「蒼海は優しいね!僕はキミのそういう所、好きだよ」
「あ、うん。はい。」
どうしてこんな事になってしまったのか。
俺の腕に抱きついて可愛らしい少し赤らんだ笑顔を浮かべているフリーナを見て現実逃避をした。
───事の発端は数時間前に遡る。
※※※
「曜日ごとに別の人とデートしてほしいって、いやいやいや!俺そんなことしたらクズじゃん!何考えてんだよ!」
俺はフォンテーヌの女性陣まるでネットミームのペンギンのように囲まれて、丸くなっていた。
何この面子ぅ……。
元神に、決闘代理人に、マフィアのボスに、人気裁縫師に、特巡隊隊長に、人気記者に、人気調香師に、人気マジシャン……いや、人数はピッタリだけど!
「……私はお父様と一緒の日」
「うわぁ!?聞きたくなかったその名前!」
リネットの場合『召使』セットなのかよ!?
この中で一番怖い人の名前に、俺はガタガタと震える。
リネット単体だったらまだ猫みたいなもんだし可愛いものだ。
が、リネットの上司であり、親(上手く言葉が見つからないからこうとりあえず呼ぶ)であるファデュイの執行官である『召使』がセットになると、もう……。
そもそもフォンテーヌの面子は権力をかき集めました!みたいなヤツばっかりだ。
俺はただ異世界から来た一般人。
どこかにいるだろう『旅人』とは比べようがない程凡人。
たまたま、俺の世界に彼女らが活躍するゲームがあって、何故か彼女達はそのゲームの記憶を有していて、偶然が重なり合った結果、彼女達と知り合いになった。
今はヌヴィレットの元で世話になっている。
なんでこの国(もしかしたら世界かもしれない)で一番凄い存在に保護されてんだ、と思って聞いた時には『彼女』に頼まれていたからと言われた。
それを聞いて直ぐに浮かんだのはフリーナの片割れの『神』だったけれど、それは無いと否定したい。
ちなみ何故か初対面から皆俺に好意的だった。
怖すぎる。
ちなみに男からは普通っぽい。
よく分からないけど、記憶があるのは女性だけの様だ。
俺が混乱している間に俺の部屋に入って話をしてきた女性陣は「よろしく」と言って帰ってしまった。
ええ、まずどの日に誰来るかとか聞いてないんですけどぉ……。
俺は泣きそうになりながらヌヴィレットに相談する事にした。
※※※
「ヌヴィレット様〜!!!」
「どうした、そんなに慌てて」
俺はヌヴィレットの執務室まで駆け込んだ。
「いや、なんか女の子達に1週間かわりばんこにデートするとか言われたんですけど!?俺仕事ありますよね!?俺、休みとか取ってないですよね!?」
「わかった。とりあえず、落ち着け」
「はい……」
俺はヌヴィレットに促されて、執務室にあるソファに座る。
ヌヴィレットは多分何処かの場所の取り寄せた水をコップに入れて差し出してくれる。
「ありがとうございます」
「いや、構わない」
俺は水を飲んで一息つく。
仕事中にもなんか飲み物が出てきたと思えば水だったし。
「で?何があった」
「それがですね……」
俺はヌヴィレットに事の経緯を話した。
いや、もう本当にどうしてそうなったんだ!? 俺は頭を抱える。
たが、そんな俺にヌヴィレットは落ち着いたで様子言った。
「そうか、それは災難だったな」
「……え?それだけですか!?あの、俺……」
いや、確かに『災難』だけど! もっとなんかこう……。
俺はそう言おうとしたが、ヌヴィレットに遮られる。
「……実はシグウィンにそろそろ蒼海君に休みをあげた方がいいと言われた。確かに思えば君に私は休みを与えていなかった。だから明日から休みはなってはいるが……もしかすると話からシグウィンにも話がいっていて、私は知らずにそれを承認してしまったのかもしれない。すまない。しかし、君は休みをどう使うかは君次第だ。好きにすると良いだろう」
「……はい」
俺はヌヴィレットに言われて、少し考える。
でも、これで女性陣との約束を破ったら、あとが怖いかもしれない。
それに、俺は彼女達が嫌いではない。
恋人になれ、とか言われている訳じゃなく、デートするだけだと思うし。
「わかりました。とりあえず明日からの1週間は休もうと思います!」
「あぁ、そうするといい。もしかしたら彼女達も君に気分転換をさせたいのかもしれない。」
「そうかもしれませんね。分かりました!じゃあ、俺は明日に備えて帰りますね!」
「あぁ、また来週に会おう」
「はい!では失礼します」
俺はヌヴィレットに頭を下げて執務室を出た。
うん、なんだかよくわかんねーけど、明日から1週間休みになったし。
俺なりに楽しもう! 俺は足取り軽く家に帰ったのだった。
……まさか彼女達と『ああ』なるとは知らずに。
※※※
で、一日目はフリーナとらしい。
神として振舞っていた時とは違い、今は質素な生活をしている様で、パスタがどうだとか楽しそうに話していた。
可愛い。国家遺産にしよう。グロ……グラスを掲げよう。乾杯。
「で、今日は何処に行くんだ?」
俺はフリーナに聞く。
すると、待ってましたとばかりに自慢気に胸を張って彼女は答えた。
「勿論、映画を見よう!本当は観劇も考えていたんだけれど、キミは映画が好きだろう?」
「え?ああ、うん」
テイワットの『映画』というのは俺の世界よりちょっと古い感じの上映方法だ。
だけれどそういうのは嫌いじゃないし……でも多分この世界で見ていた覚えは無いので、俺の世界で動画をよく見ていたよね、って言いたいのだろう。
