The Deadly Pride ~不遇悪役貴族に転生した俺は大罪魔法『傲慢』で最強へ至る~   作:嵐山田

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第百二十六話 アゼクオンVSグランダル⑫

「サ、サン? 一体どういうことなの?」

 

 サンの発言に一番驚きを示したのはクインだった。

 

「そのままだよお姉ちゃん。この黒竜さんは私の兄さんらしいの。まあ、お母さんは違うんだけど」

 

 そんなクインの質問にサンは淡々と答えた。

 なんだか話し方が少し大人っぽくなったのは気のせいだろうか?

 

「なるほどな。サンが確かめたかったのはそれか?」

 

「うん、何となく知ってる感じがしたから」

 

 そうか……だとすると、少し悪いことをしてしまったな。

 無論、後悔はない。

 あの場ではこの竜を斬ることが最適で最良の選択であったことに間違いはない。

 だが、それとは別にサンにとって俺は親族殺しの仇になってもおかしくはない。

 

「……丁重に弔ってやらなければな」

 

「うん! ありがとお兄ちゃん。あと、兄さんが支配から解放してくれて、苦しみなく逝かせてくれて感謝している、って伝えてくれって」

 

 俺の内心を見透かしてか、それとも天然か、完璧な対応を見せるサンには正直頭が上がらない。

 さっきまでは俺に抱きかかえられていたと言うのに……ドラゴンハートの吸収で成長したのか?

 

「それから、さっきお兄ちゃんたちが言ってた通り、鱗とかを剥ぎ取られたりしてたんだって。私、家族ってお母さん以外知らないけど……もし兄さんみたいな兄弟がいるなら……」

 

 サンはそう言ってギュっと強く拳を握る。

 母の死にあれだけ感情を暴走させていたサンだ。

 おそらく家族へ駆ける想いは相当に大きいのだろう。

 それに――

 

「ああ、もちろんだ。サンの家族ならばそれはもう、俺の家族も同義。……まずはグランダル領だ。近衛に任せようとも思ったが、そう言うことならば俺たちで出向くぞ」

 

 俺だって身内に害をなそうというならば、手は抜かない。

 例え、血のつながりがなくとも、種族が違おうとも、関係ない。

 それは俺の、ファレス・アゼクオンとしてのプライドだ。

 

「お兄ちゃん!」

 

 俺がそう言うとサンが嬉しそうに飛びついてくる。

 少し口調は大人っぽくなったような気もするが、彼女の頭は変わらず俺の心臓の少し下あたりまでしかない。

 こんな小さな妹にあんな顔はさせたくない。

 俺はサンを安心させるべく、猫でも撫でるようによしよしと頭を撫でた。

 

 なぜか背後から鋭い視線を感じたが、今回ばかりは見逃して欲しい。

 

 ◇◇◇

 

「……と、言う訳でグランダル領へ調査に入ろうと思っております」

 

 サラのメイドマジックで黒竜の死骸を回収した後で、グランダル家の魔道具制作についてやその他もろもろを王城の役人にも伝えておいた方がいいと思い、通りすがりの近衛騎士に声を掛け、案内を頼もうと思ったのだが……。

 なぜか「陛下に直接お話ください」と言われてしまい、数時間も経たないうちに俺は再び陛下の前に跪き、事の顛末を話していた。

 

「ほう……? 魔道具の制作……か。確かにグランダルの熱量は凄まじい物であったな。奴らならばあり得るのかもしれんな」

 

 皇帝は俺の報告を珍しく神妙な面持ちで聞いている。

 さすがの皇帝も魔道具の制作という超技術には驚いたのだろうか?

 

「それで……グランダル領への調査だったな。まあ、今更お主に余の許可が必要だとも思わんが、良いだろう。余の近衛は学園の警備体制見直し等に割いているからな、むしろ騎士共が喜ぶかもしれん」

 

「ありがとうございます。……それでは」

 

 一日に何度もこの皇帝と話したくない。

 そう思った俺は話が終わるとほぼ同時に王城を後にしようとしたのだが――

 

「まあ、そう急くな。少し付き合え」

 

 何を思ったか、普段は玉座から動かない皇帝が自ら立ち上がり俺たちの横を通り過ぎるとこちらを振り返っていった。

 

「ついて来るのだ」

 

「……はっ」

 

 サラにセレスティア、クインが「どういうことでしょう?」とでも言いたげに俺の方を見てくるが、俺にだって意味が分からない。

 確かに皇帝は掴みどころの無い人だが、行動の意図がハッキリしないというのは初めてだ。

 

 しかし、相手は皇帝であり、俺たちは皇帝からすれば、いち帝国民でしかない。

 断れるわけもなく、俺たちは皇帝の後について王城の中を歩き出した。

 

 ◇◇◇

 

