異世界でも天使は踊る   作:唯の人擬き

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第一話 最悪な日

4月1日。 普通の人からしたら一年の変わり目と思うこの日。 だがエメリアでは違う。

この日はあの悲惨なエメリア・エストバキア戦争の終戦日だからだ。

ある者は友人を失い、ある者は家族を失い、ある者は仲間を失った。

エメリア共和国軍は開戦後、散り散りとなって抵抗した。だが完全に殲滅されて被害が増大した。

未だに行方不明者は1万人を超えている。首都グレースメリアを含め、都市部では復興途中の場所が目立つ。最も、エストバキアよりかはマシであるのだが。

あの流れ星サマは人の願いを叶えなかった。むしろ、貧困と破壊で人々を否応無しに争いにもたらし、百万を超える人が死に、あるいは一生の傷を負った。

 

紹介が遅れたな。俺の名はルーカス・フィッシャー、海軍の中将だ。先の戦争で海軍も痛手を負ったが今は比較的マシになった。今はケセド島に駐屯する西方艦隊群を率いてる。

コンコンコン『フィッシャー中将、緊急事態の為至急本部まで出頭せよとの事です。』

、、、おっと来客のようだ。また会おう。

 

 

2017年4月1日 首都グレースメリア 首相官邸

 

「、、、今起きてることを端的に述べてくれ。」

ディーン首相が口を開く。前首相は戦争指揮の精神的疲労に耐えられず辞任。総選挙によって若き志のある彼が首相になった。

、、、最も、国土が転移してるかもしれないという神話のような世界に来てその志は壊れかけてもいるのだが。

 

「では外務省から。事の発端は今朝の朝2時、オーシアにある我が国の大使館からの定期連絡が入っておらず外務省は大混乱、しかし国立天文台に問い合わせたところ星の動きが違うという報告を受けた結果、異世界に来たと外務省では判断されました。現在連絡が取れているのはエストバキアの大使館だけです、、、」

 

「国防省から。現在大使館駐在の武官とは連絡が取れませんが全国各地の基地とは連絡が取れています。幸いにも全部隊が国土に居るので戦力の低下は免れています。なお哨戒中だった艦船及び航空機は全て帰還しております。」

 

「まさか、、、アネア大陸ごとやってきたってのか⁉︎この異世界とやらに!」

 

あまりに非現実な事に絶望するディーンは参加していた国立天文台の所長に目をやる。

 

「、、、現状何とも言えませんがその可能性が高いかと思われます。」

 

「冗談じゃない!首相、それならば直ちにこの世界の国家と連絡を取るべきです!貿易ができないならば我が国は食料に資源やエネルギーは不足します!」

 

経済省大臣が吼える。

 

「そちらに関しては哨戒機を展開しています。海軍のP3CとF18を緊急で出すよう命令しました。」

 

「とにかく人と会いたい。この際漁船でもなんでもいい。人のいる可能性のあるものは全て探れ。」

 

こうして現地人と会う事に全力を注ぐ事にして閣議は終了した。一方その頃、、、

 

ケセド島 西方艦隊群司令部

 

「それで、なんで呼んだんですか?」

 

電話越しにフィッシャーが首都にいる海軍本部長を問いただす。

 

「外務省からの要請で、緊急事態が発生したため哨戒機を至急出して欲しいと言われた。既に南洋艦隊には直で出してある。」

 

「緊急事態?それだけしか伝えてないんですか?外務省は。」

 

若干面倒そうな口調で聞く。

 

「あぁ、それだけしか来てない。何でか聞く前に国防大臣が電話を代わりそのまま受け入れてしまった。」

 

「大臣はなんと?」

 

「急ぎでと言ってそのまま官邸に向かってしまったんだよ。」

 

「はぁ?じゃあ何が目的なのかわからないのに哨戒しろと?どこを?」

 

「とにかく出してくれ、出す場所はまた考えてくれ。」

 

「随分といい加減なものですが、まぁわかりました。1時間以内に出せるようにします。」

 

