side傷原流水
「黒霧でしょ?私行く意味ありますか?」
「まぁいいじゃないか。寄りかかった船じゃないか。」
現在船の上。月一でタルタロスに向かってる最中。
運良く……運悪く。オールマイトと警察の……塚内さんだっけ?とグラントリノに捕まった。
「寄りかかってきたのはそっちでしょ。私は別の人と面会予定なんです。」
オールマイト……そんな姿になっても駆り出されるんですね。本当に可哀想。
「別の人?何かあるのかい?……でも君も探したいだろう。個性消失弾の在処を。」
「…………それはそうですけど。私の今日の予定のソレは入ってません。」
グラントリノさんが割り込んでくる。
「オイ俊典。あんま別予定で来てるモン困らせんじゃねぇよ。……すまねぇな。あんたが……俊典が言ってたブラッドロータスってやつだろ?」
「俊典……?……あー…オールマイトの事ですか。はい。私がブラッドロータスです。グラントリノさん。ご挨拶が遅れて大変申し訳ありません。」
「あーっ。いいいい。固くなるな。さっきの感じでいい。お前さんもオールフォーワンとワンフォーオールを知ってるクチなんだろ。……八斎會の時は参加出来ずにすまなかったな。」
「いえ。黒霧の逮捕に尽力なさってたんでしょう?あの結果は個人的に不満でしょうがないですけど、結果的に死者0はよくやった方だと思います。」
「フン。それもそうだ。」
グラントリノが手を差し出してきたので握手。
……すごい手だね。老人の手とは思えない。
「くくくっオイ俊典。コレすげぇ手しとんぞ。……戦ってきたヤツの手だ。お前が雄英卒業した時はまだこんなじゃなかったぞ。」
「グラントリノ……その時は私まだまだ未熟者でして……。」
「……手だけでわかるんですね。」
「当然だ。何年ヒーローやってると思ってんだ。」
ニカッと笑うグラントリノ。自身と強さに溢れたいい顔。素敵です。
「……もっと早く知り合ってれば良かったです。」
私の実力をすぐに見抜く観察眼。ぶっきらぼうだけどどことなく話し方が嫌じゃない人。……あんまりあったこと無いタイプですね。
「フン。世辞として受け取っとくぜ。」
「そんでよ?その時の俊典ときちゃぁ……。」
「え!?オールマイトそんな事してたんですか?グラントリノさん困らせるの良くないですよ!」
「かかかっ!」
意 気 投 合
「……塚内君。僕はあまり知人がいる時に別の知人に話しかけないようにするよ。」
「自業自得だね。オールマイト。」
「にしてもお前さん……歩き方が武器持ってるソレだな?ヒーローやってんのに獲物持ってんのか。」
「そんな事もわかるんですか?」
「歩き方と体の動きだ。少しだけ重心が上にある動きしてんぞ。……背中だな?隠してんだろ?」
「……すごいですね。本当に。尊敬します。ウチの被身子ちゃんのインターンやってくれません?」
「ヒミコちゃん?インターンはもうしねぇって決めたんだ。職場体験で緑谷出久拾ったのはコイツが不出来だったからだよ。なぁ?俊典。」
「うぐ……返す言葉もありません。」
「……オールマイトがこんなにタジタジなの初めて見ました。……武器ですよね?私の個性の都合で相手の血を触った方が楽なので血を出す獲物が欲しかったんですよね。それでコレです。」
自分の背中をポンポン叩く。
ヒガンバナとアジサイ。最近はよく持ち歩くようにしてる。……何があるかわかんないからね。
「なるほど……かなりの重量だな?若ェのにソレ扱えるったぁ相当な努力しねぇと無理だな。よくやってるじゃねぇか。若ェのに。…………俊典から聞いてたぞ。あんまり言えねぇ仕事してんだろ。お前さんみたいなのが居ねぇともっと社会は悪くなる。本来だったらいない方がいいんだがなぁ。……そうもいかねぇのが今の社会だ。俺達も平和を享受させてもらってる立場っつー事を忘れちゃいけねぇよな。」
「…………。ありがとうございます。グラントリノ。あなたに会えてよかった。」
