そのために生きてきた。
貴方はどうですか?
それが報われなかったとしても、
その先が地獄であっても、
その深淵にどうやっても光を見いだせなくても、
貴方は積み上げ続けますか?
You've come too far to quit now.
[今更やめらんねえくらい遠くに来ちまったんだろ]
You've invested too much to quit now.
[今更やめらんねえくらい賭けちまったんだろ]
You've lost too much to quit now.
[今更やめらんねえくらい失くしちまったんだろ]
Don't cry about it. Don't wine about it.
[泣くんじゃねぇ。メソメソすんな]
Get reward from it.
[そいつらから報いを掴めよ]
港に到着したルリ達は、戦闘要員が下車した後、四周を警戒していた。
"......!"
遠目に東から西へ爆走する陸自デザート迷彩のハーケイが見える。わざわざ敵が確認されている方向だ。
"......"
帰ってきてほしい。行かないでほしい。だが、ここで通信するわけにもいかない。通り過ぎる彼を、彼女はただ見送った。
――彼の戦いはさらに続く。
地点Aの手前1km。後部座席から指示を出す。重機関銃が邪魔で座れないからだ。さもそもなんならハーケイ本人に運転させた方が上手い。シガールロードと呼ばれるその道の周辺は住宅街だった。さっきから全く人に出会わないのを不思議に思ってブービーに確認すると、どうやら退避命令が出ているらしい。ソマリランド政府及び軍が住民を退避させているとのことだ。なおさら核攻撃の兆候にしか思えない。向こうに黒煙が見える。恐らく俺達が引っかかったのと同じような検問が攻撃されたのだろう。
――ザザザザッ……!――
耳の奥を掻き回すようなノイズが車内スピーカーから溢れた。
同時にアイセイフティのマップが一瞬だけ乱れる。
「……!」
『電子妨害圏内に入ります。ドローン群を周波数跳躍・拡散通信へ移行。メッシュ出口をハーケイ無線に接続、低レート指揮回線を優先します』
ブービーが電子防護を開始する。
『宗清、メッシュネット私が維持するから低空での運用に切り替えない?!』
「やれるんか?!」
『できる!』
「よし信じた!やってみろ!できるかブービー?!」
『可能です。ただし、ヒマリ端末に高負荷が予想されます』
『余計なこと言うなブービー!!』
「……行くぞお前ら。
何としても核攻撃だけは防ぐ。できることは全てやる。今やらんでいつやるか。
『任せて!』
『了解』
――よし。あいつらは全部出しきってくれる。こいでオイが出し惜しむとは男がすたる――
と、
「クサかな。ハーケイ脇に入れ!敵味方識別する!」
指示を受け、住宅街の脇道に入って停車するハーケイ。
『後続車、ハイラックス1台確認』
「りょ!全ドローンランチ!」
ガナーハッチを解放しドローンたちを放つ。スマートドローンとも言える各機が飛び出すと、方々に散っていく。
「っと!」
ガナーハッチ解放のまま、サイドドアからするっと飛び出す。家屋に張り付き目を出して目視。ハーケイが確認した2台は無人だった。こいつらは本命ではない気がする。このまま行かせよう。
『後ろにハイラックス5台!あとバカみたいにドローンいっぱい!!』
ヒマリからの報告。
すると向こうからAMIが3機、荷台に乗せたハイラックスが見えた。
「ビンゴ!やるぞ!!」
半装填だったM-2の槓桿を引き、家屋の影からM-2の銃口を覗かせ、
――ドンドンドンドンドンドンッッ!!――
1台目を撃破。AMIは撃破出来たか分からない。スピンしそのまま道路脇の街灯に突っ込み停車。さほど広くない道路のため、後方の車両が停車する。すると素早く、相手のAMIたちが下車してきた。
――パラララララッッ!!――
恐らくPKMの音だ。動揺がなく、応射が早い。どうやら俺の事を認知しているらしい。
――よかよか。ここで足止めしとけば、
後ろには恐らくソマリランド軍が追ってきているはず。我慢してれば背中を撃たれて終わりだ。
『宗清ッ!西側から別の車両来てる!!』
「……?!!」
アイセフに別のハイラックスの動画。AMIが乗っている。応援にきたか。どうやって通信を?あれか、一瞬妨害電波切って送信したか?なんでもいい、このままだとこっちも挟み撃ちにされる!
