アルゴノームⅠ   作:Type-Yasenbunko

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ちょーしこいて7000字超えの長文にしてしまいました。
……おかしい。俺はラブコメ作家ではなくSF作家のはず……てか前もXで言ったなこれ。
あまりに甘めにしすぎたかもしれませんすみません。


第45話

ヒマリがタクシーとコンタクトを取ったものの、案の定来やしない。山永も流石にさっきはドギマギしすぎたので改めて服装の話をしだした。

"But, you have nice clothes that match you. You bought them here?"

[しっかし、似合ってる服持ってんじゃん。ここで買ったのか?]

"Well… yes, I did."

[まあ、そうです]

"I see. I didn't have private clothes, so hurried up to buy them. It's trouble. There were almost no good clothes I like."

[そっか。俺も私服持ってなかったから慌てて買いに行ったわ。大変だったぜ、俺の好みの服がほとんどなくてなァ]

"That’s true, I suppose.

You came all the way here with almost nothing, after all."

[確かにそうですよね。

貴方もほぼ何も持たずにここまで来たんですし]

どこか嬉しそうなルリ。

"But… isn't it showing a little too much of your figure?"

[でも、少し体の線が見えすぎじゃないです?]

"Really? But I want to show it a little."

[まじ?でもちょい見せたいんだけどな]

"Showing off isn’t very admirable."

[見せびらかすのは感心しませんね]

少しツンとしながら、ルリが窘める。

"...You said so, it's true."

[……ルリがそう言うなら、そうなんだろうな]

うーんといいながら考え込む山永。

"It’s only my personal impression."

[あくまで私の感想ですけど]

ルリにそう言われると、山永はふーんと呟く。丁度その時ようやく、セダンのタクシーが商店に横付けしてきた。既に女性が助手席に乗っている。こっちのタクシーは基本乗り合いである。

"Rio Hotel, isn't it?"

[リオホテルだよな?]

"Yes."

[ええ]

運転手に窓越しに行き先を伝える。値段交渉してからだ。ここはヒマリに任せた。若干高く盛られたが、外国人価格と言うやつである。ヒマリに頼んで値切ってもらい、少し損害を減らす山永。最近ヒマリが値切りのコツを掴んでいるのがヤバい。

"Get in!"

[乗ろうぜ]

"OK."

[分かりました]

二人はようやく車内に乗り込んだ。

 

車内では運転手と助手席のおばちゃんが仲良さげに話している。知り合いだろうか、やたら声がでかい。しかも舗装されていない道の上、車両がボロいためか騒音もうるさい。

"I’m not use to this noisy talk even now."

[今だにこの騒がしいの慣れんわ]

"I can see what you mean."

[気持ちは分かります]

ルリも聞こえる程度に声を張る。どうにもロマンチックな話などできる雰囲気ではなかった。

【挿絵表示】

 

"By the way, at last did no one catch your figure?"

[そういや、結局誰にも見られなかったのか?]

"......No."

[……いえ。]

トーマスにこそ見つからなかったが、部屋から出る時、ものの見事にエレナに見つかってしまった。隣の隣の部屋なので、まあ十分有り得る状況だ。ルリの服装を見て一瞬で察し、「デート?」と楽しそうに尋ねてきた。どう考えてもバレている。

"I was seen by a friend. She asked if it was a date."

[友人に見られました。デートか?と。」

"How did you reply?"

[どう答えたんだ?]

"I didn’t deny it."

[否定はしませんでした]

"Yeah!"

[いぇーい!]

"......why are you so happy about that?"

[……なんでそんなに嬉しそうなんです?]

山永はニヤニヤしながら、

"Because, you really think this date as a date, don't you?"

[だってよ、ルリはこれがマジでデートだって思ってるんだろ?]

ルリは顔を逸らして窓の外を見つつ、

"...I do. I think it is."

