MISSON LOG
ネルとの決闘を終え、彼女に認められたスネーク。彼とオタコンは決闘で破損した物の賠償なども薄々考えていたが、温情でそれらの責任を問われず。
そして迎えたミレニアムプライスの当日、彼らが突然呼び出されることとなった。
二人は、突然セミナーに呼び出された。
先日の賠償・補填の件かとも予想したようだが、簡潔な文の呼び出しメールであったことから違うと判断した。
「遅くなったな。ユウカ、ノア。」
「どうして僕たちが呼び出されたんだい?」
ユウカがタブレット端末に映る画像を指し示し、質問を投げかけた。
「...これは、デイビッド先生で間違いないですか?」
そこに映るのは、スネークと
この画角では男性の後ろ姿しか確認できないが。
「コート...?」
オタコンが疑り深く見直す。その人物はやや暗い茶色のロングコートを身に纏った若そうな男性らしい。
「昨夜、ミレニアム学区内のロボット廃棄場の周辺です。」
「先生、こちらの映像も確認をお願いします。」
今度はノアが、後ろの大型モニターに映像を流す。
似たような角度からの、別のカメラの映像。
再生開始。
その人物はガスマスクをしており、その後ろに小柄な生徒が二人、後についていく。
まるで護衛でもしているようだ。
スネーク達でも、彼女らの制服には見覚えがない。特に二人は、シャーレのデータベースで各校の制服や校章について知っているはずだ。
薄汚れているが白い、作業着のような生地の。パーカーのような服装にガスマスクを合わせたもの。
制服と呼べるのかすら怪しい。単なる無学籍の
彼女らがクリアリングを始めると、その人物は歩みを止める。
そしてガスマスクを外し。
スネーク、オタコンも驚きを隠せない。
そこには、スネークと
その人物が去り、映像は終了した。
◇
「俺はこの日、確かにゲーム開発部の部室に居た。オタコンも記録しているはずだが。」
「ああ、ちょっと待って...」
確かに、オタコンは記録していた。
この人物が、
彼には一人だけ思い当たる人物がいる。
ビッグボス。
彼もまた、かつて武装集団を率いた人物だ。統率力があっても、おかしくないだろう。
そして何より、ソリッドとは顔つきに差異がある。ほぼ同じといえど、肌の色など各部に違いがあるものだ。
「ユウカ、ノア。」
「俺は、これが自分でないと言える。」
「...ええ。私も同じ意見です。」
「...えっ?」
「形質に若干の差異があります。肌の色、鼻の位置や表情自体も。」
「ああ。別人だ。」
「考えつく人物を知ってる。一人...いや、二人か。」
スネークは訂正した。ビッグボスが思い当たるなら、必然的にもう一人。
ソリダス・スネークだ。彼もまた、テロリストの中心となった人物。
ビッグボスの形質を百パーセント受け継いだ、完全なクローンだ。
詳しいことはユウカたちに伏せ、説明することにした。
「...なるほど。そう考えれば納得はいきますが、疑念が残るというのも事実です。」
実際、その通りだ。ノアのように決定的な違いが分かる人物でない限りは別人だと分からない。
他学園の自治区で攻撃でもされようものなら、シャーレ自体の信用と存続が危ぶまれる。
彼を探さなくてはいけない。
彼がビッグボスなのかソリダスなのか、突き止めなくてはいけない。
「分かった。この案件はシャーレで最重要として扱おう。」
◇
「...待って、ノア。今何時?」
「16時7分...ミレニアムプライスの表彰式が始まってますね。」
「えっ」
ユウカが一瞬静止した。
「...今、この件は後回しにしよう、今どうにかなるものじゃない。」
「大丈夫なんですか!?」
「...いいさ、プライスなら結果はすぐだ。先にしても問題ないだろう。」
「それに、考える時間も欲しい。」
スネークは言い訳に近い理由を言うだけ言うと、ゲーム開発部のところへ戻ろうとした。
「...君たちは来ないでいいのかい?」
オタコンは、ユウカとノアへ、さりげなく来るよう促した。
「えっ、あっ、行きます!」
「私もご一緒します。」
内心、スネークはこの場の誰よりもプライスの結果を楽しみにしていた。
それだけ、彼はゲーム開発部の四人に期待し、応援していた。
かつて「他人の人生に興味を持ったことはない」と言った彼が、他人の人生の、青春のため動きまわった。
今の彼は人生を愛し、そして生徒たちを愛そうとしている。
◇
「アリスは私が!」
「いや、私も連れていく!」
「モモイ!ミドリ!アリスちゃん!ユズ!」
