If   作:F1さん

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空とパイモンと女性プレイヤー

 

私には日課にしている事があった。

それは、仕事を終えてタブレットでやるスマホゲームである。

よっぽど忙しくない時以外は帰ったらご飯、お風呂、の後にゲームをして身支度をして寝る、というのが日課である。

ゲームのコントローラーを動かせば画面のキャラクターが動き回る。

散々の給料がキャラクターに解けてしまったが私には後悔は無かった。

 

「──よし、と。明日は休みだから世界任務やろう……ってなんだろう、このエリア」

 

たまに攻略サイトを見たり、SNSを見るが知らない場所だ。

 

たまにこういう要素があるからこのゲームはやめられない。

 

私は最近好感度がMAXになり名刺を貰ったがついつい頼りがちの好きなキャラクターを操作し────。

 

 

 

※※※

「───大丈夫?」

 

目が覚めた時、目の前にいたのは金髪の美少年だった。

白いお腹が眩しい。

三つ編みをしている彼は何度も見た事があるキャラクターに似ていた。

その近くでは白い小さな少女がふわふわと浮いている。

 

「そ、そうだぞ!大丈夫か?怪我はないか?」

「えっと、本当に大丈夫だよ。」

 

金髪の少年の後ろでふわふわと浮いている少女は泣きそうな顔をしていて、彼はそれを気に掛けている。

 

「本当に怪我は無いか?何か体に違和感は?」

「本当に無いよ。それより……コスプレ?」

 

私がそう言うと目の前の二人は固まった。

だが──金髪の少年が口火を切る。

 

「コスプレじゃないよ、羽未。俺は空。」

「空?……え、ん?」

「うん。俺は旅をしているんだけど、あとは、旅人とかって呼ばれてるんだ。」

 

彼はそう話すが私の頭はまだ混乱している。

なんで私の名前を知っているんだろう。

空、は私の好きなゲームの主人公で、私が選んだ方じゃないか。

 

「私、なんでここにいるの……?」

「よく分からないんだ。俺は声が聞こえていたから駆け付けたんだけど」

 

そう言われると私はいつもの様にスマホゲームをしていたとした事を思い出す。

でも。名前……私の名前を知っているという事は……。

 

「……あの、私の事知ってるの?」

「うん。」

「っ……!」

 

私は空の言葉に目を見開いてしまう。

────どうして名前が知られてるんだ……?スマホゲーム『原神』ではペンネームを使っている。

本名を使う人も少なくはないが、私はどうしても本名を使いたくなかった。

 

「どうして……私の名前……」

「え?だっていつも俺を見守ってくれてるよね?」

「え」

 

私は空の言葉に固まる。

いや、確かにいつもゲームを操作しているけれど。まさか。いや、そんな訳がない。

 

「空、あの……気になってたんだけど、さっきから何を言ってるんだ?オイラはさっぱり分からないぞ。」

「え?俺はいつも見守ってくれてる人がいるのは知っていたんだ。だから会いたいなって思ってて。そしたら声が聞こえたんだ。」

「……見守ってる?オイラは空が何を言ってるのか分からないんだぞ?」

「ねぇ、羽未も……俺の事を知ってるんだよね?」

「…………。」

 

私は言葉が出ない。

 

そんなの知っているに決まってるじゃないか!!!と叫びたくなったけれど言葉に出せなかったのだ。

そんな訳ないじゃない、とか言えば良かったのだろうけれど言葉に出来なかったのだ。

だって、こっちを認知していたって事になってしまう。そんなの怖すぎる。

私は恐る恐る空を見た。

彼は本当に嬉しそうに目を輝かせて私を見ていた。

 

そんな訳ない。そんな訳ない!

 

でも───。

 

「羽未?ねぇ、君は俺の事を知ってるんだよね?」

「……しっ、知らないよ!私は、空なんて知らない!」

 

そう私が叫ぶと目の前の空は不思議そうに私を見る。その後ろで浮遊していた小さな少女は少しだけ驚いた様に目を丸めて私と空を交互に見ているのが分かった。

 

「……知らない、か。」

「し、知らない……知らないよ……!」

 

私はもう何も言えなかった。

 

───最悪だ、終わった、全て終わりだ。

 

これが夢であって、と頬に触れたが、痛い。夢じゃないようだ。

そんな私の様子を見て金髪の少年(認めたくない!)は小さく溜め息を吐いてから口を開く。

 

「空、もう良いだろ。この子、本当に何も知らないんかじゃないか?」

「……でも、俺は知ってる。」

「だから!さっきから何を言ってるんだ!?」

「本当に知らないの?俺の事。」

 

彼は私の方を真っ直ぐに見て、真剣な表情でそう言った。

ああ、もう駄目だ。

 

「お、おい!?」

 

慌てて心配している白い少女が見えたが、今の私には気にしている余裕は無かった。

 

────ここまで来て、知らないなんて言える……!?

