アルゴノームⅠ   作:Type-Yasenbunko

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相棒のAIと相棒のロボがでます!
てか自衛隊ってなんか色々めんどくさいです!


第2話

3曹任官してからという訳ではないが、彼はちょいちょい英語の勉強をしている。今日も課業が終わり筋トレと風呂も済ませ、屋上の物干場の近くのベンチでルーチンの英語聞き取りを始めた。特になにか役に立つという訳では無い。今どきオンタイム翻訳などどんな端末でも簡単にできる。しかし、彼は自分で喋れるようになりたかった。いわゆる変人である。

 

【挿絵表示】

 

「ヒマリ」

『呼んだ?班長』

馴れ馴れしげな女の声。山永の折りたたみ式タブレットのAIOS(アイオス)人格だ。最近流行っているこのタイプのタブレットは通電していない時は柔らかく折りたためるが、通電すると硬化しタッチしやすくなる。山永は中古で買った京セラのJ-Leaf(ジェイリーフ) ToughFold-Padにオープンソースの自我をインストールしていた。好奇心とスケベ心で女性人格を選んだが、思った以上に生意気な癖に正論で屈服させる性格だったらしく、山永自身はチョイスを失敗したと思っている。

「英語の時間た、ゴギンス、五分くらいのヤツ、くれ。」

『オリジナル?それともトレース?』

ヒマリと呼ばれたアイオスが聞き返す。オリジナルというのは編集されていない元動画、トレースというのは様々な媒体の情報をもとに人格トレースを行った疑似人格の事だ。山永は2020年代に流行ったモチベーショナルスピーカー、デイビッド・ゴギンスをよく聞いていた。

「いつもオリジナルしか聞いとらんろ?」

『気が変わるかもじゃん!』

「そんときゃ言うがな」

こんな感じで素直じゃない。

『その前に。』

「なんした」

ヒマリがやや不機嫌そうだ。

『その【ヒマリ】って名前、やめない?』

「なして」

さらに不機嫌そうに、

『その名前、令和の名前だよ?恥ずいんだけど』

「……」

この調子だ。しかし彼女が言う事自体は間違っちゃいないことが多い。当たり前である。彼女はロジックAIなのだから。

「……なんがどうあっても嫌か。」

『……』

渋々新しい名前をどうするかと山永は考え始めた。早く勉強したいのに。一方ヒマリの方も押し黙る。AIなのに。

『……どうしても、じゃないけど。』

「なんじゃそりゃ!」

ずっこける山永。最近のAIは本当に人間のようだ。

『もうちょいセンス磨いてよ!大体意味ないじゃん!馬鹿みたいに英語の練習なんかして。あたしが全部訳せば済むのに!』

「そいじゃなんの意味もなか!」

『……変態!』

「せからしかなァもう!」

どうでもいいがヒマリは頑なに長崎弁を使わない。人格の美学に反するのだろうか。

『もういい!……じゃあはい、5分のやつね!』

恐らく通訳など自分で容易にこなせるのにその仕事を奪われるのが存在意義情報と摩擦するのだろう。とはいえ最終的には山永の意図に沿うのはなんともAIらしい。

(こん遣り取りん時間のもったいなか……)

開幕から集中力を削がれる山永だった。

 

 

ヒマリが問いかけてくる。

『Do you think AI can be a good friend to humans, Yamanaga?』

山永はちょっと間を置いてから、

「Of course, yes. Because… you and me already have been friends.」

果たしてヒマリはニチャっとした口調で切り返す。

『That's suspiciously nice of you,

班長。今日どうしたの?熱でもある?』

3回ほどゴギンスの4文字コトバ満載なダイアログと罵声のような応援動画を流し、次にヒマリと英会話練習に移った。そこへ偶然後輩がやってくる。同じ分隊の松尾士長だ。カゴを抱えているところから見て、洗濯物を撤収に来たのだろう。

「なんしよっとすか、山永班長?」

怪訝な松尾。無理もない。目の前の男は女声のアイオスとわざわざ英語で喋っている。意味不明だ。何かのプレイかとすら想像している。

「なんて、英語の勉強たい。」

「いや、タブで良くないすか?」

「分かっとらんなァ、自分で喋るけん価値んあるっさ!」

「はあ……」

さらに理解出来なげな松尾士長。2年目の若い隊員ゆえ3曹にとやかく言えるべくも無いのでそれ以上特に会話を続けることも無く、そそくさと洗濯物を取り入れ去っていく。

屋上の鳩小屋の扉がガチャリとしまった後、狙い済ましたかのようにヒマリが声をかけてきた。

『ほらね!』

「うっさか!」

気まずさを誤魔化すように吠える彼だった。

 

