アルゴノームⅠ   作:Type-Yasenbunko

35 / 56
日本人男性はチュチュアンナだのエメフィールだのピーチ・ジョンだのに入店するのにしこたま抵抗があります。
が、北欧人はそうでもないそうです。
山永からすると羞恥プレイに近いですね。
てかこいつ羞恥プレイやられすぎか?


第35話

洗剤やシャンプー、ボディソープ、歯ブラシやらカミソリなど必要な日用品をルリの言語支援の元買い集め、山永の用はなんとか完結した。次はルリの番である。日用品は山永と同じ店で集めていたので、後は衣料品だ。

“Women’s items are over here.”

[女性物はここですね]

"Yeah."

[あーい]

またしても雑然とワゴンに積んである系の店だ。

“Can you help me?”

[手伝って貰えます?]

"Of course, yes. What should I do?"

[もちろんいいぜ。何すりゃいい?]

“Same as when you did yours.

We’ll gather several changes of clothes.

Please look for tank tops, underwear sets, several pairs of hot pants, and one or two sweat suits.

New or used doesn’t matter.

Better quality is preferred, but if you find something suitable, just bring it to me.”

[あなたの時と同じですね。

着替えを複数買い集めます。タンクトップと下着の上下、ホットパンツを複数枚、スウェットを1、2着探してください。新品中古は問いません。なるべく品質は良い方がいいですが、あればとりあえず見せてください。]

すらすらとルリが要望を述べていく。むしろ山永は手伝うと言ったのにやや仰け反り気味だ。

「お、おう、Also underwear?」

[下着も?]

"Yes."

[ええ]

何か?といった風のルリ。本当に気にしていないらしい。

"OK, I shall help you."

[わかった、手伝うわ]

山永がソワソワしているのを見て、ルリははてなという顔をしている。

“…Is there a problem?”

[……何か問題でも?]

"No, nothing."

[いんや、なんでも]

“I see.”

[そうですか]

どこか引っかかっている顔をしているがそれ以上詮索はしてこなかった。早速サーチに取り掛かる彼女。山永は小声でヒマリに尋ねる。

「……ヒマリ、外国人って下着とかそういうの気にせんもんなん?」

『北欧の人は気にしないんだって。下着はただの布だと思ってんじゃない?性的だと思ってんの宗清だけだよ』

「……。」

どこか楽しそうに、ヒマリが茶化してくる。逆に意識している自分が情けなくなってきた山永。とにかく指示されたとおり必要な衣料品を掻き集める。しかし女性物の下着を探すのにはやっぱり抵抗はあった。

「……何しよっとやか。」

 

【挿絵表示】

 

新品で上下セットのスポーツブラとパンツを見つけ、ひとまず確保。ホットパンツもあったが、中古だ。使うだろうか。あと女性物のスウェット。

「……てかサイズ聞いとらんやったな。もうどうでもいいか。...Luri, I don't know your clothes size. Tell me it.」

[……ルリ、あんたのサイズが分からん。教えてくれ。]

“Usually medium.

If it doesn’t stretch, large may fit better.

Bring both.”

[基本はMです。

伸びない生地ならLの方が合うかもしれません。

両方持ってきてください。]

"Yeah."

[あい]

何一つ恥じらいなくサイズを語られた。ほんとに気にしないお国柄のようである。

とりあえず自分の正面にあったワゴンの中身はあらかた漁っただろう。下着2セットとタンクトップ2枚、ホットパンツ3枚を探し当てた。新品中古は入り混じっている。彼は声をかけようとしてなぜか自分だけがモゾモゾした気分になっているのが納得いかなくなってきた。イタズラしてやろう。まだ何かを探しているルリの肩をポンポンと叩いた。ルリが振り向く瞬間、彼女のほっぺの偏差位置に人差し指を置いてぷにっと指差す。

"...What are you doing?"

[……何してるんですか]

"...A trick."

[……いたずら]

“That’s not appropriate. Stop it.”

[困ります。止めてください。]

ガチで怒られた。本気で嫌そうな顔をされている。

 

【挿絵表示】

 

"I'm really sorry. But I gather them."

[マジですまんかった。でもこんだけ集めたぞ]

そう言って自分の戦利品をルリに差し出す山永。

"Thank you."

[ありがとうございます]

ケロッと怒りを消すと、彼女はそれらを受け取り一つずつしっかり吟味していく。

“These are fine. I can use all of them.”

[いいですね。全部使えそうです]

お眼鏡に叶ったようで、全て採用された。そのまま自分の集めた分とともに店主と交渉し始める。山永は唯々諾々と眺めているだけだ。さっくり交渉が終わると現金で支払いを済ませる彼女。ドル紙幣の様だ。店主のおばちゃんもどこか満足気である。山永の時と同じく袋はくれないので、ルリの肩にかけていたバックパックに買ったものを押し込んで行く。

"Are they fine quality?"