[確かに、思ってますけど]

顔を見せないようにする彼女。

「……」

からかってもまともに受け取られる。出会った最初の頃の鉄面皮も、出会ってからいじっていた頃の慌てっぷりもどこへやらだ。なんならそのいじらしさに山永の方が動揺している。前席の喧騒すら無視し、山永は窓に逃れるルリをじっと見る。ルリがちらりと山永の方を見ると目があった。

"......What? Why are you looking at me like that?"

[……なんですか?そんなに見て]

"Nothing. You look cute, just I think."

[別に。かわいいなって思っだけ]

"......!?"

山永を見ていたルリが目を見開き、慌てて顔を逸らす。顔が赤らんでいるのが可愛らしい。

"......You're enjoying this?"

[……楽しんでるでしょ]

そっぽを向いたまま拗ねるルリ。

"Exactly."

[おうさ]

"You're impossible......"

[ありえません……]

それからタクシーを降りるまで、ルリは一言も口を聞かず窓の外を眺めるばかりだった。

【挿絵表示】

 

 

目抜き通りに立つリオホテル、その前で下ろされた二人。ちなみにこのホテルはこの前ルリ達が女子会を開催したエチオピアブンナのすぐ近くである。ホテル自体もガバイレにしてはかなり立派なほうだ。

"By the way… why whipped cream?"

[ところで、なんでホイップクリームなんですか?]

支払いを済ませ降りてすぐ、至極真っ当な疑問を投げかけられた。

【挿絵表示】

 

"Why......, just I like it. That's all."

[なんでって、……好きなだけだよ。そんだけ]

"For someone who just likes it, that was quite a hesitant invitation."

[それにしては随分煮え切らない誘い方でしたね]

"......Because, it's embarrassing for me I confess I love sweets like whipped cream."

[……なんでって、ホイップクリームみたいなスイーツが好きとかバラすの、恥ずいじゃん。]

すこし恥ずかしげに答える山永に、不思議そうな顔をするルリ。

"Why? There's nothing strange about that."

[なぜです?別におかしくないじゃないですか]

"Because I am a man, though."

[だって、男だぜ?]

"...? Men eat sweets as well."

[……?男性だって甘いものくらい食べるでしょう?]

"......It's serious?"

[……マジで?]

なんだか言いたいことが伝わってないようである。すると、急にヒマリが、

『ノルウェー人は別にスイーツに男女関係ないらしいよ』

「そうなんか」

"......"

急になんだかルリが不満げになった。

"What are you two whispering about?"

[何を話してるんです?]

返す刀でヒマリが喋り出す。

"Oh, I was just telling him that in Norway, men liking sweets isn't a big deal at all."

[ノルウェーでは、男性が甘いもの好きでも全然普通だって教えてあげてたんですよ]

"......?"

"Apparently, some Japanese men think it's not very 'manly' to love sweets. Cultural differences, I suppose."

[どうやら日本の男性の中には、スイーツ好きはあまり“男らしくない”と思う人もいるみたいです。文化の違いですね]

"I see."

[なるほど]

ようやく納得してくれたようである。

"......You see Himari as a rival?"

[……ヒマリがライバルだと思ってる?]

ふと山永が思ったことをそのまま口にした。

"Of course not. Let's just go to the café."

[違います。早くカフェに行きますよ?]

ぷいっとそっぽを向くと、ルリはホテルのロビーに足早に向かってしまった。

『……あちゃー。マイナス20点!』

「……なんかワイに採点さるっとムカつくな」

そう言いながらルリを追う山永であった。

 

RioHotelのレストラン部分は、昼はカフェとなるようだ。レストランに入ると割ときちんとしたウェイターが席を案内してくれた。メニューを見ながら、山永はマラワと呼ばれる薄焼きパンケーキとベイクドチーズケーキ、ルリはガトーショコラを注文した。どちらもエクストラホイップで。飲み物は二人ともコーヒーである。

"I think this city's cafe's coffee is excellent, isn't it?"

[この街のカフェのコーヒーってかなり美味いよな]

"Yes, I suppose so. Ethiopia is close, so the beans probably make their way here."

