アルゴノームⅠ   作:Type-Yasenbunko

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ちょいちょい出てきますが、ただ生きている人たち。
こういう人たちがもっと増えるんだろうなァと筆者は考えています。
時代の流れですねェ。


ガバイレ編
第32話「ガバイレ編」


ガーボ・ダダーへは特に何事もなくたどり着いた。内陸の枯れた川をひたすら上り見栄えの変わらぬ外を眺め続けるのは山永とっては苦痛だったが。

「……」

ガーボ・ダダーの街に入る前、明らかなスラムの前を通り過ぎる。きちんと家はあるが、真っ昼間なのに皆ダラダラと路地に出て地べたで座って談笑したり、タブレットを眺めたり寝っ転がったり、なにか仕事をしている様子はない。

"Is that a slam area?"

『ありゃスラムなのか?』

"Yes, Garbo-dadar's slam."

[ええ、ガーボ・ダダーのスラムですね]

ルリも窓越しに居住地を見る。

“Is there something bothering you?”

[なにか気になることでも?]

"Yes, I think I've seen it somewhere."

[いや、どっかで見たことあるなと思ってな]

と言いつつ、山永は分かっていた。基礎的所得《ベーシックインカム》だけで仕事をせず暮らす、国営団地の雰囲気だ。特に何かやるでもなく、ダラダラと生きている感じ。

「……」

やはりなんか俺には何か違うなと思いながら、彼らの住処を通過する。無論、彼らを否定するつもりも彼にはなかったが。好きに生きられることは決して悪いことでは無い。

“They’re alive.

But they’re not going anywhere.”

[生きてはいます。

でも、どこにも行けません]

珍しくポツリとルリが感想を述べた。

"Exactly."

[確かに]

山永は前に向き直るとそう答えた。

"You are earnest. I like it."

[真面目だな。そういうの好きだぜ]

“I’m just stating what I see.”

[見えていることを言っただけです]

ルリはスラムから軽く目を逸らすと、そう答えた。市街が見える。間もなくガソリンスタンドだ。

 

給油も終わり、トイレ等を済ませガバイレへ再出発する二人。ガソリン代で山永が払うと言ったら私が払いますと軽く揉めたが、ルリの「経費ですよ」の一言で彼はあっさり折れた。自衛隊の場合、私金立て替えがとても面倒なので、払った場合は山永は返金まで時間かかるだろうなぁとは思っていた。ガソリン代の引き落とし証明はヒマリに頼めば簡単に証明してくれるが、その妥当性についてきっと人間の側で揉めることだろう。会計隊のAI側はあっさり承認しそうだが。というかそもそも、帰れたとしたら状況説明でとんでもなく軟禁されそうだと山永はゾッとした。あまりに色々なことがありすぎている。

そう、色々なことが、余りに起きすぎた。流石の彼も疲労を隠せないレベルになりつつある。

(一休み、したかなぁ。)

舗装されていない道を遠い目で眺めながら、彼はそう思った。

 

“There it is. That’s Gebilay.”

[見えました。あれが、ガバイレです]

本当になにも起きる事なく、ガバイレの郊外までたどり着くとルリが教えてくれた。

"It's bigger than I think."

[思ったよりでかいな]

“Yes. By Somaliland standards, it qualifies as a city.”

[そうですね。ソマリランドの中では都市と呼べる規模です]

ルリがハーケイに尋ねる。

“Hawkei, do you have the location of Vigle’s office?”

[ハーケイ、ヴィーグルの事務所は分かる?]

“Negative. Please designate the point.”

[いえ。ポイントを指示しますか?]

“Yes. Bring up the map.”

[ええ。マップをお願い]

"Roger that."

[了解]

ルリはガバイレのマップの北部あたりをポイントする。町外れのようだ。ハーケイがルートを変更し、右折してヴィーグルの事務所へ向かう。

 

"Arrived."

[到着]

ハーケイは町外れの倉庫群にたどり着く。着いたのは結局夕方だった。事前にルリが連絡を入れていたのか、何人かが倉庫の前で立っている。白人だ。

“Good work. Let’s get out of the vehicle for now.”

[お疲れ様でした。ひとまず車から降りましょう]

ルリに言われるがまま山永も車から降りる。彼女はそのまま待っていたヴィーグル職員と話に行った。

山永は手持ち無沙汰なので辺りを見回す。4つか5つ位の倉庫が並んでいる。ちょっとした物流倉庫だろうか。ちらほら黒人や白人が作業のためか歩いているのが見える。みな同じ紺のポロシャツを着ているのでヴィーグルの職員なのだろう。しかしヴィーグルのエンブレムでは無さそうに見える。フロント会社なのだろうか。

 

【挿絵表示】

 

"Sergeant Yamanaga?"

ルリに呼ばれた。紹介されるのだろう。

“This is Sergeant Yamanaga, Japan Ground Self-Defense Force.”

[こちら、日本、陸上自衛隊の山永3曹]

"Nice to meet you. Munekiyo Yamanaga."

