BlueArchive SOLID   作:Roon

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MISSION LOG

試験の結果、補習授業部は活動の続行が決定した。
その日の終わり頃、スネークは生徒会(ティーパーティー)ホストのナギサへの定期報告へ出向く。
そして、彼の目的も別にあった。



水面下

 

護衛(ガード)が部屋の扉を開けた。

 

 

「あら、先生。お疲れ様です。」

 

「そっちもお忙しいようで。」

優雅に駒を動かすナギサ。彼女の側が白、対する側が黒。

白のルークが黒のポーンを獲った。

 

「チェスか?」

 

「ええ、趣味なんです。」

 

駒の種類が、一般的なものとは違うのがわかる。珍しげに見るスネークに気づいたのか、ナギサも説明を付け加えた。

黒はキングとクイーン、ポーン。

白はキングとルーク、ビショップとナイトが三〜四個の構成。

 

非対称な面子(めんつ)が、一つの盤上で合間見える。

 

 

「…何か言いたげですね?」

 

「本題に入ろう。」

「補習授業部のことだ。」

 

 

「お話は聞いています。第1次試験は上手く行かなかったようですね。」

 

「なら話は早い。…もし、テストを3回ともパスできなかったらどうなる?」

 

 

ナギサは少し間を空けて、言葉を選んでいるようだ。

 

「小耳に挟まれたのでしょうか?出処は…ヒフミさん、ですかね。」

それでも、彼女はヒフミのことを肯定した。

話を戻して、答えが返ってくる。

 

 

「簡単なお話です。」

「不合格を繰り返す…つまり落第を免れない、助け合うこともできない……ならば皆さん一緒に、退学していただくしかありません。」

 

 

「……!?」

 

補習授業部(あそこ)は生徒を退学させるために、長い退学手続きを省略できるように設定させた部だという。

その権限はシャーレによるものだ。

介入した時点で、人物たちは利用されていた。

 

「何故そんなことを!?」

 

 

「……あの中に。トリニティの裏切り者がいるからです。」

 

「その"裏切り者"を排除するために?」

 

「その通りです。」

 

 

『裏切り者』……何者かは分からないが、エデン条約締結阻止を目論む生徒。

締結の暁には、有事の際にエデン条約機構(Eden Treaty Organization)…トリニティとゲヘナが一体化した組織が介入することになる。利害一致による協力。

 

しかしその機構がダウンすれば、両陣営に甚大なダメージが及ぶ。それが狙いだろう、とナギサは語る。

 

 

「罪のある人を正確に裁くのは困難なことです。罪状の把握から罪人とその居場所の特定。……あってはいけないことですが、冤罪だって有り得ます。」

 

「であれば。」

「容疑のある人を一つの『箱』にまとめます。」

「そしていざという時、中身をまとめて捨ててしまうのです。」

 

「…それが『補習授業部』です。」

 

 

「じゃ、他の生徒はどうなる?冤罪で、学籍も無しに野ざらしか?」

スネークの主張は最もだ。

捨てられた生徒に対して、責任を取れる訳でもない。

 

 

「…ごめんなさい。先生。」

「こんな血なまぐさいことに、あなたを巻き込んで…私のことは、罵っていただいて構いません。」

 

「………」

それ以上、彼が意見することは無かった。

 

黙っていたオタコンが静寂を破った。

 

 

「質問をいいかな。」

 

「どうぞ。」

 

 

「君が権限としても、人としても僕らを利用するつもりなら、どうして僕たちに計画を?」

 

 

ナギサが流石だと言わんばかりに、話を再開した。

 

「仰る通りです。そこまで理解されているならお話は早いですね。」

 

 

「お願いがあります。先生方。」

 

ナギサが立ち上がった。

 

 

「…補習授業部にいる裏切り者を、探していただけませんか?」

明確な目標だった。

 

裏切り者がいれば、トリニティとしての上層部や印象への被害だけでなく、人的被害の発生は免れない。

そして、それはなんとしてでも避けたい。

 

裏切り者を、探す必要がある。

 

 

 

 

「なら、俺たちからも『お願い』がある。」

 

俺たち(シャーレ)俺たち(シャーレ)のやり方でやらせてくれ。」

 

 

 

「…そうですか。」

 

