ポケモン廻戦   作:かりん2022

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タイム・リミット

「どうしよう、サトルン」

 

 卵から孵ったばかりの小さなわんこを抱いて、途方に暮れる。

 目の前では、ピチピチと跳ねる大きな魚、グッピーくんが哀愁を誘っており、足元では小さなわんこの座る玉座(私の膝)を奪わんと巨大な黄色いネズミの着ぐるみを着たグルくんが必死にカリカリする。可愛い。

 私の首の後ろでは、これまた孵ったばかりの黄色いネズミがひっついている。

 サトルンは初めてサトルに勝ったペットだった。私が卵から育てたものではないが、絆はあると断言できる。悟のように頼れるナイスガイだ。

 可愛くて凛々しい異形が一声鳴くと、目眩がした。

 

 気がつくと、土砂降りの山の中、それも雨の中にいた。

 心なしか、先ほどよりも多めに跳ねるグッピーくん。

 人の気配がする。

 

「何方ですか?」

「おかか!」

 

 声がする。知っている声だ。悟の生徒で、私が飼っていたペットをあげた。

 乙骨くんと棘くんと真希ちゃんにパンダくんだ。

 

「乙骨くん……。あれ、今日はわたあめ達は連れていないのかい?」

「あの、何方ですか……? わたあめって?」

「君に売ったペットだよ。わたあめと、太陽と、マッスル。私は調教師の夏油だよ。忘れちゃった? 嘘だろ? ペット談義だってしたじゃないか」

「はあ? 何言ってんだよ、特級呪詛師が」

「待って真希ちゃん。あの。この跳ねてる魚ってコイキングですか?」

「この子は私のペットのグッピーくんだよ。紹介しなかったっけ?」

「そのこはミミッキュ? イーブイ、えーと、パルキア? 本物ですか?」

「なんだい? それ。この子とこの子はまだ名前をつけてなくて、この子はグルくんで、この子はサトルンだよ」

 

 私の首の後ろ、髪の毛の下に隠れた小鼠を紹介すると、乙骨はゴクリと唾を飲み込んだ。

 

「僕だけならそれだけでも十分なんですけど……。五条先生の友人なら、写真はありますか? できれば複数の写真がいいです」

 

 言われたので、私はスマホを操作して、悟と硝子と私と先生とペットの集合写真を見せた。その中には、彼らと一緒に撮った写真も会ってホッとした。これで思い出してもらえるだろう。なんだか警戒されている。記憶を失う攻撃でもされたのだろうか?

 乙骨達は写真を見て、とても驚いていた。

 

「わかりました。夏油さん。貴方はパラレルワールドに来ています」

「パラレル……?」

「なんだよそれ。私は、こんな写真撮った覚えねーぞ。それになんだこの生き物。カメラに写ってるって事は受肉体か? なんかこのネズミすげー見覚えあるけど」

「多分、サトルンが連れて来たんじゃないかなって思うんですけど。サトルン、夏油さんを元の場所に返せるかな?」

「ま、待ってくれないか! 私、実は悩んでて、それでサトルンが連れてきてくれたと思うんだ。ちょっとこっちに滞在できないかな」

「どうされたんですか?」

「私、30歳になったら政略結婚させられるんだよ……。それでちょっと悩んでて」

「好きな人がいるんですか? その人が嫌い? 嫌われてる?」

「いい人だし、好きな人もいないよ。でも、どうしていいかわからなくて」

「んー。報告はしますからね。ところで、グッピーくんの進化はかなり危険なものになります。進化ってわかります? この子達が急にすごい成長をする事なんですけど」

「君は詳しいのかい? グッピーくんはちゃんと強くなれるのか?」

「街を壊滅出来るくらい急激に強くなって気性が荒くなるので、育てちゃダメなやつです。逆にミミッキュは進化はしないですね」

「……冗談?」

「コイキングがいる事が冗談みたいなものだと思うんですけど。はい、グッピーくんの種族はコイキングというもので、超超超大器晩成型です」

「でも私なら制御できるんじゃないかな。私、強いし」

「火を尻尾で燃やしてるドラゴンいましたよね」

「いたね。紅くん」

「紅くんより遥かに気性が荒くて強くていう事聞かないです。足元にも及ばないです」

「えっ 普通、そういう場合ってステップ踏んだり」

「しないです。1から100なんですよ、その魚は。信じられないなら、その子達の進化がどんなものか教えましょうか。写真の子達の進化内容でもいいですけど」

「う、うん」

「腕に抱いたその子、イーブイは多彩な進化先があるんですよ。それに、この小さなポケモン、ピチューは進化するとピカチュウという世界一愛らしいとされるポケモンになります。太陽くんはピカチュウの進化系のライチュウなので、もうピカチュウには見てるでしょうけど。ピカチュウを見せたら、皆、わかってくれると思います」

「あー! ピカチュウ! ピカチュウか!!!」

「明太子!」

「えっ なになに!? 世界一可愛いのはパンダだろ!?」

「すごいんだね。世界一って、こっちでは多いのかい?」

 

 乙骨は私に色々教えてくれた。

 イーブイ達を撫でる手はとても優しく、動物好きが向こうの乙骨より見て取れる。

 雨が降っているからと、彼は上着を脱ぎ、それでイーブイとピチュー?とグルくんを雨から庇いつつ、屋根のある所に案内すると言ってくれた。

 

「夏油さんは、ポケモン……この子達はポケットモンスターと呼ばれるカテゴリなのですが……ポケモン好きですか?」

「好きだよ」

「さっき、呪詛師って真希さんが言ってましたけど、保護するにあたって、夏油さんが今までに起こした大きな問題を教えてもらえますか? 政略結婚の詳細も」

 

 えっ

 

「そ、それは……待って、私が問題起こした前提?」

「起こしてないんです? コイキング育ててるあたり、前科ありそうに思うんですけど」

 

 私がグルくんを抱いて戸惑っている間に、悟が来てしまったのだった。

 

 どうやら、今日はサバイバル演習だったらしい。

 

読みたいのはどれですか?

  • 夏油は進化恐怖症
  • 傾世のポケモンマスター
  • タイム・リミット
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