ウメハラがぁ!画面端ぃっ!
バースト読んでえぇっ!まだ入るぅ!
ウメハラがぁっ!…つっ近づいてぇっ!ウメハラがぁ決めたぁぁーっ!
ジブチ基地、キャンプレモニエから6.5km。こんもりと小さな丘に、3機のAMIが膝立ちで待機していた。塗装はタンカラー、左肩の装甲部には黒い旗《バナー》を模したペイント。MALAAK(マラーク)と呼ばれるイランIRGC製の装甲服だ。黒旗戦線。それが彼らの名。頭部カメラセンサーに増幅用のレンズが付いている。彼らは6年、6年かけて準備していた。
". وَقْتُهُ(waqtuhu)"
[……時間だ]
13:20。隊長と思しき男が呟く。
"الل
[神は偉大なり]
誰にも聞こえないよう小声で、更に彼は続けた。神の火で、この世の悪を焼き払ってやる。レモニエを見やる彼らは、冷酷にこれからの事の行く末を見守る観測手達なのであった。
13:21。その先触れはジブチ市街から始まった。2台の爆薬を載せた自動運転の自動車爆弾が先鋒だ。ショッピングモールと大型の病院の駐車場に止まっていた自動車爆弾《UGV》が大爆発を引き起こす。ジブチ市でも自衛隊《日本》が攻撃を受けた話は瞬く間に広がっていたので、警察、消防などの官庁の動きは早かった。
13:22。キャンプレモニエ、ジブチ基地の南側に突如
そのドローン発進と同時に、隠蔽されていた車両爆弾型UGV100台が一斉に起動、両拠点へ突撃していく。
AMI組が観測を続ける。彼らの予想通り、レモニエは頑強だった。砂塵によるレーザー減衰を受けてもなお、噛ませのFPVドローンを叩き落としていく。実弾系のファランクスも稼働しているのが強い。とはいえ本命のロイタリングドローンも何機かは外柵に突入していた。一方悲惨なのは自衛隊側だった。まず対空火器が52式レーザー防御銃塔システム改だけだった。しかも門数が明らかに米軍より少ない。加えて米軍のC-RAMよりこのシステムは探知能力が低い。同時対応能力もだ。あくまで車載用、分隊防空用のためこの飽和攻撃を捌ききれない。
黒旗戦線のドローンは遠隔操作タイプのドローンではない。全ての機体にAIが搭載され自律且つ各機が近距離通信などで連携している。全ての機体に一瞬で情報共有される機能もある。命令や指示の変更、状況の掌握、情報共有も一瞬である。もはや恐るべき群体知性。そこにAMIを装備した人間の生体としてのセンサー、判断が加わる。彼らは巨大な一個の軍事的有機体なのである。
そしてドローンたちはそのネットワークを利用して、観測情報、被撃墜情報、突入成功情報を共有、分析、判断し人間に次の一手、車両爆弾《UGV》の突入位置の提案をしてきた。
"......"
例の隊長はAIたちの提案を追認するだけだった。実際そのAIOSたちの判断は実に合理的だったのである。AIたちの提案は10台を米軍、残りの90台を自衛隊に突入すべしというものだった。明らかにジブチ基地の方が脆弱だったのだ。
キャンプレモニエ、ジブチ基地内は大混乱に陥っていた。フル稼働で対空火器が迎撃しているが普通に何機もドローンが侵入してきている。突入できた自爆が出来るドローンたちは徹底してカメラなどのセンサー、監視塔、対空火器、通信系統を破壊しようとする。拠点の目と耳を潰そうとしているのだ。その徹底的な攻撃に情けも容赦もありはしない。最高効率で敵を沈黙させるにはどうすればいいかを冷酷に判断している。それに継いで破壊を主任務とする中型ロイタードローンたちのいくつかは自衛隊基地の外柵、モジュラー型の鉄条網を破壊していた。そこから
ピピッとまた隊長の頭部HUDに次の戦術提案が表示された。
《残余のドローン200機中30機を米軍、自衛隊に170機、残り車両爆弾120台のうち20台を米軍、100台を自衛隊に突入を提案》
"
[……承認]
またしても彼は特に異を唱えることなく承認。AIOS達は最低限米軍の足止めをできる捨て石として必要な量の戦力をレモニエに振り分け、脆い自衛隊基地にほぼ全ての攻撃戦力を振り分けた。その企図を分かりやすい図上シミュレーションでAMI隊に表示している。なんならAIはジブチ基地から米軍拠点に大穴を開けることすら考えているようだった。ただ、彼らの本命を叩き込むだけのために。その運命の瞬間まで、あと少し。