 連れていかれたのは、普段、近衛騎士や王城で政務を務める役人でさえも立ち入りには厳重なチェックが必要とされる皇室の生活空間だった。

 皇帝はついていく俺たちの方を振り返りもせずに黙々と目的地へ足を進めると、俺でも目を向いてしまいそうなほどに豪華な装丁が施された扉に手をかけ、声を掛けることなくその扉を開いた。

 

「……! これは、陛下……と、ファレス・アゼクオン? 一体どうして?」

 

「気にするなリヴァーシンズ大司教。して、それの容体は如何ほどか?」

 

「はい。すでに問題なく回復しているかと。……ベリル皇子?」

 

 その部屋にいたのは一人は想定通り、そしてもう一人はあまりに予想外な人物だった。

 

 皇室の生活空間である以上、恐らくベリル殿下の元へ向かっているのであろうことは察していた。

 事実、ガルドールたちと皇帝の前で話したときには見舞いに行っていいかと聞いたのは俺であるし、道中では皇帝も人の親なんだなと、意外な感想を抱いていた。

 

 しかし、もう一人は完全な予想外。

 確かに裁判では公正な判定を下しはしていたが、明らかにグランダル家側と内通していたと思われるリヴァーシンズ大司教がベリル殿下へ回復の聖魔法をかけていたのだ。

 

 ……まさか、リヴァーシンズ大司教がグランダル家側に付くことがそもそも皇帝の計略だったとでも言うのか?

 

「……その様子、既に気付かれたようですね。ええ、私はグランダル家程度の招待ではわざわざ動きません。これでもネクシア聖教国の大司教ですから。今回、私がこの国を訪れたのは聖魔法を持って、ベリル皇子を回復させることを陛下より依頼されたからでした」

 

 そんな俺の様子を見透かしたように、リヴァーシンズ大司教が話す。

 

「ふっ、よく言うわ。グランダルから賄賂を受け取っておきながら」

 

「陛下に請求するわけにもいきませんから」

 

 皇帝と大司教はそう言いながら笑い合う。

 ……なるほど。

 どうやら俺はまたも体よく踊らされてしまったらしい。

 

 もちろん、グランダル家ごときが何かした程度でこの皇帝が揺れるとは思っていなかった。

 だが、民の動きや皇室、貴族家への反感には対処すべきだとも思っていた。

 だからこそ、聖者であるガルドールまで引っ張り出して、グランダル家の悪事を表沙汰にしたのだ。

 

 しかし、この皇帝は鼻から対処すべきとすら思っていない。

 

 帝国は皇帝の物。

 臣民は皇帝の民。

 

 その圧倒的なまでの『傲慢』がそんな考えを抱かせてすらいないのだ。

 

「それにしてもガルドール様を連れて来るとは、流石の私も感服いたしましたよ、ファレス・アゼクオン。……して、陛下。彼をここへ連れて来たということは、そういうこと、ですかね?」

 

 ひとしきり笑い合ったあとで大司教は俺の方を見てそう言った。

 そして、再び真剣な目つきに戻ると、皇帝を見据えながら何かを確信するような口調で問う。

 

「ふっ、さてな? これに皇族たる素質があるのならば……あるいは大司教、貴様の思った通りになるのかもしれんな」

 

 いったい何を言っているんだと、ついていけていない俺たちを置いて、皇帝は冷めた瞳でベリル殿下を見下ろしながら、少しだけ口元に笑みを携えてそう言うと、ベリル殿下に向けて手を伸ばし、何らかの魔法を発動した。

 

 途端、ドクンッ――と、ベリル殿下の身体が跳ねたかと思えば、先ほどまで眠っていたはずの殿下が眠気などすべて吹き飛んだとでも言うかのような顔をして起き上がる。

 

「……父上、それに……ファレスせん……」

 

 ベリル殿下は起きてすぐに俺たちの方を見て、言いかけた口を(つぐ)む。

 

「ベリルよ。寝覚めはどうだ? 皇子として、すべきことは分かっているな?」

 

 そんな殿下に皇帝はまるで心を感じない、あくまで皇帝としての言葉を投げかける。

 一体、病み上がりの殿下に何をさせようと言うんだ?

 

「……はい。父上……いや、皇帝陛下」

 

 そんな皇帝に対し、ベリル殿下も同じく皇子として対応すると、ふらつきながらもなんとかベッドから立ち上がる。

 そして、二、三歩ほど進み出て、俺の前までやってくると言った。

 

「……ファレス・アゼクオン。僕は僕自身の意志を持って、帝国第一皇子及び帝位継承権一位の位をあなたへ譲位する」

 

 ベリル殿下がそう言った瞬間、皇帝とリヴァーシンズ大司教がにやりと微笑むのが分かった。

 

 そして、少し遅れて……

 

「「「「は?」」」」

 

 サン以外の俺たち四人の頭上にありえない数の? が上り詰めた。

 




ちょっと情報密度の濃い回になってしまいました……。
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