特にチートデイ直前はエネルギー切れが目に見えて分かりやすいのであります。
……筆者?私はチートデイで死ぬほど脂肪と糖を食い散らかしてツヤツヤしだしますぞ!
なんちゃってガチ勢なんでね!!
山永はその日、ブービーに急に呼び出され、統幕運用部事態対処課長の掛山1佐とのヒヤリングを行わされていた。内容は例の核攻撃時の状況だ。まともなジブチ基地の生き残りは山永だけで、9名ほどその他の生き残りはいたが皆被爆しており、しかもその被爆の際地上にいなかったため状況が分からなかったのだ。ハーケイが起動してからは動画が取れているのである程度は状況が掴めているが、人間からの情報も必要なのは今も昔も変わらない。
「ということは、君も爆発は地上爆発だと思うか」
「はい。空中爆発ではなさそうでした」
「基地内にドローンと自動運転車輌が走っていた。間違いないか」
「はい」
「そうか、ありがとう。……おそらく車輌に核弾頭を積んでいたのだろうな」
相手が1等陸佐のために、山永も若干緊張気味だ。場所も倉庫内でなく、近くの開けた荒れ地で会話している。盗聴防止と誰かが寄ってくれば直ちに確認できるようにするためだ。
「君の帰国は、すまないがもう少し待ってほしい。外務省も動いてくれているが、ソマリランド政府がいまそれどころではないらしい。黒旗戦線及び紅海解放戦線、それと……いや、なんでもない。ともかくそれらの対応で手が回らないらしい。心苦しい話だが」
「いえ……。仕方ないことは理解しております。」
珍しく長崎弁ではなく共通語で話す山永。一応駅弁大学を出ているし、東京でも務めたことのある男なので、共通弁もそれらしく話せはする。
「長く拘束してすまなかった。以上で聴取は終了だ。何かあればまた連絡員から入れる」
「了解」
ようやく解放された。というか同じ話を何回目だろうというのが彼の感想だ。一応それぞれの聴取で質問の視点は違っているのだが、聞かれる側からすれば『それ前も話したわ……』となりがちである。AI全盛の時代でもそれは変わっていなかった。その上、何度も思い出させられるのは、あの地獄の釜の蓋から溢れ出した閃光のシーンなのだ。彼に深い澱と淀みを溜め込ませるには十分である。
「……腹減った」
ストレスのせいかムクムクと、彼の
"......?"
いつもどおり暑い昼下がりの15時、ルリがガバイレに戻って初めての任務の資料をヴェリティと精読していた時、広げたタブの右上にピコンと通知が上がった。山永だ。
"Can you talk with me now?"
[今話せる?]
ルリはなんだろうと思いながら、
"Verity, call Sergeant Yamanaga."
[ヴェリティ、山永3曹に電話]
ヴェリティが素早く山永にコールを掛ける。
"Hi, Luri! I'm sorry for bothering you."
[あぁルリ、邪魔して悪い]
"No. What's the matter?"
[いえ。どうしました?]
『……あー、No, it's not special, but..."』
[いや、大したことじゃないんだが……]
なんだか山永がいつもよりモゴモゴしている。
"...Go on. Be clear."
[……なんですか?はっきり言ってください。]
歯切れの悪い彼に少し苛立つルリ。気圧されたのか、山永が恐る恐る続けた。
"...I want to eat whipped cream."
[……ホイップクリームが食いてぇ。]
"......What?"
[……は?]
"So just I said , I wanna eat whipped cream! It's just all!"
[だから、ホイップクリームが食いたいんだって!そんだけ!]
なんだか今度は声が大きくなった。
“.........Pfft...heh...”
[……ぷっ、ふふっ……]
とうとう笑い出すルリ。心底変わり者だと彼女は思った。山永は恥ずかしげに、
"Don't laugh...!"
[笑うなよ……!]
"...No, it's just— heh... very well. Whipped cream, is it?"
[……いえ、だって、ふふっ……まあいいです。ホイップクリームですか]
ルリは考えた。
"Verity, does Rio Hotel serve cake?"
[ヴェリティ、RioHotelはケーキ出してる?]
"Confirmed. Rio Hotel offers cake."
[はい。提供があります]
"Heard it? Shall we go there, then?"
[だそうです。そこでいいですか?]
ヴェリティの声も山永に聞こえている。その上でルリは尋ねた。すると、
『……え?Will you come with me?』
[一緒に行ってくれんの?]
"...Ah."
[……あ]
なんだか山永が嬉しそうである。
"Yeah, It's a date! I'm looking forward to it!
[いぇーい、デートだぜ!楽しみにしてるわ!]
はしゃぐ山永に、やってしまったと思いつつも、なぜかドキドキするルリ。
"......If you call it that, you will be paying."
[……もしそう言うなら、奢ってもらいますからね?]
"Of course, yes! It's my treat!"
[もちろんいいぜ!俺の奢りだ!]
はぁ、と溜息を吐きつつ、明後日非番だと山永に伝えるルリなのであった。
ホイップクリームデート当日。自分の部屋でガラにもなくルリはソワソワしていた。血縁や主従関係のない男と完全なプライベートで出かけるなど、人生初だったからだ。ノルウェーの社交界にも参列したことはあったがあれとは全然違う。つい、いつものカジュアルでなくキレイめのパンツスタイルを準備してしまっている。トップスは薄手の白のニットに決めたが、どこか物足りない。どれも昨日の勤務後、慌てて買いに行った物だ。
"......Would it be better to wear something over this?"
[……アウター着た方がいいかな……?]
