If   作:F1さん

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別連載のを移しました。
プレイヤーが夢を通じてキャラクターと繋がっている設定です。


原神
蛍とパイモンと男性プレイヤー


 

 金色の横髪だけ長いショートヘアーを靡かせて、彼女は片手剣と、様々な元素の力を宿して様々な人々を救ってきた。

 

 金色の髪の冒険者である彼女の事を、人は『旅人』と呼ぶ事が多い。

 

 旅人──蛍は白いドレスの様な普段着のワンピースを揺らし、俺に微笑み掛ける。

 

「お待たせ、パイモン、蒼海」

 

「遅いぞ蛍! オイラ腹ペコペコで倒れちゃいそうだぞ!」

 

「ごめんね。ちょっと準備に時間がかかっちゃって……」

 

 太陽の光が月のように、蛍の髪をより明るく見せる。

 

 蛍の行方不明の兄『空』が太陽なら『蛍』は月の様に思えるだろう。

 

 空と蛍は双子で、蝶のように対になる存在だ。だが、今は離れ離れになっており、蛍はいつか空と旅をする為に、旅をしている。

 

 パイモンは今日も朝からお腹が空いているのか先程から『お腹が空いたぞ〜』とお腹を抑え、普段より僅かに低い位置で空中に浮いて、度々俺に『蒼海〜……。まだ蛍が来ないぞ〜』と泣き言を言っていた。

 

 パイモンは小さな体をしているが、大の食いしん坊だ。

 

 それにミーハーで、お金に目がない。

 

 でも、それでも子供より小さな身体や、コロコロ変わる感情表現は幼く、不快な気持ちを与える事は少ない。

 

 パイモンはテイワット大陸を旅する蛍の自称、ナビゲーターだ。

 

「まあ、蛍は女の子だし、身支度とかに時間が掛かるのは仕方ないんじゃないか?」

 

「オイラだって女の子なんだぞ!」

 

「でも、パイモンは自分の支度をしたら直ぐに宿屋から出てきただろ? 蛍の場合パイモンの身支度も手伝ってるんだし、準備に時間が掛かるのは当たり前だろ」

 

「うぐっ……そ、それを言われると……」

 

 俺はパイモンに優しく諭しながら蛍の方を見る。

……ちょっと胸元に目がいきかかるのは許して欲しい。逸らしたから。

 今日も可愛い容姿をしており、頭には珍しい花飾りを付けている。

 

「パイモンは食いしん坊だね」

 

 蛍が柔らかく笑うと、パイモンも釣られて『へへっ』と笑い返す。

 

「じゃあそろそろ行こうか?」

 

「おう!」「わかった」

 

 蛍に呼びかけられ、タイミングが重なりながらパイモンと俺は返事をする。

 

 こうやって俺も旅をするようになって何日が経ったのか、直ぐには思い出せないがだいぶ長い事一緒に旅をしていると思う。

 

 ───このテイワット大陸のどこかにまだ空は居るのだろうか? 空と蛍がいつか再会し、旅を出来たら良い。

 

 そう思うのは俺だけじゃない筈だ。

 

 そんなことを考えながら俺も少し遅れる様に二人の後を追った。

 

※※※

 

「あ、蒼海! 蛍! またオイラが1番だぞ!」

 

 パイモンは俺達を追い抜き、両腕を腰に宛て、ドヤ顔でこちらを振り返る。

 パイモンのドヤ顔はいつからかもう見慣れてしまった。

「良かったな」と俺が呆れを隠しながら笑顔を浮かべて言うと、『へへん!』と胸を張って答える。

 

「オイラが1番に宝箱を見つけたんだぞ!」

 

「うん、良かったな」

 

 俺は適当に相槌を打ちつつ、辺りを警戒する様に見渡す。

 

 パイモンは元気よく跳ぶ位置を高くし、下った後、宝箱を目視すると宝箱の目の前で跳ねる。

 

「へへ、ついにお宝だ〜! 開けるぞ!」

 

『ガチャリ』とパイモンが勢いよく開けると、蓋が大きく開く。

 

 次の瞬間には淡い光を放ち、暗い洞窟内が僅かに照らされる。

 

