side傷原流水
「……はい。個性が無いの。個性が無いのに……敵連合に目を着けられるかしら。」
「…………個性が無い?……本当?」
「ええ。出生届には無個性って書いてある筈だわ。」
だとしたらあの行動が引っかかる。
「…………じゃあなんで私に触れてこようとしたんだろう。弟くんって少し暴力的な気があったりする?」
「ううん。小さい頃から身体が弱いから…私の知る限りだとそんなこと無かったと思うわ。暴力を振ったとしても部下に命令して〜みたいな感じ。」
暴力命令したことはあるのね……闇が深そう。
「……身体が弱いのわかってるくせに……私に手を上げようとしたの?」
「……………………。」
歯を食いしばって下を見つめる白ちゃん。
……多分…
「弟の事……嫌いじゃないんだ?」
「……うん。あんな性格でも……本人のせいじゃなくて……私がこんなナリで産まれちゃったから……両親の過度な期待が全部弟に行っちゃった結果だと思うの。弟も私の家庭の被害者なんだ。幼い頃からの両親の教育と洗脳に近い矯正であんな事になっちゃってるんだと思う。…………だから私だけでも弟の本当の味方でありたいんだ。……ダメかな。」
「…………そうなんだ。……でも。だとしても私は白ちゃんの弟さんが怪しいと思う。この意見は変わらない。なにか弟さんが危ない道に行こうとしてるならそれを止めるのも……本当の味方の役割じゃない?」
「…………そう……だけど……。私…………どうしたら……。」
……多分白ちゃんは自分なりに弟を守ろうとしてたんだろう。勘当される前までは。それが結果を伴ったかはさておき。弟さんが家族の唯一の拠り所だったんだと思う。……見捨てろなんて酷な話だよね。
「……。」
「……教祖様。」
隣で聞いていた左腕ちゃんが声を上げる。
「……糸重ちゃん?」
「私やはり何かが引っかかります。弟様の周辺を本格的に調べて貰ってはどうでしょうか。」
「!」
「私も糸重さんと同じ意見です。どうか教祖様。私達の意見をお飲みくださいませ。」
「千棘ちゃんまで……!」
「教祖様……私も……。」
「教祖様。」
「教祖様!」
「「教祖様……。」」
全員が頭を下げる。白ちゃん。あなたはどうしたいの?
「皆…………。ごめん………流水ちゃん。流水ちゃんは……私の考え……間違ってると思うかな。」
「いんや?間違ってないと思うよ。」
即答。
「!」
白ちゃんが目を見開く。予想外だった?久しぶりに見たその顔。
「誰かが家族をどう思ってるかなんてその人次第だと思う。そもそも家庭なんて血が繋がってるだけの他人だし。必要なのは血の繋がりじゃなくて心の繋がりじゃないかなって私思うよ?……白ちゃんの心の繋がりって何?優しくすることだけかな?」
「………………。」
白ちゃん。あなたの家庭環境は……聞いていた限りだと察するにあまりあり過ぎる。だから弟さんのこと疑えないんだよね。疑う事が怖いんだよね。…………白ちゃん底抜けに優しいから。弟さんの敵になりたくないんだよね。両親のことも嫌いじゃないんでしょ?
