アルゴノームⅠ   作:Type-Yasenbunko

20 / 56
筆者は最近そもそも夢を見なくなりました!
……いいことなのか?
ともあれ少なくとも悪夢は見ないのでそれはそれで幸せか!
みなさんなんやかやトラウマありますよね。
もちろん山永にもあるって話です。


第20話

――ここは、どこだ――

なんだか追いかけられている気がする。

俺は何をしているんだろう。真っ暗な中、ひたすら何かから逃げようと――

「ばけもの。」

背中から投げかけられる。誰の言葉だろう。

「きもちわるっ。」

「人間やめてもあんなもん?」

「親から貰ろうた身体ばあげん弄り回して。」

耳が痛い。心が痛い。真っ暗なのに視界がぐにゃぐにゃする。

「ワイんごたっと人間じゃなか。」

知っている。そんなことは知ってる。

こすかなァ(ズルいなァ)、自分ばっかい(ばっかり)国ん金で」

そうだな、確かに税金泥棒だ。もっと俺よりフルリムに相応しい奴がいたかもしれない。

「陸教でちょい成績の良かったけんって無理やり改造してもろたとやろ?賞状貰えんやったからってそれはないわ。科学の力とかずるやん。」

別に陸教で賞が欲しかったわけじゃない。俺はただ、もっと強い男に……

「他人ん力で強なって、そいがホンモンか?」

――くそが。そうだ、そのとおりだ。

俺は自分の力で強うなっとらん。貰いモンのニセモンだ。――

 

目が覚めた。ジブチの営内だ。ベッド脇のキャビネットに載っている時計は05:22。嫌な夢だった。夢など久しぶりだと山永は思った。

「……」

悪夢だった。分かりやすい悪夢。本当に言われた言葉もあれば、堂々巡りで自分で考えた言葉も混じっている。彼の心に膨れている最も大きなしこり。

今更どうしようもないこととは分かっているが、やっぱりたまに彼を苛む。

「……」

寝返りを打ち、起床ラッパまで寝直そうと彼は考えた。閉鎖空間で警衛ばかり就いているから心が参っているのかもしれない。それにしても久ぶりの悪い夢にしてはパンチが効いている。

――考えるだけムダだ、寝ろ寝ろ――

そうは思ったが、やっぱり起床ラッパまで目が冴えて彼は眠れなかった。

 

ここはジブチ基地医務室。独立棟として警衛中隊の隣りに配置されている建物だ。山永は今度の警護任務で使うナノの払い出し要領の調整にやってきた。

「お疲れ様でーす。警衛中隊の山永3曹ですー」

『お疲れ様です。河合2曹とのご用件ですか?』

医務室の前で無線を飛ばし、河合2曹と連絡を取ろうとする。すると医務室のAIOSが女性の声で応答した。

「はい、そうです。河合2曹はいまお手隙ですか?」

『呼び出しますのでお待ちください』

保留音。

『……はーい、お待たせしました。ナノの払い出しの件ですね?』

別の女性の声に切り替わった。

「そうです。当日の受け取り要領の確認に来ました」

『了解です。中へどうぞ!玄関口から入って左の、4番目左手の部屋です。事務室3の表示です』

ARグラスにマップが表示され、ポインターが付いた。併せてシュインと玄関の自動ドアが開いた。

「ありがとうございますー」

そう言って通信を切ると示された事務室に向かう。

「すいませーん、山永3曹ですー」

「はーい、河合2曹です。こちらへ」

呼ばれて河合2曹のデスクへ。山永の少し上ぐらいだろうか。しっかりした人のようである。そしてWAVE(海自女性隊員)だ。

「品目と数量は変わらずでいいですか?」

「はい、変わらずで」

「正直私も陸自用のナノについては詳しくないので詳細はAIOSを確認してください。今回払い出すのは陸自のキソーに積める全てのナノマシンです」

メガネにパララっと品目表が現れる。6項目50種類のすごい量だ。

 

1. 神経・認知系ナノマシン(Neuro)

 

2. 代謝・酸素・熱管理系ナノマシン(Metabo / Thermo / Cardio)

 

3. 感覚増強系ナノマシン(Sensory/Perception)

 

4. 免疫・修復・排出・再生系ナノマシン(Immune/Repair/Waste/Regen)

 

5. ホルモン・時間軸・精神安定系ナノマシン(Endocrine/Psycho/Chrono)

 

6. 安全・統合・補助インフラ系ナノマシン(Governance / Interface)

 

これら多種多品目のナノがパッケージ化され、キソーに取り付けられるようになっている。

「山永3曹は投与経験は?」

「実投与は二回あります。特技取得の際と方面実働訓練時」

「分かりました。他の人にも確認しますが、投与後に不調、副作用を感じました?」

「うーん、なんか妙に頭が冴えすぎて収まりがつかないっていうか、あとどっと疲労感も来ました」

「典型的な副作用みたいですね。何日も続きました?」

「いえ、2、3日で収まりました」

「分かりました、その話は記載しておきます。使用後に不調が出た場合は受診して下さいね」

「了解です」

ナノを使うととにかく変な気分になるのだ。無理やり脳みその全力を引き出されるような、それでいて落ち着いているような。しかも身体もしこたま酷使されるためナノが切れたあとの疲れた感覚がヤバい。山永は正直あんまり使いたいとは思っていなかったりする。

「他の使用者にも連絡入れてますが、山永3曹からも問診に来るよう伝えておいてください」

「了解です。あと当日の受領要領なんですけど……」

ようやく本題だ。どこからどのように受領するのか。モノ自体は見たことはあるが。

「薬剤室で配布となります。温度管理とかがありますから専用の携行容器ごと搬出してください。こっちへどうぞ」

誘導された先は薬局の調剤カウンターみたいな所だった。

「当日は予定どおり4セット払い出します。この携行容器で渡しますので員数を確認後こちらに格納し、使用する前に機械に取り付けてください」

見せられた容器は金属製のクーラーボックスのような容器だ。肩に掛けられるような肩紐も付いている。

「払い出しの日は河合2曹が?」

「えーと、どうだったかな?……あ、私が勤務ですのでそうなりますね」

タブをチラッと見て勤務割を確認。AIOSが会話の空気を読んで表示している。

「分かりました。当日よろしくお願いします」

前日から準備で忙しくなりそうだ。表情にこそ出さなかったが行きたくねぇなぁと彼はゲンナリしたのだった。




この時代のナノマシン、ナノは戦闘用になるとここまで多種多様の機能増強ができます!
……色々ありすぎてこえぇ!(笑)
フルリム(全身遺伝子改造)された上にこんなに身体能力強化してダイジョブなん?というアナタ。
フィクションだからね!きっと大丈夫だね!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。