現実でもそうじゃないですか。
敵はいても悪はいない。
だから生きるのめんどくさいんですがね。
何人も出会ってきたぶっ殺してえアンチクショウだって、よくよく考えてみると悪じゃなくて敵だったし。
あ、敵=悪の定義だと俺にとっての悪イッパイいるや!!
紅海解放戦線《Red Sea Liberation Front》。その起こりは旧ソマリア国軍の残党やエチオピア国境警備部隊の切り捨てられた部隊、そしてソマリランド準軍組織の民兵化部隊だった。
彼らの共通点は一つ。大国との取引で不要とされた側。信念を持ち、国と国民を守るべく戦ったにもかかわらず、その国や組織から切り捨てられ、新しい秩序から爪弾かれた者達だった。
今彼らは、ソマリランドからエチオピアへ越境するワジャルロード、そのワジャル市とカラバイド市の中間ほどの小山の影に隠れて停車していた。人員輸送車としてのいすずのトラック3台、指揮車となっているランドクルーザー1台が彼らの編成である。
"Fahma."
[ファハマ]
エチオピア人の黒人に、ランドクルーザーの窓越しにそう呼ばれた男は白人だった。その呼び名はあだ名である。ファハマとは『分かってるヤツ』という意味のソマリ語だ。本名はエリアス・ヴァン・デル・ストラーテンと言う。オランダ人だ。そのファハマというあだ名はやめろと言ったのだが、守られた試しがないためもはや彼は訂正を諦めている。
“Maxaa jira?”
[どうした?]
“Ujeeddadu Kalabaydh ayay ka baxday.
Diyaar ma nahay mise wali waan sugaynaa?”
[ターゲットがカラバイドを出たらしいぞ。準備しないのか?]
さっきのエチオピア人、アブディが尋ねる。その情報自体はAIOSからの通知で知ってはいたが、彼は動いていなかった。
“Sahan waan dirnay.
Markay war ka keenaan ka dib ayaan dhaqaaqaynaa.”
[斥候は出してる。あいつらの報告が来てからでいい]
ファハマはなるべく部下たちを露出させたくなかった。今回の攻撃地点は前の日本軍襲撃と違い、国境の街へと繋がる大型幹線道路だ。通行量もある。できる限り隠密を優先し、一撃を加えたら素早く離脱する予定だ。
"......"
そう、日本軍。ファハマがふと思い返す。前回は途中までは完璧だった。統制の取れた部隊だったが、こちらの罠に絡め取った時点で圧倒的に有利なはずだった。まさかあんな切り札を持っているとは。弾道ミサイルの類いだったのだろうか。あれのせいで1個小隊が皆殺しにされてしまった。
"...hah."
溜息をつくファハマ。もはや終わったことでどうしようもないとは分かっているが、あそこまで仲間を死なせたのは、やはり指揮官としては心が痛かった。しかし今は今の目標だ。やらねばならぬことをやるだけ。
"......"
自分のタブを広げ、ターゲットを再確認。サイード・アル=ナセル、ドバイに本社を置く不動産会社のソマリランド支社長だ。露骨な地上げとアコギな開発で氏族ごと土地を買い上げ住民達を借金漬けにすることで有名だ。その後、安価な労働力として中国などに彼らを売り飛ばし、土地を転売している。紅海解放戦線が最も憎む類の敵だ。ソマリランド人からすると売国奴と手を組む悪徳商人と言ったところか。
"......"
情報班からの画像には、目標の車列が写っている。6台編成で、基本ランドクルーザーやハイラックスである。サイードは2両目に乗っているとの事だ。日本軍の時はどれに将軍が乗っているかすら分からなかったが、今回は狙いやすい。
“Si lama filaan ah ajaanibtii ayay dhaqaaqeen.”
[急に外人たちが動き始めたな]
アブディがファハマのタブを覗きながら、窓越しに尋ねる。
“Jabuuti waa lagu burburiyay nukliyeer.
Tani waa ka faa’iidaysi masiibo.”
[ジブチが核で潰れたからな。火事場泥棒だろう]
“...Qashin bay yihiin.”
[……クズどもめ]
唾を吐いて呟くアブディ。彼らが一番嫌うやり方だ。タブから目を離し、地平線を眺めながら静かにファハマが答える。
“Ma siinaynaa dhammaad u qalma qashinka?”
[クズにふさわしい最期をくれてやるんだろう?]
“Dabcan.”
