The Deadly Pride ~不遇悪役貴族に転生した俺は大罪魔法『傲慢』で最強へ至る~   作:嵐山田

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第三十三話 主従を超えた関係

 夜、普段通りの格好に戻ったクインが今日の昼の件について報告にやって来ていた。

 

「なるほど。俺の代わりに王都からの食糧支援に応じて、それを配給するのではなく炊き出しにて振る舞ったと、為政者としては素晴らしい判断だな」

 

「ありがとうございます!」

 

 俺の言葉に疑いなく喜ぶクイン。

 だが、おそらくギンカはこの成長はあまり喜ばないだろう。

 被災地での炊き出し……かなり効果的な復興支援の一つだと俺も思う。

 特に今回のような食糧支援が定期的に王都から行われる場合、ノーリスクで行うことができるのもかなりその有用性を高めている。

 

 どんなに被害にあっていようと帝国の臣民は皇帝に叛逆できないからな。

 一人で文句を呟く以上のことはされないのだ。

 

 しかし、これはあくまで政策面からの話である。

 今回、ギンカは俺を通じてクインに何かを吸収させたいのだろう。

 それはきっと対応力や自信などそういうもののはずだ。

 

 見方を変えれば今回の炊き出しというクインの判断が対応力の向上と取ることもできるだろうが、クインは貴族でも領地を持たない男爵位であり、その本領は商人である。

 政と商い、この二つは相互に依存的な関係にあるが、決して相容れない物である。

 資本主義社会ならば、その限りではないがここは身分社会。

 それも王都に皇帝を頂く貴族社会なのだ。

 

 クインには悪いが……ここは言ってやるべきか。

 意を決してクインを見つめる。

 そして口を開きかけた時、鋭い視線が右のこめかみあたりに突き刺さった。

 

 思わずそちらに視線を向ければ、そこには「その先にはクイン様自身で気づくべきです!」とでも言いたげなレド。

 

 ……まあ、レドがそう言うなら良いか。

 あくまで俺とクインは今回のノウ領復興に共同であたると言うだけの関係。

 確かに余計な口出しは慎むべきだろう。

 

「さて、クイン。喜んでいるところ悪いが早速次の仕事の話がある」

 

「はいっ! なんでしょうか?」

 

「明日の朝、ナバラという漁師に仲間を連れてここに来るように伝えてある。この街の漁師は自分たちで作った船に乗っているらしくてな……」

 

「! 造船を始められるおつもりですか!?」

 

「ああ、この地を復興するにはそれしかないだろう。スペーディア商会としても利のある提案ではないか?」

 

 正直この提案をするにあたり、今日クインが炊き出しで顔を覚えてもらえたことはかなり大きなメリットになるだろう。

 クゾームの調査が必要になった今、様子の確認等はどうしても最低限のものになってしまうだろう。

 よってクインに俺の代わりを務めてもらうことになるのだが、昨日までの自信無さげなクインではあのナバラたちをまとめ上げるのは難しかったはずだ。

 

 しかし、彼らの妻や娘たちと交流を持った今ならば、多少自信のない部分が見えたところであの強い女性陣からの援護を期待できる。

 

「はい! 精一杯努めさせていただきます!」

 

「任せる。この造船は今回の復興における最重要案件だ。少しでも何か気になることがあれば俺を頼ってもらって構わない」

 

「ありがとうございます!」

 

 こちらに来てからずっと張り切ってばかりで少し心配になる程のクインだが、その辺りのフォローはレドに任せておけばいいだろう。

 なんだかんだであの二人の組み合わせはとても良いと思う。

 いまだにどういう関係で一緒にいるのかは謎だが……。

 

「サラ、この後俺に報告や面会の要請をしている者は?」

 

「本日はクイン様で最後です。お疲れ様でございました」

 

「そうか。ではサラ、この部屋に遮音を」

 

 明日以降のノウ家訪問についての話をするため、サラに遮音の魔法を使わせる。

 

「はい……え?」

 

 俺の言葉に反射的に反応し、即座に魔法を展開するサラ。

 だがどういうわけか、少し驚いたかのような顔をしてすぐにこちらを二度見してくる。

 

「さて、サラ……」

 

 気にせず話を進めようとすると――

 

「は、はいっ、あ、あの……」

 

 何故か頬を朱に染めながら、近づいてくるサラ。

 ……何か勘違いしているな?

 

「私はいつでも準備出来ております」

 

 そして耳元まで来てそう囁く。

 ……おい十二歳。どこでこんなことを学んで来るんだい?