ユウカが勢いよくドアを開け、飛び込むように部屋へ入っていった。
ノアとスネーク、オタコンも続く。
「ひぃっ!もう差し押さえに来たぁ!?」
モモイが飛び退く。
「...え?何を言ってるの?」
「ユウカちゃん、もしかしたら皆さん......見てないんじゃ?」
「そうなの?」
ユウカが、部屋にあったディスプレイの画面が割れているのに気づく。
「これは?」
「お姉ちゃんが吹っ飛ばしちゃって...それなりに良いのを買ったのに......」
「それはどうとでもなるじゃない?」
そこへモモイが目から涙を零しながら、ユウカのジャケットの裾を掴む。
「で、でも...!私たち、十位以内に入れなかったから...!!」
「モモイ、みんな。まず...これを見て欲しいな。」
オタコンの繰るメタルギアmk4のモニターに、ミレニアムプライス表彰式の生放送が映し出される。
そこには『特別賞 ゲーム開発部「
審査員の述べたことを、スネークらの知りうることも踏まえてまとめると、
「特別賞」は今までにない特例であり、「TSC2」のために設けられた枠である。
四人の総意であり、コンセプトの根底となっている「レトロ」、シナリオライター・モモイによる想像の斜め上を行く展開、斬新でありつつも爽快感を併せ持つ戦闘・進行システム、そしてそれらを総括する不可思議な世界観...
困惑はするが、RPGの王道要素はしっかりと受け継がれた楽しさが込められた作品である。
それらが審査員の幼少期の夢中になったゲーム達のことを思い出させた......と。
◇
「本当におめでとう!」
「え...うん......えぇ??」
「あ、あの......???」
「どう言う、ことですか??」
「?????」
「お前達は、ゲーム開発部は存続できるんだ。こう言う他ない。」
四人は、突然頭に流れた大量の情報を前に呆然としている。
全力といってもダメ元での期待だったのだ。
「私もプレイしたのよ、ノアと一緒に。そうですよね?エメリッヒ先生。」
「...そうなのか?」
「実はね。興味があるって言うから大型のモニターと高音質のスピーカーを用意したんだ。だって、最高のゲームには最高の環境じゃないか。」
実に彼らしい答えだった。その遊び心が、彼のアイデンティティの一つだ。
「決して手放しに面白かったとは言えないけれど......でも、良いゲームを遊んだ時の、独特の感覚が味わえた。アレってなんて言うのかしら......でも分かるでしょう?」
そこにもう一人。
「モモ、ミド!」
ヴェリタスのマキだ。彼女はモモイとミドリの良い友人であるし、「TSC2」をプレイしていたであろう人物の一人。
彼女もまた、作品を高く評価した。
「───あ、そうそう。今、ネットでも大騒動になってるよ!」
「
「そうなの!?」
「本当に!?」
マキがスマホで、「TSC2」関連の記事の数を示す。
モモイとミドリは前のめりになりながら、光を取り戻した目で画面を見つめていた。
一方アリスも。
「確認しました。」
「3時間前にアップした『TSC2』は、先ほどまでダウンロード数が約7,700回、合計1372個のコメントがついていましたが......」
「表彰後からは30秒でダウンロード数が10,000回を超え、現在もとてつもない勢いで増え続けています!」
「うっそぉ...」
「いや、本当だよ。ミドリ。私たちの努力の結果だよ!」
「コメントは......」
「アリスちゃん、コメントはどうやってカウントしてるの?すごい勢いで流れていくけど。」
「目視です!」
「え?」
「アリスの動体視力一筋です!」
ユウカは困惑したが、ノアの記憶力やアスナの直感という前例を思い返して納得した。
「あぁ......」
「コメントは肯定的なものが191個、否定的または疑惑のものが242個、どちらでもないものを含めると合計約500個追加です。」
「えっ、結局ダメなの?」
「ううん、そんなことない。」
「ユズ?」
「ユズちゃん......?」
ユズの口角が少し上がる。
「これ見て。今同率で、一番多く共感されてるベストコメント。二つある。」
ユズがアリスからパソコンを借りたと思えば、そのコメントをそれぞれクリック。拡大して読み上げる。
「『実際にプレイするかどうか、最初は散々迷いました......でも今はこう思ってます。このゲームに出会えて、よかったです。』......これが一個目。」
「『これまでミレニアムのに対して、偏見を持ってしまっていました。
