side渡我被身子
「……ど……どうですか?」
「変身できてるじゃん!!左腕ちゃんすごーーい!!」
「お気に召していただけたようで……よかったです。」
今日は試着日なので、訓練じゃなくて止九ノ院さんの会社に来ています。
黒い全身タイツを来た上で変身が可能と言うことがわかった。それだけで上々ですね!
「やった!これでコスチュームの中に着込んでおけばいつでも誰でも変身できますよ!ありがとうございます!止九ノ院さん!」
「いえいえ。仕事ですので。……それに傷原様への恩返しという形でもあるので。」
「恩返し?まだ言ってる。別にいいのに。」
少し呆れ気味な流水さん。なんだろう。
「何かあったんですか?」
「別に話すような事でもないけどね〜。」
「いえいえ。傷原様が居られなければ私だけではなく、千棘も教祖様も今活動できなかったかもしれません。」
「流水さんそんな大きいことしてたの?」
「そんな大きくないってば。……すこーしだけお手伝いしただけだよ。あとはみんなの力だよ。」
こういう時のすこーしは全然少しじゃないことを私は知っている。
「少しも何も……我々が教団を立ち上げてから何人かは傷原様のツテで仕事を紹介して貰ったのですよ?それ以外にも千棘も私も、お互いの会社が軌道に乗るまで傷原様に支援していただきました。」
やっぱり。
「……流水さん?きっかけって大事なんですよ?」
「しーらない。私はきっかけを作っただけ。軌道に乗せたのはこの子達。私は何もしてませーん。この子達がすごいだけでーーす。」
「もう。……いつもそんなですね?」
「当然です。」
流水さんは個性や特性で不幸になった人に対する支援は、世間一般で言う普通の人の0点のボーダーに乗せる事だと言っています。不幸になったのだから。望まぬ不幸なのだから。マイナススタートは可哀想だ……らしいです。神様なんですよね。やってることが。
「もう……傷原様は……自覚してもらうのは一旦置いておいて、コスチュームの件……どうされますか?」
「そうですよね。なるべく早く脱げるものの方がいいと思ったんですよ。」
「タイツ姿になるって事ですよね?」
「衣装の着脱を早くしたいですね。多分どちらも早い方が楽です。」
「……。少し難しい注文ですね。」
「…………そうですよね。」
どうしたものか……。
「……だったらさ。吸血の道具……どうにか腰のベルトに集約できないかな?」
「腰のベルト……ですか?たしかに着脱は早そうですけど……。」
「出来ないことは無いです。血のストック。それを入れるカバー。吸血するための針、管。血液のタンク。……コップ1杯程で1日……ですよね?」
「はい。血のストックは……指くらいのサイズです。」
「なるほど。それではタンクは小さめでも良さそうですね?」
「っていうかタンクじゃなくて試験管みたいなのに血を自動で溜める〜……とかは出来ないの?1本分吸うか、なにかのボタンで切り替えれば別の試験管に血を貯めれる〜とか。」
「…………やりようはあります。材質と重量が問題ですね。」
「被身子ちゃん既に激重タンク背負いながら20kgは下らない薙刀ブンブンしてるから大丈夫だよ。」
……文字列だけ見るとすごーくかぁいくないですね。
止九ノ院さんがちょっとびっくりしてるじゃないですか。
「…………傷原様みたいになるのも時間の問題ですね。」
「そうだね。ワクワクしてるよ。」
流水さんみたい?なんのことでしょう。
「材質は……硬い方が良さそうですね。色々動き回られるのであれば……尚更です。ですが吸血針は腰まわりですと……良くて2本……ですね。」
「充分です。壊れたら私が未熟だっただけなので。」
「…ふふっ…傷原様みたいですね。かしこまりました。」
流水さんみたい?本当!?ふふっ。ちょっと嬉しい。
「……大きくてもいいかもね?」
「といいますと?」
「腰の横にアタッチメントみたいに血を貯めれるタンクをつけて、それに吸血針を管で繋げれば何本か増やせない?」
「……でもそれですと脚の動きを阻害してしまいます。」
「角度を変えたら……ダメかな?」
「……森林や狭い場所での戦闘に向かなすぎますね。なるべくそういうアタッチメントは小さい方がいいです。」
「そっかぁ……かっこいいと思ったんだけど。」
たしかに。ちょっとかっこいいですけど……私はかぁいくしたいです。
「タンクはそれでいいとして……服装なんだけど……私の参考にならないかな?」
「え?流水さんの?……そのゴスロリですか?……かぁいいですけど……」
着脱難しそうじゃないですか?
