If   作:F1さん

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カチーナ視点


カチーナとムラアニと男性プレイヤー 後半

 

 

「えっ、ムアラニちゃんもその人の夢を見るの?」

「えっ、カチーナちゃんも!?」

 

それは、ある日のこと。

 

わたし達は一緒に手合わせをして、その後にいつもみたいに変わらない会話をしていた。

 

どこの部族の誰がどうとか。あそこのご飯は美味しい、とか。

 

ムアラニちゃんはとても優しくて……わたしを親友だって言ってくれる。

 

わたしなんかよりとっても強くて、いつもわたしを助けてくれて、わたしの事を1番に考えてくれて。

 

わたしはムアラニちゃんが大好き。知らない事をたくさん教えてくれるし、勇気があるムアラニちゃんを見ると、わたしも頑張りたいって思えるから。

 

でも。その夢の男性の話をわたし達はするようになって、わたしはその人が気になるようになった。

 

ムアラニちゃんも隠しているけれど、わたしには分かる。だってずっと一緒に色んな事をしたり、色んなものを見てきたから。

 

ムアラニちゃんも、きっと、その人が好きなんだ。

 

そして、その人……蒼海さんにわたし達は出会った。

 

蒼海さんは、他の部族の人達とは違う。それは見た目だけじゃなくて、中身も。

 

蒼海さんは戦えないらしいし、竜達を見たことがないらしくて、ユーちゃんに最初あった時は目を丸くしてた。

 

最初は他の国から来たんじゃないか、って話が出たけれど……最終的には蒼海さんはテイワットとは違う世界から来た人と言う話になった。

 

……最初、蒼海さんを呼ぶ時、なんて呼ぼうか悩んだ。

 

悩んで、悩んで。でも、お兄さんって付けたくないって、思った。

 

どうしてか分からないけれど、妹みたいに思われたくないって、思った。

 

だから、わたしは蒼海さんと呼ぶ事にしたの。

 

でも、ムアラニちゃんの様子が普段と違うようになったのはその頃からかもしれない。

 

戦う時なら「負けないよ!」って笑って元気になるのに、蒼海さんのことになると、どうしてかわたしと蒼海さんをよく一緒にさせようとしてくる。

 

……でも、それって、ムアラニちゃんらしくない。

 

それが何回も続いたら流石にわたしも……!

 

「ムアラニちゃん!!!逃げないで!わたしの話をちゃんと聞いてよ!!」

 

「……」

 

だから。わたしは勇気を出してムアラニちゃんに詰め寄った。

 

いい機会だったのかもしれない。わたしだって、もう我慢の限界!!!

 

「ち、違うのカチーナちゃん!違うんだよ!!」

「何が違うの!?わたしに分かるように説明して!わたし、わたし……!わたしばっかり優先されても、嬉しくないよ!ムアラニちゃん!!」

「違う。違うよ、カチーナちゃん……!それは誤解だよ!」

 

わたしは悔しさと悲しさで思わず泣きそうになってしまう。ムアラニちゃんはどうしていつもわたしを優先しようとするの?

 

わたしは、ムアラニちゃんには笑って欲しい。でも。こんなのは嫌だ!!

 

「カチーナちゃん!あたしは、あたしは……!」

「なら、説明して!ねえ、教えてよ!ムアラニちゃんはっ!!蒼海さんのことをどう思ってるの!!?」

「っ……!!」

 

わたしはムアラニちゃんにそう叫んで、近付いた。ムアラニちゃんはきっと何か言い訳を考えていたんだと思う。

 

顔が困ったようで、悲しいようで、苦しい、みたいな、そんな表情だった。

 

わたしだって苦しい。でも、このままじゃいられないって事は分かった。

 

だから、わたしはムアラニちゃんにちゃんと聞きたかった。

 

「……蒼海をどう思ってるか……って……」

「そう!ムアラニちゃんは!!蒼海さんが好き、なの?」

「っ……!!」

 