「ハーケイ、動き回れ!ワイが電波塔たい!ヒマリ、リンク切らんごつ頑張れ!」
『あったりまえ!!』
それにしてもあまりにも逃げ腰になるとまた車両に乗って前進される。しかしこのまま黙っているとさっきのヒマリが見つけた別働隊に側面を突かれかねない。
――なら、こっちから行くぞ――
――ドンドンドンドンッッ!!――
最後に一度だけ銃口を突き出して射撃し、踏みとどまるアピール。後ろでハーケイが走り出している。ダッシュで家屋から下がり、住宅地1区画分迂回。側面を突こうとして、
「……うおっ?!!!」
ドローンだ。恐らくロイタリングドローン。こちらを認知すると一目散に突っ込んでくる。
「んのッッ!!」
大きくサイドへ大ジャンプ。すんでのところで爆発はしなかったが、それはつまりまだこの羽虫《ドローン》が追ってくるということだ。しかも思った以上のジャンプで民家の屋根に飛び乗ってしまった。重さもあって着地した右足が屋根に刺さる。
「っそがッッ!!」
集中。迫る自爆ドローン。急に時間がゆっくり流れる。こんだけ遅ければ、ドローンだっちゃ
――ドンッ!――
身体を捻りながら照準、指切り1発。当然のように命中。しかし、その時ようやく気づく。周りには10機以上のドローン。
「……!!?」
まずは足を引っこ抜け。屋根から無理やり右脚を抜き、またしてもジャンプ。
――パラララララッッ!!――
高く飛びすぎたせいか、著明になり射弾が飛んでくる。
「ああくそッ!!」
ドシンと地面に着地。そこに追い縋るイナゴ共。もういい。
着地のしゃがみこみから次の動作へ。アクチュエータが弾ける。大臀筋の筋繊維に莫大な力が溜まり、解放。続けて大腿四頭筋の筋力が加わりふくらはぎへ。腓腹筋とヒラメ筋が最後に狂ったような爆発的エネルギーをつま先へ地面へ推し出すように伝える。
――ドガッッッ!!!――
硬く転圧された土を文字通り抉りあげながら、地面を這うように翔んだ。
――追い立てたつもりやろが、逆ぞ。取って食っちゃるぞ――
地面を蹴る度、
『山永3曹、筋電位が異常値。各ナノマシン稼働率危険域。危険ですので出力を抑制してください』
やたらとブービーの声が間延びして聞こえる。もっとシャキシャキ喋らんか。あと今なんでん見えっし、どげんでん動き回れて気持ちよかとやけん邪魔すんな。
『宗清!あのAMIの後ろ、まだ5台車がいる!
