アルゴノームⅠ   作:Type-Yasenbunko

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兵隊が兵隊である理由の一つが、自分の鉄砲を自分で整備できるかだと思うのです。
正直撃つだけならどんな素人でもできる。
バラし、組み直し、その中の部品がどうなっているかを理解し、その上で射撃を行う。
これが「お客さん」の撃つだけ射撃と兵士の射撃を分ける一番の差だと思うのです。


第36話

翌日、ようやくまともに生活ができるようになった山永は現在の各種装備の点検・整備を始めた。というかそれ以外、やることを思いつかなかったからだ。

一番損害の少なそうなハーケイを皮切りとし、部隊装備から行うのが自衛官っぽい。ハーケイはもともとここまで走れていたので致命的な損害を受けていなかった。熱線で塗装が焼けていたのはゾッとしたが、外観で確認できる不具合は見当たらない。合わせてハーケイのAIOS本人に自己診断を走らせてやると、やはり大きな損傷はなかったようである。EMPで破損が出た配線があったらしいが予備配線でどうにかなっていたとのことだ。代えられるなら代えたいが、流石に修理資材がない。

キソーに関してはやはり戦闘ヘリ(ハインド)とやり合ったときにかなり無理をさせたので結構ダメージが来ている。動けないわけではないが、衝撃吸収機構周りに不具合がでているのだ。また、民家の屋根から背面で落ちた時だろう、背面装甲が凹んでいる。運よくフレームには異常はなさそうだ。総じて動かせないことはないが、まともな戦闘機動をさせるのは得策ではないといった印象だ。

「……まあ、小破っち感じか。」

その他細々した破損を確認。戻ったらDS(普通科直接支援中隊)になんて言われるだろうと彼はしょうもないことを考える。亡失損傷報告を書かされるだろうか。

「……後は、火器か」

まずは毎度世話になっているキャリバー(重機関銃)からだ。頑丈で壊れにくいことで有名だが、それは整備がきちんと行われている前提の頑強さだ。A整備(使用者が行う整備)をサボれば、その機能は容易に阻害されると自衛官は習う。陸自にはAからDまでの各種整備があるが、その中でもA整備ができてこそ、兵隊足りえると山永は思っていた。自分の銃を手入れできない者は戦士ではない。

「……たぁ言ってもな……」

基本キャリバーは二人で整備した方が楽だ。特に一人だと銃口通しが面倒なのである。というかそもそも武器手入れ具すらない。

「……頼んだら手伝ってくるっかなァ?」

彼が頼める相手など、この拠点には一人しかいない。

『手伝うに決まってんじゃん。早く電話しなよ!掛けていい?』

またヒマリに煽られた。

「……頼む」

突っぱねる理由も作れず、大人しくヒマリに電話を頼む山永。元々そうだったが最近さらに掌で転がされている。

“…Yes. Lurienna here.”

[……はい、ルリエンナです]

すぐ繋がったが、なんだか疲れているような声だ。

"...Are you busy now?"

[……いま忙しい?]

“…Well… yes. I’m in the middle of training.”

[まあ……そうですね。トレーニング中です]

あんな色々あった翌々日から早速トレーニングとは流石と思う彼。

"If you have time after it, would you help me?"

[それ終わって時間あったら、手伝って欲しいんだが]

“After training... yes. I can help.”

[トレーニング後ですか……、ええ、いいですよ]

"Thank you. By the way, where are you in training?"

[助かる。ちな、どこでトレーニングしてる?]

“Behind Warehouse Five.”

[第5倉庫の裏ですが]

"Can I watch it?"

[見に行っていい?]

“…Sure. If you want to.”

[ええ、まあ。貴方が見たいなら]

"Yeah, I'm coming."

[うし、今行く]

若干見に来るの?感のあるルリに対し、山永はノリノリだった。あの天才がどんな訓練をやっているか気になる。子供のように目を輝かせ、キャリバーを車両に載せ直して施錠し倉庫裏へ向かうのだった。

 

山永が彼女の言った倉庫の裏手に出ると、ルリがローレディで人型的に向き合っている。どこか張り詰めた表情だ。なぜか防弾チョッキ(プレートキャリア)やヘルメット着装のフル装備でM240(機関銃)を保持している。

"...!"

突然据銃し引き金を落とす。

――カシャン!――

弾を見送るように射撃姿勢を維持してから、銃を下ろすとローレディのホームポジションに戻る。山永は声をかけようにもかけられなかった。

"Yamanaga."

ドアを出たタイミングで気づいていたのだろう、振り向くとルリの方から声を掛けてきた。スモークのアイセイフティを掛けている。そして見るからに汗だくだ。

【挿絵表示】

 

“It’ll still take a while. Is that okay?”

[まだかかりますがいいですか?]

"Of course, yes. Sorry for disturbing you."

[もちろん。邪魔して悪いな]

“No. I don’t mind.”

[いえ、気にしていません]

ボルトハンドルを引き、また緊張感へ。的を睨む彼女。

"..!"

