MISSION LOG
修行部・忍術研究部の援護のもと、一座の襲撃を乗り切った雷電。
オタコンとも合流することに成功したその日の夜、偶然にもイズナと遭遇。彼女から、一連の襲撃の首謀者の名を聞き出すことに成功した。
そしてその翌日……
『イズナと連絡が取れない?』
「ああ。何も無ければいいが…彼女も探そう。」
彼女に機密事項を話させたせいではないか?雷電はそう勘ぐった。
オタコンも2台のドローンを飛ばし、上空からの索敵を始める。
「全員、準備はできてるな?」
「「「OK!」」」」
「「「できてます!」」」
「準備完了デス!」
「了解、作戦開始だ。」
徹底的に魑魅一座を探し、見つけ次第包囲。その後、首謀者の居場所を吐かせる算段となっている。各々のためにも、あまり手荒な真似はしたくない。
そうして30分が経過、まだ見つからない。
「うーん…昨日までが嘘みたい、全然いないじゃん!」
「カエデちゃん、まだ30分しか経ってませんよ。もう少し探してみましょう。」
「それに、エメリッヒ先生も手伝ってくださるので。」
「…了解、ミモリ先輩!」
OBJECTIVE:首謀者の拘束
「オタコン、そっちは?」
『今のところは何も。何かあったら連絡するよ。』
現在、彼らは3チームに分かれて行動している。
◇雷電
・シズコ
・フィーナ
◇オタコン
・ミチル
・ツクヨ
◇ミモリ
・カエデ
・ツバキ
各々スリーマンセル、雷電・オタコン・ミモリをリーダーとしながら、3人が指揮を行う。修行部に関しては、オタコンが遠隔で指揮。
百夜堂を開始地点として、丁字路から3方向それぞれを捜索。
2時間が経過。時刻は昼前となったが、それでも見つからない。潜伏されているとなると、特定が難しくなる。
魑魅一座の特徴といったら天狗の面と上着くらいなのだから、服装が違えば分からないのだ。
そこに、雷電へ通信が入った。
◇
時刻は16:00。空は淡く、赤みがかってくる頃。
シズコは桜花祭の運営に向かうためにやむ無く離脱、雷電はフィーナも向かわせ、一人で捜索を続けた。
桜花祭の邪魔者を探すために肝心の桜花祭が潰れては、本末転倒だ。
それと、シズコから
「先生、これを。」
「これは?」
「警備員用の法被です。これくらい着てないと、逆に先生が不審者だと思われてしまう気がして。」
「……それもそうか、ありがとう。」
『百鬼夜行』の校章の下に『警備員巡回中』と書かれた桜色の法被に、腕を通す。
これならいつものスーツほど動きにくくはならない。
腰に帯刀、運動性重視のボディアーマーの上に法被という珍妙な格好だが、まあいいだろう。素材のせいか、着心地の良さに感心して布地を触る。
祭りの規模相応に予算が降りていることが分かった。
辺りを見ると、屋台に灯りがつき始めた。もう間もなく、祭は始まってしまうのだ。
運営委員会の事務等が行われるテントを中心に、周辺を見て回る。
アピールするかのように法被を着て、シャーレのネームタグを提げ、
伝統的といえるかは分からないが……帯刀して警備に当たっているのだから、それほど違和感は無いだろう。
身の丈180cm前後の人間はそれほど多くないが、ロボットや獣人も含めると珍しくはない。あまり浮くことはないのではなかろうか。
「オタコン、そっちは?」
『修行部のみんなと巡回中。フィーナにも会った。それと...」
『
「魑魅一座が?」
『ああ、そこの広場から右に1本入った裏道に3人。他も探してみる。』
「頼んだ。」
どうやら、かなり近くにいたらしい。広場の方面は彼の盲点だったようだ。
早速そちらへ足を運び、法被を脱ぎ、黒い薄手のアーマーて暗闇に溶け込む。
確かに、一座の生徒を捉えた。
生身の頃からのステルスが、キヴォトスでも活きる。
「……なあ、雇い主は本当に払ってくれるんだよな。」
「今疑っても分からないよ、あの人もよく分からない。」
「今のうちに武器の確認をしておかない?雇い主の命令があったら動けるように。金が貰えなきゃヴァルキューレか陰陽部にでも突き出して───!?」
彼女の肩に、ところどころが機械的なつくりの手が触れる。
「アンタは!?」
「お前たちは魑魅一座か?」
「『魑魅一座』でひとまとめにするなよ!流派ってもんがあるんだから!」
「……悪かった、『路上流』。質問がある。」
「質問?」
面の上からでも分かるほどに、彼女たちは顔をしかめ、見合わせる。
「お前たちのボスの居場所は?」
「「「……」」」
「……あの
「おい!」
「どうなってもいいだろ、どうせシャーレが何とかしてくれんだから。」
「一応聞いておくけど、あたし達の身の安全は保証されてるんだろうな?」
「約束しよう。」
「……」
「分かった。……この際案内する。殴り込みにでも行くんでしょ?」
「…………」
目的まで看破されたが、雷電は黙って着いていった。
その後ろに、残りの2人もくっついて進む。
なんと士気の低いことか、しかし彼女達の愚痴から窺えるのは『報酬の未払い』が理由だということだ。
なんでも任務が追加されるごとに報酬の額が上乗せされていったが、今日の分の支払いの雲行きが怪しくなったと。
◇
「…しかしまあ、よくもまあ
「えっと……」
「言い訳は聞かん、貴様は敵だ。『シャーレの先生』の味方なんぞして。」
イズナは拘束されていた。服のどこかに盗聴器でも付けられていたのか、密告は筒抜けだった。