お前もかヒマリ。シャンシャン喋れっちゅーに。まあいい。HUDをパッパッパっと確認する。周辺の家屋・地形、敵車輌、AMI、敵味方ドローン、ハーケイの位置。脳内に全てがプロットされ有機的に結びついた。確かにヒマリの報告の後ろの梯隊がアツい。核爆弾を積んでいる臭いがする。もう隠れんでもいいか。電子攻撃内ならドローンも使えんやろうし、連中に忍者機動見せてやるわ。
「ふっ!」
――バヂッ!!――
力を込めて地面を踏みつけるたび、下半身のアクチュエータの結節部からスパークが弾ける。狂ったような俺の筋電位に反応し、過電流がスパークを起こしているんだろう。これほど無酸素運動みたいな運動を続けているのに全く息苦しくない。ナノが効率よく酸素を全身に供給してくれているんだろう。
「……!」
先程交戦していた道路に飛び出した。連中は俺が逃げたと思ったのだろう。車輌を動かすべく先頭車から切り返しを行い、再発進しようとしていた。ぱっと見7台がフン詰まって団子になっている。逃がしゃせんぞ。
――ドンドンドンッッ!!ドンドンドンドンッッ!!――
前傾姿勢で走りつつも銃身を左に向け、そのまま移動間射撃。そのまま前宙して正面の家屋の壁にまるで着地するようドシンと張り付くと、そのままフルパワーで壁蹴りジャンプ。
――バヂヂッ!!――
ジャンプ中に横転しながら姿勢を整えながらさらに射撃。
――ドンドンドンドンッッ!!――
また前宙で左足、右足の順に着地、すぐに右足の踏切でジャンプし家屋の屋根に飛び上がる。
――バヂッ!!――
――ドンドンドンッッ!!――
空中で横転しながら射撃。両足で着地しながら射撃。
――ドンドンドンドンッッ!!――
己の身体を、重心をここまで綺麗に操作したことはない。正面の2台はもはや自走はできまい。
――パラララララッッ!!パラララララララッッ!!――
向こうも躍起になって弾をばら撒いてきた。しかし遅い。そげなテンポで撃ったっちゃそこにはオイはとうにおらんぞ。
――バヂヂヂッ!!ゴガッッ!!――
右に左にまさにニンジャのように走り回り跳ね回り、全く照準を絞らせない。もう後一足で連中に届く。蹴ったくってやろう。
――バヂヂッ!!ガゴッッ!!――
「……っらァァァァッッ!!」
3機の内右端の1機に飛び蹴り。胸部の装甲に半長靴がぶっ刺さる。装甲板が凹まんばかりの衝撃が加わり二人一緒にハイラックスの荷台から吹き飛んでいく。そのまま、まるでその男をサーフィンのように踏みつけにしながら地面を滑り敵の第1線を突破。本命の後続車に近づく。後続車には皆AMIが乗っていた。友軍相撃も厭わず弾をばら撒いてくる。どうしてもここで仕留めたいのがバレバレやぞ。やっぱ本命やろが、
――バヂッ!!ゴッッ!!――
また、ツバメのように低い姿勢で疾走る。とんでもなく汗だくだ。低姿勢ダッシュで汗が流れ落ちていく。だが、なんにもキツくないという不思議な感覚。そのまま一番前の車輌を射撃しながら通り抜け、次の車輌へ。
"اقتلْه! أمسكوه!"
[殺せ!!取り押さえろ!!]
次の車輌を狙おうとするとその車輌のAMIが荷台から飛び降りつつ飛びかかってくる。ダッシュの勢いそのままに、とっ捕まらんよう前転《ローリング》。と。
「……!!??」
左腕と首根っこを掴まれた。
"مُتْ!"
[死ね!!]
そのまま力任せにぶん投げられた。民家の生垣をぶち破り、家屋の壁に激突。10メートルは吹っ飛ばされたか。
「……っか……はっ……!!」
痛ってぇ。また背中打った。クラクラする。それに頭も痛いし、視界が赤い。
『危険。ナノマシンによるBMSの脳機能過剰励起。酸素及びグリコーゲン過剰供給、乳酸除去機能低下。ナノの使用制限及び直ちに撤退を推奨。』
止まった瞬間、さらに汗腺が開きどばっと汗が溢れる。疲労感と虚脱感。
「……やれ。」
『ですが』
「いいから……やれェェェェェェッッッ!!!」
絶叫。ブービーが珍しくすぐ答えない。