 

 

 

 

若年隊員に小っ恥ずかしい姿を見られたその週末。彼は隊を率いてDSに向かっていた。

「左向けェェ、止まれ!……短間隔、右へッ、ならえッ!」

DSの事務所にゾロゾロと普通科の隊員たちが隊列で止まる。全員コンバットシャツを着ていた。隊員によっては鉄鉢《ヘルメット》や防弾チョッキも装着している。AMI、Armored Mobile Infantryと呼ばれる新兵科の集合訓練だ。幾人かはFN MAGやMINIMIを担え筒で携行し、最後尾には「リアカー」と隊員が呼んでいる自律走行するドローンがキャリバー(M-2重機関銃)を積載したまま重たげについて来ていた。

「分かれて格納庫前で待機して下さい。分かれ!」

引率していた山永は隊の指揮を解き、自身もマグを担え筒で抱え直しながら直支、普通科直接支援中隊の大型倉庫に入っていく。基本的にAMIはDS(直支)が整備・管理している。もともとこんな大型で電子機器満載の機材を保管するには普通科中隊の武器庫も補給庫も小さすぎたのである。中隊での整備も難しい。というわけでAMIが配備された駐屯地はDSにその保管・管理を押し付ける形になった。……もちろんDSの武器科等の隊員たちは心底苦々しく思っているのだが。無論突然あとから現れた機材を置く場所などなく、DSの倉庫を増築するか新設するかしてなんとか場所を確保していた。

「すんませーん、3中の山永ですー。武器出しに来ましたー。」

クソ重たいマグを抱えたまま、山永は倉庫2階のDS中隊事務室に上がってAMI庫の開放のお願いに上がっていた。

「……はーい、ちょい待ってくださーい。」

奥から武器陸曹の声が聞こえる。確か1曹だったか。WACの藤田さんの声がした。

まもなく戦闘服姿で民生品のヘルメットを被った女性が出てくる。40台前半だっただろうか。

「お待たせ、行きますか。」

一緒に階段を下る。その途中で、

「山永3曹に言って申し訳なかとやけど、前回ちゃんと洗車した?格納庫ん中泥上げとって、ウチらで掃除したとよ。ちゃん足裏まで洗ってね!」

「……すんません。マジすんません。」

先行する藤田1曹に見えないとは分かりつつぺこぺこ平謝りする山永。……だれだこんちくしょう!最後に点検しなかった俺も悪いけど。

お小言はともあれ、格納庫前。武器を携行している隊員は重たげに格納庫開放まだかーみたいな顔をしている。何人かはバラして積んでいたキャリバーをリアカーから降ろして組み上げていた。

「お待たせしましたー。格納庫開放しまーす。」

藤田1曹が声がけしながらDS倉庫の壁際にあるAMI格納庫脇に立つ。自動式の引き戸の戸袋のあたりに桜のマークにWが彫られた認証装置があり、藤田1曹が手をかざすと認証が行われ、自動的にズズズと鉄製の扉が動き出した。

「班長、班長!」

「ん、なんした?」

鉄扉の向こうからAMIが見えだしたあたりで、最近3曹の指定がきた1小隊の西士長が彼に声をかけてくる。明るくていい子だ。入隊自体は大学出で今25歳だったが運動神経もよく、賢いのでまさにAMIオペレーター向きだ。

「班長は最初っからキソーMOS取る予定で入ったっすか?」

「……まぁ、狙ってはおったな。」

「レンジャーも取るっすか?」

「……やめとくわ、あいは身に余る。」

「行けそうっすけどね!」

「おいも歳が歳やけな。」

キソーとは高機能機動装甲服、装甲化されたパワードスーツのことだ。AMIの陸自での名称を言う。米軍で言うところのHydraシリーズと同クラスである。また、MOSとは自衛隊内の特技を指し、各種教育を受け各種装備や技能を運用・使用する根拠となるものである。

「はーい、どうぞー」

藤田1曹から許可が降り、みながぞろぞろと格納庫の中へ入る。扉正面の壁に頭部を突きつけずらりと8機の最新鋭AMIが並ぶ。その右脇には50機の未装甲化パワードスーツがすし詰めで格納されていた。