 

ああ、終わった。人生終了だ。

私は一人そう嘆く事しか出来なかったのだった。

 

※※

 

私は荷物も何も持ってないし、戦えない。

だから、私はこの金髪の少年についていく事にしたのだ。

 

「本当に良かったのか?オイラは別に良いけど……。羽未?は大丈夫か?顔色が悪いぞ?」

「……。」

 

白い少女──パイモンが見える。

本当に浮いているんだな……と私は現実逃避をしながら空の後ろをついていく事しか出来なかった。

いや、そうするしかないのだ。だって何をされるか分からないじゃないか!!

 

「なぁ?あんまり気にするなって!空は凄いやつなんだぞ!色んな国を回ったり、悪い奴らと戦ったりしてるし!普段はぼんやりした所もあるけど、いざとなったら頼りになるんだぞ!……だから、安心してくれ!」

「……う、うん。」

 

私は生返事しか出来ない。

そんな私の様子を見てパイモンは困った様に首を傾げるがそれでも空は何も言わなかった。

彼が何を考えているかなんて私には分かるはずもないのだ。

 

「ねぇ、君は本当に俺の事を覚えてない?」

「……」

「そっか……。」

 

いや、そこで寂しそうにしないで欲しいんだけど!?と叫びたかったけれどもう何も言えない私。

怖すぎる。わーい、旅人と一緒に行動だー!なんて無邪気に喜べる程私はもう若くないのだ。社会人だし。

 

「……でも、俺は君と一緒に旅をしたかったんだ。」

「え?」

「だから、嬉しいな。」

 

いや……もう本当に怖いんだけど?

 

私は空の言葉に思わず彼を見るが彼は嬉しそうに笑っているだけだし、その横ではパイモンが呆れた様に溜め息を吐いているだけだった。

 

※※※

 

「羽未はフードを絶対被っておいた方が良い。」

「え?なんで?」

「みんなにバレたら面倒なんだ」

「えっと……うん。そうだね、分かったよ……。」

 

空は私の手を取ると先程服と一緒に購入していたマントのフードを被せてそう言った。

なんでバレちゃ駄目なんだろ?

よく分からないが私は大人しく従う事にした。なんかヤンデレっぽい。

ハイライトがない気がする。お願いだからタルタリヤみたいにならないで下さい。

空くんは明るいけどたまにお茶目な所が可愛いキャラであって欲しい。

私はそう思いながら前を歩く二人の後ろ姿を見る。すると、突然空くんが振り返ったので私は驚いてしまった。

 

「ねぇ、羽未は食べ物とか好き嫌いある?」

「え?……あ、うん……特に好き嫌いは無いよ……」

 

急にどうしたのだろう? 私がそう思っていると空は嬉しそうに微笑んだ。

その笑顔に少しだけ見惚れてしまう。

 

「そっか!なら良かった!」

「……?」

 

どういう意味なんだろう?別に普通だと思うのだけれど。私は空の言葉に不思議に思いながらも歩みを進めるのだった。

 

※※※

 

夜、焚き火の前に座って空が作ってくれた料理を食べながら私はぼんやりと空を見上げていた。

空は少し離れた所で剣の手入れをしている様だ。

 

「なぁ……本当に大丈夫か?オイラはやっぱり心配だぞ……」

「うん……大丈夫、かな……?」

 

そんな私の様子を見て心配そうに声を掛けてくれるパイモン。

今日は野宿をする事になったので火を起こし、料理を作っていた。

空が作ってくれた料理を食べているけれどとても美味しい。空は何でも出来るらしい。凄いな、と素直に思った。

 

「今日はもう寝よう!ほら、色々あったから羽未も疲れているだろ?な?」

「ありがとう。」

 

私はお礼を言ってからテントの中に用意してくれた寝袋に入った。すると空はこちらにやって来て私の隣で横になった。

 

「おやすみ、羽未。」

「……お、おやすみなさい……。」

 

小さな声でそう言うと空は嬉しそうに笑った後目を閉じる。そしてすぐに寝息が聞こえてきたのだった。私もその後を追う様に眠りについたのだった──のだが……。

 

(眠れない……!)

 

いや、眠れるはずがない!だって隣に空が居るんだよ!?無理だよ!緊張するに決まってるじゃん!? 私は心の中で叫ぶ。

ああもう!と私が頭を抱えていると私の隣で寝ていたはずの空はパチリと目を開けてこちらを見た。

 

「眠れなかった?」

「……あ、えっと……うん……。」

 

本当はきみのせいだ!と言いそうになったけれど堪えた。

 

「そっか……なら、ちょっと散歩しようか?」

「……うん。」

 

私は戸惑いながらも空について行く事にしたのだった。そして二人で森の中を歩く。すると綺麗な湖が見えたのでそこに行くと空はその場に座る様に促したので私もそれに従って隣に座る。

すると彼は私を安心させる様に微笑んだ後口を開く。

 

「ねぇ、どうして俺の事を知らないって言ったの?」

「……それは……。」

「もしかして……会いたくなかった?」

 

