……ん?
どうにもそうでもないらしい人もいるようで。
拝啓山永さま。
アルゴノームは貴方の生き方が気に食わないそうですよ。
なんとかしなさいよ!!
第53話
《何度も》
『見つけた!!2両前!!』
「ようやった!!」
――パラララララッッ!!――
車輌越しに撃ってきた。左腕に被弾。
「……ッッ!!」
直ちに痛覚遮断のナノが動く。気にせず車列の前へジャンプ。
『逃げるよ!!』
「逃がさんッッッ!!!」
走り出す車輌のサイドドアのガラスを拳でたたき割る。
「ううううらあああアアアアアッッ!!」
上半身がスパークに包まれる。それにしてもほんに頑丈な機体やの。流石ドイツ製。両手でドアのロックラッチを引きちぎり、無理やり解放。車と併走しながら中に滑り込む。
「こいつか!」
ラグビーボール状の金属塊と無数の同軸ケーブルが繋がっているボックス。どうやって無力化すればいいか分からない。ブービーに聞こうとして、
「……!!?!」
――ピッ!――
起動音。その短い電子音が、妙に鮮明に耳に刺さった。
まずい。そう理解した瞬間、ラグビーボールの爆縮レンズが炸裂し視界の端で金属塊の継ぎ目が白く滲んだ。
次の一拍で、世界が消えた。
音より先に光が来た。
眼球を焼くような白。思考を叩き潰す熱。
車内も、鋼板も、自分の両腕も、区別がつかなくなる。
そして一瞬遅れて、港ごと殴り抜くような衝撃が解き放たれた。
《何度でも》
山永はその日、救助のための車両を準備していた。破損の少ないハーケイに自分のキソー、弾薬、火器全て載せ、いつでも直ちに救助へ前進できるように。弾薬庫で各種弾薬を全て受領し終わり、医務室でナノを受け取って車両ごと全ての機材を弾薬庫に預託しようとバックで駐車しようとしていた所に、遠くから爆発音が聞こえだした。
「……なんすか、あの音?」
「わからん。爆発音か?」
バックの車両誘導をしてくれていた浦2曹も訝しげに爆発音の方向を眺める。すると瞬く間に爆発音が近づいてくる。
「……なんかヤバかな。」
「……ですね。攻撃、すか?確認してみます。……
「オイもちょい上がって見てみるわ」
浦2曹は停弾堤の上に上がるため、バンカーになっている弾薬庫の中に入っていく。中に階段があるのだ。浦2曹が坑道へ入るか否かのタイミングで1機の
「……!?」
目にも止まらぬ早さで弾薬庫の坑道へ飛び込むと、爆発。続いて2機、3機とドローン達がまたしても現れ弾薬庫に飛び込んでいく。
――ドガドガアァドガアアン!!!――
「浦さんッッ!?!」
山永が車両から飛び降り、坑道へ飛び込む。助けねばという判断だった。すると、すぐ近く、外で爆発音。
「……?!!」
振り向いた瞬間、ハイラックスの顔が逆光で見えた。死の臭い。そして、爆発の閃光。
《何回でも》
「ブービー、レコンランチ!」
『レコンランチします』
バチンと2機のレコンが発進する。送弾盤解放、箱型弾倉からベルトリンクを引きずり出して送弾盤に載せると勢いよく閉じて槓杆《ボルトハンドル》を引き装填《ホットチャンバー》。すぐに車両からリーンしつつ半身を出した。山永の目がぎらりと光り、
――ドドドンッ!ドドン!!――
射撃開始。
――キュイイィィィィ……ッ!――
4号車に搭載されたレーザー銃塔が突然回頭し、スウォームを睨む。
――ぱんっ!ジギィィッッ!ぱん!ジギィィッッ!!――
爆薬カートリッジが爆発し、充電。間をおかず大気を引き裂く細い閃光。迫りくるイナゴどもを叩き落していく。これは以前大野原演習場で使った52式の改良型で、出力、連続照射時間ともかなり向上している。真に頼りになる対空火力だ。
ほぼ下車できる人員は下車し、応戦を開始していた。しかし相手の濃密な火力の対応で手一杯である。
「……ジリ貧やな。」
冷静に、山永はそう思った。スウォームはこちらに来る前にどうにか殲滅できそうだが、次の一手がない。掩蔽物がないのだ。キソーはともかく装甲化されていないエグゾ組は敵に近寄るのもままならない。そう思ったその時。
――ドガアアッッン!!!――
4号車を狙ったRPGが、山永を直撃する。正面装甲に突き刺さりながら吹き飛ばされ、着発。ジェットメタルが装甲板を焼き抜き、収束した熱波が彼を貫き焼き落とす。
《……なんで》
繰り返す。何回も。何百回も、何千回も、何億回も、何垓回も、何極回も、那由他の向こう、不可思議の果てまで。
2度目の核爆発。ヴィーグルとホライズン全滅。梯隊警護中に死亡。ヘリのロケットで爆死。ナノマシン過剰投与による過労死。幾度繰り返しても彼は生き残らない。生き残れない。そもそも、ジブチに行かず、生き残る道はあるが。
《なんで……》
ただ幸せになって欲しいだけなのに。ただ幸せの先を見たいだけなのに。
何度やっても、彼は死ぬ。
生きて欲しいと願って見守っても、彼はしぬ。
なら。
《何をする気だ》
《……干渉》
《それ許されないって》
《知ってる。だから?アタシ以外がやってるの、知ってんだから》
《他がやっているからといってやっていい理由にはならない》
《そうだよ。観察者効果どころの騒ぎじゃないんだよ?》
《お前の気分で、環境歪ませていい訳ねェだろ》
《……》
《……うるさい……うるさいな。アタシは見たいんだ》
《だから……、だから邪魔すんな……!!》
なにやらアルゴノームが悪巧みしてるようですね!
とはいえ一枚岩という訳でもなく、一人はどうにも待ってられないようです。
あ、このアルゴノームという小説はループ物ではありません。
勘違いさせたらアレなので先に断言しておきま〜す