MISSION LOG
百鬼夜行へ刀を買いに訪れた雷電。そこで彼はイズナという、忍者を目指す謎の少女に出会う。
出会って早々に親睦を深めた二人だったが、イズナは『雇い主』の依頼のためその場から去る。
続いて雷電は、偶然にも百夜堂へ向かうのだった。
雷電は、近場にあった「百夜堂」に入った。
目立ちすぎるのもマズいが、顔くらいは知ってもらった方がいいだろう、という考えに基づいた彼の行動である。
「お頭ァア!ようこそいらっしゃいマシタァアッ!!」
「わざわざシャーレ組からいらっしゃると聞いて、このフィーナ!心よりお待ちして───」
「ストーップ!違う違う、そうじゃないでしょ!先生困っちゃってる!」
特徴的な声が割って入った。
「エ、でも……」
「『びっくりするくらい盛大にお出迎えを』とは言ったけど!比喩表現よさすがに!」
「……先生ですよね?エメリッヒ先生ではなさそうだけど。」
「?」
「まあいいか…もう来てくださったんですか?」
「……?」
「なら話は早いです!大筋はお電話した時の相談の通りなんですが…」
「待ってくれ。…電話してきても?」
「構いませんけど…どうかなさいましたか?」
「ちょっとな。エメリッヒ
雷電は店の外でオタコンへ電話した。
「オタコン、どういうことだ?百鬼夜行で店に入ったらお前の名前が出てきたんだが。」
『え、まさか『百夜堂』に行ってたのかい?…困ったな、本来なら明日、僕がそっちに行く予定だったんだけど…』
『悪いけど、僕もすぐには向かえないんだよ。』
「…俺にこの件を引き継いでもらうことは?」
『え?』
「研修はしてるし、何人か生徒とも交流してる。できないことはないだろ。…銃弾にも耐えられるしな。対応は早い方がいいんじゃないのか。」
『分かった、悪いね。僕も準備して向かうけど、時間が掛かるよ。』
オタコンが、電話で受けた説明をそのまま雷電に伝える。
充分に理解ができたので、雷電は急いで店に戻った。
「待たせてすまない。今、エメリッヒに仕事を引き継いでもらった。」
「えっ、引き継ぎしてなかったんですか?」
「あー、その、何でもない。聞き忘れがあっただけだ。」
強引に話を逸らしたが、本題に入る。
「…そろそろ本題に入ろう。相談というのは?」
「ええ…あっ、フィーナ。お茶出してあげて。」
指示を飛ばされたフィーナはすぐに緑茶を用意し、シズコは立ちっぱなしだった雷電に座るよう促す。
茶を出したフィーナがシズコの隣に座り、雷電と二人はテーブルを挟んで向かい合った。
「......こほん、では改めて自己紹介を。」
「私は
「それと同時に百夜堂の看板娘でもあります!いわばアイドルみたいなものですね!」
「なるほど?」
一応、メモを取る。
「そして、ワタシは従業員で、任侠の道を極めんとする
「分かった、よろしくな。」
「俺はジャック。シャーレの顧問だ。」
特に付け加えることも無かったので、彼は簡潔に自己紹介を終えた。
「そういえば、先生が百鬼夜行に来るのは初めてですか?」
「ああ。」
「でしたら、私たち『お祭り運営委員会』のPRも兼ねてお話しましょう。」
「ズバリ.........」
「百鬼夜行連合学院とはどういうところなのか、始まり始まり〜!」
「というと、政治体系あたりを?」
「まあそうです!必要そうな部分をかいつまんで紹介しますね!」
シズコの話によれば、百鬼夜行は昔から観光業、それらを構成する多くの娯楽が中心となっている自治区だという。
中でも特筆すべきは『お祭り』。外でいう日本とほぼ同じスタイルのようだが、これが観光業において最大級の規模。
それを全面的に運営するのが『お祭り運営委員会』。
フィーナが言うには、百夜堂はそのアジト......もとい本拠地。
雷電はこのようにメモした。
「でも、最近になって邪魔をしてくる奴らが現れまして───」
ズドドドッ!!