 パイモンは嬉しそうに『やったぞ!』と飛び跳ねると、中に入っていた聖遺物やらを小さな両手に持ち、俺と蛍に見せびらかす。

 

「ほら! 聖遺物だぞ!」

 

「良かったね」と蛍は優しくパイモンに微笑む。

 

 俺も『おめでとう』と言いながら、パイモンの頭をポンポンと軽く撫でる。

 

 すると『へへ〜』とはにかんだ様に笑い返すので俺は可愛いな、と同時に実家で飼っていたペットを思い出す。

 

 微笑ましく思っていると『あれ? 私は褒めてくれないの?』と言いたげに蛍がジト目でこちらを見てくる。

 

 小さなパイモンは兎も角、蛍は女の子だから気軽に頭を撫でたりは出来ない。

 

 だが、蛍は『撫でて』と言わんばかりに、頭を少し下げるので俺は仕方なく『ありがとう』と言いながら頭を撫でると、嬉しそうに目を細めた。

 

 蛍は基本的に表情が乏しいが、親しい人の前では、表情が豊かになる面もある。

 

「それにしても全く……。お宝を見つけて嬉しいのはわかるけど、敵がいないか探した方が良いんじゃないか? 危ないって」

 

 蛍の髪から手を離し、パイモンに注意する。

 

「でも、この洞窟の敵は蛍達がもう倒したから大丈夫だろ? それに、このお宝はオイラのだぞ!」

 

「気持ちは分かるけど、パイモン、油断は禁物だよ。いつ敵が襲ってくるかわからないんだから」

 

 蛍はパイモンを注意すると、宝箱から取り出した聖遺物や素材等を自分の鞄にしまう。

 

「うう!わ、わかったぞ……」と少し不貞腐れながら返事をする。

 

 一応俺も蛍に剣の使い方は教わったのだが、流石様々な国を救ってきた英雄。

 

 俺が戦うより、蛍が戦う方が強い。

 

 男としてはちょっと複雑だが、その前には守られてばかりだったし、今もミスのカバーをして貰っている。

 

「オイラも手伝うぞ!」とパイモンは蛍と鞄に物を詰め込んでゆく。

 

「じゃあ、俺は辺りをもう少し見てくる」

 

「うん。わかった。気をつけてね」と蛍は俺に言う。

 

 このテイワット大陸には魔物や魔神がいるが、この辺りには強い魔物はいない様だし、安全な筈だ。

 

 だが、油断はしないに越したことはないので警戒する様に辺りを見渡しながら歩く。

 

 すると『おーい』というパイモンの呼ぶ声が聞こえる。どうやらもう終わったらしい。

 

 俺は辺りを警戒する事を止め、宝箱があった場所へと戻り、3人でその洞窟を後にした。

 

※※※

 

「頑張った後のご飯は美味しいな〜! な! 2人とも!」

 

「よくそんな小さい身体にご飯が入るな……」

 

 俺と蛍はパイモンの食べる姿を見ながら苦笑いをする。

 

 今日の依頼を終え、宿屋に着くとお腹を空かせたパイモンは備え付けの食事処に着けば、料理を注文するや否やすぐに手をつけていた。

 

 そして今に至る。

 

 俺はそこまでお腹が空いているわけでは無かったが、幸せそうにご飯を食べるパイモンを見ているとちょっとずつ食欲が湧いてきた気がしたので俺も料理を口にする。

 

 パイモンは「ん? もうお腹一杯か?」と俺の食事が進んでないのを目敏く見つける。

 

「あ、いや、まだ食べるよ」

 

 俺は慌てて料理を口に運ぶ。

 

 すると『へへん』と何故かドヤ顔で俺を見るので俺は首を傾げるが、すぐに『ああ』と思い至った。

 

「俺の分まで食べるなよ?」

 

「な、なんでわかったんだ!?」

 

 パイモンは驚いた様に言うので俺は思わず笑ってしまう。

 

 すると蛍も釣られたのかフフッと笑い出す。

 

「もう! 笑うなよ!」とパイモンは不貞腐れた様に言う。

 

