「……さん? あのっ、聞いてる?」
誰かが呼びかけてくる声で、意識が引き戻された。
「あ……ああ、ごめん。ちょっとボーッとしてた」
俺が視線をしたに向ければ、ふわふわした兎の様な耳が生えた少女がいた。
少し日に焼けた肌の彼女は鼻の上に絆創膏の様な白い跡がある。
動きやすそうな服装をしている少女の名は『カチーナ』だ。
元気そうな見た目とは正反対に礼儀正しい頑張り屋、というのがみんなの印象だ。
昔は強くなりたいと願っていたが、優しい性格が邪魔して対人戦を苦手にしていたが、今は克服していて、『ナタの英雄の一人』として活躍している。
「もう……またボーッとしてたでしょ? ここはナタじゃないから、わたし、心配だよ?」
カチーナが首をコテンと傾け、純粋な瞳でこちらを見てくる。
小さな身長と獣耳が相まって可愛い仕草に、思わず心臓が跳ねてしまった。
だが、冷静になれ。カチーナは未成年。未成年……前にお酒を断っていたから、成人未満のはず……。触ったりするのは良くない。
俺は社会人、社会人だからロリコンになる訳にいかない。
俺はコホンと咳払いした。
「……俺がボーッとしてたのは、その。先にムアラニがどっか行ったから、大丈夫かな、って話だよ」
ナタではこの前の大事件があったが、もう大きな戦争は起きないだろうとなり、復興が落ち着いてきた。
晴れてナタにいざらるを得なかったナタ人はナタ国外に出るようになった。
俺たちの場合、キィニチがフォンテーヌに行ったため、鉱石が有名な璃月に行くことになった。
そして、璃月港に俺、カチーナ、ムアラニに旅行に来たのだが……。
「……ムアラニちゃん行動派だからね、仕方ないよ。でも、蒼海さんがいるから先に言ったんだと思うよ? ムアラニちゃん、よく蒼海さんを褒めてるから」
「……そうか?」
ムアラニは自由な性格をしている。様々な事をやりたい! という精神の持ち主で、経営に、観光案内人……気がついたら様々な事をしている様だ。
常日頃に明るく、ムードメーカーで、俺はムアラニのそんな所が羨ましいと思う。
「そうだよ! 蒼海さんはいつも頑張ってる、って。えっと……わたしもね、蒼海さんはいつも頑張ってると思うよ! 子竜がべつの部族の家でお世話になるみたいな事って凄く大変なんだってイファお兄さんに前、聞いたんだ。わたしはたまにムアラニちゃんの言えにお泊まりするけど、きっとそんな日が続いたら大変だと思うから……」
そう言ってムアラニをフォローする様に言うカチーナ。彼女の言葉は、すとんと俺の心に収まる様で心地が良い。
今、俺はカチーナの家でお世話になっている。カチーナの姉は兎も角、カチーナの両親にはカチーナの下のきょうだいの世話を見てくれて感謝されていると前に言われた。
カチーナからもその間特訓をしたり、自由な事が出来る時間が増えたと感謝された。
「……ありがとう。カチーナ」
俺がそう言えば、「ううん! お礼を言うのはこっちだよ!」と彼女はどこかずれている様な返答をする。
「まあ、ムアラニも勝手に璃月港からは出ないだろう。璃月港は迷子になりやすいらしいから、俺たちは気をつけような。でも、別に置いてかなくていいのにな」
「あっ! う、うん……そうだね」
俺がそう言えば、カチーナは少し口ごもって、視線を僅かにそらす。
───何か言いたげだが……。
「どうした?」
「……あ、えっと。その……蒼海さん! あの!」
───ぐうううう
カチーナが何か言いかけた時──俺の腹の虫が大きく鳴った 。
そういえばもうお昼の時間くらいかもしれない。
懐にしまっていた懐中時計を見れば、もう13時くらいだった。
「あ! その時計……使ってくれてるんだね」
「ん? ああ、普段はチビ達にイタズラとかされないように閉まってるけど……べつの国に出かけるなら時間確認は必要だろ?」
「うん! ……えへへ」
俺が懐にしまっていた時計をカチーナに見せれば、彼女は嬉しそうに笑った。
この時計は前にカチーナから貰ったものだ。立派で、時計の装飾が細かく、こんないいものを貰うのは気が引けたが、「わたし、いつも蒼海さんに感謝してるの!」と純粋に言われてしまい。返す事もできなかった。あのウサギみたいな表情を見て断れる人間は稀だろう。
「カチーナ、その。お昼にしようか」
「……ふふっ、そうだね。わたしもお腹空いちゃった! 何があるかな? 楽しみだね!」
そう言って無邪気に笑うカチーナは可愛く、俺は何故か照れ臭くなった。
「そうだな」
そう返して、俺とカチーナは腹ごしらえをするため璃月港の飲食店が並ぶ場所に行く事にした。
高そうな店が並ぶ場所は気になるが、まずは直ぐに食べられそうな店に入る事にする。
勿論ムアラニも探しつつだ。
だが、先程ムアラニが行ったはずの店にはおらず……。
「ムアラニちゃん、どこに行っちゃったんだろう?」