わたしが思い切って尋ねれば、ムアラニちゃんは目を見開いて、困った表情をする。

 

「ねえ!答えてよ!ムアラニちゃんっ!」

 

わたしはそれに追い討ちをかけるように問い詰める。

 

すると、ムアラニちゃんは迷いながら、少し視線を逸らした後──。

 

「……好きだよ」

 

わたしの耳は高いから、ちゃんと小さくてもムアラニちゃんのその言葉は聞こえた。

 

「っ……!!」

 

ああ、やっぱりそうなんだ。わたしはその答えに胸が痛くなるのを感じた。

 

だけれど、不思議とムアラニちゃんを責めようという気持ちは湧かなかった。

 

むしろ、スッキリしたような、そんな気持ちだった。

 

「ムアラニちゃん……やっぱり……そうなんだね。」

「……うん」

 

ムアラニちゃんは、わたしの言葉に小さく頷いた。

 

「ムアラニちゃん……その、わたし……」

 

この気持ちをどう伝えればいいのか分からなかったけど─……それでも。

わたしは。

ムアラニちゃんに、わたしの今の気持ちを伝えたい。ううん、伝えるべきだとそう思った。

 

「……ごめんね、カチーナちゃん。」

「え?」

 

──けれど、その前にムアラニちゃんはそう言うと、わたしの手を優しく握った。

 

「……?ムアラニちゃん?」

「ごめんね、カチーナちゃん。……あたしのせいで、辛い思いをさせたよね……」

 

ムアラニちゃんがわたしに謝ってくる。どうして? ムアラニちゃん、何も悪くないのに……。なんで謝るんだろう……?

 

「な、何のこと……?」

「……ごめん。あたし、カチーナちゃんの気持ちに気付いていたのに。それなのに、自分の事ばっかりで……」

「ムアラニちゃん……。いいんだよ。ムアラニちゃんはわたしにとって、大切な人だから。だって、わたし達『親友』だもんね?」

「カチーナちゃん……」

 

ムアラニちゃんがわたしの事を思ってくれるのは嬉しい。だけど……わたしはもう決めた!

 

「もう遠慮しなくていいんだよ!ムアラニちゃん!わたし達、その!ライバル、だね!」

「えっ……?」

 

わたしはムアラニちゃんの手を握り返してそう言った。ムアラニちゃんはそれに驚いているようだけれど……でも、もう引けない。

 

「だからっ!!わたし、絶対に負けないよ!!

「か、カチーナちゃん……?」

 

ムアラニちゃんが少し困ってるような顔をしてるけど……でも、それでももう譲れない。ムアラニちゃんが蒼海さんを想っていても、それでもわたしだって譲れない。

 

すると、その言葉を聞いたムアラニちゃんの表情が変わる。

 

思い詰めてたような表情から……少し、安心したような。そんな表情。

 

「カチーナちゃん」

「ムアラニちゃん……」

 

2人で見つめ合うと……なんだかおかしくて、わたしは思わず笑ってしまう。

 

それにつられて、ムアラニちゃんも笑い出した。

 

前みたいに、ムアラニちゃんの笑顔が見られて嬉しかった。

 

「あたしも負けないよ。カチーナちゃん」

 

そして。

ムアラニちゃんはわたしにそう言ってくれた。

 

「ムアラニちゃん……!!」

 

ああ、ムアラニちゃんとは親友で良かった!そう心から思った。けれど……2人で笑い合う時間はそこまでだった。

 

「……カチーナ、ムアラニ、よかった……!お前たちさ、いきなり走り出すから……。はぁ。」

 

2人は、声の方へ同時に振り向く。そこには─……蒼海さんがいた。

慌てて走って来たみたいで、とても息を切らしている様子が目に映った。

 

「……蒼海さん?」

「蒼海……どうしたの?そんなに慌てて」

「どうしたのって……!そりゃあいきなりお前らが走り出したら心配するだろ……!」

「あー……あはは、ごめんね。蒼海」

「ごめんなさい……」

「いや、まあ……。無事ならいいけど……。……?よく分かんないが……とりあえず、無事だったか?2人とも」

「うん!あたしは大丈夫だよ。ね、カチーナちゃん!」

「……わたしも平気だよ!」

 

