BlueArchive SOLID   作:haaru

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銃口

 

 

 

「何、が……!?」

 

 

瓦礫の山。古聖堂の半分ほどが崩れ落ち、周囲はもっと甚大な被害を受けている。

スネークの瞳、もしくは脳内に一瞬、木の人形の幻影(ファントム)が映った。

脳しんとうの症状なのか、本当にそこに居るのか判別ができないが、呼ばれる声で意識に掛かるモヤが消えた。

 

 

 

 

「先生!無事───です、か!?」

「アロナ…」

 

『今ので随分バッテリーを使ってしまって…!私はもう持ちません、…──────』

 

スクリーンが暗転したきり、言葉が続くことは無かった。

 

 

 

 

 

「……作戦失敗だ。」

 

苦虫を噛み潰したような顔つきで、力無く呟くオタコン。

 

 

「…状況を把握しよう。動ける?」

「移動は問題ないが、肩が外れたらしい。左腕が動かん。」

 

 

スネークは右腕で銃たちの存在を確かめた。

視界は確かだ。

 

 

 

 

 

 

「えっ……?」

 

 

 

 

 

「ハスミ?」

 

「先生…どうしてここに?」

 

 

ハスミはスネークの存在と、罪の有無を疑っていた。

彼女の知る先生はそのような事をしない。しかし事実として発表されている。指名手配まで。

 

 

 

「……怪我人は?」

「大半の生徒が重症です。今は私たちのような動ける者で応急処置をしています。」

 

「せ、先生……!?」

ハスミを追いかけてきたのは、正義実現委員会委員長、剣先(けんざき)ツルギ。

見開いた目の視線が彼と合ってしまい、何が恥ずかしいのか顔ごと背けた。

 

 

彼女たちも無視できない怪我をしている。チラチラと見える裂傷や挫傷が痛々しかった。

スネークは己の無力さを嘆こうとしたが、そんな暇あるわけがない。

 

 

 

 

 

「…俺を攻撃しないのか?」

 

「人命救助と防衛が先でしょう。念の為警戒はしますが。」

 

 

 

 

 

 

 

「………オタコン?」

 

「みんな。…あそこに!」

 

かなり距離はあったが、手のようなものが見えた。

どうか生きていてくれと心から祈って、おぼつかない足駆け寄った。

 

そこにいたのは、頭から血を流すアユムがだった。

 

「……まだ息がある。何か布は?」

「ここに。」

 

彼女は同時に、後ろに迫る気配に気付いた。

スティンガーを抱えてボソボソと口を動かしている少女が、こちらの命を狙っていることは明らかだ。

 

 

「スネーク、指揮をお願い。僕はアユムを見てるから。」

「……任せた。」

 

FIM-92、スティンガー地対空ミサイルは、本来武装ヘリ(ガンシップ)や大型機への攻撃に使われるような武器だ。決して普段使いするような装備ではない。

しかしキヴォトスでは、迫撃砲や電磁砲を携行する生徒が当たり前に暮らしているのだ。

その銃口が向いている。

 

 

 

青白い光を放ちながら迫る影は、聖職者のような格好をしている。

手には随分古そうな型の突撃銃や機銃、榴弾発射機(グレネード・ランチャー)まであった。

 

いつの間にか、この場が冬場のように冷たく感じた。

 

 

「ツルギ、俺の指示通りに移動。ハスミは援護を。」

 

「了解。」

「承知しました。」

 

 

 

ツルギが二丁の銃、ブラッド・アンド・ガンパウダーを振るいながら軽快に幽霊を撃っていくが、キリがない。

 

 

スネークが左手を震わせながら、ミメシスに発砲した。

ダメージこそ受けるようだが、消滅しても直ぐ次が来る。そうして包囲が厚くなっていくのだった。

 

そしてその時。

 

 

 

 

 

二射目である。飛翔音が聞こえた時には既に遅く、彼らの傷は増え、深まる。

 

着弾地点は離れていたが、それでも爆風が顔を叩いた。

 

 

「……ハスミ…アユムを運んでくれ。」

「ええ。……っ!?」

 

 

ハスミが咄嗟にスネークを守った。盾代わりの翼は地面に垂れ、ハスミが顔を歪める。

 

 

「狙撃まで……」

 

 

 

 

 

 

 

アユムの瞳に映る景色は歪んでいた。薄暗く、見下ろせる限りの自分の身体が赤い。

どこも痛くない。頭から血が流れているのだろうが、詳細が一切分からない。

 

抱えられているらしいことは辛うじて把握できたが、胸騒ぎが止まらず落ち着かない。

 

 

「ぅ………せん、せ、いや、…?」

 

「動かな─────さい。────安心な場所、まで」

 

 

 

 

思考すら回らない。

やっと掴んだ意識を、身体に任せて離してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…俺が行く。」

 

「スネーク!」

「先生!!」

 

「……今君がやられたら、いよいよ収拾がつかない!!」

「今あなたが倒れては、いよいよ収拾がつきません!」

 

 

変わらずスティンガーを構える『アリウススクワッド』のミサキという少女は、その場の全員に発砲を命令した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うああああああああああああああっ!!!!!!!」

 

 

獣のような雄叫びと共に、その場のアリウス陣営が予想外の弾を食らった。

 

 

 

「先生!こっち!!」

 

「ヒナ……」

 

 

こちらも負傷しているが、未だそれなりに動けるレベルだ。空崎ヒナは彼の手を引いて退くことを促す。

 

 

「オタコン、二人とアユムを頼む。」

 

