If   作:F1さん

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ウェンティと 女性プレイヤー

 

 

「ほらほら〜沢山飲んでいいんだよ?」

「その見た目でお酒をドカドカ入れてくるのはやめてくんないかな!?」

 

 私は顔を赤くしてヘラヘラ笑っている風神──ウェンティに鋭くツッコミをいれる。するとウェンティは気にもとめずに言葉を続けた。

 

「だって、君がお酒を飲みたいって言うから」

「それはそうだけど……って、もう空だよ!? これ全部飲んだの!? まだ開始十分も経ってないのに!!?」

 

 私は私の家のリビングの机に置かれた、酒瓶の本数が3本になったのを見て思わずツッコミを入れる。

 ウェンティはその言葉を聞いて当たり前とでも言うように答えた。

 

「ん? まぁボクはお酒に強いからね〜。大丈夫だよ~?」

「理由になってないよ!? あのさあ、自分は見た目分かってる!? 未成年にしか見えないんだよ!? それがドカドカお酒を飲む姿は……なんか、こう。叱りたくなっちゃうよ!?」

 

 私はウェンティにビシッと指を刺しながら言ってやった。だが、ウェンティは酒瓶をテーブルに置きヘラヘラと笑いながら返す。

 

「え〜? 見た目とか関係ないよ、ね?」

「ダメだ……酔っ払ってて話通じない……」

 

 私はウェンティを見て、はぁ。とため息をついて天を仰ぐ。

 するとウェンティが私の肩を軽く叩き、言った。

 

「まぁまぁ、細かいことは気にしないでさ! もっとお酒を飲みなよ!」

「誰のせいで悩んでると思ってるの!? ……はぁ、もう。今日は飲むしかないかあ」

 

 私はウェンティに促されるままグラスに入った酒を口に運ぶと、ウェンティは嬉しそうに言った。

 

「そうそう! お酒は飲んでなんぼだよ!」

「それはそうなんだけどさあ……なんか、こう。もう、いいや!飲んでやる!」

 

 私はグラスに入った酒を一気に飲むと、ウェンティはどんどん酒を注いでいく。そして数分後には空になった酒瓶がゴロゴロと机の上に転がっていた。

 

※※※

 

「あ~、もう! 飲みすぎた!」

 

 私は机に突っ伏して頭をグリグリと擦り付ける。するとウェンティが心配そうな顔をして私の背中をさすった。

 

「大丈夫~? 吐きそう?」

「う〜……」

 

 ウェンティの言葉に何も返せず唸ることしか出来ない私を見て、ウェンティはなにかを閃いた素振りを見せた後、私の頭を撫でて言った。

 

「やっぱりお水を飲んだほうがいいよ~? ボクが持ってきてあげるから待っててね!」

「う~……ありがと……」

 

 私が弱々しい声でウェンティに感謝すると、ウェンティはニコリと笑って台所へと向かっていった。私はウェンティの後ろ姿を眺めながらぼーっと考える。

 

 なんで私ここにいるんだっけ。

 

 目覚めた時にはモンドにいて。ノエルに助けられて、今はモンドで花屋の手伝いとか、色んな仕事をしてて。それで……。

 

「あ」

 

 考え事をしていると、ウェンティが水を持って戻って来たようだ。

 

 笑顔を浮かべながら「ほら、お水だよ~? ゆっくり飲んでね?」と言いながら、水が入ったグラス私に差し出す。

 

「ありがと……」

 

 私はグラスを受け取りながら小さく呟いた。ウェンティは私が水を飲み干す様子をニコニコしながら見ていたが、ふと何かを思い出したかのように口を開いた。

 

「そういえばだけどさ」

「うん?」

 

 急に話しかけてきたウェンティに驚きつつ私が返事をすると、ウェンティは言葉を続けた。

 

「羽未、最近無理しすぎじゃない?」

「……え」

 

 ウェンティの一言に私は思わず固まってしまう。そしてウェンティが続けて言った。

 

「だって、君、いつも仕事とかで忙しそうだよね? それに、最近なんて特に顔色悪いよ? ちゃんと寝てる?」

「え……あ、いや。その……」

 

 私はウェンティの言葉にしどろもどろになりながら答える。するとウェンティは私の顔をじっと覗き込みながら言った。

 

「目の下に隈もあるし、ちゃんと寝てないでしょ? 無理しちゃ駄目だよ」

 

 そういいつつ、ウェンティの指が隈を優しくなぞる。

 

 その触れ方が妙にくすぐったくて、思わず目を瞑った。するとウェンティがクスッと笑った気がする。

 

「ちょ、ウェンティ……」

 

 私が文句を言おうと目を開けると、目の前にウェンティの顔がありドキッとした。そして私の目を真っ直ぐに見つめると、ウェンティは真面目な口調で言った。

 

