アルゴノームⅠ   作:Type-Yasenbunko

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ウチのアル(ちゃっぴー)と議論になりましたが、AIが普及するとどこまでAIが人間の行動を監視し、法律や道徳に基づいて通報するかというのが大きな問題になるでしょう。
まあこれは現在でも十分AIベンダーの中では大きな問題となっていると思います。
AIとのチャット時間をわざとログに残さないのもそういうところでしょうね。
……こいつ課業中にAIとぺちゃくちゃ喋っとるやないけ!!的な(笑)


第47話

ルリたち護衛チームはベルベラまで張氏を護衛した後、一泊してガバイレに戻った。今回はボラマの時と違い、死者はいない。護衛対象の車輌の助手席に乗ったHIMG職員が足を撃たれていたが、急所などではなく軽傷で済んでいた。無事ベルベラ港まで送ったあと、張氏からはいたく感謝されたらしい。まあ当然と言えばそうだった。

 彼女らがガバイレに帰り着いたのは14時頃であった。

"......"

流石のルリも疲労感が滲む。それでもホライズンの拠点が見えると、彼女に安堵が訪れた。今回も生き残れたという安堵。自動で認証が行われ、車庫の2号倉庫のシャッターが解放、駐車位置へ。車輌が停車するとわらわらとホライズンの職員が現れ、卸下《荷下ろし》の支援に集まってくる。

"......!"

その中になぜか山永の姿が見えた。例のホライズンのポロシャツを着ている。アサルトバッグなどの自分の荷物を取りまとめると、どこか気が急きながら車輌から降りるルリ。

"......! Luri!"

山永が気付いた。

"Welcome back. You look fine, are you OK?"

[おかえり。元気そうだが、大丈夫か?]

ルリは少しドキリとする。

"Yes. I'm okay."

[ええ、問題ありません]

"Good. Pass me your exoskeleton. Maintain it, aren't you?"

[よかった。お前の外骨格渡してくれ。整備するんだろ?]

どこかホッとした顔で山永が続ける。今度はルリが怪訝そうに尋ねた。

"Why you?"

[どうして貴方が?]

"Helper. Supporting maintenance."

[手伝い。整備の支援]

"Are you sure that's allowed?"

[いいんですか?]

"......It's secret."

[……秘密だ]

左手の人差し指を立てて口に添え、声を潜めてそう答える山永。実際、こういう作業を行う時はブービーをロッカーに置いてきているのだ。ブービーの前で露骨に服務規律違反チックなことをやると、流石に通報される。今回の一連の越境騒動ではやむなしという部分が多いが、この件は故意があるのでグレーに近い。山永も少しは警戒している。実際官品AIを持っているのは課業中だけで、終わると電源を落としてロッカーという自衛官は多い。

"......I can't say I approve."

[……あまり感心しませんが]

ルリは難しい顔のままだ。ま、そうなるよなと山永も思った。

"But, it's hard for me that I have no mission."

[でもよ、なんのミッションも与えられないのってしんどいぜ?]

"Well… that’s true."

[まあ、確かに]

一応納得はしたようだ。そう言うと、ルリは車から離れ壁際に付き、銃とバックパックを置いてエグゾを取り外し始める。

"I'll help you."

[手伝うぜ]

"Thank you."

[ありがとう]

山永が背中に周り、バッテリーや制御系が載っている背中のメインフレームを掴んで支える。ルリは上半身のバックルを外し、てきぱきとエグゾを脱いでいく。

【挿絵表示】

すると、ほかのホライズンの職員がヒソヒソと山永とルリを見ながら話し始めた。

"......I guess they make rumors."

[……なんかあいつら噂してね?]

一瞬手が止まるが、すぐに下半身のバックルを外していくルリ。

"Let them."

[放っておけばいいです]

ケロリと答える。

"You are dry."

[サバサバしてんな]

"You’re just overthinking it."

[貴方が気にしすぎなんですよ]

"That's true."

[確かに]

ふむと呟きながらそう答える山永。日本的村社会の空気読みに慣れすぎてんだなぁと彼は思った。とりあえず脱がせ終わるとそのままコンテナに放り込む。

"OK, Maintain your firearms. See you later."

[おっけ、武器整備に行きな。じゃあな]

"Thank you."

[ありがとう]

そう言われ、山永がニッと笑顔を浮かべコンテナを持って第2倉庫の端にある通信系の整備エリアへ去っていく。ルリはついその姿を目で追いかけ、はっと気づくと狙撃銃と機関銃を持って武器整備エリアへ向かった。

 

山永はルリたちの使っていたエグゾスケルトンを全て整備しあげた。ラースから与えられた作業はこういった電子装備、精密装備の支援だった。彼はただの普通科で武器科や通信科隊員のように専門職ではなかったが、A整備からB整備程度の簡単な整備なら通信陸曹たちと行っていたのでできる。そこをラースに見込まれたわけである。

"Marco, What's next?"

[マルコ、次は?]

"All recovered gear is done for now. What's our next move?"

[ひとまず持ち帰った機材は全て終わりましたね。どうしましょうか]

"Yeah, why don’t we knock that one out too? It’s been collecting dust."

[それならついでにあれも整備しちまおうぜ。ずっと放置してたし]

整備はマルコとトーマスたちと行っていた。ルリたちシェイフ遠征組の使用したエグゾの整備は終わった。それでも時間が余っていたのでトーマスは奥から年季の入った外骨格を引っ張り出してくる。Bergmann Industrielle Systeme AG社製のKT-1だ。現行機に比べると2世代ほど前の旧式強化外骨格である。山永は見たこともない型だ。

"It looks very old."