 ついうっかり反応しそうになる自分を頭の奥の方へ押し込める。

 

 ちょっと最近、うちのサラちゃんは色ボケがすぎる。

 これは少しお灸を据えてやるべきだろうか?

 

 というか、ここまでされた手前無視して話を進めるのは無理だし、流石にサラが可哀想だ。

 

 俺はサラの艶やかな金色の髪に手を伸ばし、撫でるように指先で遊ばせる。

 そんな俺の手に頬擦りするように顔を寄せるサラに向けてこう呟いた。

 

「先日のことがあったばかりだと言うのに……サラは我慢の効かないはしたないメイドなのか?」

 

 キッッッッッショォォォイ!

 昔血迷って買った女性向けのr-18ゲーに出てきたオラオラ系のお兄ちゃんが脳裏によぎる。

 あの時は、オラオラ系が丁寧よりの言葉遣いでサディスティックな発言をするギャップがいいのか……なんて真剣に考えたものだが、実際にやる立場になったら普通に恥ずかしくて顔から火どころか噴火が起きそうだ。

 

 だが、ここまで言えばサラも恥ずかしくなって……

 

「も、申し訳ありません。私ははしたないメイドですぅ」

 

 あ、あぁ……そっか。

 手遅れなんだね……うん。

 

 俺の言葉を聞いて恍惚の表情で身をよじるサラを見て俺はそう思った。

 ……どうしようこの空気。

 

 うちのサラちゃんがこのままだと「はうっ」とか「いひっ」とか危ない嬌声を上げるタイプの変態になっちゃうよ。

 

 こうなったらもう仕方がない。

 断腸の思いだが、最終手段だ。

 

 俺はサラの髪の毛先で遊ばせていた手を首に回し、そのままぐいと自分の胸の方へ引き寄せた。

 

「きゃぁ」

 

 短い悲鳴……いや、嬉しさを多分に含んでいるであろう声を聞きながら、サラの耳元へ顔を寄せる。

 

「そんなはしたないメイドには罰を与えよう。これから任務が終わるまで俺との身体的接触を禁ずる。いいな?」

 

「そんな……」

 

 口ではこう言っているが、俺の胸に当たるサラの吐息が彼女の興奮を伝えてくる。

 ……後もう一押しだ。

 

「出来ないのか?」

 

「で、出来ますっ!」

 

「良い子だなサラは」

 

「はぅっ」

 

 あ、やり過ぎた。

 先ほど自分で危惧した変態に、俺の手でさせてしまった。

 だが、とりあえずの危機は去ったはずだ。

 

「さて、サラ。ここからは少し真面目な話だ」

 

「はひっ!……はい、承知しました」

 

 一瞬また、俺の急転換がサラに刺さりそうになっていたが、なんとか切り替えてくれたみたいだ。

 

「明日以降、俺はノウ家に調査に入る」

 

「ノウ家に、でございますか?」

 

 一体どうしてという疑問を浮かべるサラ。

 そんなサラにレドから聞いた話を聞かせる。

 

「……と言う訳で、おそらく今回の任務にはノウ家の調査も含まれているものと俺は考えた」

 

「なるほど……流石ですファレス様。ですが、レド様の発言が事実だとすると、少し危険では? 何名か騎士も同伴させるべきではないでしょうか?」

 

 うんうん。

 さっきの態度と言い、今の意見と言い、本当にサラは心を開いてくれたな。

 自分で真面目な話をすると切り替えておきながら、そんなことを考えてしまう。

 だが、この成長はおそらく今後確実に俺の役に立ってくれるだろう。

 

 とは言え、この忠告はまだ俺のことを理解しているとは言い難いな。

 いや、きっとただ心配してくれただけだろうけど……ぐるぐると渦巻く内心に自らツッコミを入れながらも、胸を張ってサラに問う。

 

「なあ、サラ。俺は誰だ?」

 

「! ファレス・アゼクオン様です」

 

「そうだ。俺はファレス・アゼクオン。俺を危険に晒せる存在など、このノウ領にはいないだろう」

 

「はい!」

 

「とは言え、流石の俺も単身であの屋敷全てを探るのには骨が折れるだろう。サラ、頼めるな?」

 

「もちろんにございます! このサラがファレス様の目の届かないかの家の汚い部分を全て明かして見せます!」

 

 こうして俺たちの明日以降の方針が決まった。

 ちなみに今日はおかしなテンションになってしまったせいか、サラを下がらせてからも中々眠れず、久しぶりに吸魔に精を出してしまった。

 




小難しいシーンが続いていたのでクッション回。
と言うのは言い訳で色ボケサラちゃんを書きたかった回でした。
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