彼と西士長はバディだった。基本的に陸自のパワードスーツは一人では着用しにくい。新型のAMIはその問題がかなり解消されたが、特に装甲化されていないパワードスーツは装着時の取り回しにくさのため二人で着るのが通常になっている。

「西から着っぞ」

「了解!」

キャスター付きの吊りハンガーに掛けられたパワードスーツにはぶっといチェーンが掛けられている。藤田1曹がそのチェーンに掛けられたこれまた桜マーク付きのでっかい南京錠を外してくれている。

「エグゾオッケーですー。どーぞー」

「持ってきます!」

西士長がススッとスーツを取りに行く。そのままガラガラとキャスターで引っ張ってきた。

「おねがいしまっす!」

「ほいほい」

心持ちウキウキしているような西。若いなァと彼は思った。新鋭装備というものに心躍らせる気持ちは分からんでもない。

パワードスーツを装着する前に防弾チョッキを重たげに着る西。昔の防弾チョッキのようにバイタルだけ守る小さなプレートではなく、フルサイズの鉄板入りだ。いや、鉄板では無くセラミックプレートだが。自衛官はだいたい鉄板と勝手に呼んでいる。

「楽しそうやな」

「そんな事ないっす!」

「はいはい」

その後に山永と西が二人がかりでハンガーからエグゾを取り外し、山永が倒れないよう支えている間に西が前から着込んでいく。脚部をバンドで固定し、腰部ユニットを固定するベルトを戦闘服の下衣(ズボン)に噛ませて装着。

「山永3曹、今日は盾も出すとよね?」

パワードスーツの南京錠を全て開け終わった藤田1曹が確認してくる。

「あー、はいそうです!今日は盾も出します!」

「はーい、じゃあそっちも開けるねー!」

今日の訓練はキソーとエグゾの連携訓練だ。キソーが盾を構えて掩蔽物となり、エグゾと射撃を交えた交互躍進をするといった体だ。

「山永班長はナノ、実で入れたことあります?」

上半身のバックルを回して背中で留めたところで、西士長は聞いてきた。

「あるよ。てかフルリムしとるしな、オイは。」

「まじすか……」

西の少しの恐怖。彼はそれを感じた。ナノとはナノマシンのことだ。筋力強化、破断筋繊維の急速修復、受傷部位の緊急止血・修復などなど……ナノマシンを用いて様々な身体強化を行える。それどころかTMS、脳みそに磁場を当て脳機能を飛躍的に向上させるナノマシンすらある。

一方でフルリム、リムとはRe-Mod、遺伝子改造を施すことを言う。最近はナノマシンにCRISPRを乗せ効率的に遺伝子改造を行えるようになっており、特に最新鋭のAMIに搭乗する隊員はその身体的負荷から全ての身体性能上必要とされる遺伝子改造を余さず受けなければならない。山永は官費でその全てを受けており、それを以て自らを"フル"リムと呼ぶわけである。

「……怖いすか?」

「……もちろん!」

夢見がちな士長にはいい薬と、にちゃっといやらしい顔で笑う彼。

「ワイもキソー乗りたかったらリム入れんばな!」

「……そっすね。」

はたと真剣な顔になって、西は答える。

「よし着け終わり!ほれ、点検ッ!」

「はいッ!」

自分の手で届くバックルをガチャガチャと結束されたか確認する西士長。一方で手の届かない部位のバックルやロックは山永が点検してやる。

「ガタなしッ!」

「よーし!電源入れっぞ!」

キュイーンと低い音がし、下半身駆動部のロックが外れて西の思いどおりに機材が動き出す。

「オッケーっす!久しぶりっすわー!」

「張り切ってこくんなよ(コケんなよ)?次はオイやな」

すっ転ぶこともなく後輩の着用支援を終えると、山永はキソーに向かう。キソーは西のエグゾと違い着装は簡単だ。どちらかと言うと乗り込むに近い。だが、着用の前にやることがある。ナノ、ナノマシンを注入するためのポート(注入口)にキソーから伸びるチューブを接続する。実際投薬するようなナノは今、このキソーにはもちろん搭載されてはいないが。ただの集合訓練ごときに高級なナノを実運用するほど陸自に金はないのである。

滑り込むように足と腕を差し込み、虹彩及び静脈で認証すると包み込むように背面が閉鎖されロックされる。

HUDに各種ステータスが流れては消える。

 