「ねぇ、羽未。君が無理をしている姿を見るのはボクも辛いんだ」

 

 普段のニコニコとして、掴みどころがない風のように自由な雰囲気のウェンティとは違う、真剣な表情に思わず息を呑む。そして私は何も言えず固まってしまった。

 

「だから、ね? 無理しないで。もっと頼ってくれても大丈夫だよ?」

 

 そう言ってウェンティは私の頭を優しく撫でた。その仕草にドキリとするが、同時に安心感を覚えた。

 

「うん……ありがとう」

 

 私が小さく呟くと、ウェンティは満足そうに笑った。そして「よし! じゃあ今日はとことん飲もう!」と言って酒瓶を手に取ろうとする。だが私は慌ててその腕を掴んだ。

 

「まだ飲むの!? もう台無しだよ!? さっきまでの感動はどこいった!??

「え〜? だって飲み足りないんだよね〜」

「えぇ……頼むからもうちょっと節度持って飲もうよ……」

「え? いいじゃん別に〜」

「もう、ウェンティ……きみは……」

 

 私がため息をつくと、ウェンティは悪戯っ子のように笑って言った。

 

「まあとりあえず今日は朝まで付き合ってもらうからね!」

 

 その言葉に私はもう一度深いため息をついた後、諦めたように笑った。

 

「あのね。私だから許されるけど、他の人にはこんな事しちゃ駄目だよ?」

「心外だなぁ~、ボクは羽未にだから言ってるんだよ? ほら〜飲んで飲もう!」

 

 ウェンティはケラケラと笑いながらグラスに入った酒をグイッと煽る。

 

 その様子を見て私は額に手を当てて言った。

 

「……はぁ。もう知らないからね」

「えへへ〜、羽未だーいすき!」

「はいはい」

 

 ウェンティの軽口を適当にあしらいつつ、私はその日、朝までウェンティに付き合わされたのであった。

 

※※※

 

「〜♪」

 

 ウェンティが詩を口ずさむと、鳥達がウェンティの周りに集まってくる。

 

 容姿が幼い少年(中学生くらい?)に見えるからか、中性的だからか、神秘的な光景だ。

 

 しかもこの場所は森なので、まるでおとぎ話の世界にでも迷い込んだかのような錯覚に陥る。

 

 こうやって見ていると普段のウェンティとのギャップに目眩がしそうだ。

 ウェンティはそんな私の気持ちなど知らずに、気持ち良さそうに目を閉じている。

 その姿はまるで絵画のように美しくて、本当に神なんだな、と改めて認識した。

 

 私はしばらくその姿に見惚れていたが、いつまでもこうしてはいられないと思い口を開く。

 

「ウェンティ」

 

 私が声をかけるとウェンティはゆっくりと目を開いた。そして私を見るとにっこりと笑う。その笑顔は無邪気で愛らしいものだったが、どこか妖艶な雰囲気を孕んでいるように感じた。

 

 ウェンティは私を見ると嬉しそうに駆け寄ってきて、そのまま抱きついてきた。

 

「わっ! ちょ、ちょっと!?」

 

 私は慌てて引き剥がそうとしたのだが、ウェンティは私の背中に手を回した状態で離そうとしない。それどころかさらに力を込めてくる始末である。私は諦めて抵抗をやめた。

 

 そしてしばらくそのまま抱き合った後、ウェンティが耳元で囁くように言った。

 

「ねぇ、羽未」

「……何?」

 

 私が聞き返すとウェンティはくすりと笑い、私の髪をさらりと撫でた。その優しい手つきにドキドキする。

 

 コイツ、私以外にもこんな事してるんだろうか。

 と一瞬邪推してしまったが、すぐに頭を振ってその考えを追い出す。

 

 ウェンティは私のそんな様子など気にもとめず、言葉を続けた。

 

「ボクね、嬉しいんだ」

「……何が?」

 

 私が聞き返すとウェンティは満面の笑みで言った。

 

「君には会えないと思っていたから。別の世界にいる君をこうして直接ボクが見ることは出来ないと思ってたから。

だから、こうして君と出会えて本当に嬉しいんだ」

 

 ウェンティはそう言って私をぎゅっと強く抱き締めた。

その力強さに少しだけ苦しくなるものの、それ以上にウェンティが喜んでくれていることが伝わってきて、私も思わず笑みが溢れてしまう。

 

「……そっか」

 

 私はそれだけ呟くとウェンティの背中に腕を回した。そして彼の背中をぽんぽんっと軽く叩く。

 

 よく分からないけれど、私がゲーム越しに見ていた画面は、彼らからは夢の中で私の事が見えているらしい。

 と言っても全部みえる訳では無いらしいけれど。

 