何種類か買ってきた服をベッドに並べ、唸るルリ。暑いのは分かっているが、どこか物足りない。かと言って露骨にデート感のある服装は避けたいと彼女は懊悩している。ジャケットか、カーディガン。どちらかにしようとまではたどり着いたが決まらない。
(どうしよう。あと20分……)
流石に社用車は使えないので今日はタクシーだ。露骨に二人で出ていくのはルリが嫌がった。トーマスに見られるとまたスピーカーのように広められるからだ。ホライズンの敷地から少し離れた小さな商店で合流することになっている。
(……ジャケット……!)
決断するルリ。社交界の服を決めるよりよっぽど悩ましい。あれは側仕えが出してきた数着を適当に選ぶだけでよかった。確かに緊張感はあるが、それは家の格式に泥を塗らぬようにするという下らないプレッシャーであって、今日の緊張感とはモノが違う。早くしなければ。集合場所までは5分ほどかかる。つい、ヒールのある靴を選んでしまったのでバタバタ走る訳にもいかない。ファンデーションを当てるのと、リップを塗る必要もある。もちろん、派手ではない物だ。
(急がないと……!)
あくせくと最後の追い込みに励む彼女であった。
山永は山永で、少し緊張していた。彼はとっくの昔に倉庫を出て、商店で時間を潰している。緊張の理由は、私服だった。
「……おかしゅうない?ヒマリ」
『……わぁ〜かったからもう。何度も言ってるでしょ?おかしくないって。』
「すまん。」
山永は何度目かの同じ質問を投げ、ヒマリに辟易されていた。なぜなら私服がなかったからである。もともとちゃんとした服も持ってはいたが、ジブチ基地とともに綺麗に吹っ飛んで消えた。山永もとりあえず1日猶予があったので慌てて服を買いに出たのである。上はリブ生地のVネックTシャツ、下は黒のジーンズにティンバーランド、のような靴、貴重品入れとしてボディバッグを大急ぎで見繕った。一人で市場に行ったものだから、若干ボラれた感があるが。
「あんだけ探してこいしかなかとか、どんだけ物ないんか、ここは」
『アフリカだからね。しょうがないね。』
実際物自体はある。ただ、地元民とサイズと感性が違うだけである。もちろん中古だったりもするが。
『ま、頑張ったんじゃない?赤点は取んないと思うよ?』
「言うたな、信じっけんな?」
『はいはいどーぞ。』
「お前ェ……」
『てか、意外に緊張すんだね?宗清』
「なんか、失礼なやっちゃな!……久しぶりに女とデートとか、するやろふつー。」
『ふーん……。てかどうすんの?告白すんの?』
顔をしかめる山永。
「さすがにデート一発目で告白は早かろ」
『車の中いたときずっとデートみたいなモンだったじゃん』
「……あれは違わんくねぇか?」
『ドライブデートでしょ』
「いや、言えて愛の逃避行やろ」
『先進んでるし』
世にもくだらない雑談をしていると、ルリが見える。流石、時間ピッタだなと山永は思った。とりあえず姿身代わりにしていたヒマリをバッグにしまう。
"Sorry to keep you waiting."
[お待たせしました]
"Don't mind it."
[気にしないでくれ]
"He’s been waiting for an hour. Super restless."
[一時間前から待ってたよ、彼。めっちゃソワソワしてた]
"...Really."
[へぇ]
「おま、ヒマリお前ァ!」
『ヘッヘー!」
そんな二人を尻目に、ルリは軽く息を吐いて、
"...Thank you for waiting."
[……待ってくれて、ありがとう]
顔を俯けつつルリはそう言った。山永もつられてなんとも言えない気分になる。
"......My pleasure. It's really so my pleasure."
[……どういたしまして。ホントに楽しい気分だわ]
"I see..."
[そうですか……]
なんだが今日のルリの雰囲気が違うことに動揺が隠せない山永。焦ってばっかりだとダサいなと思った彼はきちんとルリの様相を確認する。
「……」
ライトグレーのジャケットになんだか上質感のあるニット、それとスマートな雰囲気を加える黒のスラックス。キレイめ系が上品に彼女の雰囲気にマッチしている。今日はお団子でなくポニーテールだった。全く以て月並みだが、美人だ。
"Mu— ...Yamanaga, is something wrong?"
[ム……山永、どうしました?]
あまりにぼんやり彼女を眺めすぎたか、彼女が怪訝な顔をしている。
"...Sorry, you are too cool and, ...cute...so..."
[……すまん、お前さんがあんまりかっこよくて、……かわいいから]
二枚目を演じようとして、若干照れが勝っている。だが、ルリにもこれは大ダメージとなったようだった。一瞬顔を上げ山永の顔を見るとすぐ目線を外し、
“...You’re not bad yourself.”
[……あなたも、悪くないです]
「お、おう……Thank you.」
二人ともモジモジしているばかりである。
『ったく。高校生かよ……。宗清?早くリードしなよ!先進まないでしょ!』
ボディバッグからお腹いっぱいと言わんばかりにヒマリがハッパを掛ける。ハッと山永が正気に戻った。確かにそのとおりである。流石に年甲斐もなくドギマギしすぎたと彼も思った。
"OK, Let's take a taxi. ヒマリ、頼むわ"
[OK、タクシー捕まえよう]
『はいはいおまかせおまかせ』
そう言ってタクシー網にアクセスするヒマリであった。
……おい、齢35にもなって高校生みたいな反応してんじゃねぇぞ気持ち悪ぃオッサンが。
爆発四散しろッッ!!
執筆しながら後ろ頭が痒くなりました。
やはり恋愛物を書けるオッサンにはなれませんな。
……ともあれジャケットルリは正義!