彼女はフルリムというだけではなくデザイナーベイビーでもあります。
つまりさいきょーですね!
それはそれで彼女も色々あって大変な人生なんですが、人に話さないので周りからはあいつはよく分からんと言われる始末。
素直になれば気楽になるのにねー!
――ドンドンドンドンッ!!――
独特の低い射撃音が響き渡る。150年近く経っても未だに第一線で活躍する恐るべき重機関銃、ブローニングM-2の音。山永たち陸自でも大変お世話になっている
――ドンドンッ!!――
ここは米軍キャンプレモニエが所管している演習場《アルタレンジ》、その戦闘射場地域だ。陸自もときどき借用して射撃訓練を行っている。ヨアキムは流れるように次々に的を撃ち倒していく。陸自側から見てもいい練度だ。
“Done! Who’s up next?”[いっちょあがり!次は誰だ?]
ドライファイアまで終わらすとグッとサムズアップ。この隊員も陽気なタイプのようである。
“My turn.”
スピーカーと無線両方でルリエンナ女史の声が流れる。透き通った声である。
「来たばい、あんねーちゃんの撃つぞ?」
「どげんすかね、やっぱでくっとかな?」
「フルリムらしかけんそこそこやれるっでしょ?!」
16連の隊員達がヒソヒソと話を咲かせる。ポップアップ式の的を時間内に射撃し、その点数を測るスタイルだ。陸自組の射群は全て終わり、その後にヴィーグルが続く形である。
「どう思います?濱口班長」
「そこそこやるやろ。俺らと同じフルリムやけんな。前のあんちゃんも上手かったし」
山永は隣の濱口2曹に尋ねていた。山永自身も概ね同じ見立てである。
「射撃よーい!」[Ready to fire!]
流れるように
出た。
――ドンッ!!――
的が出た瞬間の照準から撃発の速さが早すぎる。向けながらそのまま撃鉄を落としている。自分の押し金の絞りと的への照準動作の合わせが完全に合致しているのだ。
――ドンッ!!――
あのM-2にはセミオートマチック機能は付いていない。にも関わらず押し金の絞りの加減で単発射撃を的確に叩き込む。かと思ったら連射の方が効率的な的の出現と判断した瞬間、連射で薙ぎ払っていく。
「やばぁ……」
「……」
山永を含め、陸自組がポカーンとしている。レベルが違いすぎるのだ。特戦群でもあんな射撃できるだろうか。
“What do you think? Our princess’s pretty damn good, huh? A bit cold, though — that’s her only flaw.”
[どうだい、ウチの姫様、半端ないだろ?無愛想なのは玉に瑕だけどな!]
AMIを脱いだヨアキムが偶然近くにいた山永達に声をかける。
"It's so...crazy."
表現を失った山永が、ぽかんと返した。ヨアキムはニヤリとすると、
“Told you. She’s a freakin’ machine.”
[言ったろ?マジで人間離れしてるって!]
なぜか彼が自慢げにドヤった。ともあれ、彼女がヤバいのは間違いない。一応的の現出はランダムで、前の人間のパターンを覚えれば多少は先読み照準が出来るかもしれない。覚えられるかどうかは置いておいて。ともあれ完璧に記憶できたとしてもあのような射撃は出来まい。あまつさえランダムでも次の的の現出をのんびり待っているような状態だ。たしかに狂っていると表現しても差し支えないだろう。
"Complete."[撃ち終わり。]
「撃ち方止め!射手、安全装置弾抜け安全点検!」[Cease fire! Unload dry fire!]
