……長かったー……
まあそれは読んでくれてる皆さんが思ってるかもしれませんが!
そしてようやくヒロインが?!
……塩対応ですがね!
あとジブチ基地はすごく発展してますねぇ。
なんかとんでも兵器まで配備しちゃってまぁ!!
第15話「ジブチ編」
C-2のタラップを降りた瞬間、焼けつくような熱風が顔を叩いた。
機内の冷房に慣れた身体に、ジブチの空気はあまりに唐突だった。乾いた砂のざらつきと油と潮が混じった匂いが鼻を突く。喉の奥がひりつくような熱。なるほどアフリカとはこういうもんかと山永は洗礼を受けた気がした。
滑走路は延々と白く揺らめき、割れ目に溜まった砂が風に舞う。遠くでは錆びついた格納庫が陽炎にかすみ、壁の剥がれたコンクリートに、やけに新しい中国製の監視カメラが取り付けられていた。
最新のセンサーと、埃に沈む旧式設備。ヒマリの解説ではないが、その落差がこの地の現実を雄弁に物語っていた。
「……あっつかなァ。」
隣の門脇2曹が呟いた。誰もが長旅の疲れを背負い、重い荷を背負ったまま、無言で列を作る。給油・整備、休憩など含めて二十時間近い経由飛行だった。フィリピンのマニラ、インドのデリーで二度着陸したが、一応軍人の自衛官が民間のラウンジに迷彩でゾロゾロうろつく訳にも行かず、出来たことといえばデリーでのプレハブ待機所の脇に置いてあった自販機で缶コーヒーを買うことぐらい。その果てに辿り着いたのは、夢も希望もありゃしない、乾ききった熱と埃の渦だったのである。
「ようこそジブチ基地へ!基地業務隊庶務の阿川2曹です。」
「警衛隊の館下1曹です。ようこそ灼熱のジブチへ」
エプロン脇の車道でバスと二人の自衛官が待っていた。一人は海自、もう一人は陸自の隊員である。めいめいに彼ら二人に挨拶すると、衣のうをしょったままそそくさとバスに乗り込んでいく。長崎も暑いが、ジブチの暑さは毛色が違う。湿度がなく、ジリジリと皮膚を焼く暑さだ。そうなると皆、早くクーラーのある車に乗りたいわけである。全員を載せ、バスは営内隊舎へ走っていった。
隊舎の前までたどり着くと、初めて自衛隊用地の外が見える。有刺鉄線付きフェンスの向こうには、現地作業員と、真新しい制服を着た中国系の警備兵。現地人の方は体ごとこっちを向きまた新人が来たのかといった風に興味有りげにこちらを眺め、中国人は目だけこちらを追ってくる。確かにジブチは中国べったりのようだ。ひとまず荷を各人の居室に下ろし、着隊報告のため再集合する。次は指揮統制棟にましますジブチ基地司令に着隊のご挨拶だ。
ジブチ基地所在の部隊は概ね以下のとおりである。
海上自衛隊 第7航空隊 第71飛行隊
海上自衛隊 第7航空隊 通信電子情報隊
海上自衛隊 ジブチ基地業務隊
陸上自衛隊 第5高機動誘導弾特科群 第1大隊 ジブチ派遣中隊
陸上自衛隊 第301警衛中隊(ジブチ基地警衛中隊)
山永が配属されるのは最後尾のジブチ基地警衛中隊である。 警衛というのは実戦だと陸自では言われがちだが、警備の本質は添え物である。主たる目的があって、それを達成するためにそれを守るのだ。警備を中途半端に勘違いした人間になると、「それじゃ警備できない!」だの「安全確保が最優先だ!」などと言いがちだか、この並び順のとおり、最後尾にちょこんと添えられる程度でいいのだ。ただし、有事になれば主たる任務をねじ伏せてでも安全を確保しなければならないが。司令への着隊報告の後、そのまま司令棟の講堂に通され、部隊紹介や周辺地理や基地内の施設紹介を受ける。続いて山永たちは、今度は実際に歩き回って現地の建屋を見て回ることになった。これから死ぬほど歩き回らねばならない敷地である。さっさと覚えて損は無い。
「ここが第5高機動誘導弾特科群、通称5高機の建物です。私は海自なので詳しくは無いですが、超長射程の対地ミサイル部隊だそうですよ。皆さん今日は運がいい。発射車が定期整備中みたいですね!」
整備場に事務所が併設されているタイプの建物の前で、とんでもない高さに直立する牽引車タイプのミサイル発射機を山永達は見上げていた。
「でかー!」
「こげんごつか特科、見たこんなか!」
迫小隊の高橋2曹と門脇2曹が見上げながら感嘆の声を上げている。直立すると11メートルにもなるこのミサイルは、正式名称「高機動誘導弾統合打撃システム」。最大射程3500km、飛翔速度マッハ8~12、準弾道軌道で半数必中界(CEP)が10メートルという化け物兵器である。弾種も複数あり、多用途高性能通常弾、深層貫徹弾、運動エネルギー貫徹弾、EMP弾、対艦弾などなど。ジブチに配置されているのは6発の通常弾と2発の運動エネルギー貫徹弾の計8発が配備されている。通常弾頭でも半径約200mが致命傷を与える加害半径となり、1個小隊など軽く消し飛ばしてしまう威力である。
「マジで大仰な部隊やなぁ……よお海外の基地にこげなもん置けたわ……」
山永も思わず感嘆を漏らす。これの配備の際も中国がかなり抗議したらしいが、なんやかんやでしょれっと日本政府は配置したのである。
「……まあ、ただのお飾りにゃ高いおもちゃやろうなァ……」
つい減らず口を叩いたが、やべっと周りを見回す彼。幸い誰にも聞かれていなかったようだ。これ以外の車両も色々整備中らしく整備場の中で幾人かの隊員が指揮通信車や起立支援車、テレメトリ車など様々な車両をあくせくと整備していた。特科隊、しかもこれほど結構な規模のミサイル運用中隊を彼らは見たことがない。物珍しさにキョロキョロと見て回るのも仕方のない話であった。
様々な施設を見て回り、最後に連れてこられたのは外来隊舎だった。館下1曹が隊舎前で軽く説明を始める。
「ここの建物は基本的に外来です。ですがその一部を流用し、警護役務たちの事務所兼居住区として利用しています。連絡を入れてますので役務たちも待ってるはずです」
開き戸を開き中に入ると、まず目に入ったのは正面に吊るされている警護役務の社章がデカデカと描かれた旗だった。紺地に盾、その盾の中に赤い目の隼が象られた社章である。その下には"VIGLE CORP We see you before you fire."の文字。シンプルだが部隊章としてはイケてるなと山永は思った。
"Atteeeen,tion!"
