side渡我被身子
「え?緑谷君と爆豪くんが勝手に運動場使って喧嘩した!?」
「うん。だから2人今謹慎中。1週間寮の掃除してる。」
何をしてるんですかあの二人……。
仮免試験から数日後、登校してみると2人が教室におらず何があったのかと葉隠ちゃんに聞いたらこれだ。
喧嘩……まぁ仮免試験といい……林間学校、神野といいなにか思うことがあったのでしょうか。フラストレーション溜まってたんですかね。
幼馴染ですから。……だいぶ拗れてますけど。
「まぁ……謹慎で済んで良かったですね。」
「えーっ……2人とも今空気最悪だからあんまり会いたくないよ〜……。」
「葉隠ちゃん……皆さんは寮生活だからそういうのも気になっちゃいますよね。」
「本当に大変!渡我ちゃんのおうちに避難したい!!」
「あはは…。」
「ダメだよ葉隠!」
「ケロケロ……次は私達の番よ。透ちゃん。」
「御三方楽しかったと言っておられたので……私も行ってみたいです!」
「うぐぐぐ!そうなんだよねっ!順番ってもんがさ!」
芦戸ちゃん。梅雨ちゃん。八百万ちゃんの行けなかった3人セット。流石に強いね。
「はっはっは!残念だったね!!……ところで行ってもいい?」
「流水さん次第です。お昼休みに聞いてみますね。」
「やったー!ありがとう渡我!」
芦戸ちゃんがハグしてくる。……まぁスキンシップなのでいいでしょう。流水さんも多分怒らないです。
…………きっと。
side傷原流水
「家に来たい?いいよ。一緒に帰ろうか。」
「ありがとうございます。皆さんに伝えますね。」
「うん。気をつけてね。」
「はい!」
お昼休み。被身子ちゃんが私を探してると相澤先生に言われたのでお話してみると、前回来れなかった八百万さんと蛙吹さんと芦戸さんがおうちに来たいと。
別にいいんじゃないかなって事で許可。被身子ちゃんと一旦分れた。
「今日来るのか。……お部屋掃除できてるかなぁ……。……おや?」
飯田くん?ひとりで中庭に……どうしたのかな。
「飯田くん。」
「……あっ……傷原先生。」
飯田くんは中庭のベンチに座って、何か思い悩んでいたみたいだった。
声をかけてしまった。もう!お節介なんだから。
「なにかあったのですか?1人で思い悩むのはあまり良くないですよ。」
近くの別のベンチに座って声をかける。
真面目な飯田くん。何か悩むことがあったのだろうか。
「……いえ。……少し。正しさ……というものが分からなくなって。」
「正しさ?」
「はい。今朝……爆豪君と緑谷君が勝手に運動場使って喧嘩をして……謹慎になったと聞きました。」
「……そうだね。馬鹿なことしましたよ。2人とも。」
「……僕は知らなかった。委員長なのに。クラスの事なのに。……自分を責めました。」
「…………。」
そんなに気にする事はないと思うんだけどな。
でも……気にしちゃうんだろうね。
「でも。2人はルールを破りました。それはダメだと……言おうと思ったのですが……二人はなんというか……独特の空気。今までとは違う少し……友達とも違う空気感になってたんです。」
「独特の空気?……喧嘩して良かったってこと?」
「……なんともいえません。ただ……あまり口出すものでも無いと……思いました。少し……歪だった2人の仲が少しだけ歩み寄られているというか……なんと言ったら……。」
「…………そう。」
まぁ……男同士の喧嘩は仲良くなるきっかけとか言うしね。よくわかんないけど。
「…………先生。僕は間違っているのでしょうか。人とは……社会とはルールを守るもの。人々の規律正しい生活で成り立っているもの。……であれば……ルールを守らないのは悪なのではないでしょうか。その悪で……2人の関係が少し修復しているのは……正しいことなのでしょうか。僕は……分からなくて。」
そうか。今飯田くんは自分の中の正義と悪がごっちゃになってるんだね。悪いことをしたはずの2人が少しづつ良い風に前に進んでいる……これは正義か……悪かって事か。
少しだけ難しいね。
「飯田くん。」
「はい。」
「私の考え……聞いてくれる?鵜呑みにしなくていいから。」
「……はい。」
「私にとって正義とは。」
私はベンチから立って飯田くんの前に行く。
そして人差し指で胸の心臓を指さす。
「人のココに……心に宿るものだと思ってます。」
「……心。」
「だから万人に万人なりの正義があるし、万人に万人なりの悪があります。私はこれを他者の正義、悪で決めつけるのはあまり好ましくありません。」