部屋から出ていこうとする二人が呼び止められた。

 

 

「ですが。ゴミを細かく選別するのが難しい場合、箱ごと捨てるというのも手段の一つ……そうは思いませんか?」

 

スネークは足を止め、オタコンは振り返った。

 

明らかに、『勝手なことをすると…』という脅しだ。表情にこそ感情が出ていないが、言葉の節々から苛立ちのような、強い気持ちが窺える。

 

続いて出た内容は『試験は私の命令次第で【会場】【難易度】【時間】…等を自由に変えられる』ということだった。仄めかしていたが、つまりこういうことだ。

 

 

明らかな脅迫だが、ここで歯向かえば生徒にしわ寄せが行ってしまうかもしれない。

 

二人は改めて、部屋を去った。

 

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

 

「…政治家は毎度卑怯な手を使う。」

 

「明らかに、生徒を人質に取った脅迫だよ。」

 

 

二人は愚痴をこぼしながら、廊下を歩いていた。

 

「…裏切り者か。」

それとなく、目星はつけていた。

 

アズサ、もしくはハナコ。

 

コハルには()()()()ことができると思えない。悪い意味ではないが、純粋すぎる。

 

ヒフミはそもそも『こちら側』。ナギサが計画を伝えたうえで部長としてここに居るのだから、あり得ないだろう。

 

 

 

「…裏切り者はゲヘナのスパイ?」

 

「雷電にも探ってもらおう。僕たちも、まずは歴史を知る必要がありそうだ。」

「あした、図書館に行こう。」

 

 

─────────────────────

 

 

 

 

そして、少し前。ゲヘナ学園の医務室にて。

 

 

 

「…全員、かなりの重症です。それも執拗に、SMG(サブマシンガン)や小銃を連射されたような……」

 

救急医学部、部長のセナが怪我人の治療に追われていた。

 

 

「……これで全員でしょうか?」

 

「いえ、被害者のほとんどは一般市民です。別の病院に搬送されていますが……何故、このようなことに。」

 

「…最近、他の自治区でも不審者の目撃情報が出回ってますもんね…」

 

あちこちの自治区で、夜間の不審者出没情報が出ていた。

ヴァルキューレが巡回を強化しているそうだが、それでもなんとなく、心もとない。

…というより、セナには何か悪い予感がしていた。

 

 

「……骨折ですね。全治3日です。」

怪我人の中には足の骨を折った者もいた。

 

多くのゲヘナ生は授業をサボる理由ができた、と喜ぶものだが。

今回は違った。精神的な疲弊やショックの傾向がある生徒が少なくなかった。

 

何があったか聞こうにも、ある生徒は恐怖、ある生徒は疲れから上手く説明できない。震えて発声ができなかったり、呂律が回らなかったり。

 

 

「先生も、ご協力ありがとうございます。」

 

 

 

 

 

この事態が万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)へ伝わるのに、時間はかからなかった。

 

 

 

 

「…何?重症の生徒が?……。」

 

「…条約の反対派、とか?」

 

「それも有り得るが……」

 

 

 

雷電は、イブキとイロハと遊んでいた。

彼は最近、イブキを可愛がっていた。人の親なのだから、なおさらだろう。

 

「……マコト先輩とサツキ先輩、何のお話してるのかな?」

 

「……気になるよな。ちょっと聞いてくる。」

 

 

 

 

「最近、他の自治区でも不審者が出てるっていうじゃない。

私も情報部長として見逃せないわ。」

 

「風紀委員に警備を増強させよう。」

 

「何の話だ?」

雷電がズカズカと割って入る。オブザーバーとして。

 

 

「…先生か。いや、さっきうちの医務室に怪我人が5人ほど運ばれてな。その話をしていたところだ。」

 

「状態は?」

 

「命に別状はないそうよ。一番重い怪我で骨折。全治3日よ。」

 

「3日?」

「……ああ、キヴォトスだからか。」

 

 

「風紀委員に敷地内の警備と、自治区内巡回警備をさせる。まずは様子見だ。」

 

「(…この間予算を削減してたのにか?)」

雷電は顔をしかめながら、引き続き話を聞いていった。

 

 

 

 

 

 





すっっっっごく長い期間空いてしまってごめんなさい!
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