『……命令を受領しました。』
また鉄臭さが口に戻ってくる。これは口を切っただけかもしれんが。全身に力をみなぎらせる。
――バヂ!バヂバヂッ!バヂヂヂヂヂッ!!――
全身の毛穴が逆立っているのが自分で分かった。俺の意志に反応したのだろうか。全身でスパークが起きている。
――パラララララッッ!!――
射撃してきた。だがもう遅い。とっくの昔に俺は飛び上がっている。ゆうに4メートルはジャンプしただろう。
「リミッター切れ」
『了解』
『なにしてんの!?死ぬ気?!!』
ヒマリののっぺりとした抗議は無視だ。何としても目の前の任務を達成する。
――パラララララッッ!!パラララララララッッ!!――
近寄らせまいとPKMとAKがこちらを狙う。加えてまた、ドローンが飛んできた。もはや味方ごと殺してでも核を守る気だ。残念だったな。俺は死んでも核を潰すぞ。そう決意すると、先程の忍者機動よりも更に速く、鋭く、的確に、俺は連中を葬り出した。
ヒマリとブービーが見る山永の動きはもはや人間ではなかった。誰も生かして帰さない。そんな意志に手足が生えて荒れ狂っているよう。まるでこの主人は気の狂った
『敵EW車破壊』
『あ!それアタシが言いたかったのに!!』
ブービーが山永に報告。この負荷状況、この期に及んで軽口を叩くヒマリ。彼女は最後まで主人と友人として接することを望んでいた。サップドローン搭載の手榴弾を投下し、ハイラックスの荷台に積んであった電子戦機材を爆破・破壊している。その間にもヒマリとブービーは偵察系ドローンで各車を覗き込み、どれに核爆弾が積んであるかを偵察、分析し続ける。山永を含めこの3人は完全に一つの有機的戦闘体となっていた。
その彼の狂戦士のような戦いぶりを見て、評する者達がいた。
"It's Kamikaze."
……彼らは、海へ去っていく。
――すうううぅ……ぶふぅうぅぅぅううぅうぅッッ!!――
―獣《ケダモノ》のような息《ブレス》を吐きながら、彼は戦い続ける。――
一瞥。写真に収めるように空間全体を認知する。AMI6機。ドローン23機。車輌見えるだけで5台。AMIが車輌を守るように立ち塞がり、銃口を向けてくる。
――捕まえられるち思うな――
全身を火花で包みながら大きく左へにジャンプ。平行移動中に射撃。着地狩りを防ぐために勢いが死ぬ前にまた左足右足とタップダンスのように地面を蹴りつけ民家の屋根めがけ飛び上がる。全ての動作がスローモーションに見え、感じられる。頭が痛い。
『敵EW車破壊』
『あ!それアタシが言いたかったのに!!』
「ようやった!!」
自分の言葉も間延びして発しているよう。二人は本当によくやってくれている。このまま射ち降ろしで車輌を破壊していく。
――ドンドンドンドンガガンッッ!!――
射撃中のM-2の機関部に被弾、破損。これはダメだ。射撃不能。残った火器は小銃と拳銃。
――世話んなりました、先輩。後は身体一つで何とかしますわ――
腹の中で重機関銃《大先輩》に礼を述べる。屋根の端から地面に降り、銃口を構えたまま、一番左端にいた敵機に超低姿勢で突進する。
――をおおおおおおッッッッ!!!――
脇の下、装甲の隙間目掛け銃身を突き立て串刺しでブチ抜く。そいつを盾にしつつ、全身にスパークを迸らせながら近くのもう1機に突進。交通事故のように弾き飛ばす。
――おおおおらアアアアアアアッッッ!!――
我ながら狂った雄叫び。銃身に刺さったソイツを振り回し、ほたり投げる。銃身からAMIが抜け、空を舞った。
『宗清ッ車両が動き出してる!!』
なるほどこいつらを囮にして時間を稼ぎ、車を動けるようにしていたか。やるやんけ。
――だが逃がさん。――
世話になった重機関銃をアームの結節点ごと引きちぎり、投げ捨てる。そうしながらも体を捩り、ジャンプ。車輌を飛び越えサイドドアの中を確認。
――違う。これじゃない――
中をのぞき込むと爆薬らしき物が満載のただの自爆UGVだった。どれだ?!