[そうですね。エチオピアが近いので、その豆が流れてきているんでしょう]

"By the way, you drink coffee. It's a little unexpected."

[てか、ルリコーヒー飲むんだな。ちょい意外]

"Is it? Norwegians drink quite a lot of coffee, you know. We have plenty of cafés, too."

[そうですか?ノルウェーではかなりコーヒーを飲みますよ。カフェも多いです]

へぇと山永。彼も相当なコーヒー好きである。なんなら生豆を買って自分でフライパン焙煎したりもしている。どうでもいいが、彼的にはケーキの量が全く足りない。山永は時折我慢できず、デザートビュッフェのあるレストランに出向き、狂ったようにケーキばかり食ったりしている。最低でも5ホール分くらいデザートだけで食べていた。もちろん普通の食事バイキングを食べ終えた後で。一度はホテルのバイキングで出禁を喰らいそうになったくらいだ。とはいえルリの前でみっともない暴食を見せる訳にもいかず、見栄を張って2種類しか頼まなかったのである。

"Look forward to it."

[楽しみだわ〜]

"Yes, I am too."

[そうですね]

".....You think me childish, don't you?

[……俺の事、ガキっぽいって思ってるだろ?]

"You're perceptive. Yes, that's correct."

[鋭いですね。そのとおりです]

軽く笑いながら、ルリが答える。

"It's not that you're clueless, but you can be strangely boyish at times. Are all SDF soldiers like you?"

[別に無知な訳でもないのに、妙なところで子供っぽいですよ、貴方。自衛官はみんなそうなんですか?]

"You are really right. All Japanese Army soldiers are childish."

[まじでそのとおりだよ。自衛官は全員、ガキばっかりだ]

山永も笑う。

"Oh? I thought it was just you."

[なんだ、貴方だけかと思った]

"You say cruel things. I'm sad, you know?"

[残酷なこと言うなァ、俺は傷ついたぜ?]

"I doubt that would actually hurt you."

[そんな性格じゃないでしょう?]

といいつつ笑顔は崩れていない。そこにウェイターがワゴンと共にやってきた。

"Your malawah, baked cheesecake, and gâteau chocolat."

[マラワ、ベイクドチーズケーキ、ガトーショコラでございます]

ウェイターの彼が丁寧にテーブルにケーキを並べていく。思ったよりしっかりした作法に山永は驚いた。続けてブンナ式ではなくカップでの提供のコーヒーが置かれる。いい香りだ。

【挿絵表示】

 

"Looks delicious."

[うまそうだ]

"Yes, it does. Let's enjoy it."

[そうですね。頂きましょう]

チーズケーキとガトーショコラは日本で見るものと大して変わらないが、マラワとやらは厚手のクレープといった感じで初めて見る。サイドに砂糖、はちみつ、ギー、そして今回わざわざ注文したホイップクリームがポットやジャーに収められて並べられた。ギーはバターを加熱して水分と乳固形分を取り除いた「澄ましバター」のようなものである。バターより香ばしい香りがする。山永はせっかくなのでマラワから手を付けることにした。ルリが言うにはこのサイドたちを好きなように塗って食べるらしい。ナイフとフォークを手に取るととりあえずそのままで。

「んっ……」

外はサクっ、中はもっちりしている。甘みもついていた。小麦の味が感じられる素朴なデザートと言ったところか。山永は次にギーとはちみつを塗って食べてみた。

「おお……」

恐らくこれが地元民が食べるマラワの味なのだろう。ギーのコクと香りが絡まり、かつはちみつの甘みが加わって世にも罪深い味になっている。油感と甘みがマラワの生地を引き立て、幸せといった所。これはこれで好きだなと山永は思った。しかし言い出しっぺがクリームを乗せないのは示しが付かないだろう。ナイフでガバっと生クリームを掬うと、容赦なくびたんとマラワに乗せる。そうそう、こういうのが食いたかったんだと山永は腹の中で思った。

「……んめぇ。まじうめぇ」

たまらん。その一言である。口直しにコーヒーを一口。モカ系統の複雑な香りと酸味が口に残った甘みと混じり合い、綺麗に押し流してくれる。ふと、食うのに集中してルリを放置しすぎていた。

「……ん?」

ルリは自分のケーキに手を付けもせず、山永をじっと眺めていた。

"......? You want to try this?"