山永はその日、救助のための車両を準備していた。破損の少ないハーケイに自分のキソー、弾薬、火器全て載せ、いつでも直ちに救助へ前進できるように。弾薬庫で各種弾薬を全て受領し終わり、医務室でナノを受け取って車両ごと全ての機材を弾薬庫に預託しようとバックで駐車しようとしていた所に、遠くから爆発音が聞こえだした。
「……なんすか、あの音?」
「わからん。爆発音か?」
バックの車両誘導をしてくれていた浦2曹も訝しげに爆発音の方向を眺める。すると瞬く間に爆発音が近づいてくる。
「……なんかヤバかな。」
「……ですね。攻撃、すか?確認してみます。……
「オイもちょい上がって見てみるわ」
浦2曹は停弾堤の上に上がるため、バンカーになっている弾薬庫の中に入っていく。中に階段があるのだ。浦2曹が坑道へ入るか否かのタイミングで1機の
「……!?」
目にも止まらぬ早さで弾薬庫の坑道へ飛び込むと、爆発。続いて2機、3機とドローン達がまたしても現れ弾薬庫に飛び込んでいく。
――ドガドガアァドガアアン!!!――
不味い、中の弾薬に誘爆するかもしれない。それに浦2曹は……。
――ドドドォォォン!!!――
坑道の中で爆発音が聞こえる。マジかよと流石の山永も動揺。そこへ、
――ギュイギュイギュイィイィィ!!――
もはやドリフトのような旋回をかましながら、現地でよく見るTOYOTAプロボックスとハイラックスが弾薬庫へ猛然と突進してきた。
「……?!?!」
先にプロボックスが内柵に突入する。さすがに柵を突破は出来なかった。が……
――ドガアアアァアン!!!――
大爆発。柵が吹き飛ぶ。その爆炎の脇から飛び出すハイラックス。もはや一刻の猶予もない。山永はハンドルを握りアクセルベタ踏み。ハンドルを握って生体認証する時間すらもどかしい。
「はよ動けッッ!!」
――ギャギャギャッッ!!――
土煙を上げタイヤを空転させ、ようやくハーケイが立ち上がる。ハンドルを切りながらハーケイは猛然と前進、辛うじて正面衝突は避けられた。ハイラックスはそのまま弾薬庫の坑道に減速することなく突き刺さり、一拍置いて大爆発。
「……!!」
脳内でアドレナリンを出しまくり、爆風に後ろから煽られながら、大穴の空いた弾薬庫から脱出する山永。どこへ、どこへ行けば……。
(中本《中隊本部》か?いや、警衛棟、待て、司令棟の方が……?)
グルグルと纏まらぬ考えをまとめようとして基地内が見えてくる。……その姿は見るも無惨の一言だ。あちこちで煙と火が上がっている。燃料庫もやられたらしい。遠目でも分かるくらい火が出ている。無数のドローンが飛び回り、車両爆弾と思しき民間車が何台か走り回っているのも見えた。
「……」
この時点で、本能的に山永はもうダメだと判断した。この基地は、終いだ。
「逃げるしかなか。」
誰に言った訳でもない。もはや自分に言い聞かせるための言い訳だった。とりあえず決断したなら急がねばならない。正面ゲートはまだ生きているだろうか。いや、どうせやられている。なら連中が作ったであろう【穴】から抜けた方がスムーズだ。
「……?!」
司令棟を通り過ぎようとした時、人が見えた。銀髪。帽子にコンバットシャツでほとんど武装など持っていない。あのヴィーグルの女性隊員だ。ルリエンナだったか。
"Get in!!"
急ブレーキで彼女の脇に止まると山永は叫ぶ。一瞬彼女は逡巡したが、すぐに助手席を開け飛び乗ってきた。
"...Under attack?"
[攻撃されてるの?]
"I don't know! But it's dangerous!"
[知らん!でもヤバい!]
外柵の穴を探すべく車両を回す山永にルリエンナが尋ねた。もはや通信系すら機能していなかった。最初は混信した通信がコータムから流れてきていたがそれすらいつの間にか無くなっていた。
「……あった!!」
モジュラーの蛇腹鉄条網に穴が空いている。明らかに連中が開けた穴だ。あそこなら出られる。迷うことなく外柵の穴へ進路を取る山永。
「……!」
外柵からガシャンと飛び出し、外柵沿いの道路を基地から離れるように全速力で爆走する。基地沿いの道路から離れると、そのまま海沿いを南下。
「……っふうぅぅ……」
"......"