冷静さと合理性しかないというミレニアムの生徒たちへの偏見は、今回のミレニアムプライスと、この『TSC2』を通じて、完全に無くなったと断言できます。」......」
「良かったな。」
スネークは四人の肩をポンと叩いて、そう呟く。
「......っていうことは、廃部にはならないんだよね!?」
「さっきから俺はそう言ってる。」
「すごいよ、みんな。これでみんなの居場所は守られた。」
「ええ。そうなりますけど......あくまで『臨時の猶予』ですから。正式な受賞とは言えないので。」
「......」
ノアとユウカ以外が全員真顔になり、ユウカの方へ向き直る。
「えっ、いや、待って!猶予って言ってもそんなにすぐ廃部にはならないから!言い方が悪かったわ!」
「あ、あと、その......この間のこと......」
「ここのゲーム機のこと、ガラクタって言って......ごめんなさい。」
ユウカと共に、ノアは安堵した。
ユウカは今日まで、どう謝るべきかを彼女に相談していた。
彼女はユウカの誠実な気持ちを受け止め、親身になって考えていたから。
まあ、彼女はそんなユウカを可愛がる気持ちも、多少はあっただろうが。
そんなわけで、ユウカはようやく謝った。
「貴女たちのおかげで思い出したわ。小さい頃のこと、その時遊んでた、色んなゲームのこと。久しぶりにあの頃の......新しい世界で旅をする楽しさを...感じられたから。」
ユウカはスネークにも目配せする。
彼の柄じゃないが、カウンセリング...とは名ばかりの弱音を吐きまくる場を数回設けていた。
これもまたノアからの頼みだ。スネークでもオタコンでも、もはや大人子供に限らず、彼女には少し怖いような面がある。
ユウカがシャーレ奪還に参加した生徒の一人であることも、彼が断りにくかった理由の一つである。
彼の優しさは弱さでもあると言える。
「...ありがとう。それじゃあ、部室の利用期間延長の申請とか部費の受取処理とかは必要だから、落ち着いたら生徒会室に来てね。私がいるからなるべく早く。」
「じゃ、また後で!」
「じゃ...じゃあ......!?」
「ああ......!」
「......!」
「や......」
「やったあああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!
両腕を上げ、モモイが換気の叫びを挙げる。
「良かったぁっ!!!」
「やった...嬉しい......!」
「???」
が、アリスはそんな状況に置いてきぼりを食らっていた。
モモイが半泣きでディスプレイを吹っ飛ばしたところから始まり、今はそのモモイが嬉し涙を流しているという移り変わりの速さに目を回していた。
「え、えっと......???」
「アリスちゃん!私たち、特別賞もらったんだよ!?この場所も、私たちの部室のまま!」
ミドリが高揚のあまり、アリスの肩を揺さぶろうとした。...ものの、アリスと光の剣の総重量200kg以上の重みで我に返った。
「...と、とにかくね、私たちがここにいて良いことになったんだ。」
「つまり......アリスは。」
「これからも、みんなと一緒にいて......良いのですか............?」
モモイとユズも二人に近寄る。
「「「うんっ!」」」
そしてユズからも。
これからも、よろしくね......!」
そして教師陣も。
「アリス。俺たちからも。」
「先生として、よろしく。」
「私も......私も嬉しいです。」
不意にアリスの瞳が潤んだ。
「アリスちゃんっ!」
「私たち...っ!!」
「これからもずっと、一緒だよ!!」
「......はい!」
「これからも、よろしくお願いします......!」
「......データ復旧率98.00%」
「システム、作動」
「準備完了」
「プログラムをセット............」
Divi:Sion
AL-1S......い え... ...ア リ ス....私 の...
私の、だい じ な ......
......はい、やりました。あのエンディングの後の会話的なあれを。
そして文章的にも期間的にも長くなりすぎましたが、パヴァーヌ一章が完結しました。
今回のMGS固有名詞も、近々解説を投稿いたしました。
今後の展開の方針についてですが、解説回の後はエデン条約編に突入する前にイベントストーリーやミニストーリー辺りに触れる、箸休めのような回を数回に渡って投稿する予定です。短くて一ヶ月半は掛かります。
ここまで読んでくださった方々、ここからもよろしくお願いいたします。