The Deadly Pride ~不遇悪役貴族に転生した俺は大罪魔法『傲慢』で最強へ至る~   作:嵐山田

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第二十四話 皇帝の招待

「さて、そろそろ出るとしよう」

 

 王都到着の翌日夕方、父のその一言で俺たちは三度馬車に乗った。

 

「……?」

 

 座り方は領からこちらへ向かうときと変わらず、父と俺、サラが向かい合っている形だ。

 ただ、こちらへ向かう時と比べて俺とサラの間の距離が若干広くなっている。

 

 これにはあの父も気が付いたのか一瞬怪訝そうな目でこちらを見てきたが、気が付かないふりをしておいた。

 

 まあ、サラはきっと泥酔しても記憶はきちんと残るタイプなのだろう。

 

 ◇◇◇

 

 今日の目的地は謁見の間ではなく、普段、国の役人やら要職者が檄を飛ばし合い、議論をし、考えを高めあっているいわば会議室のようなところらしい。

 なぜ、そのようなところに行かなければならないのか?

 そんなたくさんのお偉方に会いたくないのだが……まだ学園に通ってもいなければ、十二歳にもなっていないため社交界デビューをしている訳ではない俺だが、その悪名は轟いている。

 よほどの情報収集下手か他家に興味のない家でもない限り、ファレスのことをよく思っている人は少ないだろう。

 ……一体本当に何用で呼ばれているんだ俺たちは?

 

 一歩、また一歩と目的地に近づいていく度に重くなっていく足を何とか動かす。

 ちなみに馬車ではあれだけ恥ずかしがって小さくなっていたサラだが、昨日に続いてエスコートしてやると、途端にご満悦。

 年相応のにこにこ笑顔でとても癒されます。

 

 あれこれ考えているうちに、それっぽい雰囲気を放つ扉の前についてしまった。

 いや、ほんとに、おおやらかしをして職員室に呼ばれるときのあの感じと、でも言えば伝わるだろうか? 死地に飛びこむってきっとこういう感覚だ。

 

 だが、そんな俺の内心など一切伺おうともせず、普通に扉を開けて父はずんずん中に入っていく。

 

 ……腹を括れ。俺は何もしていない。

 何を言われても、相槌だけ打って、華麗に躱し切ってやる。

 それでいて、お偉方からの俺に対する評価を改善方向に持って行けるような、誠実な態度を心がけよう。

 

 父に続いて、部屋に入る。

 サラのエスコートはさすがに部屋の前で一度やめておいた。

 

 会議室と言うにはどう考えても広すぎる小ホールのようなその部屋には、明らかに風格の違う御仁たちが勢ぞろいしていた。

 そして上座には当然のように皇帝がおり、値踏みするような視線でこちらを眺めていた。

 

 ……ゲームではあまり見たことのない顔が多いな。

 分かるのはエドワード・エバンス伯爵と騎士隊長グレイグくらいか?

 騎士隊長は内政官ばかりの中では明らかに浮いているが、いったい何の理由でここにいるんだ?

 

 そんな顔ぶれの座る最後の席に父が座り、全員の視線がこちらを向いた。

 

 ……。

 

「帝国の太陽、モラク・ルー・グラーツィア陛下、その下で帝国を支える星々の皆様にファレス・アゼクオン並びにサラ・エバンスがご挨拶いたします。本日は御招待に預かり光栄の極みであります」

 

 俺の挨拶に合わせてサラも膝を付き頭を垂れる。

 本来はサラも自分で挨拶すべきなのかもしれないが、昨日皇帝の前でサラは自分の物発言をしてしまっている手前、そうもいかず、俺が二人分を名乗った。

 

「うむ、余の招待に応じてくれたこと、感謝するぞファレスよ」

 

 想定通り、皇帝は俺だけを名指ししてそう言う。

 

「感謝など……私には過ぎた言葉です。こうしてご拝謁の機会を頂けたことのみでも私が感謝するべきでしょう」

 

 これだけの人の前ではさすがに(ファレス)の傲慢さを見せつけるわけにはいかない。

 あくまで粛々と対応していく。

 

「世事は良い。……さて、面を上げよ」

 

「はっ」

 

 膝を付いたまま、顔だけを上げる。

 

「では、ファレスよ。一つ問おう。先の余の生誕祭中、国全てを襲った災害のことはわかるな?」

 

「はい、地の揺れとでも言うかのような現象をアゼクオンでも感知いたしました」

 

 ……地震の話? それがどうかしたのだろうか?

 余計にこの場のことを図りかねる。

 あれは完全に自然災害だった。

 ならば俺が呼ばれた理由は……?

 

「うむ。だが、アゼクオンでは死者が出なかったと聞く。余に上がって来た報告ではアゼクオンの名の下に迅速な対応が行われたことが功を奏したと聞いた。これは真か?」

 

 ……なるほど? これはあれだな。

 俺の対応が早すぎたせいで、逆に疑われているパターン。

 確かに、これまで悪評だらけだった悪役キャラが有事にはその片鱗を感じさせないカリスマを発揮し、自領の被害を最小限にとどめて見せたなんて御伽噺みたいなこと、自作自演を疑われるのもしょうがない。

 ただ、十二歳にも満たない子どもの力だけで帝国中に被害を及ぼす大災害を発生させられるとも考えられず、こうして皇帝の招待という形で俺を詰問するというわけか。

 

 周りの風格ある大人の中に騎士隊長がいるのは、万一俺がそれだけの何かを扱える場合に首を落とすためだろう。

 

 まあ、帝国の騎士隊長って死ぬほど強いからね。

 きっと全盛期のレド師匠よりも強いんじゃないだろうか?

