MISSION LOG
試験の結果、補習授業部は活動の続行が決定した。
その日の終わり頃、スネークは
そして、彼の目的も別にあった。
「あら、先生。お疲れ様です。」
「そっちもお忙しいようで。」
優雅に駒を動かすナギサ。彼女の側が白、対する側が黒。
白のルークが黒のポーンを獲った。
「チェスか?」
「ええ、趣味なんです。」
駒の種類が、一般的なものとは違うのがわかる。珍しげに見るスネークに気づいたのか、ナギサも説明を付け加えた。
黒はキングとクイーン、ポーン。
白はキングとルーク、ビショップとナイトが三〜四個の構成。
非対称な
「…何か言いたげですね?」
「本題に入ろう。」
「補習授業部のことだ。」
「お話は聞いています。第1次試験は上手く行かなかったようですね。」
「なら話は早い。…もし、テストを3回ともパスできなかったらどうなる?」
ナギサは少し間を空けて、言葉を選んでいるようだ。
「小耳に挟まれたのでしょうか?出処は…ヒフミさん、ですかね。」
それでも、彼女はヒフミのことを肯定した。
話を戻して、答えが返ってくる。
「簡単なお話です。」
「不合格を繰り返す…つまり落第を免れない、助け合うこともできない……ならば皆さん一緒に、退学していただくしかありません。」
「……!?」
その権限はシャーレによるものだ。
介入した時点で、人物たちは利用されていた。
「何故そんなことを!?」
「……あの中に。トリニティの裏切り者がいるからです。」
「その"裏切り者"を排除するために?」
「その通りです。」
『裏切り者』……何者かは分からないが、エデン条約締結阻止を目論む生徒。
締結の暁には、有事の際に
しかしその機構がダウンすれば、両陣営に甚大なダメージが及ぶ。それが狙いだろう、とナギサは語る。
「罪のある人を正確に裁くのは困難なことです。罪状の把握から罪人とその居場所の特定。……あってはいけないことですが、冤罪だって有り得ます。」
「であれば。」
「容疑のある人を一つの『箱』にまとめます。」
「そしていざという時、中身をまとめて捨ててしまうのです。」
「…それが『補習授業部』です。」
「じゃ、他の生徒はどうなる?冤罪で、学籍も無しに野ざらしか?」
スネークの主張は最もだ。
捨てられた生徒に対して、責任を取れる訳でもない。
「…ごめんなさい。先生。」
「こんな血なまぐさいことに、あなたを巻き込んで…私のことは、罵っていただいて構いません。」
「………」
それ以上、彼が意見することは無かった。
黙っていたオタコンが静寂を破った。
「質問をいいかな。」
「どうぞ。」
「君が権限としても、人としても僕らを利用するつもりなら、どうして僕たちに計画を?」
ナギサが流石だと言わんばかりに、話を再開した。
「仰る通りです。そこまで理解されているならお話は早いですね。」
「お願いがあります。先生方。」
ナギサが立ち上がった。
「…補習授業部にいる裏切り者を、探していただけませんか?」
明確な目標だった。
裏切り者がいれば、トリニティとしての上層部や印象への被害だけでなく、人的被害の発生は免れない。
そして、それはなんとしてでも避けたい。
裏切り者を、探す必要がある。
「なら、俺たちからも『お願い』がある。」
「
「…そうですか。」
部屋から出ていこうとする二人が呼び止められた。
「ですが。ゴミを細かく選別するのが難しい場合、箱ごと捨てるというのも手段の一つ……そうは思いませんか?」
スネークは足を止め、オタコンは振り返った。
明らかに、『勝手なことをすると…』という脅しだ。表情にこそ感情が出ていないが、言葉の節々から苛立ちのような、強い気持ちが窺える。
続いて出た内容は『試験は私の命令次第で【会場】【難易度】【時間】…等を自由に変えられる』ということだった。仄めかしていたが、つまりこういうことだ。
明らかな脅迫だが、ここで歯向かえば生徒にしわ寄せが行ってしまうかもしれない。
二人は改めて、部屋を去った。
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「…政治家は毎度卑怯な手を使う。」
「明らかに、生徒を人質に取った脅迫だよ。」
二人は愚痴をこぼしながら、廊下を歩いていた。
「…裏切り者か。」
それとなく、目星はつけていた。
アズサ、もしくはハナコ。
コハルには
ヒフミはそもそも『こちら側』。ナギサが計画を伝えたうえで部長としてここに居るのだから、あり得ないだろう。
「…裏切り者はゲヘナのスパイ?」
「雷電にも探ってもらおう。僕たちも、まずは歴史を知る必要がありそうだ。」
「あした、図書館に行こう。」
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そして、少し前。ゲヘナ学園の医務室にて。
「…全員、かなりの重症です。それも執拗に、
救急医学部、部長のセナが怪我人の治療に追われていた。
「……これで全員でしょうか?」
「いえ、被害者のほとんどは一般市民です。別の病院に搬送されていますが……何故、このようなことに。」
「…最近、他の自治区でも不審者の目撃情報が出回ってますもんね…」
あちこちの自治区で、夜間の不審者出没情報が出ていた。
ヴァルキューレが巡回を強化しているそうだが、それでもなんとなく、心もとない。
…というより、セナには何か悪い予感がしていた。
「……骨折ですね。全治3日です。」
怪我人の中には足の骨を折った者もいた。
多くのゲヘナ生は授業をサボる理由ができた、と喜ぶものだが。
今回は違った。精神的な疲弊やショックの傾向がある生徒が少なくなかった。
何があったか聞こうにも、ある生徒は恐怖、ある生徒は疲れから上手く説明できない。震えて発声ができなかったり、呂律が回らなかったり。
「先生も、ご協力ありがとうございます。」
この事態が
「…何?重症の生徒が?……。」
「…条約の反対派、とか?」
「それも有り得るが……」
雷電は、イブキとイロハと遊んでいた。
彼は最近、イブキを可愛がっていた。人の親なのだから、なおさらだろう。
「……マコト先輩とサツキ先輩、何のお話してるのかな?」
「……気になるよな。ちょっと聞いてくる。」
「最近、他の自治区でも不審者が出てるっていうじゃない。
私も情報部長として見逃せないわ。」
「風紀委員に警備を増強させよう。」
「何の話だ?」
雷電がズカズカと割って入る。オブザーバーとして。
「…先生か。いや、さっきうちの医務室に怪我人が5人ほど運ばれてな。その話をしていたところだ。」
「状態は?」
「命に別状はないそうよ。一番重い怪我で骨折。全治3日よ。」
「3日?」
「……ああ、キヴォトスだからか。」
「風紀委員に敷地内の警備と、自治区内巡回警備をさせる。まずは様子見だ。」
「(…この間予算を削減してたのにか?)」
雷電は顔をしかめながら、引き続き話を聞いていった。
すっっっっごく長い期間空いてしまってごめんなさい!