▼ 装着者認証 ........................ 済(山永3曹)

▼ 骨格アライメント ................. 正常

▼ 関節駆動系 ........................ 同期完了

▼ アクチュエータ応答 ............... 良好

▼ ショックアブソーバ圧 ............. 標準(静圧)

▼ 作動液ライン圧 .................... 安定

▼ 潤滑系統 .......................... 問題なし

▼ 電源モジュール残量 ............... 97%(主電源:固体電池)

▼ 補助電源ユニット .................. 燃料電池:接続なし

▼ 燃料電池 残量 ..................... 0%

▼ 冷却系統(相変化ユニット)...... 作動中

▼ 姿勢制御システム .................. 自動補正モード

▼ ナノ注入機構 ...................... 非搭載(訓練モード)

▼ 戦術ナノ設定 ............... 0%(注入不可)

▼ 生体モニタリンク .................. 接続中

▼ 野外通信システム同期 .................... 未接続

▼ 損傷検知システム .................. 初期化完了

 

『おはようございます山永3曹。起動完了。』

「はいおはようさん。西、聞こゆっか?」

『はい、感明良好。盾持ってきますか?」

「おう、頼む。』

言われなくても行動する、いい隊員だ。彼はそう思った。先輩が言ってたな。言われてもやらない奴。言われてからやる奴。言われなくてもやる奴。お前はどれだ?

『持ってきました!腕に接続します?』

「頼むわ。」

左前腕を差し出し、ハードポイントに接続してもらう。前腕及び左肩部自在腕(スイングアーム)にガチャリと接続。次は武器だ。持ってきたFN MAGの照準眼鏡とリンクを開始。

 

▼ 火器管制装置接続 ........................ 済(FN MAG)

 

『いいっすね班長!オイもはよ乗りたかっす!』

「はい乗れるごと努力せぇ」

背部右肩のスイングアームにFN MAGを接続し、ガタを点検、異常なし。背部に戻したり引き出して照準姿勢を取ったりして機能点検、異常なし。

「よし、よかろ」

彼は周りを見渡す。どこも間もなく機能点検まで終わりそうだ。

「藤田班長、それじゃお借りしていきます!」

『はーい!今日は綺麗にして格納してね!」

「了解!」

実行の監督は特に重要である。陸教で習った指揮の要訣を、改めて思い知らされる彼であった。

 

 

『最後に、キソー返納時の洗車ですが、必ず足裏まで洗って下さい。前回洗いが甘くDSにご迷惑かけてます。各中隊の長は最後に必ず点検をお願いします。自分からは以上です。では濱口2曹、お願いします。』

武器出しを全て終え、AMI8機、エグゾ8機がガッションガッションしながら植松訓練場へ移動。ここは一般的な戦闘訓練ができる開けた訓練場だ。山永がいくつか注意点を徹底した後、主務者の1中隊、濱口2曹に訓練説明を振った。山永自身は濱口2曹の補助をする助教役だ。

『はい、じゃあ本日の訓練について。事前に配った資料のとおりキソーとエグゾの交互躍進連携訓練を行います。』

6月の真夏日、すでに移動だけで全員汗だくだが訓練をやると決まった以上、暑さをぼやいても仕方ない。

『基本的に戦闘訓練の射撃と運動と変わりません。どちらかが火を出している間にもう片方が躍進する。今回生身の交互躍進と違うのはAMIがでかい掩蔽物として役に立つところです。盾と一緒に前に出ることもできます。口ばっかりでもピンとこんだろうから、ちょっと展示ばしましょうか。山永3曹、西士長!』