「……とりあえず食べてからにするか。ムアラニなら強いし、大丈夫だろう」
「そうだね、うん。蒼海さんの言う通りだよ! ムアラニちゃんなら大丈夫!」
そう言って笑うカチーナに俺も笑い返した。
璃月港には様々な国の人がおり、物も溢れている。
さすが長い歴史の国『璃月』の首都だ。確か6000くらい、か以上前に出来たと何かの本に書いてあった。
俺がいた国も俺の世界では古いが……6000年前何の時代かだったなんて既に忘れた。
ただ、まだ人間がまともな知性を持ってない時代だったような気がする。
学生時代に少し歴史を齧ったくらいだから、よく覚えていない。
生きていく以上、不要な知識は忘れていくのが当たり前だ。
ナタはシトラリ曰く、他の国とは違う発展の仕方をしているらしい。
まあ、(恐)竜と暮らすのが普通に生活の一部な時点で他の国とは違うから当然か。
とりあえず俺たちはムアラニを探しながら腹ごしらえを済ませ、再度探す事にした。
ムアラニが見当たらないのは心配だが、あの子なら大丈夫だと信じるしかないだろう。
だが、先程からカチーナはソワソワしている様に見える。
何かを言いたいみたいだ。
「……カチーナ? もしかして、何か俺に言いたい事でもあるのか?」
「えっ! ……あ、その……」
俺がそう言えば彼女は少し口ごもった。そして、意を決した様に口を開いた。
「あ……あの! 蒼海さん!」
彼女は少し頬を赤らめながら俺を見る。
俺は彼女の言葉を待ったが、なかなか切り出さない。
相変わらず内気なところがまだあるな。
それから、分かりやすくあたりの人を気にしている……。
俺は彼女の話しやすい雰囲気を作るため、腰を屈めて視線を合わせた。
「どうした? 俺に何か話したいことがあるなら聞くぞ?」
そう言って優しく聞けば彼女は意を決した様に口を開いた。
「……蒼海さん、えっと、あっち、あっちに行かない? わたし、蒼海さんに言いたいことが、あるんだ!」
カチーナは少し恥ずかしそうにして、俺の手をそっと握った。
そしてそのまま俺を引っ張って行く。
別に問題ないし……俺は特に何も言わずにそのまま彼女について行くことにした。
※※※
璃月港のから少し離れた海が見える崖の上の場所に案内される。
まあ、璃月自体が崖が多い国らしいが……いや、どこの国も崖が多いとも聞いたような?
「ここ! 前に写真集を見てね、オススメスポットだって聞いたんだ。だから、蒼海さんと見たいな、って思って!」
「……そうか」
それは璃月港を一望できる場所らしい。
なるほど……確かに景色がいい。
結構高い場所まできたから、少し怖さもあるが、風の翼もあるし心配ないだろう。
そんな事を考えていれば、分厚い彼女の手袋の擦る音で、前に立つカチーナが少しモジモジしている事に気がついた。
「どうした? 何かあったか?」
俺がそう言えば、彼女は意を決した様に口を開いた。
「蒼海さん……その、わたし」
俺は首を傾げた。
何を言いたいのだろうか。
手を離したカチーナはどこか顔が赤く見える。
言いたいことには
「あ、あのね! わたし、蒼海さんに感謝してるんだ! 蒼海さんのお陰で、わたし、凄く毎日が楽しいし……でもね、わたし、夢みたいなものがハッキリしなくて……。それで。でも、私……あの。夢が出来たんだ。それはね─……」
カチーナがそう言いかけた時───。
──ガサッドタッ
背後から草が揺れる音と、何かが落ちた様な音がして振り返る。
「あ、あはは〜」
そこにはムアラニが気まずそうに横になっていた。
座っていたが、体制を崩した、みたいな様子だ。
ムアラニは立ち上がると、「あちゃー」という様に、頭に手を当てて苦笑いを浮かべる。
「ムアラニちゃん!?」
カチーナが声をあげる。
もしかして、ムアラニは覗き見をしていた? 何故?
ムアラニは俺たちの反応を見て、慌てた様子で話し出す。
「あ! ごめんごめん!! わざとじゃなくて! タイミングと言うか! ね!? ね!?」
その反応で確実に。わざわざ覗き見をしていた事を悟る。カチーナも察した様だった。
ムアラニは気まずそうに、俺とカチーナをチラチラと見ながら口を開く。
「あのー……み、見るつもりは無かったんだよ〜! そのぉ〜えっと! あ、あたしちょっと出直すね! うん! じゃ!」
そう言ってムアラニは走り去ってしまった。
「あ! 待ってよ、ムアラニちゃん!」
とカチーナも追いかけて行く。
俺は苦笑いを浮かべながら2人の後を追いかけた。
何がなんだか分からないが、見知らぬ土地でそのままにしておくのはまずいだろう。
魔物や野盗などがいたら危ない。
この世界では物騒な組織が沢山ある。
俺は2人を追いかける事にした。
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