デカい声が響き渡る。入って右奥のソファーセットの前に5名が立っていた。4名が整然と並び、その前に立った男が号令をかける。
"Present, arms!"
45度ほど首を捻ってこちらに向きながら、びしっと敬礼を投げつけてきた。もちろん自衛隊式の挙手の敬礼とは毛色が違うが、キビキビと動静、節度のついたいい敬礼だ。民間人にも関わらず精強さが伝わってくる。
『……!?』
隊員側は突然の奇襲にどよよとざわめく。仰け反る者、物珍しそうに眺める者、黙って見つめる者。山永は思わず答礼している。
“Welcome to Vigle Corp’s office. We’re honored to host you.”
[ようこそヴィーグル社事務室へ。歓迎します]
先頭の彼の、恐らくシャツの左肩ポケットにタブが入っているのだろう。美しい発音の英語の後、流れるように彼の声に似た声質で日本語訳が続く。
「2列横隊、集まれッ!」
素早く門脇2曹が号令を掛けた。動揺しつつもそこは自衛官。素早く横隊で整列する。
「短間隔、右へェェ、ならえッ!!……直れッ、敬礼ッ!!」
さすが門脇2曹である。直ちにやり返した。自衛隊側もびしっと陸自式の挙手の敬礼を撃ち返す。
「こちらこそ、今後ともよろしく頼む!!」
"Likewise, looking forward to working with you!"
門脇2曹の胸からも同じように声色を真似た英語が響く。門脇のAIOSが空気を読み、必要な部分だけ訳してくれたのだ。一度直ったPMC側も再度先頭の白人の号令で答礼を返す。
ようやくきちんと、相手の顔を視認する山永たち。全員お揃いの社章がステッチされたコンバットシャツを着、カーゴパンツを履いてている。概ね白人のようだ。一人黒人が見える。真ん中右に少し背の低い銀髪の女性もいた。ひとまず門脇2曹が直れを掛け、それに続いて白人リーダーらしき先頭が「Order arms!」と号令する。
「握手でんするとが礼儀かね?一人ずつ挨拶すっか!」
門脇はそう言うと早速先頭の白人に握手しつつ挨拶する。お互いのAIOSがお互いの言語を訳しながら意思疎通を図っていった。それに続いて皆同じように一列に並び、各隊員ごと握手をしていく。日本語でめいめいに話しかけ、AIOSに英語訳してもらっていた。山永は日常会話程度は喋れるので自分の口で"I'm glad to see you!"と語りかける。白人リーダーはいかにも歴戦の戦士といった風体だ。青い目に彫りの深い顔立ち。日本人から見るとまさにイケメン白人さんといった感じ。続いて同じように列に並んだ黒人の隊員と握手。どうやら陽気な性格のようだ。朗らかに笑いながら"Welcome brother! Long flight, huh?"と切り返してきた。話しやすそうである。そして次。例の銀髪の女性だ。山永は目を見開いた。目が覚めるような美人だ。少し小柄だが冷静で理知的なオーラが出ている。恐らくかなり若い。軽く焼けているが元々白いのだろう、透き通るような白い肌だ。
"I'm glad to see you!"
ぴくりと眉根が動いた。休めの姿勢で正面直視だったが、山永が手を伸ばして握手すると彼女の視線が上がり彼の顔を見つめる。
"Likewise, Sergeant Yamanaga."
[同じくです、山永3曹]
割と長い指だがその掌はリーダーの男性や黒人の男性と同じくゴツゴツしていた。握手の力加減も決して弱いわけではなく、どうやら決してフェミニズム的お飾りの隊員ではなさそうだ。よくよく見ればコンバットシャツ越しのシルエットも女性にしてはがっしりしている。手を離したあと、わずかに指先にざらりとした感触が残った。汗でも油でもない、訓練場の砂のような乾いた手。握手の圧も、姿勢も、呼吸も、無駄がない。彼女が一歩下がると同時に、彼の中で周囲のざわめきが戻った。だがその一瞬、どういうわけか、山永は「見られていた」のは自分の方だったような気がした。
この時代、やっぱりわざわざ自分の口で相手の言語喋る必要性は薄いですよね!
そしてPMCのヴィーグル社初登場!リーダーの人たちやルリエンナ達は北欧系が多いです。
民間軍事会社の中でも彼らは割とちゃんとしてる会社です。
なので自分たちの能力を見せるために、わざわざ自衛隊にああいうサプライズするわけですね!