山永が手を差し出し、三名と握手。

“From the right: Lars Nielsen, Marco Valenti, and Thomas Reed.”

[こちら、右からラース・ニールセン、マルコ・ヴァレンティ、トーマス・リード]

“I’m Lars. I manage this facility.”

[ラースだ。ここのマネージャーをしている]

“Marco. I handle communications and electronic systems.”

[マルコです。通信、電子機器の管理をしてます]

“Thomas. Logistics and maintenance.

Nice to meet you, Munekiyo.”

[トーマスだ。補給、整備担当だ、よろしくムネキヨ]

ふと、握手していた山永の顔を見て、ルリが怪訝そうな顔をする。ラースは気にせず、話を進めた。

“I’ve been briefed.

You’ve been through a lot. We can discuss what comes next later. For tonight, get some rest. We have rooms prepared. Thomas will show you around afterward.”

[話は聞いてる。

大変だったな。今後の事はさておき、今日は休むといい。部屋も用意している。後でトーマスに案内させる]

"I appreciate it."

[感謝する]

ラースは出来る男のようだった。ここに来るまでにルリも手を回してくれていたのだろう。

“Lurienna, you should rest as well. I’ll hear your report tomorrow. …Thomas.”

[ルリエンナも今日は休め。報告は明日聞く。……トーマス]

“Got it, boss. I’ll show them around.”

[OKボス。案内してくる]

"Excuse me? I want to park the vehicle."

[すまない。車を停めたいんだが]

山永が尋ねる。

“Sure. Follow me—I’ll show you where to park.”

[ああ、いいよ。案内する。こっちだ]

そう言われ、山永はハーケイへと戻った。

 

車両を格納しルリとトーマスに再合流。モータープールはまさかの倉庫内だった。軍用車両なので当然と言えば当然である。ほかのヴィーグルの車両も露骨ではないにしろ、見る人間が見れば普通の車両ではないとバレるだろう。人の目から隠しておくのは確かに妥当である。

“Didn’t expect this.

Seeing you come back with a guy, Lurienna.”

[しかし驚いた。ルリエンナが男連れで帰ってくるとはな]

“He’s not ‘a guy.

He’s a guest.”

[“男連れ”じゃありません。

客人です]

軽くムッとしながらルリ。軽い感じの男だ。倉庫の間の道を抜けながら、トーマスは続ける。

“Alright, alright. A guest, then.

Still, that’s rare coming from you.

…Anyway, I’m glad you made it back safe.

Aside from you two, the only ones who survived Djibouti were the teams out on external assignments and the people at the city office.”

[オーライオーライ、お客さんね。あんたがそう言うのも珍しいが。

……ともあれ無事でよかったよ。ルリエンナ達以外、ジブチで生き残ったのは外回りしてた奴らとジブチ市街の事務所にいた連中だけだ]

“...I see.”

[……そうですか]

少し目を伏せるルリ。

“They’re still inside Djibouti because of the border chaos. But it seems they weren’t exposed to any fallout. That’s a relief.

…Here we are.”

[連中は国境の混乱でまだジブチ国内に居るが、死の灰とかは浴びてないらしい。それもよかったよ。……ここだ]

トーマスが人間用の扉を開け、中へ招き入れる。

中は倉庫ではなく、ブース化された宿舎だった。入ってすぐが小さなラウンジになっており、ソファーセットやテーブルが雑然と置いてある。シンクやコンロ、電子レンジも見えるから簡単な調理もするのだろう。その奥には、蜂の巣のように無数のブースがずらりと並んでいる。あれが部屋のようだ。

“Mr. Yamanaga, you’re in D-21.

Lurienna, F-5.

Showers and the laundry are on the far side of the booths. Use them whenever you like.

Anything else you need?”

[ミスター山永はD-21だな。ルリエンナはF-5だ。シャワー室やランドリーはブースの向こう側にある。自由に使ってくれ。

他になんかあるか?]

山永が、若干申し訳なさそうに申し出る。

"Sorry, But I have no change of clothes. Can I lend them?"

[すまない、着替えがないんだが、借りれるか?]

“Yeah, no problem.

We’ve got spare clothes.

I’ll grab you a shirt—might not be your style, though.”

[ああ、いいぜ。

替えならあるからな。シャツ持ってきやるよ。あんたの体型に合わんかもしれんがな]

今度はトーマスはルリの方へ向くと、

“What about you, Lurienna? You good?”

[ルリエンナ、あんたは大丈夫なのか?]

ルリは少し考え、

“…Yeah. Could I borrow a change of clothes from someone?”

[……そうですね、誰かの着替えを借りられますか?]

“Alright. I’ll ask around.”

[オーライ、だれかに頼んどくわ]

そう言って二人に鍵を渡してトーマスは去っていった。それに合わせ、山永も部屋へ入ろうとする。

"OK, see you later, Luri."

なにか言いたげなルリだったが何も言わない。山永は渡された鍵で自分のブースに入っていった。

 




ようやくガバイレにとうちゃーく!!
五体満足でなんとか安全な場所にたどり着けましたね―
そしてルリさんなにか気付いたようです。
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