[もちろんだ]
そう言うとアブディは天を仰ぐ。
“Amarka meelaynta anigaa ka bixin doona goor dambe.”
[皆にパワードスーツを着させておいてくれ。配置の命令は俺から後で出す]
“Waan fahmay.”
[分かった]
そう言うとアブディはトラックへ歩いて行った。
ファハマは地平線を眺めたまま、思案する。少なくとも、黒旗の連中はやりすぎた。核攻撃などどう考えても悪手でイカれている。あんなことをすれば間違いなくアメリカが黙っていないはずなのに。
"......"
いや、連中にとっては自分らが滅びることすらどうでもいいと思っていることを思い出した。ジハード派はそういうものだ。爪痕を残し、声高に叫ぶのだ。悪がここにいるぞ、滅ぼさねばならないと。その為ならば命すら矢弾にする。紅海解放戦線《RLF》としては巻き添いで米軍にやられるかもしれないという点で心底迷惑であるが。
――ピピッ――
AIOSから通知。斥候の放ったドローンが目標らしき車列を発見。斥候本人たちから目標発見の連絡が来れば、配置開始だ。ファハマは背筋をピンと立て直した。
今回は前回の日本軍のように地雷などの障害は使わない。幹線道路だからだ。RLFは国民を苦しめたいわけではなくあくまで植民地支配を打破したいのである。とにかく民衆には被害を極力出さないというのが所属員の総意であった。
“Fahma, waan aragnay.”
[ファハマ、目視した]
観測員を兼ねた狙撃組が報告してくる。
“Koox 1, Koox 2, diyaargarow.Xoogga saar gaadhiga koowaad, sida qorshaha.
Sida caadiga ah, rayidka ka ilaaliya rasaasta.”
[1班2班射撃用意。予定通り一両目に火力集中。いつもどおり民間車への流れ弾に気をつけろ]
今回は2個班を道路左右両脇に配置している。水平移動の移動的よりなるべく正面からの移動的にして命中精度を上げる戦術だ。後方車両への損害も与えやすい。さらに長距離に控えた
”...Koox 1, Koox 2, toog!”
[……1班2班撃てッ!!]
20丁ものAKとPKMが音も高らかに先頭車両に襲いかかる。瞬く間にフロントガラスに血煙が上がり、そのまま横転、炎上。ソフトスキンの普通車など、この濃密な射弾ではひとたまりもなかった。横転の場所もいい。幸運にも後続車にとってバリケードとなり、二両目が追突。車間距離をとっていなかったからだ。
”Gaadhiga labaad, toog!”
[2両目撃てッ!!]
射向が変わり、ターゲットが乗っていると思しき2両目に二個班の火力が集中。10秒と経たず蜂の巣になり炎上。
"DShK, dab xakameyn—gaadiidka daba socda."
[ダーシュカ、後続車両に制圧射]
重機関銃に反撃の予想される後続の制圧をさせる。だが、下車するどころか反転Uターンして離脱しようとしていた。雇い主を守る気概もないようだ。もしかすれば後続に目標が乗っている可能性もあるが。情けない連中だとファハマは思った。日本軍は直ちに下車して反撃してきたというのに。
"Kooxda toogtayaasha, xaaladda bartilmaameedka ma xaqiijin kartaan?"
[狙撃組、対象の状況は確認できるか?]
狙撃組組長兼スポッターのハッサンが答えた。
Aragti xun. Ma cadda.
[視界が悪い。不明]
とはいえあの弾痕では生きてはいられないだろう。ファハマは念の為の指示だけ出した。
"Haddii nolol la xaqiijiyo, isla markiiba toog oo dil."
[生存が確認でき次第直ちに射殺しろ]
更に主力2個班に撃ち方止めを掛け、目標の生死の確認を1班に、その支援を残りの者に命令するファハマ。
(呆気ない。……しかし、本来はこんなものか)
肩透かしを食らったなと彼はランドクルーザーの中で思った。殺害と安全が確認できれば最後に破壊した車両を路外まで牽引しなければ。
紅海解放戦線もやっぱり彼らの正義がありますよねー
その正義が良いとか悪いとかは筆者は考えませんが。
それにしてもちょっと自衛隊美化しすぎたかなー?
筆者は自衛隊ラブに見せかけて自衛隊大したことない派なのです。
ファハマに誉めさせ過ぎたけど、本物の自衛隊は22話のように美しく滑らかには行動できないでしょうね。
いっぱい、しにますよ。