「お?そうか?……さっきのヒミコちゃんだったか?俺に会わせに来い。場合次第になるがインターン受けてやる。」
「いいんですか?私のワガママですけど。」
「若ェ奴は年配にワガママ垂れるもんだ。お前さんが気にしてるほどの生徒だ……どんなもんか見てみたくなった。俺の住んでるとこは教えといてやる。いつでも来な。……居たら対応してやるよ。」
「……わかりました。近いうちにご挨拶に上がります。」
「行くぞ。塚内。俊典。」
「はい。傷原さんもそれでは。」
「塚内さんも何か分かったら情報を下さい。こちらでも敵連合を調べておきたいので。」
「わかりました。」
「……またね。傷原くん。」
「オールマイト。もっとグラントリノを見習った方がいいです。」
「ははっ……。胸が痛いよ。」
3人が去っていった。
タルタロスまでもう少し。
敵連合の情報は…………多分手に入らないでしょう。オールフォーワンがそんなヘマしてるとは思えません。
「へぇ!あんたが結婚?」
「はい。お陰様で。まだ婚約ですが。」
レディ・ナガンとの月一の面談。婚約報告はしておいた。
「まだ1年とちょっとだろう?早いねぇ。」
「……私でもそう思いますが……まぁしっかり考えた結果なので。後悔はないです。」
「ふーん……乙女の顔してるね?可愛いじゃないか。」
「も……もうやめてください。……コホン。それで……まぁ聞いてもわかんないでしょうけど……新しく入った人どうですか?」
ダメ元で聞いてみる。
「んー……そもそも部屋が隔離されてるからわかんないね。何してるのかも。何があったのかも。」
「そうですよねぇ。すみません変な話して。」
「いいのさ。可愛い子と話せるだけ儲けもんだよ。」
「……私が可愛いのは認めますけど……他人と婚約しても言うんですね?」
「可愛いものに可愛いという事が悪いことかい?」
「私はマスコットですか……。」
「そうだと思ってるけど。」
「…………まぁいいです。レディ・ナガンが元気そうで良かったです。」
「……こんな場所にぶち込まれてるけどね。何も無い空間にも慣れちまったよ。」
「……。」
「あんたみたいに黒い部分は存在するもの。あって当然だって思って仕事すれば良かったのかね。……私には無理そうだ。」
「これは……私の性格もありきだと思います。……元々ヒーローにあまりいい印象が無かったので……まぁこんなものかって感じでした。」
「そんな子が今は暗部か……。向いてなかったんだろうね。私は。」
「レディ・ナガン……。」
「後悔しても遅いけどさ。」
「はぁ……出してあげれるなら事務所立ち上げて私の所に入れてあげるのに。」
「それいいね。もし出れたら考えといてよ。」
「はい。それはもう前向きに。今更撤回はできませんよ?」
「するつもりないよ。雇ってくれるなら御の字さ。」
「っと……そろそろ時間ですね。」
「……ありがとね。」
「…………。本当に申し訳ありません。」
「ふふっ。……またね。」
「はい。また。」
…………。
本当に嫌な気持ちになる。レディ・ナガンをタルタロスにぶち込んで安心してる公安も。レディ・ナガンに汚れ仕事をさせたヒーローも。……何も出来ない私も。
これは贖罪何だろうか。……多分違う。
自己満足?……きっと違う。
もっと汚くて……
もっと浅ましくて……
……。
毎月少しだけ楽しんでる私がいる。
何をしてるんだろうね。
……今日はいいことが2つもあった。それでいいじゃない。
今日も私の野望の為に頑張ろう。
こんなことあっちゃいけないんだ。
『お前さんみたいなのが居ねぇともっと社会は悪くなる。本来だったらいない方がいいんだがなぁ。……そうもいかねぇのが今の社会だ。俺達も平和を享受させてもらってる立場っつー事を忘れちゃいけねぇよな。』
世の中あんなヒーローばかりだったらいいのに。
昔私に声をかけたヒーローが……あんな人ばかりだったら良かったのに。