『見つけた!!2両前!!』
「ようやった!!」
――パラララララッッ!!――
車輌越しに撃ってきた。左腕に被弾。
「……ッッ!!」
直ちに痛覚遮断のナノが動く。気にせず車列の前へジャンプ。
『逃げるよ!!』
「逃がさんッッッ!!!」
走り出す車輌のサイドドアのガラスを拳でたたき割る。
「ううううらあああアアアアアッッ!!」
上半身がスパークに包まれる。それにしてもほんに頑丈な機体やの。流石ドイツ製。両手でドアのロックラッチを引きちぎり、無理やり解放。車と併走しながら中に滑り込む。
「こいつか!」
ラグビーボール状の金属塊と無数の同軸ケーブルが繋がっているボックス。どうするんかこれ。
「ブービー!!」
『ボックスを線ごと同時かつ一気に引きちぎれ』
「わかった!!」
もはや理屈など考えとる暇は無い。ブービーもオイに命令するんやなと頭のどこかが感慨に耽っているが、それはどうでもいい。台座に固定されているボックスをべりべりと引き剥がす。束になっている同軸ケーブルを半長靴で踏みつけ固定すると、
「……オラァァッ!!」
ボックスごと一気にぶぢんと引きちぎり、車外に放り投げる。
――やったぞ――
いつの間にか車輌が止まっていた。
――まず――
無数の着弾音。自分の身体を何発もの弾頭が貫く感触。
――すまんな、ル……――
死の五重奏。3丁のPKM、2丁のAKが山永のいる車輌を蜂の巣にした。
山永は即死だった。その直後、黒旗戦線の後方からソマリランド軍が大挙して押し寄せ、今度は彼らに猛烈な射撃を加える。最期の抵抗を黒旗戦線は試みたが、1人残らず全員がソマリランド軍に射殺された。
――ピピッ――
電子攻撃が途切れて数分後。ルリのアイセイフティに表示されていた山永のポインタがリンクアウトした。
"......!!?"
その時ルリはRo-Ro船にホライズンの車輌が乗り込むのを、他のオペレータと共に下車して護衛していた。きっと一時的なリンク切れに違いない。そう思う。そうとしか、思いたくない。すると、
"......Luri."
通信だ。山永のAIOS。
"It's Himari. Yamanaga's AIOS."
[ヒマリです。山永のAIOS]
いつものお調子者ではない、神妙さ。
"I know. Where's Yamanaga?"
[分かってる。山永は?]
"...He's dead."
[……死にました。]
"...I see."
[……そう。]
正直、分かっていた。ただ、万が一があるかもしれない。現地軍と合流し、黒旗を撃退したかもしれない。なんとか離脱し、ひょっこり現れて下らないいたずらをしてくるかもしれない。彼の死が確定するまで、なんなら彼の死体を見るまで、彼女は信じられなかったのだ。
"...Your position."
[……貴女はどこに?]
"My core is still with him. This instance of me is running as a cloud copy."
[本体は彼と一緒にいます。この私は人格をクラウドにコピーして話してます]
どう表現すればいいのだろう。心に穴が空いたというのが一番近いだろうか。いや、表現できる言葉なんて、ない。
"...Lars, this is Lurienna. Sergeant Yamanaga is KIA. What are your orders regarding recovery?"
[……ラース、ルリエンナです。山永3曹が死亡。遺体回収はどうしますか?]
意外に言葉尻に動揺は現れなかった。ラースが自身で回収に向かうと回答する。ルリは、自分も行くと伝えた。ラースは一瞬言葉に詰まったが、了承する。
ちらりと海が目に入った。あの人の家は港町だと言っていた。見てみたかったな。
最早考えても詮無いことを、空虚に心に浮かべた。
はい、ここまで山永の旅にご同行いただきありがとうございました!
彼はフルリムという遺伝子改造でヒーローになれたように見えます。でも、私は英雄の本質はそこではないと思う。私たちみな、なにか力を持って生まれてきている。それを行使できるか否かは、本人の努力の積層と、なにより勇気です。
「できるって言うヤツもできないって言うヤツも、だいたいソイツが言ったとおりになる」
さて、彼は彼なりに、己が生きた証を残せたことでしょう。
それがいいか悪いかは置いといて。
これで彼の話はひとまずおしまいです。
……はて、ルリですか?
……見ます?見ちゃいます?
気になる方、それでは次の話へ……