいじゃない?」
「……コスチュームの再考ですか〜……たしかにそうですね。……私の知ってる人に腕のいい人いるんで紹介しましょうか?」
「いいのかしら?……まぁたしかに身内だものね。」
「それもそうですけど……パワーローダー先生男性ですよね?……女性の全身タイツは……ちょっと大変そうじゃないですか?」
…………たしかに。
「…………考えてなかったわ!」スパァン!
え?
「なので……被身子ちゃんだけ贔屓するわけじゃないですけど、女の子のコスチュームは……特に肌着とかは私に一報貰えると腕のいい人紹介できますけど……。」
「一旦渡我だけお願いしてもいい?それの出来次第で今後任せるかもしれないわ!」
「はい。一旦そうしましょう。それでいい?被身子ちゃん。」
「はい!流水さんよろしくお願いします!」
「……もう。渡我?一応学校なのだから先生はつけましょうね?」
「あっ……すみません。流水先生。」
「癖だね。大変だぞぉ〜?」
笑顔もかぁいい。もう。心がいっぱいになっちゃいます。
side傷原流水
一旦被身子ちゃんは相澤先生と訓練という形にして、私は今ミッドナイト先生とお話してる。
「……渡我。これで個性を120%発揮できたら……1度血を吸われた瞬間相手の陣地をひとりで壊滅できるスーパーヒーローになりますよ?」
「ポテンシャルはしっかりあります。身体も。心も。判断能力も。基礎スペックの総合点は贔屓目なしで1-Aでいちばん高いです。」
「たしかに。期末試験でも学力は3位。実技でもひとりでセメントスから逃げきる…その上相澤くんから指導を受けて捕縛布の扱い方までほぼマスターしつつある。……本当に…末恐ろしい。」
ミッドナイト先生からの評価も上々……やっぱりわかっちゃいますか?うちの子の凄さ。
「まだまだ……強くなってもらわないと。私の横には立てません。」
「望みが高いわね?……相澤くんから聞いたわ。USJ……あなたがひとりで大立ち回りしたって。それ以外にも……神野でもオールマイト先生が来るまで時間を稼いだんでしょ?尊敬しちゃった。」
「まぁ……日頃の鍛錬の賜物ですね。……やらないといけなかったのもあります。」
「なるほどね。……大変なのね。公安も。」
「まぁ。ヒーロー社会ってそういうものだと思います。誰かがやらなくちゃならないので。」
「立派なヒーローね。本当に。」
「ミッドナイト先生ほどじゃないですよ。」
「ふふっ。」
「ふふふっ。」
立派に生徒を導いてるんですから。……服装はさておき。
立派なヒーローですね。先生の皆さん。
沢山学んでください。沢山失敗してください。何度も挑戦してください。あなたたちはヒーローの原石。
もっともっと磨かれて美しく、強固になるんです。