[ものは良かったのか?]

“Yes.

They’re better than expected. Thank you.”

[ええ。

思ったよりいいものが買えました。ありがとうございます]

"I see."

[そうか]

とりあえず目下の目的は果たした。そしてとっくに今は昼過ぎだ。

"...Hey, Luri, Luri. I'm hungry."

[なあルリルリ、腹減った]

衣料品の通りから離れようと歩きながら山永がルリに腹へりを主張する。

“…You really are childish.”

[……子供みたいですね、あなた]

やや呆れ気味に、彼女は並んで歩く彼を見やる。

"I have no choice. It's fact that I'm hungry."

[しょうがねェじゃん。腹減ったんだし]

溜息を吐かれた。

“Alright. Let’s get lunch.

Do you have any requests?”

[分かりました。

昼食にしましょう。なにか要望は?]

"Luri's recommendation."

[ルリのオススメで]

“Then we’ll try the place I used before. It may no longer be there.”

[なら前使っていた食堂にしましょう。無くなっているかもしれませんが]

そう言って進路変更。マーケットの外れへ向かう。山永が思ったよりこのマーケットには人がいる。二人は人をひょいひょい避けながら、マーケットから出るとすぐ右に曲がり、目的地のローカル食堂。屋根はあるが壁がないオープンタイプで、100人は行かないまでも結構な人間が入りそうだ。

“It’s still here. This place.”

[まだありましたね。ここです]

「おお」

昼メシの時間からは離れているがそれでも席が半分程度埋まっている。そこそこ人気のよう。

"There are more people than expected."

[思ったよか人いるな]

“The food and portions are fine. It’s a standard place in this area.”

[味も量も悪くありませんからね。この周辺だと定番です]

"You came here alone?"

[一人で来てたのか?]

"Yes."

『……ほんとに男っ気なかったみたいじゃんね』

「……お前はいらんこと言わんでよろしい」

またしてもヒマリが口を出してきたので釘を刺す山永。

“…I’ve been wondering your AIOS speaks rather freely.

Don’t you ever turn it off?”

[……いつも気になってたんですが、貴方のAIOSは勝手によく喋りますね。

切らないんですか?]

"...I've tried that. Then she got so angry and didn't talk with me for a while."

[……1回試した。そしたらめちゃめちゃ怒っていっとき話してくれなくなったよ]

“…If it’s that troublesome, wouldn’t it be better to switch to another variant?”

[……そんなに使いにくいバリアントなら別のタイプを入れればいいのに]

自分のことを言われたと認識するや否や、ヒマリはすぐに言い返してきた。

“You can’t figure him out with specs or variants.

If you want to understand him, you’d have to talk with him a lot more.”

「スペックとかバリアント見てても、この人は分かりませんよ?

理解したいなら相当お喋りしないと無理です」

“...I’m not particularly trying to understand him.”

[……別に理解したい訳ではありません]

瞬殺でルリが返してきた。山永はしょんぼりしつつ、

"...Like that."

[……そっか]

その顔を見て、若干慌てるルリ。

“…Ah, no. I didn’t mean to dismiss you.”

[あ、いえ、貴方を否定してるわけでは……]

"...Really?"

[……マジで?]

パッと晴れやかな顔になる山永。

“…That’s exactly why—don’t say it like that.”

[……だから、そういう言い方やめてください。]

そっぽを向くルリ。

『やるね、女誑し』

「別に狙っとらんのやけどなァ」

そう言っている間にルリがずいずい店の中に入り、勝手に座る。

“Over here.”

[こっちです]

「……勝手に座っていいんか?」

『いいんじゃない?』

AIOSのくせに雑な返し。まあ使っていたルリが勝手に座っているのだから問題ないのだろう。山永も彼女の座るテーブルにトイメンで座る。ルリはそのまま奥の若いあんちゃんに目配せするとその店員が寄ってきた。

“Maxaad rabtaan?”

[何にする?]

“Digaag iyo bariis, iyo laba biyo. Ma labanlaabi kartaa?”

[鶏、ライス、あと水二つで。2倍に出来る?]

なんだかすごい勢いでソマリ語で話している。ただ眺めるだけの山永。

“Waan weydiinayaa.”

[聞いてみるわ]

下がっていく店員。不安になる山永。

“You choose chicken or goat first, then rice or pasta.

If doubling is possible, do you want a double portion too?”

[注文はまず鶏かヤギを決めて、米かパスタを選びます。貴方も量を2倍にできたら2倍にしますか?]

すかさずルリが注文要領を教えてくれた。

やっぱ気が利くなあと山永。

"If I can, double. And please order goat and rice."

[もしできるならダブルで。あとヤギとライスで頼んでくれ]

"Alright."