「あぁ、あと空母も出してくれ。これも要請だそうだ。」

 

「、、、わかりました。」

 

1時間後、ケセド島の航空基地からP3Cが離陸し、港から空母と直衛艦が出た。

 

終戦一年目の終戦記念日は考えられる限り最も最悪なものとなった。

 

 

2017年4月2日

 

哨戒は2日目に突入した。一日経って情報が整理され国防省にも事態が伝わり、2日目は空軍の爆撃機なども投入された。

 

ケセド島 西方艦隊群司令部

 

「連絡は?」

 

「まだです。1時間おきの定時連絡しか来ません。」

 

「そうか、、、」

 

半ば察してたとはいえ、一切接触の気配がしない事にフィッシャーは落胆と苛立ちを感じる。

 

『アーアー、こちらオリオン2。司令部聞こえるかどうぞ。』

 

明らかに定時連絡ではない連絡が来て少し嬉しくなったフィッシャーは通信士に変わってもらい、無線に出る。ちなみに、衛星との交信も途絶えたままであり、新規衛星による衛星網の構築はまだである為、通信中継機を積んだ航空機を飛ばして通信を確保している。

 

『こちら司令部、どうぞ。』

 

『現在当機は南方面の哨戒中なのだが大陸があるように見える。上空を確認してもよろしいか?』

 

『こちら司令部、許可する。給油機と艦隊も念の為向かわせる。』

 

『了解。突入する。』

 

その後、別の哨戒機も陸を発見。フィッシャーが海軍本部に報告した大陸発見の方は官邸に入る。

北方艦隊群も捜索してたがこの報を受け一時中止。首都では緊急閣議に入った。

 

「海軍の報告は事実なのか?」

 

ディーンが国防大臣に問う

 

「はい、事実です。30分前に海軍本部から報告が入りました。既に大陸上空を飛び偵察している模様です。」

 

「待って下さい。海軍は初手で領空侵犯したのですか?相手国の心情を考慮しなかったのですか?」

 

終戦に伴い開戦の反省が行われて、エメリアでは相手国に刺激を与えるような事は忌避されてきた。だからこそ、領空侵犯という事態に反対する閣僚が現れるのは至極当然なのである。

 

「しかし昨日の閣議で何より他国と連絡を取ることが最重要と決まったではありませんか。領空侵犯に関しては後から外交ルートでの謝罪も可能でしょ?下手に事態を引き延ばして資源を浪費する方が問題です。」

 

しかしそれは平時の場合。大陸移転などという前代未聞の事態では通じない。そのような心情がある事を国防大臣も理解していたが内心こいつもうちょっと事態考えてくれねぇかなと思っていた。

 

「喧嘩は辞めなさい。ともかく、陸があるなら上空から調査するに越した事はないだろう。頭を下げるのはいくらでも出来ても何もないところに資源は生やせないのだから。違うかね?」

 

首相からも苦言を呈された閣僚は意外にもすんなり引き下がる。要領のいい閣僚のいる事に嬉しさを覚えたディーンが結論付ける。

 

「海軍の哨戒機は引き続き偵察してくれ。間違えても要撃隊に反撃しようとは思うなよ?」

 

「了解しました、首sy」ピリリリリリリリッ

 

電話が鳴ったので了承を得て電話に出る国防大臣。その顔はみるみるうちに悪くなっていく。

 

「そうか、、、わかった、、、ちょっと待っててくれ。」

 

そういって大臣は電話を切る

 

「どうかしたか?」

 

ディーンが問う

 

「侵入した2機の両方が要撃を受けたのですが、、、片方は離脱出来たのですがもう片方がバードストライクで、その、、、」

 

そうしてまた最悪な事態が起きる。

 

「大陸に墜落した模様です。」

 

ディーンはそれを聞いて絶望した。

 

「神は我々を見放したのだろうか。」

 

そう思いつつ対応を国防省に命令し、閣議は終了した。

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