side傷原流水
ズズ……
「…………それで?私を呼んだって事は……それ相応の理由があるんでしょう?」
「ああ。当然だ。本来君の力など借りたくもないのだが…そうも言ってられん事態になった。君が今探ってる個性破壊弾が関わっている。」
「……なるほど。だから……私と二人なんですね。私を警戒してるはずのあなたが。……サー・ナイトアイ。」
私の対面……とあるカフェの個室。眉間に皺を寄せたサー・ナイトアイが重々しく口を開く。
「フーッ……確証のない情報を外部に漏らして……なにかあってはいけない。」
サー・ナイトアイ。かつて……オールマイトのサイドキックをやっていたオールマイトの厄介ファン。兼凄腕のヒーロー。基本的に探偵のような仕事をしているが、本人のスペックが高すぎるが故に他の仕事も沢山受け持っている。それをこなしているのだから化け物だ。
「…………それで?私も外部ですけど。」
「……元は君が私に相談を持ちかけてきたのだろう。その結果報告だ。」
「…………まぁそうですね。……昨日今日会った仲でも無いんですからもう少しフレンドリーに行きませんか?……ユーモアが大事なんでしょう?」
「黙っていろ。君はやっている事が限りなくグレーに近い。私は君という存在が嫌いだ。社会に存在していいものではない。」
「はぁ。さいですか。私みたいなのがいるから社会が保たれているとも言えますよ?」
「結果論に過ぎん。」
「……頭が相変わらず硬いですねぇ?もう少し水分とってみては?脳みそ乾燥してるんじゃないですか?」
「黙れ。君は話を脱線させて何がしたい。」
「なーんにも?とっとと話してくださいよ。お互い時間は有限でしょう?」
「…………まぁいい。君と話すと本当に疲れる。……が。そうも言ってられん。」
……余程のことですね。
「個性破壊弾でしたっけ?……私が仕入れた情報は個性消失弾でしたけど……。」
「……まずは調べたことについて……だ。個性破壊弾……消失弾でもいいが……そのようなものは発見できなかった。」
「……ですよねぇ。名前だけでふわふわ浮いてますもんね。」
「それもそうだが……私よりも裏の世界を知っている君が知らないのだから調べても何も分からない。……だが。」
「……だが?」
「最近。死穢八斎會の動きが少しだけあった。」
「死穢八斎會……オールマイトにほぼ全壊させられませんでしたか?……別件って訳ではなさそうですね。」
死穢八斎會……指定敵組織。俗に言う893。非合法薬物の取引で裏社会に大きい影響力のある団体。まぁ足が付いてないのでなんにもできないんですけどね。
「ああ。そうだ……あれは……」
「過去語りはいいので続きをお願いします。」
この人オールマイトが絡むと厄介だからね。とっとと話してもらわないと。
「……そうか。少しだけ……と言ったが非常に微々たるものだ。何者かと接触したみたいだが……誰かはわからない。」
「…………接触ですか。ブローカーですかね?違法薬物流したんですかねぇ……どうかはわかりませんが。」
「誰かわからない以上話を決めつけるのは良くない。…死穢八斎會が関わっている……とするだけであまりにも良くない。」
「…………まぁ今や裏社会の大ボスですからね。死穢八斎會。……動いたのはどっちですか?……聞くまでもないですけど。」
「若頭派だ。」
「ですよねぇ……。」
死穢八斎會は若頭派と穏健派の2つがある。基本的に活発に動いているのは若頭派だ。皆ペストマスクしてるからわかりやすい。
「…なにか企んでるんでしょうか。…接触?誰と。なにか企んでいるとしたら何を?…なにか資金源でもあるんでしょうか?非合法薬物だけでは……シノギとして甘い…気……が…………。まさか。」
嫌な想像してしまった。
「ああ。そのまさかだと私は踏んでいる。」
個性消失弾。これを作っているのが死穢八斎會の若頭派だとしたら。……だとしてもどうやって作っているんだ。なぜそんなに発想に……。何が材料だ。……謎が深まる。