[分かりました]

山永は改めて、ぐるりと食堂を見渡した。ほんとに現地民ばかりだ。彼ら以外に外人らしい外人はいない。あんちゃんが帰ってきた。

“Waa la sameyn karaa. Sidee rabtaa?”

[できる。どうする?]

Haa. Marka laba jeer laba. Isaguna riyo iyo bariis.”

[そう。だったらダブル二つ。こっちの人はヤギのライスで]

“Haye.”

[あいよ]

あんちゃんが下がっていく。店の中は日本と違い、日陰だと意外となんとかなる。暑いが。オープンなので天吊り型の扇風機だけが唯一の涼であった。

"By the way,"

[そういやさ]

"...?"

"At last, the rumor's truth is what?"

[結局、あの噂は本当はどうだったん?]

右手を鉄砲の形にしながら天井に向けてBANのポーズ。ルリは呆れ気味に、

“…That again?”

[……またその話ですか]

"Tell me. I want to know."

[いいじゃん、知りたいんだよ]

“...It wasn’t anything significant.

He was being persistent, so I released the holster hood and pretended to draw, then told him 'get lost'.”

[……大した話じゃありません。彼がしつこかったので、ホルスターのフードレバーを解放してドロウするフリしながら、『消えろ』と言っただけです。]

ため息混じりに彼女は答えた。

"I thought like that. I think NEVER you aim anyone without necessity."

[だと思った。あんたは絶対理由もなしに鉄砲向けたりしないと思ってたよ]

軽く笑いながらそう言われ、彼女は目を丸くした。

“...Why would you think that?”

[……なんで、そう思ったんです?]

"...Why, you are sincere, I think."

[……なんでって、あんたが誠実だって思ってるからさ]

やや乗り出し気味の彼女に押され、山永は少し仰け反りながら顎をさすりそう答えた。

“…Is that so?”

[……そう、ですか]

ルリは斜め下を眺めながら、不思議そうな顔をしている。褒めてんのになァと山永は思った。そこへちょうど、あんちゃんがバカでかい皿を二つ持ってくる。

“Waa kan. Digaag iyo riyo.”

[はいよ、チキンとヤギ]

「おお、so big!」

[でっか!]

“This should be enough for you, shouldn’t it?”

[これなら貴方も満足でしょう?]

 

【挿絵表示】

 

"Yes, I'll be satisfied."

[ああ、これは満足するだろ]

どデカい皿だ。黄色く炒めた長粒種の米に、スパイスで焼いた風のヤギ肉がどでんと3つ乗っている。脇にライムが添えられ美味そうな香り。これはフルリムでも満足の量である。そしてルリもこの量を平らげると思うと、どこに入るんだろうと山永は思った。一応フルリム兵用のスーパーウルトラハイカロリーバーも戻れば余っているが、美味くない。一応あれは血糖値スパイクを起こさぬよう食物繊維など様々な何かを混ぜられてはいるが。

「てかヤギでけェ。笑えるわ。...Let's eat.」

"Yes."

食べだしてみると、意外にイケる味だ。カレーほどごちゃごちゃしておらずわかりやすい香りで日本人でも食べられる。ヤギ肉ももっと臭いかと思っていたが、熊本で食った猪肉に比べれば全く気にならなかった。野趣あふれる旨みと言ったところか。

"...Delicious. I like it."

[……うめェ。気に入った]

“I’m glad to hear that.”

[それはよかった]

ルリも穏やかな顔をしながらもくもくと食べていく。ペースが落ちないところがフードファイターよろしくである。

"...It's good restaurant. Why you came here alone before?"

[……いい店じゃん。なんで一人で来てたんだ?]

“…Because people tend to stare when I eat.”

[……私が食事するとジロジロ見られるので。]

ああなるほどと山永。彼ももともと大食漢だったが、改造されてからバカみたいに食べるようになった。それで周りから奇異の目で見られたことは一度や二度ではない。割と目立つのである。それにしても美味い。若干塩っ辛いが、暑い国だ。汗かくのも踏まえた塩分量なのだろう。ふと、ルリが景気よく米を平らげていく山永を自分の食事を忘れ眺めている。

"I like this restaurant. Let's come here next time."

[気に入ったぜ。また来ような]

山永に水を挟みながらそう言われ、ルリははっとなる。

“Yes. That would be nice.”

[ええ、そうですね]

ルリが穏やかに微笑んだ。




結局一緒に飯食ったりが一番わかりやすく仲良くなれるのでしょうね。
まあ、食事同席というのは様々な減点式地雷が敷設されているそうで、クチャラーなどはその典型。
一発で触雷し、じ後、後続が続くことはないそうです。
……皆さん、食事の際の『品』とやらにはよくよく注意しましょう。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。