[食べてみたい?]

"...Ah—no, it's not that... well... if you insist."

[……え?いや、その……じゃあ頂きます]

"Alright."

[分かった]

そう言いつつ山永は腹の中でニヤニヤしながらマラワを一口大に切り分ける。ナイフでクリームを乗せ、

"...Here you are!"

[……はい、どうぞ!]

ルリに差し出す。いわゆるあーんと言うやつである。

"......Ah, Wait...?! you can't be serious."

[……え?あ……、本気ですか?]

"Hurry. Cream dropping."

[はやく。クリーム落ちる]

"......!?"

顔を赤らめながら、仕方なしにマラワにパクつくルリ。

【挿絵表示】

 

"How's it?"

[どうよ?]

"......Sweet."

[……甘いです]

ルリが少し赤くなったまま俯きながら答える。山永はハハっと笑いながら、

"I heard it before."

[それ前にも聞いたな]

"...Honestly. I am not a child."

[……全く。子供じゃないんですよ?]

"No problem. By the way, have your cake. You eat nothing by now. You're just watching me."

[別にいいじゃん。てか、ケーキ食べろよ?まだなんも食べてないだろ?俺見てるばっかで]

"......Yes."

[……はい。]

そう言われて、なぜか少し悔しそうにガトーショコラに手を付けるルリ。山永は勝手になんか勝った気分になっている。そのまま今度はチーズケーキに手をつけようとして、

"...Would you care for a bite?"

[……貴方も、食べますか?]

彼が顔を上げると既にフォークに刺さったガトーショコラがこちらを照準していた。もちろんクリーム乗せで。

"...Go ahead."

[……どうぞ]

「お?え?」

"Hurry. Cream is dropping."

[はやく。クリームが落ちます]

少し上気した上目遣いでフォークをさらに差し出す。

【挿絵表示】

ガトーショコラは温かくないので落ちないと思ったが、ここまでやらせておいて放置するのは流石に山永も心苦しい。

「……あむっ」

"...Well? How is it?"

[……どうですか?]

正直味なんぞしたもんじゃない。

"......Sweet."

[……甘い]

"...I see."

[……そうですか]

ルリもカトラリーをレストに置くと軽く俯いて右下の水の入ったカップを眺めている。

"......You did it."

[……やるやん]

"...You started it."

[あなたが余計なことするからです]

そういうと、ルリはコーヒーではなく水を口に運んだ。

山永も流石にやりすぎたと反省した。まさかあのルリがこんなことをやり返してくるとは思っていなかったのである。

"...Alright, it's OK. By the way, you are going to work on a mission tomorrow, aren't you?"

[……まあいいや。ところで、明日ミッションだろ?]

あまりにイチャイチャしすぎた自覚が出てきたので、仕事の話に切り替える山永。

"Yes. How did you know?"

[ええ。どうしてそれを?]

ようやくまともなルリに戻った。

"Thomas told me that."

[トーマスが教えてくれた]

ルリは今度は眉をひそめつつ、

"...Him again."

[……また彼ですか。]

"Be calm, he is a good guy. He's concerned about you."

[まあまあ、アイツいい奴だぜ。ルリのこと、心配してたぞ?]

"......I see."

[……そうですか]

なんとも言えない顔をするルリ。

"......and, I'm also concerned about you, too. I wish your good luck."

[……それと、俺も心配してるぞ。幸運を祈ってる]

"......Thank you."

[……ありがとう]

そう言って結局、またしてもルリは頬を赤らめたのであった。




バレンタインに間に合わそうとして全然遅れました。
てかガトーショコラ食ってるのはルリだったし。
……あ、結局あーんで食わせたから、バレンタインイベント的には成功??
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