side傷原流水
壊理ちゃんのお見舞いの日から数日後。
「……以前の話は本当に……本気ですか。」
「……君への罰だろう?ああ。本気だ。」
「…………。」
「…………。」
Cafe wide variety2階。
私の対面は四ツ橋力也。リ・デストロ。敵連合の場所がある程度わかったタイミングで情報共有をしたら、1度会わないかと言われたので応じた。……私としてもちょうど良かったしね。
「それにしても敵連合……特にホワイトホールディングス次期社長……白灘睦月が怪しいとは…………ふむ。思いもよらなかった。」
「偶然の産物です。」
「だとしたら君は天に愛されているな。運も持ち合わせている。」
「…………話を逸らさないでください。」
「……そこまで気にする事かね。」
「ええ。当たり前です。四ツ橋力也。いえリ・デストロ。」
『それでは……君への罰は……。私が居なくなったあとの解放軍を君に任せたい。』
「あなたがっ……まるでっ……居なくなるみたいじゃないですかっ!いつからリ・デストロは逃げ腰になったんですか!!負けることを考えたんですかっ!異能解放軍は……政府に喧嘩を売ろうとしてますか!?だとしたらまだ早い!もっと力を蓄えてからでも…………。」
「…………。君は……本当に私のことが好きだね。」
リ・デストロが私に向けた目。それは……
「……違う……んですか。じゃあ何処に……。」
「敵連合。」
「……どうして……。」
「彼らは……私たちと同じ目標を掲げている。社会の崩壊だ。…………ただポッと出の知らない団体がだぞ?あのまま彼らを野放しにすると我らの計画がおじゃんだ。それは絶対に許されない。異能解放軍は私の全てだ。その全ての……根底を揺るがす事態になっているのだ。」
「……でも敵連合の場所がっ……。」
「それはこちらに考えがある。既に計画は実行している。」
「…………。」
「あと1ヶ月もすれば敵連合の居場所を割り出せるだろう。」
「幹部のみなさんも……」
「ああ。実に協力的だよ。……悲しい事にね。」
「…え?………悲しい事?」
「当然だとも。私は異能解放軍を家族のように考えている。居なくなってしまうのは……少々寂しい。」
「まるで……まるで負ける前提ですね。」
「…………死柄木弔。それが率いる敵連合。今やナリを潜めているが、USJ、雄英新歓合宿、神野の悪夢など様々な事件。これは彼に指導者がいたから行ったと私は認識している。」
「……同感です。」
「ただ今や指導者はおらず、自らが考えて行動を取らねばならん。…………若者の成長速度を危惧しているのだよ。私は。……敵連合をただの少人数集団ではなく、倒さねばならない相手……として見ているのだよ。我々は。」
「…………。」
確かに。考えてみればそうだ。
彼……死柄木弔は……USJの時は子供っぽい言動が目立った。
『待て黒霧!あいつは!先生に貰ったやつだ!』
『無理です死柄木弔!貴方だけで精一杯だ!!』
『くそっ……くそっ……覚えてろよヒーロー!……俺たちは……俺達はぁ!!!』
逃げる判断も遅かった……黒霧が判断してたしね。でもつい先日白体教本殿で出会った時は……
『あっ!?なんでアイツがいんだよ!』
『アイツ……俺の炎で燃えなかったヤツ……ブラッドロータスだったか?』
『……チッ…めんどくせぇ奴がいる……逃げるぞ。』
『しょうがねぇなぁ。アンコシャスは回収したし……了解だ!』
『……決着はまた今度だ。ブラッドロータス。』
私を見てすぐに撤退した。敵連合も彼の意思に従ってるようにも見えた。
……私は見落としていた。死柄木弔という存在のリーダーとしての成長を。敵として、社会を揺るがす可能性のある大きな敵になる可能性を。
「……思い当たる節があるようだね。まぁ私も……君の話を聞いて考えを改めた訳だが。」
「はい。なぜ見落としていたのか……どこかで敵連合を舐めていたのかもしれません。」
「だからこそ、我々は死力の限り戦わねばならん。どちらかが負けてもいいように……保険をかけておくのは大事だろう。」
「……それで私に面倒を見ろ……ということですか?」
「全員を見ろとは言わない。君にも自由がある。」
「…………何故。」
「何故とは?」
「何故あなたは私の事をそこまで信頼しているのですか。私はあなた達を利用しようとしています。あなた達で社会に問題提起をさせようとしています。自分はリスクをほぼ負わずに。」
私の活動は知っているはず。利害関係の一致で今の関係があるのも知っているはず。なのに異能解放軍は……幹部の皆は私に対して信頼が厚い。意味がわからなかった。
「……そうだな。……ちょうどいい機会だ。私の本心を話そう。」
リ・デストロは残りのコーヒーを飲み干す。
「私は……君にね。魅了されてしまったんだ。」
みりょ……う?
「…………はぁ!?」
「個性を自由に扱う姿に。周りを気にせず……楽しそうに個性を纏う姿に。ヒーローライセンスを持っていたとしても…………だ。君があの時私に見せてくれたのは……ほかのヒーローと違う。義務感……正義感じゃなく……ただの1人の自由な女性だった。私たちが分かり合えるとは思わない……が、私の心が君の戦いを見て美しいと思ってしまったんだ。私は君とは戦えない。」
ストレスが……機能しなくなる程にってことですか……。
「…………そんなこと言われたの……初めてです。」
「ふはははっ。そうだろうそうだろう。私の価値観だ。……あの場にいたキュリオスもきっとそうだったに違いないがね?」
「気月さんも……。」
「何度でも言おう。私は君の事を非常に信頼、親愛している。私は解放軍を家族だと思っている。だからこそ……私は敵連合と戦わなくてはならない。君を傷付けた。それでいて解放軍を脅かす悪魔を。」
「…………。」
「ただしその戦は非常に苦しくなろう。数は力だ。ただそれ以上に個の力が成り立っている可能性がある。……それは見過ごせない。誰でもいい。1人でもいい。何かあった時は救ってあげてくれ。……私からの願いだ。」
「……リ・デストロ……。」
頭を下げられた。
私の理解者。道が違えど……目標は違えど、同じ志を持っている同志。
私は……最近こういう人ばっかりに会いますね。もっと早く……会いたかった。本心を話して欲しかった。
いつも遅いですね。私は。人に良心に気が付けない。
「わかりました。あなたの願い。聞き入れます。」
「それでは!」
「はい。なるべく。出来る限りの協力はします。……ですができて片手で数える程度です。それ以下の可能性もあります。」
「うむ。良い。大丈夫だ。」
「……敵連合との決戦日を教えてくださいね?」
「わかっている。キュリオスから連絡させよう。」
「待ってます。」
私たちは握手を交わす。
「うむ。今日は実にいい日だ。」
「…………良かったです。」
「……時間だな。君の会計も私が払おう。先に失礼するよ。」
「はい。お気をつけて。」
「ああ。君もな。」
ズズ……
残りのコーヒーを1口。
「……ふぅ。…………新しくマンション1個買いますか。小さめのヤツ。」
どえらい出費になりそうですね。