「いや……流石にまだ確証が持てません。」
「他の裏社会の組織犯だと…尚更資金面で不可能だ。死穢八斎會は元々非合法薬物売買で金はある。それを使えば容易い。……と思っている。まだ想像の域を出ないが。」
「たしかに……死穢八斎會以外だと……ほぼオールマイトのせいで活動が不可能ですからね。出来ていたとしても何らかの監視下のはずなので……。オールマイトが機能不全に陥ったタイミングで個性消失弾の名前が上がる……というのもあまりにも都合が良すぎてます。」
「ああ。死穢八斎會が何者かに接触したこと。それに個性消失弾の話が出たこと。どちらもほぼ同時期だと考えると……。」
「…………嫌ですね。非常に。」
「だがそうも言ってられん。……ということでブラッドロータス。今後の方針は……。」
「わかりましたよ。死穢八斎會を中心に調べればいいんでしょう?」
「ああ。こちらでも集めておくが……あまり進展があるとは思わないように。」
「……めんどくさい事に足突っ込んじゃいましたねぇ……これで他のヒーローに伝えてはいけないんでしょう?」
「ああ。まだ確定じゃないからな。」
「…………まぁどうにかなりますか。」
どうにかしなくてはならない。
「……こういう時に心強いな。裏社会をよく知ってるものは。」
「いつも私の命と天秤ですけどね。本当に肝が冷えます。」
「…………これが死穢八斎會と繋がりがあるのであれば……確実に死穢八斎會を追い詰めることが出来る。頼んだ。」
「はいはい。了解しましたよ〜っと。じゃあ会計くらいお願いしますね?」
「…………いいだろう。」
私はそそくさと個室を後にする。
とは言ったものの……どこから探りましょうか。ヘマしたら私の命1個2個じゃ足りないですね。
…………頼るしかないかぁ…
『何?死穢八斎會が怪しい?』
「はい。でもまだ確証が持てなくて。あまりいい結果にならず申し訳ないです。」
私は四ツ橋力也……リ・デストロに電話をかけた。協力を仰ぐためだ。
『良いのだ。友よ!スケプティックに調べさせるか……ただどうなるかはわからない。それでもいいか?』
「こういう時本当に頼りになりますね。四ツ橋社長。」
『当然だ。我々的にも存在してはならない物だ。喜んで協力しよう。』
…………革命家。異能解放軍と関係のあるヒーローって世間体的に終わりすぎてますね。
「ですが私では何も返せませんよ?」
『であれば我々と共に……』
「嫌です。今回は私が大々的に動くので力を蓄えておいてください。」
『むぅ……つれないな。わかった。そういう事にしよう。吉報を待っていてくれ。』
ピッ
……これで裏社会からの情報を得られます。もしこれでも得られないのであれば……限りなく黒に近いグレーでしょう。
得られたのであればそれはそれとして黒でしょうし。
そうじゃなくても薬物売買だけでもう捜査状が出せます。そのタイミングで突撃出来れば……もしかしたら個性消失弾の存在が公になる可能性もあります。
サー・ナイトアイの情報と予想を鵜呑みにするのであれば。
もう少しだけ私でも探ってみましょうかね。
ブローカー……いくつか叩いてみても良さそうですね。
prrrr…
『もしもし。こちらベストジーニスト。』
「ブラッドロータスです。お久しぶりです。」
『どうした?なにか情報が掴めそうか?』
「いや。今回は少しだけ人間探しと確保を手伝って欲しくて。」
『……人間探しと確保?』
「違法ブローカーを何人か捕まえてみようかと。何か知ってるなら御の字。何も知らないのであってもそれはそれで良しなので。」
『なるほど。目処はついているのか。』
「ある程度出入りしてる場所は分かります。何人か。拠点に戻ったタイミングで突貫します。」
『わかった。場所と日時を教えてくれ。調整する。』
「ありがとうございます。場所は……」
さて……汚れ仕事といきますか。