そう言った空はとても寂しそうな表情をしていて私は思わず言葉に詰まってしまう。そしてそれと同時に罪悪感を感じてしまった。

 

「ごめん、なさい……。」

「謝らなくて良いよ。」

 

空は優しい口調でそう言ってくれた後私を見つめる。

その目はやっぱり寂しげで悲しそうだった。

 

「俺は君の名前を知ってるけど、君は俺を知らない……。」

「うん……。」

「でも……良いんだ。これから仲良くなりたいから!」

「え?」

 

それはどういう意味なのか分からなくて私は思わず間抜けな声を出してしまった。

けれど空は気にせずに話を続ける。

 

「ねぇ、羽未の事を教えて欲しいな。」

「……わ、私は……。多分、年齢は君より下だけど……。多分、見た目より年上だもんね?」

「うん。」

 

空は私の話を促してくれる。だから私も少しずつ自分の事を話したのだった。そして気がついた時には空は安心した様に微笑んでくれていて、その笑顔に不覚にもときめいてしまったのだった──。

 

(な、なんか調子が狂う……!)

 

そう思いながらも何故か嫌じゃない自分がいるので、なんとも言えなかった───。

 

※※※

 

「じゃあ、羽未は日本って所にいたんだ。」

「うん。」

 

私達は移動し、二人で焚き火を囲んでいる。

 

私は空に今までの旅の経緯について聞いていた。

 

空は楽しそうに話してくれるし、私の話も聞いてくれる。それが嬉しかったからついつい話し込んでしまったけれど大丈夫だろうか?と心配になりながらも空を見たが彼はいつも通り穏やかに微笑んでいたので安心する事にした。

パイモンテントの中で寝袋に入って寝ている。だから今ここには私と空の二人しかいない。

なんだか少し気まずくて話題を探す。

 

「あ、あの……空。」

「うん?」

 

私は思い切って彼に話し掛けたけれど緊張してしまい上手く言葉が出なかった。

そんな私に空は優しく微笑んでくれる。

それがなんだか恥ずかしくて俯いてしまうがそれでもなんとか言葉を絞り出した。

 

「……その……ありがとう……。」

「え?何が?」

 

私の言葉の意味がよく分からなかったらしい彼は首を傾げる。だから私は慌てて説明を始めたのだった。

 

「えっと……その、色々してくれて……助かった。私一人だったら、きっとどうなってたか分からない……。」

「うん。」

 

彼は嬉しそうに微笑んでいるだけだ。でも、私は言葉を続けた。

 

「だから……ありがとう。」

「……。」

 

私がもう一度お礼を言うと彼は何故か黙り込んでしまった。

 

もしかして迷惑だったのだろうか?と不安になったが杞憂だったようだ。

何故なら空の顔は真っ赤に染まっていたからだ。

 

「あ、えっと……うん。どういたしまして。」

「う、うん……。」

 

そう答えてから私と空はお互いに黙り込んでしまった。どうしようと思っていると空が口を開いたので私は黙ってその言葉を待つ事にしたのだった。

 

「羽未はこれからどうしたい?」

「……え?ど、どうしたいって……。私は……帰りたいよ。」

「うん。それは分かるんだけど……。」

 

空はそこで言葉を詰まらせた後に再び口を開いたので、今度は私が黙って聞く事にしたのだった。

 

「その、俺は君と一緒に居たいと思ってるんだ。だから、君が帰りたいなら俺が協力するから一緒に行こう?」

「……え?でも、私何も出来ないよ?それに……迷惑じゃ……。」

「迷惑なんかじゃないよ。それに羽未は俺に凄い力をくれたんだ。だから、君の力になりたいと思ってる。」

 

空の言葉に私は驚いてしまう。

だってそんな風に言われるとは思ってもみなかったから……。

でも、空は真剣に言ってくれているのが分かるから私も誠意を持って答えないといけないと感じた。

だから、私も自分の気持ちを素直に話そうと思った。

 

「……えっと……私の目的は元の世界に帰る事だけど……。」

「うん。」

「私はこの世界で空達に助けてもらったから、出来れば一緒に行動したいと思ってる。」

「……うん。」

 

私は空の目を見ながら話す。

空はそんな私を見て微笑んでくれた後、私の話の続きを待ってくれた。だから私も安心して自分の思いを伝える事が出来た。

 

「でも……私には戦う力なんて無いし……。足手まといになるだけかもしれない……。」

「そんな事ないよ!羽未は優しい人だと思う。それに、魔物を倒すだけが旅の全てじゃないし。」

「でも……。」

 

私はそこで口籠る。そんな私に空は微笑んでくれる。

 

「俺は羽未が一緒に居てくれると嬉しい!」

「っ!わ、私も……空達と居たい……!」

 

私がそう言うと空は嬉しそうに笑ってくれたので、初めて私も自然と笑顔になる事が出来たのだった───。

 

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