 まあ、そんな設定のせいでレドと同じくほぼ名前だけの登場に留まっていたが。

 

 さて、狙いが分かってしまえばあとは簡単だ。

 

「僭越ながら本当のことです。当主不在の中、領を治める一族の人間としてすべきことをせねばと必死でした」

 

 謙遜や誇張は必要ない。

 あったことすべてをそのまま包み隠さず話してしまえば良いんだ。

 無論、周りへの配慮はするが。

 

「ほう。その対応はどこで学んだ?」

 

「幼いながら、父の背を見て育ちましたので、学んだというよりはこの身に刻みついていたものが有事に自分だけというある種の極限状態で発揮されたのかと……」

 

「だ、そうだが? どう思う、エドワードよ」

 

 俺の発言をつまらなさそうに聞いた皇帝がエドワード伯爵へ話を振る。

 

「……信憑性に欠けるでしょう。これまでの行いや発言などを鑑みるととてもそんなことができるとは思えない」

 

「ほう? 余の記憶が正しければ、ファレスはまだ社交界に出ていないはずだが?」

 

「……私にそのあたりの常識を問われても困ります陛下。それが仕事ですので」

 

「はっはっ! そうであったな! して、エドワードよ。信憑性がないと言うならば、此度の件どうする?」

 

 皇帝だけが楽しそうな会話が続いていく。

 そして、おそらく今回の本題に話が移行した。

 

「そうですね。もう一度実力を示させるのが最も正当な手段でしょう」

 

「と言うと?」

 

「まず、この場で魔法を使わせ、災害を起こすことが可能かどうかを確かめた後で、どこかの領へ派遣し、その対応を一任するのです」

 

「ほう。前者は良いとして、後者はどうするのだ? 候補があるのか? 他領の人間に指揮を取らせる帝国貴族がいるのか?」

 

「もちろん候補は考えてあります。指揮については陛下の名代と言うことにさせて頂ければよろしいかと」

 

「ほう。確認のためだけに余の名を貸してやれ、と? こんな子供に」

 

「はい。子供とは言え、自らをアゼクオンと名乗る帝国貴族です。仮にも陛下の名に泥を塗るような行いはしないでしょう。それに、もし不手際があった際は首を斬ればよろしいかと」

 

 皇帝とエドワード伯爵の間で、まるで()()()()()()かのように話が進んでいく。

 ……最後だけはエドワード伯爵の私怨を感じたが。

 

「ほう。だそうだが、クロフォードよ。お主はどう思う?」

 

「此度の件はファレスに一任しています。私がどう思おうと関係ないでしょう」

 

 父は完全に傍観者を決め込んでいる。

 まあ、この感じにもようやく慣れてきた。

 おそらくこれはこれである種の信用なのだろう。

 ファレスはそもそもがアレだったからね。

 きっとこれまでもこういう態度で色々を躱して来たんじゃないだろうか。

 

「ふむ、そうか。では、ファレスよ。余の名代として領の復興を務めてくれるか?」

 

 疑問形で聞かれているが、これは勅令。

 答えの選択肢は「はい」か「Yes」のみだ。

 

「謹んでお受けいたします」

 

「そうか。では、先に魔力の確認をさせてもらうとするか。精度や周りへの配慮は必要ない。持てる力を見せてみよ」

 

 さて、厄介ごとを引き受けさせられた代わりに、俺の最強への第一歩目、ここにいる人たちにはその目撃者になって貰おうか。

 

「承知いたしました」

 

 見せてやろう。

『マーチス・クロニクル』において圧倒的な力を持つ魔法の中でもさらに飛びぬけた存在の大罪魔法の力を!

 

 ふぅっと短く息を吐く。

 そして一気に魔力を解き放った。

 

 正面に座るお偉方の顔色が変わる。

 騎士隊長に関してはその手に魔力を集め、いつでもこちらを制圧できる体制を取っている。

 

「皆様、そうご警戒されずとも大丈夫ですよ。私の魔法はこれだけでは何の意味も持ちませんので」

 

 だから、それを思いっきり煽ってやる。

 もちろん俺の視線の先はエドワード伯爵だ。

 

 これから俺が見せるのはエドワード伯爵の魔法。

 

「こんなところでしょうか?」

 

 俺の『傲慢』の魔法で両手の拳に黒い炎を纏わせる。

 闇を思わせる仄暗い火が静かに、それでいて悠然と俺の意思の通りに動く。

 お手本は昨日散々見せてもらったからな。

 

「なっ!?」

 

 エドワード伯爵は驚きに声を上げ、周りのお偉方、皇帝でさえも俺の魔法には驚いている様子だった。

 

 

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