アルゴノームⅠ   作:Type-Yasenbunko

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……今回三人とも英語話者のためAI翻訳の英語対訳はありません。
いやサボったわけじゃないですよ?!たしかにめんどくさいけど!
もともと冗長かな―とは思ってるんですが、山永の下手くそな筆者英語とルリ達の完璧英語を比較して楽しんでもらいたいという意図が云々かんぬん……。
まあともあれ、彼女らのお茶会をお楽しみください!


第42話

その日ルリは非番で、彼女に珍しくミシェル達に誘われカフェでお茶することになった。ガバイレに到着した時、下着と着替えを貸してくれたエレナと3人だ。彼女はフィンランド人で、補給管理を行っている職員だ。

「この三人で出かけるのも久しぶり」

「確かに」

ミシェルがルリに話しかける。カフェEthiopian Bunna、以前も彼女たちが使っていた店だ。赤を基調とした、お洒落な喫茶店である。ミシェルの声掛けにルリとエレナが乗った形だ。基本買い出し以外でルリが外出するのは珍しい。基本非番の時は勉強ばかりしているからだ。

「二人とも何飲む?」

「そうだな、私はブンナ」

「私も。砂糖とミルク付きで」

ミシェルに聞かれエレナとルリが答える。ブンナとはエチオピア式のコーヒー提供スタイルだ。頼むとジェベナと呼ばれる素焼きのポットに粗挽きのコーヒー豆とお湯を入れ、浸透式で抽出されたコーヒーが出される。シェアが前提で、小さなカップが人数分提供されて皆に注いで回るのが作法だ。分かったと言ってミシェルが自分のタブで注文した。ここは注文マイクがないタイプだ。ネット経由で店のAIOSに頼む形式である。

「相変わらずその飲み方なんだね」

エレナが微笑む。

「ええ。カロリーは意識して取らないといけないから」

フルリムの彼女はちょこちょこカロリーを摂取する必要がある。節制しなければブクブク太る通常人からすると羨ましがられたりも。これはこれで面倒な体質なのだが。

「ルリエンナと出かけるのもほんと久しぶり」

「ええ、ジブチへの配置換えからだから、1年ぶりかな」

「……ほんとに無事でよかった。ダメかと思ってたから」

一瞬顔を曇らせたが、ホッとした顔をするエレナ。

「運が良かったと思う。彼がいなければ私も死んでた」

「彼って、あの日本人の?」

「そう」

「どういうこと?」

エレナが興味深げに聞いてくる。

「核攻撃直前の基地内にいた私を車両で拾ってくれたの。そこからなんとか国境越えて、ここまで連れてきてくれた。」

丁度若い女性の店員がポットを持ってきた。エチオピア系だろうか。

"Fadlan."

[どうぞ]

"Mahadsanid."

[ありがとう]

コトリとコーヒーポットとカップ、砂糖とミルクジャーを提供した店員に礼を述べるルリ。そのままカップにルリが注いでいく。

「ミシェルも飲む?」

「いいの?だったら頂こうかな」

置かれた三つのカップ全てに注ぐ。

【挿絵表示】

 

「それで、ヤマナガ軍曹だっけ?」

「ええ、そう。彼のおかげ」

「話したことないんだよね。トレーニングやってて人だかりが出来てたのは見たけど」

ルリを背中に乗せて腕立て伏せした日とは別の日に山永が筋トレをやっていて、そのイカれたメニューを見物にしに人だかりになったことがあったのだ。ホライズンには今、ルリ以外にフルリム兵はおらず、しかも目立つ筋トレをやっているのは彼ぐらいのものだった。

「目立つのは良くないと思うんだけど。」

少し渋い顔をするルリ。ミシェルがふむ、と返す。

「いいじゃない。頑張ってて」

「まあ、そうなんだけど」

飲みましょ、とルリ。

「……おいし。で、どんな人なの?彼」

ルリはブラックのまま、ミシェルは砂糖とミルク、エレナはミルクだけ入れてそれぞれにひと口。そこからミシェルが聞いてきた。

「……どんなって、……子供っぽい?」

「そうなの?機関銃整備した時は真面目で几帳面そうだったけど」

「そうでもあるんだけど……」

なぜかミシェルとエレナが身を乗り出してきている。

「妙なイタズラしてきたりするし、でも、気遣いもできるかな。ジブチから逃げる時もやたらと私の体調気遣ってたし」

『へえぇ』

2人の息が合う。ルリは砂糖とミルクをコーヒーに入れつつ、

「なに?なんでそんなこと聞くの?」

軽く仰け反りながら困惑するルリ。

「だって、トーマスが触れ回ってるよ?あの氷姫にボーイフレンドができたって」

「……アイツ」

わなわなと怒りを隠さないルリ。この二人の前では、彼女も感情を伏せない。ミシェルはルリがヴィーグルに配置されてからの世話役であったし、エレナは入隊同期だ。二人とは何かと話をしたし、デリカシーもある。数少ないルリが心を開いている友人である。

"Waa bunna caano leh."

