アルゴノームⅠ   作:Type-Yasenbunko

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アメリカ野球殿堂入りしたイチロー選手ですが、バルクアップ筋トレを否定したことで有名です。
軍隊でも似たような考え方で、筋トレではなく実戦の行動やそれに限りになく近い運動だけやって自分の体をそれに最適化するべきなんてものもあったりします。
筆者はそれを否定するつもりはないですが、イチロー氏のバルクアップも意味があったのではなんて思ったりします。
御本人が仰るとおり、不必要な筋肉が邪魔してスイングスピードが落ちるのでしょう。
でも、素振りしかしなかったら育たなかった他の筋肉たちが、実は素振りだけのトレーニングより良いパフォーマンスを出してくれるという可能性はないでしょうか。
……要するに、Stay hard!!


第41話

"There's no excuse for not being hardest worker."

[努力しなくていいなんて言い訳は許されねェ]

「ぷっっふぅぅぅぅぅぅッッ!!」

額に血管を浮かせながら、凄まじい量の空気を吐き出す山永。2番倉庫、宿舎棟裏の筋トレベンチの上で逆立ち腕立てをしている。ヒマリがまた昔のモチベーション動画を流していた。

"Yes,

somebody is bigger, stronger, faster, quicker, younger, whatever else."

[そうとも。

確かに俺よりデカいヤツ、強いヤツ、速いヤツ、機敏なヤツ、若いヤツはいる。]

「ふんんんんぅぅぅッッ!!」

52回目。1セット60回の10セットだ。

"But there's no excuse not to be the hardest fuckin' worker."

[だがだからってそいつは俺達がイカれた努力家にならなくていいって言い訳には絶対にならねェ]

そう。自分より凄いヤツなんて腐る程見てきた。フルリムになったって、自分よりデキる人間はたくさんいた。……もう、死んでしまった人もいるが。

『……こんな時でまで筋トレする必要ある?』

60回。インターバルだ。

「ふぅーーーッ……ふぅーーーッ……ふぅーーーッ……。

……あるな……!」

『……なんで。』

「筋肉が縮む……!」

『……脳筋。』

「のぅ、……なんて?」

手袋がびちゃびちゃなので一回取って汗を絞る山永。お気に入りのエムテックだが、そろそろ取り替え時期かもしれない。因みに筋トレを再開したのはルリが誰に言われることもなく射撃予習していた所を見て、あっさり感化されたからである。

「なんにしたっちゃ、やらなイカンもんはやらな(やらなきゃいけないものはやらなきゃならん)

『宗清っていうて結構すぐ流されるよね。ルリさんの射撃練習見たからでしょ』

ソッコー見破られた。流石相棒AIOSである。

「なんか、悪いんか!」

『やーん、こわいー』

脇に置いておいたペットボトルを手に取り、タオルで額を拭きながら水分を取る。物があれば自動融解タイプのスポーツサプリメントタブレットが欲しいと思った。流石に基地に置いてきたのでそんなものはないが、さりとて電解質がほしかった山永はこのペットボトルになぜか宿舎等の調理室にあったアジシオを拝借して混ぜ込んでいる。

「……うし、次腹筋!」

ベンチをがっちり握りしめ逆立ちするように足を天に向けて真っ直ぐに突き上げる。ドラゴンフラッグだ。もはやブルース・リーのことなど存在としてしか知らない山永だが、この狂気の高負荷足上げ腹筋は気に入っていた。

『それも好きだよねぇ』

「腹筋ローラーのないけんな。ベンチんあればどこでもでくってのはよか訓練た」

ふんふん軽々と回数をこなしていく。これは50回の10セットだ。

【挿絵表示】

 

『筋肉つけすぎても邪魔になるんじゃない?可動域減りそうだし』

「……くっ、ふっ!……かもな!」

『だったらほどほ……』

「でもっ……太うしてから、削ればよか……っっ!」

ルリのようにひたすら必要な動作を繰り返しそれに特化した身体に作り上げるという理屈も、彼は理解していた。だか、彼は限界を突破し、パワーを手に入れてから最適化した方が強くなれるのではなかろうかと思っていたのである。膂力がある。ただそれだけでできることが増えると信じるまさに脳筋であった。

「ぷぅーーーーっ、ぷぅーーーーっ、ぷぅーーーーっ、んぅうううッッ!!」

『……ほらほら、フォーム崩れてるよー!気合い足んないんじゃないのー?!』

「っくッッはっ!!……ふぃーー……煽るやんけヒマリぃ……!」

フォームを見てもらうためにカメラ起動して山永を監視しているヒマリ。ノリノリで煽ってくる。

「っくじゅッッ!!……はーーーーぁッ!……はーーーーぁッ!……はーーぁッ!」

息も絶え絶えでベンチに座ろうとして、

"......Luri?"

ルリが倉庫裏の扉から少し離れたところで、倉庫の壁に寄りかかりながら山永を眺めていた。

"You really are beast-like."

[獣《ケダモノ》みたいですね]

"...That's harsh..."

[……ひでぇこと言われた……。]

ゼェハァ言っている山永にルリが寄ってくる。

"Is that much training really necessary?"

[そんなに筋トレが必要ですか?]

"I'm duller than you, so I need more power to get advantage."

[俺はルリよりドンくせぇからな、アド取るためにもパワーが要るんだよ]

笑いながら答える山永。そのまま水分をぐびり。

"Won't it limit your mobility?"

[動けなくなるんじゃないです?]

"I have no idea. Trying it now.Of course,after making power muscle,I'd adjust it with good portion."

