「あら、目覚めたのね」
「は?」
目が覚めて真っ先に目に入ったのは紫髪のポニーテールの美少女だった。
猫を思わせるような髪と雰囲気に、アメジスト色の瞳。
整った顔立ちに、スラリとしたスレンダーな体つき。
全てが完璧とも言える美少女だ。
しかし、次の彼女のその一言には問題があった。
「蒼海って意外とだらしないのね。まあ、そういうのも好きだけど」
そう言って、俺の寝ているベットに腰掛けた。
……俺は彼女に物凄く見覚えがある。
昨日はスマホゲームを終わらせて、寝ていたはずなのだが、彼女はその『原神』に出てくるキャラクターにそっくりなのだ。
まさか、レイヤー?ドッキリ?
慌てて周りを見回せばそこは中華風の建物だった。
多分、家具は高そうだと思う。
あと、帝君っぽい銅像とかが布に隠れてるけど、見えてる。ああ、好きだもんな……。
高級うんぬんは日本では滅多に見れないものばかりだからそう俺は判断した。
「どうしたの?そんなにキョロキョロして」
刻晴(仮)が俺を不審そうな目で見つめている。俺それを見て我に帰った。
「ここは、どこ?何で俺はここに?」
俺の今感じている疑問はそれしかない。どうしてここにいるのか、さっぱり分からないのだ。
「え?ここがどこかって?璃月の私の部屋だけど?」
「は?」
璃月……璃月ってまさか『原神』に出てくる璃月か?あの真っ赤な建物ばかりある璃月? いやいや、そんな訳がない!
「いや、璃月ってあの璃月?ってまった、今、えっと、君の部屋って言ったよな?男を部屋に連れ込むのは流石に不味くないか?」
俺はそう言って、刻晴(仮)に抗議する。
しかし彼女は俺の抗議を鼻で笑った。
「は?別に気にしてないわ。だって蒼海は私の恋人だもの」
「へ?」
「え?何その反応?もしかして……私の事、忘れたの?あんなに色んな場所に連れて行ってくれたし、私の事褒めてくれたじゃない。それに……」
刻晴(仮)は思い出すかのように話し出した。
その表情は、本当に俺が恋人であるかのように、とても嬉しそうに話す。
……正直めちゃくちゃ可愛い。
アイドル並みの可愛さで、賢くて身分も高い。
彼女は、俺にとっては高嶺の花だろう。
でも、ちょっと冷静になると、怖い。
それ、ゲーム内の話だよな?ゲームと現実の混同は不味い。
待ってくれ、そもそもこれは夢なのかもしれない。
だからよく使っている刻晴が恋人だなんて、ぶっ飛んだ現象が起きてるのか?
俺が悩んでる間も刻晴は話し続ける。
「蒼海は私の事を愛してくれた。私はそれが嬉しかったのに……」
そう言って刻晴(仮)は泣き始めた。
俺は慌てて彼女の背中を摩る。
うわ、柔らかいしいい匂い…
…って匂い感じてる!?
って事は、これ!夢じゃないだろ!?
え、これ、現実なの!?
こんな都合のいい現実あるの!?
でも、絶対俺選ばれた存在とかじゃないって!
チートとか持ってないって!……いや、あったら欲しいけど。
「刻晴、ごめん。俺、ちょっと混乱してて……その、本当にごめん。」
俺がそう言うと刻晴は泣き止んだ。
そして、俺の服に顔を埋めると言った。
「別にいいわよ。私は蒼海が私を選んでくれただけで嬉しいの。」
「そ、そっか……」
ウワー声かわいい!泣いてても可愛かった。
でも刻晴ってあんまり泣かなさそうなのに俺の前では泣いてくれるのは……嬉しいな。
……って俺、何考えてんだよ!
それはなんか違うだろ!
でもちょっと嬉しいって思うのは仕方なく無いか?
なんというか、こう。自分が引けた!ってキャラを育ててて愛着とか湧くし、そういう、気持ちに近いというか。
って、俺は誰に言い訳してるんだよ。
それに刻晴はゲームのキャラで、現実とは違うし……。
でも、これは夢じゃなくて現実なんだよな?
なら……彼女をそういう風に見るのは、失礼じゃないか?
「えっと、刻晴……」
「何?」
「その……俺、さ。多分、刻晴の知ってる蒼海じゃないんじゃ?だから……」
「は?何言ってるの?」
俺がそう言うと刻晴は怒ったように俺の胸ぐらを掴んできた。
「え?いや、待って!最後まで聞いてほしい!な!?」
刻晴は手を離してくれた。俺は一度深呼吸すると話し続ける。
「えっと、だから、また初めからやり直したい。刻晴の事をもっと知りたい。」
そう言って、俺は刻晴の手を両手で包み込む。彼女は不思議そうに俺を見たあと、優しく微笑んだ。
「いいわよ。だって私達は恋人よ。蒼海を知った時から私はそう決めたもの。」
「ありがとう、刻晴。」
俺がそう言うと彼女は少し照れたように笑った。
その笑顔はとても可愛くて、俺は思わず見惚れてしまった。
「でも、君が私の事を知らないなんてちょっとショックね……でも、時間の無駄なのは確かね。じゃあ改めて自己紹介をしましょう。」
「あ!それいいな!そうしよう!」
俺達はベットの上で向かい合ったまま話し始める。
まず最初は俺からだ。俺は自分の名前と年齢を言うことにした。そして好きな食べ物とか趣味も話す。
刻晴もそれに倣うように自己紹介をする。
それは知っている知識だけれど彼女の口から語られるのを聞くのはとても新鮮で楽しかった。
話が終わったあと俺達は笑い合った。
「ふふっ、なんだか変な感じね」
「ああ、そうだね」
それからは他愛もない話をした。
好きな食べ物とか嫌いなものとか趣味とか色々話した。
刻晴は俺の話を楽しそうに聞いてくれた。
それが嬉しくて俺もたくさん喋った。
でも、冷静に考えたんだけど、これからどうしよう?
