The Deadly Pride ~不遇悪役貴族に転生した俺は大罪魔法『傲慢』で最強へ至る~   作:嵐山田

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第四十五話 皇帝への報告③

 昼過ぎにアゼクオンを発ち、王都に到着したのは既に深夜の時間だった。

 とはいえ、流石の王都だ。

 日中よりは少ないが、まだまだ人通りが多くみられる。

 

「やっぱり王都は賑やかですね」

 

 正直なところクインを王都に連れてくるのは、彼女のトラウマ的に良くないかとも考えていたのだが、どうやら王都そのものにトラウマはなさそうだ。

 夜間の外出そのものが珍しいのか、馬車の窓からしきりに外へ目をやっている。

 

 ちなみに今回の報告には馬車二台で来ている。

 俺の馬車にはサラとクイン。

 もう一台には途中で寝てしまったサンとレドが乗っている。

 

「そうだな……暢気なものだ」

 

 地震による被害がほとんどなかった王都では普段通りの日常が続いている。

 家の倒壊や怪我人の出たアゼクオン、地震に加えて津波という災害とノウ家(クゾーム)の無能統治によるダブルパンチを受けていたノウ領とは大きな違いだ。

 そんな思いから、こんな言葉が漏れ出た。

 

「ファレス様は騒がしい空気はお嫌いですか?」

 

「いや、そうではないが……」

 

 言い淀む俺にクインが不思議そうな顔を向ける。

 だが、俺はそれ以上は語らずに足を組みなおして別邸までの残り僅かな道のりを目を閉じて過ごすのだった。

 

 ◇◇◇

 

「ここがアゼクオン家の別邸ですか!? 王都にもこんなに大きなお屋敷を持っているのですね!」

 

 しばらく無言で馬車に揺られ、到着した別邸を見てクインが驚愕の声を上げた。

 

「ああ、王都に別邸を持つ貴族の中でもかなりの規模の別邸だな。父上が陛下から直接賜ったものだ」

 

 確かに前回来た時にも思ったが、中々類を見ない大きさの邸宅だ。

 貴族の別邸が並んでいるこの通りでも、一番目立つのがアゼクオン侯爵家の別邸だろう。

 それもこれも、クインに話した通り国王が直接下賜したからなのだが、どういう理由で下賜されたのかまでは『マーチス・クロニクル』でも語られていなかった。

 

「それは……そんなお屋敷にお邪魔してしまってよろしいのでしょうか?」

 

「無論、良い。物は使ってこそだろう? ただ見世物になるだけの巨大な家など何の役にも立たん」

 

 遠慮してもらっては困るため強めに肯定する。

 なんとなくだが、この家でサラと二人だけというのはかなり気まずいのだ。

 

「そうですか……そうですね。 では、お邪魔させていただきます!」

 

 なぜか気合いを入れたような表情になったクインとその表情を見て、ドッと黒いオーラを溢れさせたサラには気付かないふりをして俺は先頭を歩いた。

 

「ファレス様、お部屋の用意は出来ております」

 

 入口で俺たちの到着を待っていた別邸管理の侍従に迎え入れられ、俺たちはとりあえず、それぞれの部屋に移る。

 

 さて、今日到着したことはもうすでに王城に連絡がついているだろうから、明日は迎えが来るはず。

 それまではゆっくりさせてもらうとしようか。

 さすがに中一日でノウ領から王都を行き来するのは精神的にも体力的にも厳しいものがある。

 原作でも魔力覚醒が遅かっただけで身体スペックはかなり高かったファレスでこれなのだ。

 エバンス家で特殊な訓練を積んでいるサラはともかくクインの疲労は相当だろう。

 

「ファレス様、お夜食をお持ちしました」

 

「入れ」

 

 俺が部屋のソファに腰かけた所でタイミングよくサラが夜食を持ってきてくれたようだ。

 

「明日の予定はどうなさいますか?」

 

 テーブルに夜食を並べながらサラが聞いてくる。

 仕事をしながらでも、話しかけてくれるようになったことに改めて関係性の変化と信用を感じた。

 

「明日は王城から迎えが来るはずだ。だからこれが終わったあとはサラも休め」

 

「承知いたしました。……それで、その……」

 

 持ってきてくれた夜食に手を付けようとしたところで、なぜかサラがもじもじとし始めた。

 

「どうかしたか?」

 

「……よ、夜の方は……」

 

 ブフッ――

 突然飛び出した予想外の一言に思わず紅茶を吹き出してしまう。

 

 サラさんや、俺と二人だけならともかく、今回はクインもレドもサンもいるんだよ?

 それに今までも夜にサラを呼んだことなかったよね?

 どうして急にそんな考えが浮かぶんだい?

 この屋敷に来ると脳内ピンクになる魔法でもあるのかな?

 

「や、休めと言っただろう。何かする必要はない。好きに過ごせば良い」

 

 何とか平静を装って、俺が噴き出してしまった紅茶を拭いてくれているサラに伝える。

 

「そうですか。分かりました……」

 

 サッと片付けを終えたサラは少し残念そうな表情をしながら、下がっていった。

 

「ふぅ……これで今度こそ休める」

 

 サラが入れなおしてくれた紅茶を一口すすり、ソファに深く座ると部屋を見渡す。

 ……これから三年後、つまり原作での学園編に入ればここが俺の拠点になる。

 今は必要最低限の物しか置かれていない質素(貴族としては)な部屋も、少しずつ便利にしていきたい。

 

『マーチス・クロニクル』はキャラ憑依型のRPGだ。そのためキャラクターごとに拠点となる場所があり、自由にインテリアなども行うことができる。

 キャラのイメージに合う部屋をデザインしたり、攻略したいヒロインがいる場合はそのヒロインの好みの内装を作ってみたり、中二病感満載な謎の剣や盾、魔獣の骨を飾ってみたりと色々なことができる。

 

 だが、ファレスルートを攻略しようと思うとそうはいかない。

 原作ファレスは度を超えた不遇キャラなため、常に暗殺の脅威がある。

 中でも、最も暗殺の多いこのアゼクオン別邸では細心の注意が必要で、暗殺対策の警報やトラップなどそう言った物をこれでもかと用意しなくてはならず、せっかくのインテリア要素がファレスに限ってかなり制限されるのだ。

 

 しかし、今はそんなものに怯える必要はない。

 サラの信頼を獲得し、クインも味方に引き込んだ。

 クゾームは再起不能になるだろうし、もし再び会うことがあっても逆恨みなどされない、出来ないような罰が下るだろう。

 他キャラクターのことはまだわからないが、俺がファレスである以上なんとかできるはずだ!

 

 特にインテリアやデザインなどそう言った物にすごく興味があったわけではないが、原作で出来なかったことができるというのはファンとしてはかなり嬉しいことだ。

 そう思うと、今から色々なアイデアが湧き上がってくる。

 

「……」

 

 後ろでガチャリと扉の内鍵が締まる音がする。

 疲れのせいか、インテリアのことでテンションが上がっていたせいか、俺はその音がするまで部屋に誰かが入ってきたことに気が付かなかった。

 

 一気に緩み切っていた感覚が研ぎ澄まされ、警戒心を高める。

 どうやらファレスの不遇は俺の想像以上のようだ。

 

 

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