「で、でも!マサムニェさん!」
「黙っていろ!」
「……クソ、一座のほとんどと連絡がつかん。欲望に正直な奴らめ…」
「別室に移しておけ───」
「
「……何だって?」
「刀なんて持ってたので、奪ってやりました。」
「手も鎖で拘束してあります!」
「……」
「なっ…………連れてきたのか。」
「丸腰で悪かったな。ボスに話をしに来た。」
「話?暴力じゃなく?」
「俺をよく知ってるらしいな、でも違う。『シャーレの顧問』として対話がしたい。」
「座れ。」
後ろに付いていた一座の一人に足を叩かれ、座るよう促された。
「...どうして、桜花祭の邪魔をする。
「儂の本名はニャン天丸ではない!ニャテ・マサムニェだ!」
「......先にこの質問をしよう、」
「イズナをどこにやった?」
マサムニェがどっかりと椅子に座り、雷電を尻目にスマホを弄り始めた。
「あの小娘か、どこにやったと思う?」
「答えろ。」
「...儂の身の保障をするなら、教えてやる。」
「.........」
「わかった。」
「ほう?素直じゃないか、話が早い。そうだな......」
「......ここのすぐ近くだ。以上。」
「は?」
「『最強の忍者を目指す』とか何とか抜かす小娘だ、見ていて笑える。」
「馬鹿なイズナ殿はもう用済みだ。忍術などありもしないものを──────」
「本当にそうかな?」
「何を──────ニ゛ッ!?」
雷電は拘束の縄を引きちぎったかと思えば、一座の少女から刀を奪い返してマサムニェに迫った。
「俺が忍者で、これが忍術だと言ったら、信じるか?」
「そ、そんな馬鹿な!そんなものあるわけが───」
「お前のようなクズは、子供を食い物にした挙句、捨てる。」
「だから信じないんだろ?」
スパークとともに、鞘から刀が抜かれる。
「最後に俺から。」
「もう一度聞こう、桜花祭を妨害した目的は?」
ヒール状の
「早く。」
「ひっ!か、か、金だ!ガキが儲けて金を回してるのが気に食わないんだよ!外注なんぞして!!」
動物の姿をしているが、中身は外の人間と何ら変わらない屑だ。
雷電はそれを悟ったように刀を振り上げる。
「シャ...シャーレのお偉方がこんなことをして、タダで済むと思うなよ!」
「......俺はシャーレの顧問である以前に、一人の大人だ。」
「これも計画のうちに決まってるだろう!?想定済みだ!」
「…まだ口が聞けるらしい。」
「お前のように子供や市民の足を引き、邪魔をする大人は、」
「斬る。」
「フニ゛ャ゛ッ!?」
返した刀を順向きに戻し、鞘に仕舞う。
彼としては、マサムニェと対話する意味が無いことを悟ったらしい。
「...お、おい、あんた!」
「殺したわけじゃない。峰打ちだ。」
そう説明はしたが、その場で立ち尽くしていた座員の少女は逃げ出してしまった。
その場でスマホを取り出し、雷電は電話をかける。
「先に通報しておくべきだったな…」
まあ、決定的証拠が無かったので無駄だったろう。
「もしもし、チセか?」
『うん〜。どうかした?』
「そこに部長はいるか?確か...ニヤだったか。」
『戻ってないよ〜』
『あ、でもカホならいる。』
「カホ?」
『うちの副部長。私の横にいるよ?...カホ、電話だって。』
確かに、先程からずっと息を吐くような音が小さくしていた。その副部長が漏らした吐息だろうか。
『...代わりました、陰陽部副部長の
「シャーレ顧問のジャックだ。少し判断に迷うことがあってな。」
『何でしょう?』
「魑魅一座の首領を見つけた。」
『えっ?』
「流派は路上流らしい。」
『そ、そうですか...』
「......こういう時、どこに通報すれば?ヴァルキューレでいいのか?」
『でしたら、こちらで一度身柄を預かりますので。その方の身元などは分かりますか?』
聞いたところ、カホの方で身柄を預かれるだけの人員を揃えておく、と。
「...商店街会長のニャン天丸だな。」
『えっ?』
「本名はニャテ・マサムニェだと言っていた。」
『......』
◇
「先生、ご無事でしょうか?」
「ああ。気にするな。」
「…!?その方、商店街の…」
「そうらしいが、こいつが主犯格だ。陰陽部には連絡がついてる。」
「一人で片付けたの?」
「まあ、あまり生徒には見せられるものじゃないしな。」
駆けつけた修行部の三人は揃って(先生はいったい何をしたんだろう?)という疑問を持ったが、質問はしなかった。
「…イズナがこの辺に捕まってるらしい。探すのを手伝ってくれ。」
「連絡が付かなかった、って…そういうことだったの!?」
「…分かりました。私たちが全身全霊でお手伝いいたします!」
◇
『雷電、無事かい?』
「ああ。
『座員が集まってたけど、どうやら
「とことん小物だったな。」
『......ん?』
「どうした?」
『銃声がする...』
オタコンはドローンを飛ばしたようだ。しかし直後に爆炎が上がり、カメラ越しの確認は絶望的となった。
『こっちの様子を共有するよ。...見えるかい?』
「...他の視点は?」
『限界まで近づける。』
「...一座のオートマタか?」
『こっちは僕が様子を見る。イズナと、逃げ遅れた民間人がいたらその救助を優先して。』
雷電は通信を切った。
展開に悩んでいる間に7thPVも公開されてしまいました...
あと一話で終わる予定なので、スピードを上げます。