MISSION LOG
アズサを尾行し、彼女が武装した集団を関係している可能性を知ったスネーク。
その翌日、模擬試験を終えたところに…
「…………」
オタコンがコハルに付き添い、正義実現委員会へ
スネークたちの部屋に、乾いたノックが響いた。
「入れ。」
「……私だ。」
アズサがそっとドアを閉めると、椅子に腰を下ろしたスネークを見下ろす。
「……きのうの夜。」
「…私のことをつけていたのは、先生?」
「………」
沈黙は答えになってしまう。スネークは口を開こうとした。が、何も話せない。
「私は、このことをずっと考えてた。」
「それに。」
「あれがデイビッド先生だったことは知ってる。…」
迂闊な行動をした。スネークはそう悔やんだ。
彼女の無実を追い求めるあまり、足元を見落としてしまった。
見つかって発砲された段階で、ある程度の想定はしていたが。
「先生には、危ない目に遭ってほしくない。」
「あなたたちは、……きっと、いい人だから。」
「あの子たちを制圧するのに使ったのも麻酔弾だった。」
深入りしないよう止められることも考えてはいたのだが、理由がなんとも、個人的な言葉に聞こえた。
「…君が?」
「私も、ここまで来たら隠す意味は無いな。」
「私が。」
「
スネークは信じることにした。
今までが演技だとも思えない。
日頃───といっても、出会ったばかりだが。───見ていた彼女の性格言動は、『素』そのものだったのだろう。
彼女自身も、未だ直感でしかないが『この人は信用できる』と感じていた。
「アズサ…」
「先生は私を、ティーパーティーに突き出す?それとも、拷問を?」
「そんなことはしない。誓おう。」
スネークは食い気味の否定をした。
今できることは、彼女からできるだけ多くの情報を引き出すこと。
そして、彼女を守ること。
彼らは彼女たちを守らなければいけない。疑り深いナギサの手から、血なまぐさい政治事から、アズサを。
そしてヒフミを、コハルを、ハナコを。
「………騙すようなことをしてごめん。」
「後をつけたのは俺の勝手だ。君の『裏切り』の証拠にはできない。」
「詳しく聞かせてもらおうか。」
「それは………できない。」
「なぜ?」
「……」
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数日前に、彼が借りた歴史書で読んだ内容には少しだけ被っていた。
が、トリニティ視点のアリウスは一貫した『敵』『悪』であり、それ以上の描写は無かった。
他にも敵対した分派があったようだが、それらはほとんど全滅したらしい記述だった。
アリウスは
正式な学校としては認められていない。
大昔、「第一回公会議」と呼ばれる
争っていた大小様々な勢力は和解の方向に向かい、トリニティ総合学園として生まれ変わろうとしていたが。
経典の解釈が違った「アリウス」はその共同体に加わるころができず。
それどころか「トリニティ」は一方的にアリウスを攻撃した。
場所を失ったアリウスは、歴史表舞台から姿を消した…
アズサは、スネークを信じた。オタコンを信じた。
信じてみたかった。
本来彼女は尋問に対する訓練も受けている。それでも、全てを明かそうとしている。
「…ある時、その人が現れたんだ。」
「その人?」
彼女が声を震わせた。
「ベアトリーチェ。」
「彼女が、アリウス自治区の争いを治めた。そのアリウスにリーダーとして君臨したんだ。」
彼女が、諸悪の根源か。スネークが確信しかけたその瞬間。
「それと」
「少し…たぶん、先生がシャーレに来るより前。」
「シアーズっていう大人がやってきた。」
シアーズ。
随分聞き馴染みのある名前だ。
しかしその名前から、スネークとの脳が弾き出したのは。
かつて、内戦中だったリベリアで多数の少年兵と、『白い悪魔』こと『ジャック・ザ・リッパー』──雷電を生み出し、呪った男。
後の時代にも使われることになる、少年兵育成プログラム『シアーズプログラム』を産んだ。
そして、彼のような男が度々、ミレニアムや他の自治区にも出没していたのだ。
もしや、それも。
「彼は何を?」
「ベアトリーチェの補佐を。」
「……拷問も担当してる。」
最悪の事態。ソリダスがアリウス自治区にいることが、ほとんど確定した。
「……デイブ先生は、彼に似ていた。でも違った。」
「……。」
「私は、……」
「もう大丈夫だ、アズサ。ありがとう。」
生徒を巻き込む訳にはいかないと言っておきながら、こんな事態になってしまった。
スネークは自分の考えの甘さを悔いた。
そして、ベアトリーチェは甘かったようだ。
スネークがこんなにも早くたどり着くことを想定していなかった。
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同時刻 アリウス自治区 第一工廠
「……使えん。」
男は工廠の小部屋から出ると、後始末を生徒に任せた。
「
「……ユイか。」
『親衛隊』隊長、三個小隊を率いるリーダーである彼女は、彼の側を常に護衛している。
「……アポストロスの完成度は?」
「七割ほどです。外装はほとんど完成しています。武装の取り付けが難航している状況です。」
「そうか。」
工廠には、大型兵器の大きな部品が転がっている。
アリウスには似合わない服装の怯えた少女たちが、作業をする生徒たちに指示を飛ばしている。
さっきの小部屋には、同じような格好の少女が静かに横たわっている。
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その日の午後11時前、オタコンとコハルが帰ってきた。
というより、オタコンはコハルに抱えられて。
その日のうちに、スネークはアリウスについて調べることを決めた。
そうして、図書館へ赴くためにナギサ宛の申請書を書き始めた。
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