どうしたもんかと山永は思った。チラッとミラーを見ると未だに基地のあちこちで爆発や火の手が見える。戻るのは無理だ。山永も少し冷静になり、ルリエンナに尋ねた。
"...Is it safe?"
[安全か?]
"...Can't tell."
[分からない]
正直どこまで行けば安全か、二人とも全く分からない。不安と安心が綯い交ぜのまま4、5分ほど海沿いの道を走っていると、突然その時が来た。
地平線が青白く弾ける。
昼間の太陽より強い閃光が、一瞬だけハーケイの中まで真っ白に染め上げた。
次の瞬間、ブワッと焼けるような熱波が車内を襲った。熱線だ。空気が震え、爆心の火の球が盛り上がるように膨張した。
山永はミラー、ルリエンナは窓から首を乗り出して基地を見やる。火の玉が大きく育っていく。
「……おい……
音はまだ来ない。
だが火球の縁から砂塵が巻き上がり、波のように迫ってくる。
空がねじ曲がったような錯覚さえ覚える。
やがて、腹の底を殴るような爆音が押し寄せた。
耳ではなく骨で聞く音。爆心から衝撃波が見えたルリは慌てて首を引っ込め姿勢をとる。
ドゴンと後ろから叩かれるような衝撃。後方からハーケイを衝撃波が襲う。下手をするとムチ打ちになるほどの威力だ。
遠くで、巨大な柱が立ち上がっていた。 キノコ雲。
赤でも黒でもない、焦げた黄土色の雲の塊。
それは世界が崩壊していく姿そのものだった。
"What...is it...?"
[あれは……なに……?]
「……核やんけ」
山永にはわかった。長崎市の小学校や中学校などでは夏になると毎年、夏休み期間中にも関わらず登校させられ、半日以上平和学習という名の拘束学習をさせられていたのだ。何度か原爆資料館にも連れて行かされている。そこで嫌と言うほど115年前の原爆投下とその惨状を滔々と教育されていた。小学校の最初の方は真面目に聞いていたが、毎年毎年クソ暑い中3日も4日も学校に登校させられ、最後の方は山永はウゼェとしか思わなくなっていた。しかし、その教育が、その言葉が、その絵が、その写真が、今全くもって完璧に再現されている。あれは、あれは絶対に核兵器だ。
"It's nuclear weapon. I know."
[あれは、核兵器だ。知ってる。]
"...Really? Are you serious?"
[……本当に?本気で言ってるの?]
"Yeah, I'm serious."
[ああ、本気だよ]
苦虫を噛み潰したような山永の顔。よくも、よくもまあ長崎生まれの俺の前で、あんなものを……。彼の腸は収まり着かぬほどマグマのように茹だっている。絶対に、許せん。体を震わせながら前方を直視する山永を見て、ルリエンナは目線を落とした。
小さな丘の麓。3機のAMIが残っている。まだ、基地を観測しているのだ。
どうやら自衛隊基地とキャンプレモニエの際ぐらいで爆発したようだ。その爆心ならばほぼ、キャンプレモニエの機能は破砕できたであろう。ジブチ空港ももはや運用できまい。彼らもそろそろ離脱しなければならないと思っていた。
"سبحان الله… ضعفاء。(Subḥānallāh… ḍu‘afā’.)"
[神よ御覧あれ……なんと脆い]
隊長は小さく、しかし明らかに愉悦を含んだ声で、神にその言葉を奉ったのだった。
軍法これ全て 山津波の如く
時を作り 場を作り
ありたけ積んで押して流せ
……黒旗戦線ヤベェ。
ちな、梯隊を襲った武装組織とは別組織です。あっちは紅海解放戦線。
多少繋がってはいますが、正直あんま仲良くないんですねぇ。
利害が一致する時だけ協力してます。
それにしても彼ら、第六天魔王や金柑頭もにっこりの用兵でしたね!
ちなみにこの作戦にドローン500機、車両爆弾200台以上、戦術核1発を投入しています。核爆弾も車両爆弾の1台に積んで突っ込ませてます。
やるなブライト!
金持ち武装組織ですねぇ。
……自分で描写しながら、背筋が凍りましたわ、こら。