これが夢じゃないならどうやって帰る?
……俺が寝て、起きたらいつもの部屋だったらいいのに……。
「ねぇ、蒼海?」
俺がそんなことを考えていると刻晴が話しかけてきた。
俺は慌てて返事をする。
「ん?何?」
「余計な事考えてる?いいのよ、私が君の面倒は全部見てあげる。それに璃月で幸せに暮らせるように協力だってするわ。だから、心配しないで」
そう言って彼女は微笑んだ。
「刻晴……」
「あ!でも、他の子と仲良くするのはダメよ?私以外必要ないんだから!」
そう言って刻晴は俺の腕に抱きついてきた。
柔らかい感触にドキッとして、俺は慌てて振り解こうとしたけど出来なかった。
また泣かせたくないし……。
「分かったよ……」
俺がそう言うと刻晴は嬉しそうに笑った後、俺に抱きついてきた。
俺はドキドキしながらそれを受け入れた。
このまま刻晴と暮らすのもいいかもな……。
でも、働かないのは人としては……。
それに、なんかさっきの発言変だったような……?
そんな事を考えながら。
でも、俺は彼女を抱き寄せ、夢ではないとまた実感していた。
※※※
刻晴は行動的だ。
とにかく行動する事を躊躇わない。
それにスキンシップも多い。
あれ?でもゲーム内ではスキンシップなんて中々しなかったような……。
俺がふとそんな考えに至った時、タイミングよく刻晴が言った。
「ねえ、蒼海。私ね、君に見せたいものがあるの!」
そう言って俺の手を引いて走り出した。その足取りはとても軽やかで楽しそうだ。まるで子供のようにはしゃいでいるようにも見える。
夜まで彼女が用事が終わるのを本を読んで待っていたが、刻晴が部屋に帰ってきたのは夜中だった。
だから今は夜の璃月港を刻晴と共に歩いている。
ゲーム内では人は夜でもいたが、今はとても暗くて静かだ。
刻晴は上機嫌に俺の手を繋ぎ、鼻歌を歌いながら歩いていた。そして目的地についたのか足を止めた。
崖の上だ。登るのは大変だったが璃月は崖が多いから仕方が無い
。
「はぁ……やっと着いたわ」
そう言って刻晴は崖の淵まで行くと、俺を見た。
「ねぇ、蒼海。私ね、この景色を君に見せたかったのよ」
俺はその景色を見て言葉を失った。
璃月港と海が見える。
月の光に照らされ輝くその景色は。
美しく、神秘的な光景だった。思わず息を飲むほど美しい。
「綺麗でしょう?」
刻晴は俺の顔を見て言った後、また景色を見た。
もう暗さに目が慣れていたから、刻晴の表情がよく見える。彼女は懐かしむように景色を見ていた。
「たまに来るんだけど、忙しくて中々来れなかったの」
そう言って刻晴は笑った。その笑顔はとても可愛い。
そして、そんな俺の視線に気がついたのか彼女は俺を見た後、優しく微笑んだ。その笑顔はとても綺麗だ。
「この景色が見れて良かったわ。本当に、これで満足した。……不思議ね。君といると、なんでも出来る気がするの」
そう言って刻晴は俺を見た。
その目はどこか熱っぽいように感じる。
「え、と……刻晴?」
俺がそう言うと彼女はハッとしたように慌てて手を離した。
そして恥ずかしそうに俯くと小さな声で言った。
「……ごめん、私ちょっと興奮してるみたい」
その仕草がとても可愛くて俺は思わず笑ってしまった。
それを見た刻晴は怒ったように言う。
「仕方ないの!だって、一緒に来たかったんだよ。君と……」
そう言って、彼女は俺の手を取る。
普段より少し幼げな口調と行動に俺はドキッとした。
「刻晴……」
俺は思わず名前を呼んでいた。
彼女は俺を見ると嬉しそうに笑った後、俺の腕に抱きついてきた。柔らかい感触にドキッとして、俺は慌てて振り解こうとしたけど出来なかった。
「ありがとう……」
俺は思わずそう呟くと、彼女は驚いた顔をした。そして少し悲しげに笑うと言った。
「君って本当に優しいわね。……私は、そんな所も好きよ」
そう言って彼女は俺に微笑みかけてくる。その笑顔はとても綺麗で見惚れてしまうほどだった。
「ねぇ、蒼海。私は璃月が好きなの。だから、君も璃月を好きになって欲しい。」
「刻晴……」
俺は刻晴の言葉に、思わず泣きそうになった。
でも、それはきっと彼女の望む答えじゃないと分かっているから。だから、笑って答えた。
「うん、俺も好きだよ……あっ!璃月がね!」
そう言って俺は璃月港の方を指差す。
刻晴はそちらを見て驚いた顔をした後、嬉しそうな笑みを浮かべた。
意気地無しの俺にも優しい刻晴といられると、幸せな気分になる。
単純かもしれないけれど。
俺は彼女の手をしっかり握り返すと、一緒に歩き出した。璃月港に戻る為に。
すると、彼女は振り向いて言うのだ。
「うん、そうね。蒼海」
それを見て、俺は笑う。
そして、璃月港に帰って行った。
離さないように2人で、手をしっかり握りあって。
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