「いやそうじゃなくて、私の衣装って着脱簡単なの。」
「……え?そうなんですか?」
「はい。傷原様のご要望で、可愛さと着脱の楽さを両立したいとの事で……腕と肩と腰の留め具を外せばすぐ脱げるようになってます。」
「これでも止めてるの10ヶ所くらいだよ。」
流水さんが立ってくるりと回ってみせる。かぁいいです。
「……このコスチュームが着脱簡単……だったらある程度服を盛っても良さそうですね。」
side傷原流水
「こういうデザインがいいです!かぁいい!」
被身子ちゃんが決めたのは変形制服……ミニスカートだったのが膝下までのスカートで上は黒のセーラー服にカーディガン。セーラー服とカーディガンはくっついていて、一緒に脱ぐことを想定して作られている。カーディガンは着脱可。
あまり変わらないように見えるが……スカートにスリットが入っている。
……なんで?いや私はすごーーーく嬉しいけど。
「被身子ちゃん?なんでスカートが……」
「?だって流水さん嬉しいでしょ?」
「Exactly。」
この子隙あらば私を落とそうとしてくる。恐ろしい子。
「……このデザインなら……1週間ください。仕上げてみせます。」
「1週間でいいの?」
「はい。任せてください。」
「ちゃんと休んでくださいね?」
「ふふ。善処いたします。」
「見積もりは?」
「出来てみてからでもよろしいですか?不満でしたら作り直さなくてはならないので。」
「その分も払うよ。」
「いえいえ。そのようなことされては私が教祖様から怒られてしまいます。」
本当に怒りそうだからな。白ちゃん。もー……過保護すぎる。
「白ちゃんに言っておいて!白体教の人は私に対して甘すぎるって!!」
「止九ノ院さん。本当にありがとうございます。私のために……。」
「大丈夫ですよ。渡我様。貴方様は傷原様のお家族。敬愛すべき傷原様のお家族様の為に最善を尽くすのは我々の恩返しでもあるので。……ただ。腰のベルト周辺は私ではなく……千棘の方が専門分野ですので、そちらにお任せしてもよろしいですか?」
「はい!よろしくお願いします!」
「それなら右腕ちゃんにも挨拶しておかないと。」
「あ……千棘は今日明日と教祖様と一緒に居られるので……少し厳しいかと。」
あー……白ちゃんのお付してるのかな。それは無理だ。
「わかったよ。よろしく伝えておいて?」
「わっ……私からもお願いします!」
「かしこまりました。それでは1週間後……お待ちしております。」
「あっ……このタイツ持ち帰ってもいいですか?」
「大丈夫ですよ。破れたとき用に余分を渡しておきますね。無くなりそうになったら来てください。余剰分もお渡しします。」
何から何まで……至れり尽くせりだね。さすが生活能力皆無の白ちゃんを支えている二人……すごいや。
白ちゃんは体力が無い以上に家事が何一つできない。不器用ってもんじゃない。破壊して回るモンスターだから。お風呂にすら一緒に入らないとのぼせて出て来れなくなっちゃう。本当に大きな赤ちゃんって説明が良く似合う。
「何から何まで……ありがとうございます。私のコスチューム……よろしくお願いします。」
「じゃあね。左腕ちゃん。またね〜。」
ガタンゴトン……ガタンゴトン……
『……何とかなりそうでよかったです。』
「心配されてました?私の知り合いは腕が立つんで大丈夫ですよ。」
『一応自分の生徒なので。心配ではない担任の先生は居ないです。』
「それもそうですね。」
『渡我はどうですか?』
「少し緊張してたみたいで。今電車の中なんですけど……寝てますね。私のお膝をいい枕にしてますよ。」
『……なるほど。一応午後の特訓もあるのでそれに合わせていただければ幸いです。』
「分かりました。それではまた学校で。」
『はい。ありがとうございます。それでは。』
ピッ