 でもなんか可愛いからつい。

 

「いや、なんかパイモンにご飯を取られないか心配で……」

 

「そ、そんな事するわけないだろ! 確かにオイラは沢山食べるけど、そんな意地汚い事しないぞ!」

 

「ならデザートのオレンジ半分いるか?」

 

「いる!」

 

「くっ……か、可愛いなぁ、本当。くく……じゃあ後でやろうな。でも今はご飯を沢山食べたらどうだ?」

 

「おう! ありがとな、蒼海!」

 

 パイモンの満面の笑みを見て俺は『ああ』と返事をして食事を再開する。

 

 蛍もそんな俺達の様子を見ながら食事を再開していた。

 

※※※

 

「よし、じゃあ片付けて宿屋に戻ろうか」

 

 食事が終わり俺は2人に声を掛ける。

 

 2人は『うん』と返事をし、食器を返却して3人で宿の部屋の前に向かう。

 

「じゃ、俺隣だから」

 

「うん。またね」

 

 俺が軽く挨拶すると、蛍は優しく微笑む。俺は『ああ』と返事して隣の部屋に入る。

 

 蛍とパイモンは同じ部屋だ。

 

 性別が違うから俺とは違う。

 

 二人は同じでもいいと言ってくれたが、流石に男女が同じ部屋はまずい。だから俺は一人部屋だ。

 

「ふぅ……」

 

 俺はベットに横になり、今日の事を思い出すと自然と笑みが溢れてしまう。

 

 今日はとても楽しかった。蛍やパイモンと一緒に居るのは心地が良い。

 

 ……だけど、時々自分は『戻れる』のかと考えてしまう。

 

 だけど、それが無理だとわかっているからこそ辛いのかもしれない。

 

 俺は『ふぅ』とため息を吐くとそのまま目を瞑る。

 

 暗い瞼の裏はますます俺を不安にさせる。

 

 ……眠い筈なのに寝付けない。

 

『あー! くそ!』と悪態をつき、俺は起き上がり少し散歩する事にする。

 

 気を付けてれば大丈夫だろう。俺はそう考え、少し散歩する事にした。

 

※※※

 

「はぁ……」

 

『今日も月が綺麗だな』と俺はため息を吐く。

 

 もう夜も遅いからか、外は静かだ。

 

 だが、それが今の俺には心地良い。

 

 少しの寒さは俺を冷静にしてくれる。

 

 俺は何も考えないでいられる気がした。

 

『蒼海!』と背後から俺を呼ぶ声が聞こえる。蛍だ。

 

 俺がそちらを見ると、蛍はこちらに向かって走ってくるので俺は蛍の方を向き直す。

 

「良かった……探してたんだよ?」

 

「え?」

 

 突然の言葉に少し驚くが、いつも通りの笑顔をしたつもりだったが、俺の顔色を伺う様に蛍は言う。

 

「……眠れなかったんだよね」

 

 図星をつかれて思わず言葉に詰まる。

 

 もしかして、窓から見られていたんだろうか。

 

「少し散歩してたんだ」と俺は誤魔化す様に言う。

 

 すると蛍は察したのか『そっか』と言い、それ以上は聞いてこない。

 

 多分バレているだろうなと思いつつも言及はしない事にした。

 

「……良かったら、ちょっと話、しない? ほら、暗いし危ないから」

 

「ああ、良いよ。俺も眠れなかったし」

 

 俺がそう言うと蛍は『うん!』と笑顔で言い俺の隣に来るので、俺達は宿屋の庭で月を見ながら話をする事にした。

 

 備え付けにある白いベンチに座り、俺と蛍は丸い月を見ながら話をする。

 

「今日は楽しかったね」と蛍は言うので、俺は『ああ』と返す。

 

 少しの沈黙。

 

 すると、蛍は『ねぇ』と俺に声を掛けてくる。俺がそちらを向くと蛍は眉を下げ、少し不安そうな表情をしていた。

 

「蒼海はさ……」

 

「……ん?」

 

「蒼海は……元の世界に戻りたい?」

 

「……え?」

 

 俺は思わず聞き返してしまう。

 