――カシャン!――

また空撃ち。撃針傷めそうだなと山永は思った。そしてまたローレディへ。これをひたすら何度も繰り返している。この炎天下の中、水分はきちんととっているようだがあの射撃予習を延々と繰り返せるのはもはや才能に近い。そもそも常人では集中力が途切れるだろう。そういえば至近射を教えてくれた教官も、ただひたすら据銃のアップ・ダウンを繰り返す訓練をさせたことがあったとなァと彼も思い出した。

だがそれよりも、彼女の訓練を見てふと山永は弓道部の練習にそっくりだと気づく。弓道にはぜんぜん詳しくないが、とにかく何回弓を引いても同じ型になるよう、ひたすらに練習していたイメージだ。彼女も今まさに、それをやっているように見える。

"..!"

――カシャン!――

アイセイフティを上げて額と瞼の汗を拭いながら、背中に背負ったキャメルバッグのストローで給水。ふとストレッサーになって精神的負荷を掛けてやろうかと山永は思った。

"...You want me to disturb you?"

[……邪魔して欲しい?]

“Either is fine.”

[どちらでも]

ルリは飄々と受けて立つ。じゃあお喋りしよーと、山永。

"Your training is interesting. Who did teach it to you?"

[あんたのトレーニング面白いな。誰から教わったんだ?]

――カシャン!――

“I wasn’t taught this training. There are people I referenced, though.”

[この訓練は教わってはいません。参考にした人はいますが]

"Who are they? I want to know it."

[だれだれ?知りたいわ〜]

――カシャン!――

“There’s a Japanese instructor as well. Ichiro Nagata. Pat McNamara. And my instructors from my time in the Norwegian Armed Forces.”

[日本人もいますね。イチロー・ナガタ、パット・マクナマラ、あとはノルウェー軍時代の教官です]

"I don't know them. I know Ichiro Suzuki though. 

Tell me Norwegian instructor's name"

[知らねぇなァ。イチロー・スズキなら知ってるが。

ノルウェーの教官の名前教えてくれよ]

“I can’t. I’m bound by confidentiality.”

[ダメです。守秘義務がありますので。]

"Oh, I'm sorry. It's my bad."

[おお、すまん。それは悪かった]

――カシャン!――

この暑さの中、彼に喋りかけられてもルリのその据銃姿勢は決してブレない。

"It makes you bored?"

[飽きねぇ?]

"No."

"...Amazing."

[……すげぇわ]

――カシャン!――

"Thank you."

そう言いながら、山永はちょっと分かるなァと思っていた。実際彼も武器出しの手間や誰の目も気にしないですむ状況ならこういう訓練やりてェとは思った。こういうもくもくとやる練習は、彼もキライではない。

それにしても、彼女の動作は本当に滑らかで無駄がなく、ずっと見ていられる気がする。茶々を入れるのをつい忘れてずっと眺めてしまう。

"...Beautiful."

[……綺麗だな]

その言葉を聞いた瞬間、今まで如何なる軽口にも左右されなかった彼女のトリガープルが、乱れた。

――カシャン!――

山永も僅かになにか違うかなと辛うじて気付けた程度の違いであったが、彼女にとっては致命的なミスだったらしい。ローレディに戻ると肩の力が抜け、訓練終了のオーラを出している。

"Am I good stressor?"

[いい負荷になったか?]

“Moderately.”

[まあまあですね]

そう言いながら機関銃の脚を開き、地面に置く。防弾チョッキも脱いで地面に置き、ヘルメットを脱帽して右手で持つ。ふうと気を抜くため息を吐くルリ。有り体に言って、大変にエロティックである。

【挿絵表示】

 

"Good work."

[お疲れ]

“Yes. ...Do you actually enjoy watching such a thing?”

[ええ。……こんなもの見てて楽しいんですか?]

"Yeah. It's good time."

[ああ。いい時間だった]

"...I see."

[……そうですか]

"Can I help you carry anything?"

[なんか運ぶの手伝おうか?]

“No, I’m fine.”

[いえ、大丈夫です]

"Sorry, it's impolite."

[すまん、失礼だったな]

武器・弾薬は自ら管理する。兵士としてイロハのイだ。山永は安易に楽を取らないルリに好感を覚える。

“I appreciate your consideration.”

[貴方の心遣いには感謝します]

若干の疲労感を湛えつつも、ルリは薄っすら笑みを浮かべた。




エッロ!ルリさんエッロ!
最近のGPTさんはエロい挿絵を描きやがりますねェ(笑)
それはさておき、この時代、山永がイチロー・ナガタを知らないのもしょうがないかなーと思います。
もちろん伝説として残ってはいると思いますが、ただでさえ田舎部隊の自衛官ってそういうミリオタ的なものを嫌悪するので、彼が知らないのもそこまでおかしくないかなーと思います。
……それにしても私は未来の文化とか人物を考えるのが下手だなぁ。
もっと未来文化をばんばんお見せしたいんですが!歌とか流行ってるものとかね!
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