…スネークは狙いが自分だけであることを悟った。

ならば促す通り離れるまでだ。

痛む肩で銃を構え、緊張の糸で意識を縛りつけることを選んだ彼。

 

 

 

 

 

 

「先生、あなたは……!」

「…無実だと言ったら。」

「信じるわ、私たちも疑っていたから!!伏せて!」

 

ヒナの射撃で数人倒れた。

 

 

 

 

 

ノーモーションでできることといえば体内通信だ。

手当り次第の周波を試みる、

雷電、オタコン、アロナ、アズサ……

 

 

 

 

「どうして俺を助けた。」

「あなたを疑えなかったから…」

 

「マコト達は、あなたたちを切り捨てたようだけど…風紀委員会は、半信半疑だった。」

 

 

特にヒナ、チナツ、イオリ。関わりの多さというより内容の濃さだろうが、彼らの一貫した意思を近くで見ていた。

そして万魔殿にも、そういう者は少なからず存在した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トリニティ自治区 会場近くの湖

 

 

 

 

 

「イブキィーーーーーー!!!どこに行ったんだぁーーーーーーー!!!」

 

「マコトちゃん、今動くのは危険よ!ここで私たちも場所が分からなくなったら……!」

 

 

「………ねえ、あれ…見えるかしら。」

「どれだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ボートか!!」

 

未だ残骸の火が消えない湖上に、マコトとサツキは漂っていた。

鉄板にしがみついて浮かんでいるが、時間の問題だ。

 

 

 

「おーい!誰か乗ってるか!?」

 

 

 

 

「……」

 

運転席から水面を見下ろすジャック。同乗のイロハ、イブキ、サツキ。

 

 

 

 

 

「ゲッ…!!」

 

「……あの飛行船、いつ造った。あんなのプランに無かっただろ。」

 

「……それが何だ?テロリストよ。」

 

 

 

「……ジャック先生、まずはお二人を引っ張り上げましょう!?」

「そうだな、ロープを出そう。」

 

 

二人はボートの座席に転がった。

 

 

「はぁ……あぁ…」

サツキは上着を脱いで、ボートの縁に寄りかかる。

緊張が解けたのだろう。

 

 

 

 

「イブキ、無事か!?」

「うん!先生が見つけて、イロハ先輩も助けてくれたの!」

「そうか……」

 

 

連邦生徒会の本拠地襲撃犯が、ゲヘナの生徒会役員を救助した。なんとも訳の解らない状況だが、ただ一人。

 

ただ一人、真相を知っている者がいる。

 

「あの飛行船を手に入れたのはいつだ?」

 

「えっとね、先週の水曜日!」

「そうか……ありがとう、イブキ。」

 

雷電の瞳が光る。

 

 

「色々答えてもらおうか。」

 

 

 

羽沼マコトは、諜報の結果それを知っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ヒナ、聞こえるか。」

「…いえ、何も。」

 

「何か来るぞ、急ごう。」

「………本当ね、私も感覚が鈍ってるみたい。」

 

 

スネークの視界は鮮明さを取り戻していた。

オタコンとの通信を何度も試みるが、成功はしない。

 

悪夢でも見ているような気分がした。

 

 

 

「!」

 

 

 

「遅かったな。ソリッド・スネーク。」

「…?先生。」

 

アリウススクワッド、錠前サオリ。

彼女についてスネークは知る由もないが、かつての暗(・)号(・)名(・)を知っているらしい。

 

ソリダスの入れ知恵だ。

 

 

「ヒナさん…、まだ動くんですね…やっぱり……」

「……」

 

終幕:デストロイヤーから血が滴る。スネークを庇うように立っている姿が痛々しかった。

 

 

 

「早いね。」

「……」

 

この場に揃った、揃ってしまったスクワッドは微動だにしない。

作戦があることはとっくに見越しているが、内容なんて分からない。

恐らくヒナが彼を守ろうものなら、二人まとめて総攻撃に遭う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いつ以来だ、兄弟(ソリッド)。」

 

「貴様!?」

 

 

黒い強化外骨格、蛇のように蠢くマニピュレーター、そして、その顔。

ビッグボスの完璧なクローンらしく、子にもよく似ている。

 

 

 

 

「………あなたが演説の?」

 

「勘のいい子だ。」

「サオリ。」

 

 

 

ソリダスの命令と共に、ミサキがヒナに掛かる。

格闘とまで行かないが、銃身での殴打と蹴りが効いている。

 

慕う先生を守ろうと身体を起こすばかりで、銃はとっくに離してしまった。

 

 

「ッ……あぁっ…先生!!」

「前を見なよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒナが抑えられた。

あれだけの出血でなお、立っているだけでも充分凄いのだ。

肉体には必ず限界がやってくる。

 

 

「やはり先制攻撃に限る。風紀委員長のようなプロもまとめて抑えられるのは手間が省けて良い。」

 

 

ソーコムは大人しく、重力に従った。

 

 

 

 

「子供の扱いは私の方が上手い、お前には向いていないだろう?」

 

「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さらばだ、兄弟。」

 

「…」

無線を起動した。

 

 

 

 

 

「サオリ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Mission Failed

[Continue] Exit

 

 

 

 

 

「───スネーク?スネーク!?」

 

「…そんな……!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ………ぁ…ぁっ…」

 

二回の閃光が、ヒナの精神を蝕んでいく。

彼女の強靭さに由来する強い意識が、その景色を鮮やかなスローモーションで映した。

 

「うぅああああ゛あ゛あ゛ぁぁぁあああああ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───様!」

 

 

「あなた様!!!」

 

 

 

 

 

 

 

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