[わかんね。今試し中だわ。もちろんパワーつけてから調整するつもりだけどな]

"I see."

[なるほど]

"Let's try it with me!"

[俺と一緒にやってみようぜ!]

邪魔にならない位置まで寄ってくるルリ。

"I'd rather not."

[やめておきます]

"Oh, I'm sad."

[なんだ、ざんねん。]

次は普通の腕立てがメニューである。ふと、山永は意地悪してやろうと思った。

"Hey, luri! Help me!"

[なあルリ、手伝ってくれ!]

"Alright. What do you need me to do?"

[ええ。何をすれば?]

"I need more load to do push ups! So ride on me!"

[腕立ての負荷が欲しいんだよ。乗ってくんね?!]

ニヤリと笑う山永。ルリは、

"...If I do, you'll stop if your form breaks."

「……やるなら、フォームが崩れたらやめてください」

けろりと言ってのけた。なんだか余裕の表情である。

「……え?お?……Are you serious?」

[……マジで?]

"Yes.

You were the one who suggested it, weren't you?"

[ええ。

貴方が言い出したんでしょう?]

もっと動揺すると思ったのにと山永。むしろ山永の方が狼狽えている。

【挿絵表示】

 

「……まじかよ。」

『……宗清、ダッサいよ!早いとこ覚悟決めなって!』

ヒマリにまで煽られた。

「でもなぁ、汗でびちゃびちゃやしなァ……」

さすがに断られると思っていたので逆に羞恥心に駆られる山永。

"...So, are you backing out after all?"

[……やらないんですか?結局。]

なんなら軽く笑っているようにすら見えるルリ。

「……こいつめ……OK, Let's do it! But wait a moment.」

[オーケー、やろうぜ!でもちょい待ち……]

そう言うと山永はルリに背を向けTシャツを脱ぎだした。

"......?!"

一瞬目を見開き、ビクリとルリの肩が震える。大きな三角筋に僧帽筋。締まった腰回り。線の見える背中。よく鍛えた男の背中だ。

山永はルリのリアクションに気づくことなくTシャツを思いっきり絞る。ボタボタと汗が零れた。

「……こいでもまだなんか抵抗あるわ……」

『いいじゃん!女の子のお尻感じれるんだよ、喜びなよ!』

「セクハラAIめ!」

『セクハラはアンタだけどね!』

「……」

ぐうの音も出ない反論。しかしやると言った手前、男に二言は無い。腕立て伏せの姿勢を取れ!イチ、ニッ!

「……よっと」

腕立ての姿勢のまま、背中に畳んだタオルを載せる。これなら多少なりとも汗は染みないだろう。

"Go ahead!"

[どうぞ!]

"Then, excuse me."

[それじゃ、失礼します]

タオルの上にお尻を載せるルリ。体重を感じる山永。

"...Is your balance okay?"

[……バランスは大丈夫ですか?]

"Yeah! No problem!"

[ああ!問題ないね!]

"Shall I count?"

[数えますか?]

"Is it OK?"

[いいのか?]

"Yes."

[ええ]

"So please count it!"

[じゃあ頼む!]

"OK. Ready? ...one!"

[分かりました。レディ……、1!]

"One!"

"Two!"

"Two!"

"Three!"

"Three!"

リズム良く回数を重ねていく。

"How many reps?"

[目標は?]

"Fifty!"

"Alright."

[分かりました]

ルリが号令をかける度、彼女の視線が上下に動く。下では山永がハァハァ言い始めている。一応彼女の足が地面に着いて想定外の力がかからないよう足を上げたりしているが、基本頑張るのは彼だ。ルリはいつもどおりの無表情に見えて、目元がどこか楽しそうである。

"Your form is starting to break. Do you want to stop?"

[姿勢がブレてき始めましたよ?やめますか?]

"Never...!! Fuuu...... I will NEVER fall you on the ground!!"

[まさか……!ふぅぅぅッ……絶対にお前を落としたりせん!]

ルリのハッパで山永の集中力が戻ってくる。汗がボタボタと地面に垂れる。

【挿絵表示】

 

"Forty-eight!"

"Forty-eight!"

"Forty-nine!"

"Forty......-nine!"

"Fifty!"

"........Fifty!!!"

ゼェゼェゼェと、とんでもなく荒い息を吐き散らしながら、山永はやり切った。最後の最後に崩れ落ちてルリを落とす訳には行かないと姿勢を維持する。

"Well done."

[よく頑張りました]

ルリが降りた瞬間べちゃりと地面にノビる山永。

「ふーーーー、はぁーーー、ふーーーーはぁーーー……。」

"Are you alright?"

[大丈夫ですか?]

"...Of course, yes...! It's easy for me...!"

[……もちろんよゆーだ……!ちょろいぜ……!]

なんともみっともない強がりである。ルリは手を差し出し、

"I get it. Go take a shower, or you'll catch a cold."

[分かりましたから、早くシャワーでも浴びてください。風邪引きますよ?]

"...Thank you. I got it."

[……ありがとう。分かってる]

手を取りながら起こしてもらい、ひとまずベンチに座る山永。そんな彼を見ながら

"...This is fun, isn't it?"

[……楽しいですね、これ]

ルリは悪戯っぽく笑った。

【挿絵表示】

 




なんか珍しくルリがノリノリです。
いつも山永にやられてたのでやり返したかったんでしょうかね?
そしてナチュラル尻に敷かれる山永。
ま、そっちの方が山永的に似合ってるけどね!
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