……優しさって本当に麻薬。自分の行動を惑わす甘味。優しいって自分が立派な行動してるって思っちゃうよね。そうしないと……って義務感に駆られるよね。感謝されようものならもうその麻薬にズブズブ。やめられなくなっちゃう。
優しさだけじゃ……人の間違いに気が付けないんだよ。救えないんだよ。
その人があえて間違った道に行ってるなら……まだしもね。
「…………流水ちゃん。ベストジーニストさん。弟の……白灘睦月の周辺捜査をよろしくお願いします。」
「白ちゃん!」
「承りました。警察と連携してより確実な情報を集めます。」
ベストジーニストはその場から去っていく。
「エンデヴァーその他ほかのヒーローへの連絡は私がします。ベストジーニストは先に行動しておいて下さい。」
「わかった。それではそのように。」
ベストジーニストは警察の方とサイドキックの方に今の話を始めているようだ。
「…………。流水ちゃん。私……これでよかったのかな。」
「立派だよ。お姉ちゃん。」
「…………。ふふっ……ありがとうね。本当に。……また間違った事するところだった。」
「……その時は何度でも連れ戻すよ。」
「教祖様。……私達も傷原様に救われた身ではありますが……それ以上に教祖様のことをお慕いしております故……教祖様の間違いを正すのも私達の役目であると自覚しております。」
「ええ。その通りでございます。教祖様。我々を信じてくださいまし。……弟様よりも我々の方が信用なさりませんか?」
「糸重ちゃん。……その言い方は意地悪じゃない?…………もう。ありがとう。みんな。大好き。」
「「「〜〜〜教祖様!!」」」
「えっ!?ちょっと!皆!?」
白ちゃんがみんなにもみくちゃにされてる。うーん……白ちゃんの顔面で大好きはダメージ大きかったか。
「一応白ちゃんは体弱いからね。あんまり無茶なことしちゃダメだよ!」
「「「はーい!」」」
数分後
「もう!止めてくれないんだね?流水ちゃんったら!」
少し髪と衣装が乱れてる白ちゃん。それでも様になってるんだから顔面偏差値高いよねぇ。
「微笑ましいからね。」
「……流水ちゃんはそろそろ病院に行って?私は取り調べも少しあるだろうし。これ以上は私たちの問題だから。」
「うん。わかった。また何かあったら連絡して?」
「うん。またね?」
「またね。今度はゆっくり話そ。」
「ブラッドロータスさん。救急車が……」
「今行きまーす。じゃあね。バイバーイ。」
私は白体教を後にする。補修工事大変そうだなぁ……。
お金援助してあげよ。
side???
高級そうな車。車内には運転している男のみ。
「死柄木。こんなアホみたいな金稼ぎにどれだけ時間食うつもりだ。」
ひとりで虚空に向かって話しかける。スマホの類のものは無い。
「……資金は大事だ。お前の資金も無尽蔵じゃないだろう。」
「……それもそうだが。なにかアクションを起こさないのか。敵連合は何時チンピラ集団になった。」
「そうだぜ死柄木!俺は何かになれると思って敵連合に入ったんだ。……今の連合はどうだよ!」
「オイトカゲ野郎。お前を僕の部屋に入れるの許可した訳じゃねぇぞ。仕方なくだ。仕方なく。わかったなら静かにしてろ。」
「うるせぇモヤシ野郎。俺も敵連合の一員だ。言いてぇことは言う!」
「喧嘩するな。一応アクションは起こしている。…………ドクター……脳無を作り出していた先生の同志が居る。」
「ドクター?久しぶりに会えるんですか?お母さん嬉しいです。」
「…………僕あのじいさん苦手なんだよな。」
「2人とも場所は知ってるの?」
「私は知らないわね。全部先生に連れて行かれてたから。」
「僕もだ。正確な位置は分からない。」
「…………使えねぇな。」
「黙ってろ。」
「荼毘ちゃんは本当に口が悪いわね!お母さん嫌になっちゃう。」
「…………続けていいか。そのドクターにコンタクトが取れた。1週間後……言われたポイントで会う事になってる。」
「…………僕はその日は仕事だな。結構大掛かりの仕事だ。」
「じゃあ俺たちで行くしかないか。……あーでも車ないな。無くなっちゃった。」
「ブラッドロータスを仕留めるために使いすぎだ。」
「またどっかからパクるか。」
「……僕の方も計画を1段階進めることにした。」
「計画って会社乗っとるってやつか?デケェ仕事になりそうだな!」
「……わかった。無理はするな。何かあったら呼べ。」
「わかってる。だがもうつべこべ言ってられん。」
「……本当にお前なんで携帯持ってねぇんだよ。連絡取りづれぇ。」
「別にいいだろ持ってなくても。パソコンでなんでも出来る。」
「…………まぁいいや。頑張れな。モヤシ。」
「トカゲに言われなくても。……トンネル入るぞ。」
その車はトンネルの闇に飲まれていった。