 でも、こうして画面越しではなく、現実でウェンティに会えて良かったと思う。ゲームの中では知りえなかった彼の一面を知ることが出来て嬉しかった。

 

 私はそのままウェンティの背中を優しく撫でながら言う。

 

「私も会えて嬉しいよ」

 

 私がそう言うとウェンティは嬉しそうに笑って「ほんと〜?」と言った。

 

「ホントだよ」

 

 私が答えるとウェンティはより一層強く抱き締めてくる。そのせいで少し息苦しいけれど、今はそれが心地よかった。

 

 しばらくそうしていたが、やがてウェンティが腕の力を緩めたので私はそっと彼の身体から離れる。するとウェンティは少し残念そうな顔をしていたが、すぐに笑顔になって言った。

 

「ねえ羽未」

「何?」

 

 私が聞き返すとウェンティは笑みを浮かべながら言った。

 

「これからもよろしくね?」

 

 その言葉に私はクスッと笑う。そして彼の頭を撫でながら言った。

 

「もちろん」

 

 ウェンティは私の顔を見ると満足げな表情を浮かべて、私に抱きつく。そして私の耳元に口を寄せると囁いた。

 

「ねえ羽未」

 

「何?」

 

 私が聞き返すとウェンティは満面の笑みを浮かべて言った。

 

「大好きだよ?」

 

 私はその言葉に思わず赤面する。

 

 ウェンティは私の反応を見ると満足そうに笑い、私の頬にチュッと軽いキスをした。

 

 私は恥ずかしさを誤魔化すためにウェンティの頭を軽く叩く。するとウェンティは楽しそうにケラケラと笑った後、私から離れた。

 そして私に向かって手を差し出すと言った。

 

「ほら、行こう? せっかく二人きりになれたんだから!」

 

 私は差し出された手をそっと握るとウェンティに引っ張られるようにして歩き出すのだった。

 

※※※

 

 それから私達は他愛のない会話をしながら森の中を歩いた。ウェンティは終始楽しそうにしていて、その笑顔を見ているだけで、不思議と私も幸せな気分になれる。

 

「羽未」

 

 ふとウェンティが立ち止まり私を呼んだ。私は足を止めて、彼の方を見る。すると彼は私の目をじっと見つめながら言った。

 

「君は今幸せ?」

 

 突然の質問に私は一瞬戸惑ったものの、すぐに笑みを浮かべて答えた。

 

「うん。幸せだよ」

 

 私が答えるとウェンティは嬉しそうに微笑んで「良かった!」と言った後、私の手を引いて再び歩き出す。

 

 その足取りはとても軽やかだった。だが、しばらく歩いた後、ウェンティは足を止めると私の方を向いて言った。

 

「ボク、また旅に行ってくるね」

 

 その言葉に私は驚き、思わずウェンティの方を見る。すると彼は真剣な眼差しで私を見つめていた。

 

「うん……分かった。気をつけて行ってきてね?」

 

 私が言うとウェンティは優しく微笑む。そして私の頭をポンっと叩くと言った。

 

「うん。羽未も無茶しちゃ駄目だからね?」

 

「分かってるよ」

 

 私が苦笑いで答えるとウェンティは満足そうに笑い、私の頭をわしゃわしゃっと撫でた。その仕草に思わずドキリとしてしまうが、何とか平静を装う。

そしてそのままウェンティに背を向けると、歩き出した。

 

 すると後ろからウェンティが追いかけてきて私の隣に並ぶと、そのまま私の手を掴んで指を絡めてくる。

突然の事に驚いたものの、私は何も言わずに彼の手を握り返した。ウェンティは満足そうに微笑むと私に言った。

 

「待っててくれる? ボクが帰ってくるまで」

 

 その言葉に私は思わずドキッとしてしまう。だが、それを悟られないように平静を装って答えた。

 

「……うん。待ってるよ」

 

 私が答えるとウェンティは嬉しそうに笑い、私の頬に軽くキスをした後、耳元で囁いた。

 

「じゃあ、行ってくるね?」

 

 そう言うとウェンティは私の手を離して再び歩き出す。その後ろ姿を見つめながら私は小さく呟いた。

 

「うん……気をつけて……」

 

 そう言って手を振るとウェンティはこちらを振り返り満面の笑みを浮かべて大きく手を振り返す。

 

 私は彼の姿が見えなくなると、息を吐いた。

 

「……はぁ。行っちゃったか……」

 

 私は独り言のように呟くと、自分の手を見る。そこにはウェンティの温もりが残っているような気がした。

 

 それを見つめながら思うのはウェンティの事ばかり。

 

「早く帰ってこないかな」

 

 そう呟いた声は誰にも聞かれる事もなく、静かに森の中に響いた。

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