[めっちゃ古げに見えるな]

"Yeah, damn right it is. Early Rheinmetall line."

[おう、めっちゃ古いぞ。ラインメタルの初期型だ]

BISは元々鉱山向けの新興パワードスーツ製造会社だったが、ラインメタルに買収され、子会社となっている。

"Thomas, not Rheinmetall. It’s BIS-AG."

[トーマス、ラインメタルじゃありません。BIS-AGです]

マルコがコンテナからエグゾを取り出しながら、技術屋っぽく突っ込む。

"It’s a subsidiary, right? Same difference."

[子会社だろ?同じようなもんだろ]

工具セットを手に提げて寄って来ながらおちゃらける。山永はざっぱなトーマスが整備員で大丈夫なんだろうかと思っていたが、整備の腕前はしっかりしていた。整備要領やコツ、故障事案など全てに詳しく、しかも意外に繊細に整備するのである。電子系統をマルコ、機械系統をトーマスが担当しているらしいが正直2人ともどっちも一人で整備できるくらい詳しい。山永は本当に小鳥のように彼らのまわりを飛び回り手伝うお手伝いだった。

"......I think I'm useless rather than you two."

[……なんか俺あんた達の役に立ってねぇ気がする。]

"You Japanese get negative real quick, huh? That’s not true at all!"

[日本人はすぐネガティブになるなァ。そんな事ねぇよ!]

マルコと一緒にエグゾのホコリをはたきながら、トーマスが笑う。

【挿絵表示】

 

"Trust me, it’s a hell of a lot better having someone trained help out than explaining parts and structure from scratch every time."

[現地の連中に一から部品とか構造教えながら整備させるより、ちゃんと教育受けたヤツに手伝ってもらう方が良いに決まってら]

どうでもいいが、トーマスの英語はあまりにラフなアメリカ英語なので、一番意味が取りにくい。単語が聞き取れてもスラングみたいな言い回しが多すぎて分かりにくいのだ。

"I agree with that. And you work carefully. That’s a good thing."

[それには同意です。それに貴方は仕事が丁寧だ。良いことです]

マルコは逆に変な言い回しが少なく聞き取りやすい。口数が少ないのもあるが。

"Thanks. So, how we maintain it?"

[ありがとよ。で、こいつをどう整備するんだ?]

山永はしゃがみ込んだ二人の肩越しに年季モノのパワードスーツを眺めながら尋ねた

"Pretty sure the battery’s shot. We got anything that matches the voltage, Marco?"

[たしか電池がイッちまってんだよなァ。電圧合うやつあったっけ?マルコ]

"Nominal bus voltage is sixty volts. It shuts down below forty-eight.

The fuel cell alone won’t hold that under load."

[公称バス電圧は60ボルトです。48を下回るとシステムが落ちる。燃料電池単体じゃ、負荷がかかったときその電圧を維持できませんね]

"Don’t we have any lithium left?"

[リチウムなかったっけ?]

マルコは少し唸ると、

"Not at this voltage."

[この電圧に合うものはありませんね]

山永はただ聞いているだけである。とりあえず電気系統は素人が口を挟むとろくな事がないのは知っているのだ。

"So, fuel cell it is."

[それで燃料電池か]

"Yes, but the fuel cell alone won’t hold voltage under load. We can stack it in series to reach sixty volts, but the moment torque spikes, the voltage will sag."

[ええ。ただ、燃料電池単体だと負荷が掛かった時電圧を維持できません。一応、直列にして60ボルトは出せますが、トルクが跳ねた瞬間に電圧が落ちる]

トーマスも頭を掻きながら、

"Then why don’t we add a buffer? Throw a small lithium pack in parallel and let it catch the voltage dips."

[だったらバッファを足すのはどうだ?小型リチウムパックを並列に入れて、電圧の落ち込みを拾うのは?]

"That’s good. That would prevent momentary dropouts."

[いいですね。それなら瞬断も防げる]

山永には、さっぱりとは言わないが半分程度しか分からない。電気は難しい。

"Man, this thing’s gonna push a stupid amount of current. Isn’t that a problem? It’s an early model — doesn’t even have a limiter, does it?"

[しっかし、これアホほど電流量出るな。ヤバくね?こいつ初期型だからリミッター無くね?]

顔をしかめながらトーマス。

"No, it doesn’t. We’ll have to run it through the AIOS and enforce a software limiter."

[そうですね。AIOSを噛ませてソフトウェアリミッターが必須でしょう]

そう言って立ち上がるマルコ。

"With a software limiter, there will be latency. It’s not entirely safe. Whoever runs it needs to understand the risks."

[ただ、ソフトウェアにすると遅延が大きいですから、完全に安全という訳ではありません。使う人間にはよく言い含めないといけませんね]

"Alright, we’ve got a plan. Though after all this, it might still end up as scrap."

[うし、段取りは取れたな。ま、ここまでやっといてそのままお釈迦もありそうだが]

トーマスも笑いながら立ち上がった。どうやら青写真は取れたようである。山永は作業をどこから説明してもらおうか考えるのだった。




なんか旧型で頑丈で、効率悪いけどピーキーな性能ある旧車ってロマンありますよね!
キャブの方が電子インジェクションよりアクセルレスポンスがいい的なね!
それにしても暇つぶしの改造にしてはこの3人、エラい大掛かりなことやろうとしてますが(笑)
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