心配される事が少し照れ臭くて笑ってしまった。多分ムアラニちゃんもそうなんだろう。

 

「そうか……なら、よかったよ」

 

わたしたちの返答に安心したのか、蒼海さんは柔らかく微笑んだ。その表情を見ていると、胸が高鳴り始める。

 

──ああ、やっぱり好きだな……わたし。

 

こうやって優しいところも。

みんなにバカにされちゃう、わたしの話を真剣に聞いてくれるところも。

ちょっと鈍感なところも……全部好きだなってわたしは思った。

 

「蒼海さん、心配させてごめんね。」

「……ごめん。あたしのせいで……」

 

2人でそう謝ると……蒼海さんは、少し驚いたような顔をしたけどすぐに笑ってくれた。

 

「ああ、いいよ。別に怒ってないし」

 

そう言って蒼海さんはわたしたちの頭を撫でてくる。

 

その大きな手が優しくて、温かくて。ああ……この手に撫でられていると落ち着くなぁって思うんだ。

 

ムアラニちゃんも同じ気持ちなのか、笑顔になってたからきっとわたしと同じなんだろう。

 

「で、なんか話してたのか?2人ともスッキリした顔してるけど」

「あー……あはは、それは……」

 

蒼海さんの言葉にムアラニちゃんは言い淀む。多分、わたしも同じような顔をしてるだろう。

 

「ん?どうしたんだ……?」

 

蒼海さんは不思議そうに首を傾げてわたしたちを見ていたけれど……流石に、言えないよね……とムアラニちゃんと目で会話する。

 

「な、なんでもないよ!ねっ、カチーナちゃん!」

「う……うん」

 

2人で慌てて誤魔化した。蒼海さんは納得してなさそうだったけれど……それ以上は追及してこなかった。

 

「そうか……?ならいいけど……」

 

ホッと一息つく。よかった、な、なんとか誤魔化せたみたい……。

 

安堵しているわたしの隣にムアラニちゃんが来ると小声で話しかけてきた。

 

「……ね。カチーナちゃん」

「うん。わかってるよ、ムアラニちゃん。内緒だよね?」

 

わたしたちは互いに頷き合うと蒼海さんの方を向いた。わたしたちの表情を見た蒼海さんは不思議そうに首を傾げる。

 

「2人して内緒話なんかしてどうしたんだ?」

「なんでもない!ほら、早く行こ!」

 

ムアラニちゃんがそう言って蒼海さんの腕を引く。

 

それを見て、わたしも同じように逆の蒼海さんの腕を掴み取った。

 

「うん!なんでもないよ!ね、蒼海さんはどこに行きたいとかあるの?教えて?」

「お、おい」

 

驚いたような声を上げる蒼海さん。でも……今は離したくないから。

 

そのままムアラニちゃんと目を合わせて、2人で笑った。

 

「あはは……」「……ふふっ」

 

そんなわたしたちの様子を見て蒼海さんは呆れたように溜息をついていたけれど……でも、どこか嬉しそうな表情をしていた。

 

「……まったく。本当に……しょうがない奴らだな。」

 

呆れたように言っているけれど、その声はどこか楽しげで。

 

そんな蒼海さんを見ているとわたしまで嬉しくなってしまうから不思議。

 

でも、もう少しだけ。もうちょっとだけ、このままでいたい。

 

そう願ってしまうのはわがままなのかな?と思いながらも……それでも、もう少しこのままでいたいと思う気持ちを抑えることが出来なかった。

 

きっと、ムアラニちゃんも同じ気持ちだと思う。

 

だって──……2人で同じタイミングで蒼海さんの手を握る手に力を込めたから。

 

それが答えだ。

 

だから、もう少しだけ……このままで。

この手を離さないようにしようってそう思った。

 

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