話を遮るように轟音がした。近い。
「委員長、敵襲デス!」
フィーナがドアに鍵をかける。
「あああああもう!言ってるそばからぁ!ほんっとやってらんない!パンチの一発でもお見舞いしちゃうか.........」
「あっ、あー......えっとぉ、きゃーシズコ怖ーい...なんちゃって......えへ。」
「......」
呆れるような、見守るような眼差しをする雷電。
「何ですかその表情!?えっと、とにかく表に出ますよ!!」」
◇
「祭りにしては派手じゃないか。あいつらも委員会で?」
「そんなわけないじゃないですか!あってたまるもんですかこんなお祭り!!」
ちょっとした軽口が飛ぶが、シズコはバッサリ切り返してしまった。
「イヤ、ゲヘナ辺りなら...?でも、ここは百鬼夜行デス!桜花祭の邪魔は許しマセン!」
「アンタは?大人?」
「『シャーレの先生』だ。覚えておいてくれ。」
「でも、たかがお祭りの運営委員会と大人だろ?相手になるとでも!?」
「......」
木刀のラッピングが剥かれた。
「俺も相手をしよう。生徒をあまり戦わせたくない。」
高周波仕様でもない、マホガニー製でもないただの木刀だが、彼が握ると何故か、生徒たちには真剣のように見えた。
左腕の袖を捲る。義体の腕を盾がわりにでもするつもりだろうが、現在義体を覆っている人工皮膚に、以前のような耐久性は無いはずだ。
単純に言えば外の一般人以上、キヴォトス人以下。
しかしそのまま刀身を返し、峰を地面へ向けながら構える。
「セ、先生......!」
「気にしないでくれ。」
同時に、フィーナは彼の背中に惚れぼれしていたのだった。
「それ以上こっちに近寄るな!」
間合いは確実に縮まってゆく。数人後退するが、ほとんどは怯まず発砲する。
小銃やライフルの弾は最大限を腕で受け、ロケットランチャーは回避した。
しかし腕へのダメージも無視できないうえ、彼は買ったばかりのスーツ姿だ。
スーツがスネークと同様、特別な防弾仕様であったのが幸いである。
「んぐっ!?」
魑魅一座の一人が持つロケットランチャーに峰打ちがヒットした。勢いそのままに、銃身が地面に落ちる。
そこへフィーナも続いて撃つ。
「とっととお引き取り下サイコノヤロー!」
「いい加減にしてくださーーーーーい!」
いつもの茶目っ気も忘れ、シズコも応戦する。
雷電は一座の軍勢を乱しながら、そろそろ限界を迎えそうな木刀で、アサルトライフルやらミニガンやらを叩き落とす。
「なんなんだよコイツ!喰らえっ!」
一座の一人が投げつけた手榴弾が、フィーナの愛銃「仁義なき撃ち合い」の銃口の延長線上に入った。そして。
「先生、伏せテ!」
その言葉とほぼ同時に、彼はその場からローリングで距離を取った後に伏せる。
...何かにぶつかった。
「えっ!?」
「...イズナ!?」
ドゴォォッ!
「伏せろ!」
半ば押し倒すような形でイズナを庇う。
「怪我はないか?」
「えっ、と...はい。」
「どうしてここに?」
「それはイズナの台詞です!先生はなんで私たちの邪魔を...はっ!?」
イズナが後ずさる。
「ま、まさか...イズナを油断させて誘い出すために近づいてきたのですか!?」
「本当は悪者......!?」
「違う、そうじゃない。というか君が何でここに?」
「い、イズナは忍びとして命令に従っているだけで ああっ!?」
先ほどまでいた場所に目をやると、フィーナとシズコが魑魅一座に迫っていた。
「クソ、仕方ない!イズナ殿、ここは戦略的撤退だ!」
「待て、君は魑魅一座の人間なのか!?明らかに犯罪だ、分からないか!?」」
「戦略的撤退...?犯罪……!」
「そんな胡散臭い大人の言うこと聞かなくていい!今みたいな丁度いい時に撤退できるのが忍者だよ、早く!」
「そういうことであれば!……でも、少々お待ちを!」
一座が走り去っていく中、イズナと雷電は向かい合う。
「先生.....まさかイズナの夢を応援してくれた先生が立ちはだかるなんて...」
「何という運命の悪戯───」
「あんまり待ってられないんだよ!強制だ!」
「で、では!イズナ、次は三倍くらい強くなっているはずですのでー!」
そのまま追いかけようとした雷電だが、シズコに呼び止められてしまった。
判断に迷ったが、百夜堂に戻ることにした。
...一応、柄しか残っていない木刀も拾って行った。
おまけ
「ねぇねぇ!さっきの見た!?まさか本物の忍者だったり……?」
「忍者なのかお侍さんなのか分かりませんけど……あの人、シャーレの先生ですよね?」
「え、そうなの?……あ、でも動画の更新する時に見たかも。連邦生徒会からの発表動画が上がってた気がする!」
「先生だからでしょうか、生徒のことを攻撃しないようにしているように見えました。」
「おお...不殺の忍者、って感じかなぁ...!かっこいい!!」