『はい!』

「はい!」

『1番山永3曹、2番西士長とする』

『了解!!』

二人が前に出てくる。ホットラインが濱口2曹から山永たちに繋がる。

『オイが分隊長で指示だすけん、そんとおり2躍進くらいしてくれ。』

『敵の方向はあっちです?あと掩蔽物の選定はオイと西で決めても?』

『おう、トイメンの台ば敵方でよか。あと掩蔽物は、そうやな、よか掩蔽ないけん発進位置ば変えるか、あと、オイも掩蔽物として使おうか。ん、……あすこから動き出しで』

打ち合わせ終わり、場所を移すことになった。

『ほいじゃ、ここじゃなくあっちから動き始めます。移動してくださーい』

濱口2曹の指示でみんなが移動し始める。20mほどズラしてさらに解説。

『まずは敵を射撃して頭を下げさせる。その間に前進する隊員が次の掩蔽物へ早駆け、今度は前進した側が射撃して後続を前進させる。これを繰り返すだけです』

地面に小石を置いて動かしながら交互躍進の復習をする濱口2曹。

『それでは山永3曹を1番、西士長を2番目として展示してみましょう。あ、分かりやすさ重視で射撃号令きっちり掛けて展示しますが、状況に応じ省略して結構です。』

山永と西二人が身構える。

『それでは、状況開始!……1バァァン!』

『1バァァァン!』

持ってきたバカでかい盾―これだけで35kgある―を地面に突き立て片膝を立てる山永。西は凹地に伏せていた。

『前方植松台の敵散兵200、シメェェェイ!』

『リョウカァァァイ!』

『2バァァァン!』

「2バァァァン!」

『前方15、1番の位置まで、早駆けェッ!』

「リョウカァァァイ!」

山永は盾を構えたまま、スイングアームでマグを引き出し射撃準備、西はミニミの提げ手に手をかけて、発進準備。

『1番準備よーしッ!』

「2番準備よーしッ!」

『1番撃てェッ!』

『バンバンバンバン!』

陸自必殺口鉄砲だ。こんな集合訓練ごときでは空砲も出しては貰えない。なお、西士長の方は警笛を口にくわえている。ピューピュー吹くことで射撃の設想になるというわけだ。

『2番前へェェッ!』

西が発進。電磁バネ式の足首ユニットとナノカーボン人工筋肉が爆発的トルクを生み出し、ロケットのように弾ける。滑るように着地、着地というかダッシュを続け4、5歩地面を踏みしめた時点であっという間に10mを駆け抜けブレーキモードへ。電磁バネを使いながらブレーキを掛けるが慣性が付きすぎたのか西士長は山永3曹の背中をオーバーラン、野球でセカンドベースへのスライディングがミスったランナーのように慌てて山永のキソーの後ろに隠れる。

「2番トウチャァァクッ!」

『……あら生きんよかばい!』

2中隊の隊員が思わず声を上げると他の見取り稽古の隊員たちも笑いが出る。

『1バァァァン、撃ち方待てェ!2バァァァン!分隊長の位置まで、早駆けェッ!』

「リョウカァァァイ!……2番準備よぉし!」

西は素早く濱口2曹の背中に目星を付けると、今度はしゃがんだ状態で発進準備。

『1番目標おなぁじ、撃てェッ!』

『バンバンバンバン!』

『2番前へェ!』

ブォッっという音を立てんばかりにまたしても西士長が爆進する。あっという間に到着。今度は加減を覚えたか、オーバーランはなし。

「2番トウチャァァク!」

『了解!1番撃ち方止めェェッ!2番、前方植松台の敵散兵150、シメェェェイ!』

「リョウカァァァイ!」

激動後の射撃というやつだ。西士長は息つく間もなくその場に伏せてミニミの射撃準備。

『1番、前方15、分隊長の線まで、早駆けェェッ!』

『リョウカァァァイ!……1番準備よぉぉし!』

「2番準備よぉぉし!!」

ほぼ間髪入れず山永準備完了。撃ち方止めの時点で彼はマグを後ろに下げ、前進準備をしていた。

『リョウカァァァイ!2番撃てェェッ!』

ピーピピピピーピー!!

景気よく警笛の音が鳴り響く。

『1番前へェェェ!』

西は斜めに機動したが、今度は山永が真正面に前進する。極大のパワーを持つモーターの回転数が跳ね上がり、ギアが噛み合う。どんっと本当に音を立て土を巻き上げながら、怒デカイ盾が猛進した。完全に戦車だ。こちらも4、5ステップで減速に入り、分隊長と並列する位置まで一瞬で前進。

『1番トウチャァァァク!』

どしんと盾を置いて山のように構え、素早くアームからマグを引き出す。いつでも射撃へ移れるが如くだ。

『……状況終了ッ!』

濱口2曹の声とともにこの戦場もどきが終わりを迎える。

「……華金やな。」

汗だくの山永は早く外出して酒飲みてぇとぼんやり考えたのだった。




なんだかメスガキ系AIみたいですね!
可愛いかと言われると、筆者的には微妙なラインw
筆者は戦闘妖精雪風が好きなので、雪風くらいの意思表示でも全然燃えれます!
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