「……。」
「しかし……」
私は少しだけ周りを歩く。
「この世にはルールがあります。正義と悪の価値観を決めつけた。万人が皆安心して暮らせるように。過ごせるように。」
「そうです。ルールは……」
「ただそれを守るだけが正義とは限らない。……さっき言いましたよね?万人には万人の正義がある……と。」
「!」
「ルールも元を辿れば人が決めたもの。万人が全員賛成したものではないです。ルールは破るためのもの……とも言いませんが、ルールに則るだけが人の正義とは……幸せとは限りません。」
「…………。」
「では正義とはなにか。心に宿るものとはなにか。」
ベンチを1周回ってまた飯田くんの前に来る。
「正義とは!人の心に宿るものである。それが固く!曲げぬものと昇華して意志になり!それが体を動かして姿勢になり!伝えるものとして視線になる!己の正義の為に生きるものは……全て行動で語る。その視線が!姿勢が!心が!他者魅了し、他者を動かす原動力になる。納得させれば他者は動く!己の正義を貫く姿勢はいつになっても美しいものです。……正義とは己が曲げられぬそのただ一心!……ひとつの心です。」
「ひとつの……心。」
「私はそう思ってますよ。飯田くん。己の中に決して曲げてはならぬモノをひとつ持ってください。それがあなたの正義です。……だからといってそれを他者に強要してはいけません。正義の押しつけは……ルールを作った者と同じです。ルールに従うのも、ルールを守るのも人の自由。どうなるかは個人しだいです。……飯田くんだったらどうしますか?」
「……僕。2人にいいます。注意します。2人だけで悩まないで欲しいと……2人だけで抱えないで欲しいと!僕達は2人の仲間だっ!」
「……いい顔になりました。飯田くん。それでは……委員長頑張ってくださいね。」
私は中庭を離れる。
「ありがとうございました!」
後ろから声が聞こえる。飯田くんらしいね。
「「「おじゃまします!」」」
「いらっしゃい。」
「ただいま!流水さん!」
「ただいま。被身子ちゃん。」
放課後。3人を連れて皆で帰った。
葉隠さんが少しだけ羨ましそうだったけど……飲み込んでくれ。
「玄関広ーい!」
「大きい家ね。傷原先生。」
「そうでしょ。大きすぎて少しだけ緊張するよね。」
「そうなんですよね。少しだけ前の家が恋しいです。」
「そうなのね。でも仕方ないわ。敵の活動が活発化してるんだもの。」
「そうなんですよねぇ……。」
「少し電気代も上がったからね。ちょっと厄介かも。広すぎるのも考えものだね。」
「……大変ですのね。」
「お嬢様〜?世間知らずはダメでしてよ?」
「もう!……それもそうですわね。」
「とりあえず上がって?お茶とお菓子用意するわ。」
「「はーい!」」
「ありがとうございます。傷原先生。」
「じゃあ私リビングに案内しますね。」
「お願いね。」
「……何してるの?」
4人でワイワイしてたから少し気になったら……なんか広げてるね?
「人生ゲームです!……芦戸ちゃんが持ってきたみたいで。」
懐かし〜。そんなゲームもあったね。……やったことないけど。
「えっ!-20000円!?そんな……」
「ヤオモモ借金じゃん!可哀想〜。」
「借金!……したことありませんわ!少しワクワクします!」
「……借金なんてあんまりするもんじゃないよ?」
少しこの子の未来が心配です。
「被身子ちゃん。5よ。」
「…5マス………結婚?」
「渡我結婚!じゃあここにピン乗っけて……。」
「…………これ流水さんですよね?」
ピンを受け取った被身子ちゃんが流れるように答える。
「「「!!」」」
「そうだね。私以外だと怒っちゃうかも。」
本心です。
「「「!!!!」」」
「先にゲームで結婚しちゃいましたね。」
「先越されちゃったかぁ〜。」
「えっと……御二方もうそういう約束を……」
「「してます。」」
「うわああああああ!!渡我!私知らなかったんだけど!?」
「言ってませんもん。まだ口約束ですし。」
「おめでとう被身子ちゃん。私嬉しいわ。」
「ありがとう梅雨ちゃん!ホントの婚約はもう少し待ってくださいね?」
「はわ……はわわわわ……すごいですわ!おめでとうございますお二人共!」
「いいよいいよ。みんなお菓子食べちゃいな?」
「「「「はーい!」」」」
わちゃわちゃ女子会。色恋沙汰は本当にすごいね。一瞬で話題をかっさらっていく。
結婚……かぁ
被身子ちゃんの誕プレしっかりしたものあげれてないし……
少し考えるか。