[ミルクコーヒーです]

ミシェルが頼んでいたコーヒーも届いたようだ。砂糖を入れつつそちらを飲むミシェル。

「……トーマス、貴方に気があったからね。気になるんでしょ」

「……確かに一度、言い寄られた」

ミシェルの言葉にふぅ、とため息を吐くルリ。ガバイレ配置の際、告白もされている。結果はもちろんお察しだったが。

「彼も悪いヤツじゃないんだけどね」

エレナがコーヒーを口に運びつつ、うーんと唸る。

「軽いんだもの」

ルリも一口しつつ切り捨てた。

「きびし」

エレナがあははと笑う。

「でも、彼、嬉しそうなの。貴方がヤマナガ?彼を連れてきて」

「……?」

ミシェルも一口。

「ここに来た時、ルリエンナってひとりぼっちだったから。彼、凄くそれを気にしてた。もっと楽しく生きたらいいのにって」

「……」

ルリの視線が少し落ちる。自覚はある。彼女にとって生きるとは、成果を出すこと。自らの存在意義を他人に示すこと。そのために努力は惜しまない。

「でも連れてきた彼、あの人と一緒だと楽しそうじゃない?あなた」

「……?!」

びくっとやや下向きのまま目を見開く。

「……やっぱそうなんだ」

エレナまで楽しそうに笑いだした。

「ちがっ!?」

「でも楽しそうに二人で食堂行ってたじゃん」

「……楽しそうなのは彼だけ」

エレナの言葉に苦し紛れの反撃。もはや語るに落ちるである。珍しく顔を赤らめるルリ。

【挿絵表示】

 

「いいじゃない。私も彼、良いと思うけど?」

「ミシェル?!」

追い討ちに動揺が隠せない。戦場でも冷静無比な彼女が取り乱す様を、ミシェルとエレナは楽しそうに眺めている。

「いいなールリエンナは。私も彼氏欲しい」

んーっと伸びをしてからコーヒーを口に運ぶエレナ。

「ちょっ……彼氏じゃないから!」

「そうなんだ。でも告白されたら?」

「……考える」

「ルリエンナにしては意外に優柔不断。」

ミシェルが笑う。

「……だって、彼日本人だもの、自衛官だし。本国から救援が来たら帰るだろうし。」

更に軽く俯くルリ。実際そうだった。ルリ自身も山永のことを悪くないと思っていたが、彼は未来永劫ここにいる訳ではない。いずれ帰らなければならない。そうだとして、自分が鎖になってどうするんだと思っていた。

「辞めちゃえばいいじゃない。会社」

「……ぇっ!?」

「確かに」

ミシェルの言葉にエレナが頷く。

「こんな危ない仕事、続けなくてよくない?日本って安全なんでしょ?」

「……でも。」

「私もありだと思う。生き方なんていろいろあるんだから」

ヴィーグルに務めている以上、どこか脛に傷持つ者が多い。ルリもその類いだったが、そんな新たな道など思いつきもしなかった。彼女はひたすらフルリム兵の実験プログラムをこなし、情報収集し続ける人生しか考えてこなかったからだ。

「……契約書、もう一回見てみる」

違約金や特殊条項などがあると面倒である。あこぎな商売だ。すんなり足を洗えるか分からない。一応彼女も入社時に契約書は隅から隅まで読んでいたしヴェリティも不当な契約条項なしとは言っていたが。

「……契約期間あと何年だっけ」

「マジになってる」

エレナが笑う。

「でもそもそも向こうはその気なの?」

「確かに。傍目には付き合ってるように見えるけど」

エレナはニヤニヤしながら追い討ちをかけ、ミシェルも楽しそうに拍車を打つ。

「……それは、たぶん大丈夫」

「なんで?」

あっさり大丈夫と言うルリの言葉に、不思議そうなエレナ。

「彼が自分のAIOSと話してたの聞いたから。落ち着いたら私に告白するって」

「……なんで聞いてるの?」

二人ともはてなという顔をしている。

「……彼が横で日本語で話してた話、AIOSに訳させたから。」

「……」

一拍置いて、二人とも吹き出した。

「……なに!?なんでよ!」

笑われて動揺するルリ。

「……だって、」

ミシェルが口を隠しながら、

「自分が告白されるかもってこと、盗み聞きしたんでしょ?それ」

「ルリエンナすごいね!よくそれで普通に彼と話せるね!」

「……」

もはや針のむしろである。彼女に珍しく、話せば話すほどドツボにハマっていく。

「まあでも彼も変わってるね。本人のいる前で、別言語だけど堂々とそんな話するなんて」

まだくすくす笑いつつ、エレナが言う。

「……彼と言うより彼のAIOSかな。無駄にお喋りなの。それが彼を煽ってた」

『へえぇ』

「確かにその時は彼の顔見られなかった。その後すぐ、攻撃ヘリに襲われてそれどころじゃなくなったけど」

「……なんか、映画みたいだね」

エレナがふーんと興味深げに聞いている。

「いいじゃない、ロマンチックで。羨ましい」

ミシェルは楽しげにその話を聞いている。

「全然ロマンチックじゃない。そのあとムネキヨ私を逃がすためにヘリ相手に一人で飛び出して行ったんだから。信じられない。ほんとに彼、死ぬところだった」

若干怒りを込め、ルリが愚痴をこぼす。

「……ムネキヨって言うの?ヤマナガ軍曹のファーストネーム」

「……」

また二人が笑いだした。

「早く付き合いなよ。もう自分で誘ったら?」

エレナが煽る。

「……だから彼は日本に……ああもう!二人とも今日変じゃない?!私のことばっかり!」

「ごめんねルリエンナ。最初から貴方が主役だったの。彼のこと聞いてみないってエレナを誘ったら来てくれて。だから最初からこれ狙い」

笑いながネタばらしをするミシェル。ハナからそういう会だったのである。

「……ひどい」

「だから謝ったじゃない。さ、それで?結局どうするの?」

【挿絵表示】

 

ミシェルがジェベナを手に取り、二人のコーヒーを注いでいく。結局その後三時間ほど、ルリは二人から根掘り葉掘り話を聞かれたのだった。




あのルリが……、ここまで追い詰められるとは……。
筆者は男ゆえ、女子会というやつの解像度が低うございます。
AIたちに矯正してもらいましたが、世の女子陣に「うそくさッ!」と言われそうで戦々恐々しております。あいつら当てにならんからな……。
……私しがないオッサン活躍系オッサンSF小説書きゆえ……
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