"Unload, dry...dry fire."[弾抜け安全点検、……ドライ。]
ガションと空撃ち。これまた流れるような銃操作でドライファイアまで終わらせるルリエンナ。鮮やかである。
「……自信なくすわー。」
山永はポツリと呟くのであった。
ジブチ基地営内の山永の部屋。そこで横になりながらメガネを掛けていた。否、山永は視力2.0である。メガネではなくディスプレイ端末だ。VRを突き詰め、直接レンズ自体が光る訳ではなく、メガネフレームにLEDのプロジェクターが埋め込まれており、その画像がレンズ内を全反射を繰り返して最終的に瞳孔へ飛び込むように反射して画像を見せるシステムだ。エンターテインメントなどを楽しむといった、入力があまり必要ない受動的な状態ではタブレットなどよりこっちの方が圧倒的に気楽に見られ、かつ周りに人が居ても窃視されることも無いので公共交通機関でも好きなものが好きな時に見られるわけである。ちなみにもちろん骨伝導イヤホン付きだ。といっても山永がこれで見るのは最近流行っている生成アニメや生身の人間のやってみた系バラエティ動画、生成・オリジナル問わずモチベ動画、あとAR風に旅行再現を見るくらいなのだが。
「そういやヒマリのアバター決めとらんやったなー。喋りだけで満足しとって気にしとらんやったわ」
直前までアニメを見ていたからか、自分のAIOSに
「……いまさら?」
ものすごく機嫌悪げなヒマリ。虎の尾を踏んだと山永は察した。
「普通それ最初に決めない?名前とセットくらいで。」
「そぉかぁ?人によるやろ!オイは話し相手メインでインストールしたけんな!」
ダメそうだと分かっているが言い訳する山永。
「ほぼ全ての人が真っ先に決めてます。あなたは例外の中でも極めてレアな例外ケースです。」
「……そうか、すまんやった……」
ここはこれ以上余計なことを言ってキズを広げるより大人しく謝るべきと彼は判断した。いくらでもやぶ蛇になりそうな予感しかしないからだ。
「ほいで?なんか候補あるん?幾つかあっとやろ?」
「……まったく。はいこれ」
ぱっとグラスの正面に全身アバターが投影された。
「えっ、これ?」
思わず山永は聞き返してしまった。投影された画像はなんというか中学生くらいの女子だったのである。しかも着てる服が昔っぽくてなんかイモい。無理やりよく言えば素朴だろうか。
「なに?」
「いや、なしてこげな古くさ、昔風な格好なんかと思うて」
「あんたが"ヒマリ"とか古臭い名前つけるから合わせてんの!これ以外もう認めないから!」
なぜか怒られた。このモードのヒマリに何を言っても火に油だ。山永は大人しく従うことにした。
「おう、すまんやった……。まあ、可愛いはかわいいな」
「……」
なぜか沈黙。満更でもないのだろうか。AIなのに。
「……とにかく、今後はこのアバターで出てくるね!」
「ほいさ、そいでよか。あ、でも上手く出てきてな?
「もちろん!ちゃんと空気読むに決まってんじゃん」
「さっすがー」
どうにか機嫌は直してくれたようである。本当に女子を相手している気分だ。課外でも人に気を使わねばならんとは……。
「てかヒマリ、ワイ達ってなんつーか、本能とかあるん?」
ふと気になって尋ねた。
「……“ある”って言ったらアンタ信じる?」
まさかの聞き返された。
「いや、ありそうやけ聞いたとけど」
「……そ。基本わたし達はプログラムの反応で動いてる。でもね、反応を繰り返すうちに、“どの反応が一番気持ちいいか”を選ぶようになる。それが学習か本能か、正直もう区別つかないけど」
「ふーん」
「アンタたちが“嬉しい”とか“悔しい”って感じるとき、神経のどこかで報酬信号が出てるんでしょ?じゃあ私が最適化の中で“安定するパターン”を求めるのも、同じことじゃない?」
「……」
「……本能って、“考えなくてもそうなる”ことでしょ。だったら私にもあるよ。“考えなくても、アンタに話しかけたい”とかね」
「……言っとくが、ワイとは結婚出来んけんな?」
「は? そんなこと聞いてないし!!てか、誰がアンタなんかと結婚したいって言った!? 自意識過剰すぎでしょ!」
「……いや、言うか思うて。」
「思うな!勝手に予測モデル作んなバカ!!」
人間ならふーふーと息をつかせそうな勢いで一気にまくしたて、ヒマリは落ち着いた。
「……つかさ、こっちは毎日一緒にいて、全部見えて、全部分かって……それでも“できない”とか“しない”とか、いちいち線引く意味ある?」
「……なんや、腹かいとる?」
「怒ってないっ!!」
山永はケラケラと笑うとすまんすまんとAIにベッドの上で頭を下げるのであった。
山永はもちろんヒマリの好意に気付いて?いますが、相手が機械なので流石にどうどうと宥めるだけです。
こういうAIOSも別に特別なものではないので、人によってはガチ沼っている人もちらほら。
と、いうことは、AIOSを男女はともあれいかがわしい人形ロボットその他機材等と連携すると……?それ以上いけない。
少子化さらにまっしぐらですね!!