「いや、ほら、蒼海ってあまり元の世界の話をしないよね? 多分、気を使って言わないようにしているんだろうけど、私は蒼海が元の世界に戻りたいなら協力するし……。それに、もし私が力になれる事があれば何でもするよ?」

 

 蛍の真剣な言葉に俺は思わず『はは』と笑ってしまう。

 

「な、なんで笑うの!?」

 

「いや、ごめん。そんな真剣に考えてくれてたなんて思わなくて」

 

 と俺が言うと蛍は少し不貞腐れる様に『もう』と言うので俺は少し笑いながら謝る。そして、また月を見ながら言う。

 

「俺の知ってる月は、満ち欠けをしていた。蛍も別の世界を渡り歩いている時、満ち欠けをしていた月を見たことがあるんじゃないか?」

 

「……うん」

 

 蛍は月を見ながら頷く。

 

 テイワットの月は常に満月だ。

 

 それが常識だから、丸以外の月なんて創作物にしか存在しない。

 

 そうじゃないのを知るのは一部の人間だけ。

 

 この場では俺と蛍だけだろう。

 

「俺は、正直わからないんだ。戻りたいのか、そうでないのかもわからない。中途半端なんだよ」

 

 俺は自嘲気味に笑う。

 

「ずっと何となくで流されて生きてきた。その方が楽だから。他人と違うものを選ぶのには勇気がいる。俺は『凡人』で『普通』だから、『普通』の生き方をしてきた」

 

 俺は月を見ながら言う。

 

 何となく、彼女の顔を直視出来なかった。

 

 蛍は『特別』で『選ばれた』人間だから。劣等感が俺をそうさせているんだろう。

 

 悪いとは思うが、今の俺は蛍の顔を見れない。

 

「……俺は、蛍が羨ましいのかも」

 

「私が?」

 

 蛍は俺の言葉に驚いた様に言う。

 

「うん。蛍って綺麗だし、強いから。いや、綺麗になりたい訳じゃないけど! ……なんと言うか、見た目だけじゃなく……ちょっと、クサくなるけど、内面もしっかりしてて、その。綺麗で、強いから」

 

「……」

 

 蛍は何も言わない。俺は『あ』と自分の失言に気づく。

 

「……ごめん。なんか、こう、言ってて、恥ずかしくなってきた」

 

 俺が言うと蛍は『ふふ』と笑うので、俺は驚いてそちらを向くと蛍は俺の方を見ていた。

 

 月光が蛍の顔を優しく照らす。

 

 俺は思わず目を奪われてしまった。

 

 見た目も影響して、ふんわりとした空気が彼女の魅力をより引き立たせる。

 

 本当『蛍』みたいな女性だ。

 

「蒼海だって、凄いよ」

 

「……え?」

 

 蛍が優しい笑顔で言う。

 

 俺はその言葉に呆気に取られた。だが、そんな俺を見た後微笑んで言う。

 

「私、知ってるよ? 蒼海の努力。私達が寝てる時に色々本読んだり、朝早く起きて素振りとか走り込みとか、沢山してる事とか」

 

「……! 気づいてたのか……」

 

「うん、本当は言うと悪いかなって思ってたけど、でも、蒼海は頑張ってるから」

 

「……」

 

 俺は何も言えないでいた。蛍に気づかれていたなんて……。恥ずかしいな。

 

「だから私はそんな努力家な蒼海が凄いと思うし、尊敬してるよ」

 

「……ありがとう」

 

 と俺は小さく言う。少し顔が熱い気がする。多分、赤くなっているんだろうと思いながらも月を見上げる。

 

 そして次は、蛍の方を見て言う。

 

「月、綺麗だな」

 

 今度は直視出来た。彼女の長い睫毛や、瞳の奥にいる俺が見える。

 

 彼女は一瞬呆けた表情をしたかと思えば優しく笑う。

 

「うん。綺麗」

 

 そして月を見ながら言う。

 

「月はいつでも見れるよ、何度でも、蒼海と、こうして」

 

 その言葉に俺は『そうだな』と笑うと、彼女もまた微笑んだ。

 

 

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