「じゃあ、行こう!」
フリーナは俺の手を引っ張る。
俺はそれにつられてついて行った。
その小さな後ろ姿に、少しだけ既視感を感じながら。
※※※
「面白かったね!今度いく時は観劇を見よう!キミはあまり見た事が無いみたいだけれど、面白いものなんだよ?」
「ああ、うん。フリーナ、今はまたちょこちょこ女優活動再開してるもんな。でも、無理はするなよ?」
俺はフリーナにそう返す。
いや、本当に。俺なんかの為に時間を割くのは勿体無いし。
もう役目を果たして自由になったんだから。
フリーナにそう言うと、フリーナは頬を膨らませ、腰に手を当てる。
ハムスターや威嚇する小動物みたいで可愛い。
「む、無理なんてしてないよ。それに!こうやってキミと出かける事は……気分転換になるし、その……じ、自分で言うのはなんだけど、僕は友達が少ないし……こうやって遊んでくれると嬉しいんだよ!」
「そっか。じゃあ、また何処か行こうな」
俺はフリーナの頭を撫でた。
すると、最初は少し不服そうだったものの直ぐに機嫌を直して俺の腕に抱きついてきた。
めちゃくちゃ距離感近いな。
これさ、絶対俺『男』として見られてないよな……。
でも友達だって言ってくれて嬉しいのは事実だ。
フリーナはニコニコとしながら、俺に聞いてくる。
「この後、他のところに行くよね?どこにする?」
「……そうだな」
俺は考える。そもそも予定なんて誰と会うか分からないし、何処に行くかも決まっていなかった。
考えていると、フリーナが俺の顔を覗き込んできて言った。
「じゃあ僕に任せてくれるかい?」
「え?ああ、じゃあ頼んでいい?」
俺はとりあえずそう答えた。
するとフリーナはパァッと顔を明るくして、俺の腕をグイッと引っ張って歩き出す。
「分かったよ!任せて!」
フリーナはそう言った。
俺は何処に行くのだろうと内心首を傾げながら、楽しそうに鼻歌を歌う彼女に着いて行ったのだった。
※※※
着いたのは海辺だった。
フォンテーヌは海に囲まれていて、何処でも海が見える。
……見渡す限り水面だ。
俺は「いい天気だね」と言いながら岩場に座るフリーナに、「ああ」と返した。
すると彼女は少し恥ずかしそうにしながら俺に言う。
「その……実はデートって初めてなんだ」
「500年以上生きてて!!?」
俺は思わず突っ込んでしまった。
その言葉にフリーナは顔を赤くすると、立ち上がった。
「し、仕方ないじゃないか!いつボロを出すか分からなかったし!恋愛に現を抜かしている暇なんて無かったんだよ。」
「あー、まあそれはそうだよな。すまん、デリカシーない事言った」
俺は素直に謝る。
すると彼女は首を横に振ると、首を振った。
「ううん、キミが気にする必要はないよ!それに、こうやって誰かと二人でゆっくりするのは初めてかもしれない。……大半は怖かったから。」
「そ、そっか……」
俺は何と返すのが正解か分からず、そう返した。
そんな俺にフリーナはジッと真剣な瞳を向ける。なんだ、と思えば自然と上目遣いで見つめられた。
「……ねぇ、キミは僕と居て楽しいかい?」
そう聞いてくる彼女に俺は正直、戸惑った。ちょっと声が震えていたからだ。
だから、俺は思ったことをそのまま言った。
「楽しいよ。だって、フリーナは可愛いし」
「か、かわっ!?」
俺がそう言うと、彼女は顔を更に赤くして口をパクパクさせる。
そして、俺の腕を掴んで言った。
「も、もう!キミはどうしてそういう事をサラッと言うんだい!?誰にでも言ってるんじゃないよね!?僕だからいいけれど、他の女の子に言ったら絶対勘違いされるよ!」
「え?あ、うん」
いや、俺そんな誰にでも言わないけど。
それにフリーナが可愛いのは事実だし。
でも、それを言うとまた何か言われそうなので黙っておいた。
「と、とりあえず!キミは僕と居て楽しいんだね?」
「ああ」
「なら良かったよ!」
フリーナはそう言って笑った。
きっとあんまり安らげる時はなかったのだろう。
そうだとしたら、こうやって遊びに行って少しでも安らいでくれたならいいと俺は思った。
「それに、俺は『演じる』って事も嫌いじゃないし。ほら、それでその人が救われてるなら薬みたいなもんだなって。」
「え?」
「だから、一部は許せない、みたいなやつがいるかもしれないけど、それよりフリーナがこれまで頑張ってきたって見てくれてる人はいるんだから、怯えなくていいんだからな。ほら、お前の部屋の隣に住んでるおばちゃんとかよく食べ物分けてくれたり、よく行く店のおじさんとかオマケしてくれたりしてくれるだろ?それはお前の事が好きで、応援してくれている証拠だよ。」
「蒼海……」
俺はフリーナに言う。
彼女は俺の言葉に少し目を潤ませていたけれど、それを誤魔化すように俺の腕から手を離して、くるり、と俺に背を向けた。
「ま、全く!キミはどこまで僕に甘いんだい!?そんなの……嬉しくなんてないんだからね!」
「なんか娯楽小説に出てくるツンデレみたいな発言だな」
俺はついそう突っ込みを入れる。
すると、フリーナは「うるさい!」と俺の肩を軽く叩いていたが、俺はちょっと笑っているのを確認して、微笑ましく思った。
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