アルゴノームⅠ   作:Type-Yasenbunko

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ヒマリが怒ってます。
筆者もよく分からんですが、人間の訳分からん直感やスピリチュアルやらを根拠に彼等AIになにかさせるって出来るんですかね?
また人間サマがワケ分からんこと言い出したが従わにゃならんのか?という悲哀が聞こえてきそうです。


第56話

『……てかマジでなんかごほうびもらってよくない?!』

またしても昼のハーケイの後部座席。山永とルリがヒマリに説教されている。ぷりぷりと彼女がルリと山永に不満を垂れていた。それもそのはず、山永とルリの妄想をブービーに信じさせるというか納得させるために、かれこれ2日間ヒマリがフル稼働でかかってくれたのである。何度かあまりの負荷に熱暴走で落ちかけたが、山永が濡れタオルとハンディ扇風機で冷却し、事なきを得ている。ちなみに二人とも珍しく青菜に塩と言った風に申し訳なさげに俯いていた。なお、日本語なのでルリはヴェリティが訳して彼女に伝えている。

『だいたいさぁ、軍隊の車の後部座席でヤリ始めるとか、アタマおかしいでしょ!!人として!!』

「はい。申し開きもございません。」

AIに人倫を問われ、何一つ反論できない彼。ルリもヴェリティから訳を聞くと、いたたまれなさげに"......I'm sorry......"と謝る。

『そりゃブービーが部隊に通報するわ!盛り上がったかなんだか知らないけどさぁ!!』

それ以上言ってくれるなよと縮こまる山永に、もう許してと顔を赤くするルリ。

【挿絵表示】

 

『挙句よくわかんない夢を根拠に、ガチガチロジックAIのアイツを説得してヴィーグルにキソーの整備してもらうのの許可もらえとか、無理ムチャ通り越して意味不明だっての!てかアタシだってロジックAIなんだかんね!!訳わかんないこと言わないでもらえる?!』

てかお前そこまでまくし立ててくるとかホントにAIか?と山永は反省するふりをしつつ思っていた。最近のAIは不条理に対する怒りの感情を搭載していると見える。

「……ヒマリさん、おいもルリも反省しとるけ、それぐらいにしてくれんか……」

流石に話が進まないと判断し、仕切り直しを求める山永。

「……」

無言のヒマリ。彼女は無言の間すら使いこなしている。これ結構すごいことじゃね?とまた関係ないことを考える山永。

『……まあ、くっついたこと自体は全然ありだからいいわ。』

そう言うとあっさり溜飲が下がったのか、怒りモードが治まるヒマリ。因みにくっついたと言う単語にルリは反応し、モジモジしている。

【挿絵表示】

 

『で?見返りもらえんの?』

「……えー、あー、物によります」

AIOSが代償として欲しがる物がよく分からん山永である。値段にもよるが、ブービーの説得という値千金の貢献に、なるべく答えようとは思っている。

『……じゃ、ちゃんと幸せになってよ』

「……?!」

".......?!"

山永は直ちに、ルリはヴェリティの訳を聞いて驚いたように顔を上げて、二人の間に置いていたタブのヒマリを見つめる。

『……なに?文句あんの?』

「……いや、ない。てか……」

そう言うとにこりと笑顔になると、

「ありがとな、ヒマリ」

『……ったく、そういうとこだぞ、女誑し』

小さく呟くヒマリ。山永はそれを聞き咎め、さらに笑った。

“...Um, Himari.”

[……あの、ヒマリ]

『……?』

ヒマリのアバターがルリに視線を移す。

"...Did you, by any chance, show us that dream?"

[……もしかして、貴女があの夢を私たちに見せませんでしたか?]

"...Are you seriously going to start saying weird nonsense too? I didn’t do anything! And no, I wasn’t beaming mysterious brainwaves at you either!"

[……貴女もそんな訳わかんないこと言いだすんですか?私は何もしてません!もちろん毒電波も飛ばしてません!]

"......I see. My apologies."

[……そうですか、ごめんなさい]

またしても申し訳なさそうに謝るルリ。その姿が珍しくてやや嬉しそうに彼女を眺める山永。

『まったく。二人ともアタシをなんだと思ってんだか……』

最後まで不満げにヒマリはボヤいたのだった。

 

第2倉庫内でド派手な音がしている。監視カメラや古い通信ルーターを現地雇いの作業員が景気よく工具で叩き壊しているのだ。また弾薬やAKなどのライフルの一部をソマリランド治安部隊へ引き渡す準備を行っている。

「大事《おおごと》やなァ」

『全部撤収するからね。しょうがないでしょ』

ヒマリが呑気に答える。彼は他のホライズンの職員達と一緒にコンテナへ通信機材の積み込みを行っていた。

"Yamanaga."

80キロ程ある鉄箱を一人で持ち上げ、コンテナに積み込んでいると後ろからルリに声をかけられた。

"Hi, Luri. Is something up?"

[おう、ルリ。どした?]

"Lars wants to see you. He said it's confidential."

[ラースが呼んでる。内密の話だって]

肩を寄せ、耳打ちするように囁くルリ。暗にブービーを置いてきてほしいという類の話のようだ。というか既に積み込み作業の時点で彼はロッカーで留守番をしている。

"I spoke with Lars yesterday, and I think he wants to count you as part of their fighting strength. It's probably about that."

[ラースと昨日話したけど、おそらく彼は貴方を戦力に組み込みたいみたい。その話だと思う]

"OK. I'm visiting him."

[わかった、会いに行くわ。]

 

ラースの部屋に入る前に、くれぐれも喋り出さぬようヒマリに釘を指しラースの執務室のチャイムを押す。

"Ah, Sergeant Yamanaga. Come in."

[ああ、山永軍曹。中へどうぞ]

カメラ付きチャイムだったので直ぐに開けてくれた。ノブを回し中に入ると案の定ルリも居た。

"Thank you."

ラースはソファセットに座りつつ、山永もソファに座るよう勧める。ルリはラースの後ろで立って聞くようだ。座ればいいのにと山永は思った。

"Sorry to call you in like this. I have a favor to ask."

[呼び出してすまない。折り入って頼みがある。]

座って早々、ラースが切り込んでくる。

"What is it?"

[なんだろうか?]

やや警戒気味に山永が尋ねる。わざわざルリにあの言い方をさせ、端末を置いてこさせたし、ルリからも撤退戦に参加して欲しいと来るんじゃないかと言われているので、もはや半ば答えが分かっているようなものだが。

"I don't intend to force you, but I'd like you to help with transporting some equipment."

[強要する気はないのだが、機材運搬を手伝って欲しいんだ]

やや前かがみになり、膝の上で掌を組みながらラースが言う。

"What equipment?"

[なんの機材を?]

"The old exoskeleton you serviced with Marco and the others."

[君がマルコたちと整備した、あの旧型のエグゾスケルトンだ]

KT-1だかなんだかのあれだ。やっぱりかと山永とルリは思っていた。

"......"

"It seems you've already figured it out. Of course, I'm not forcing you. But I believe you understand the current situation."

[察してくれたようだな。もちろん強制はしない。しかし、今の情勢も、君は理解していると私は思っている]

そう言うとラースはルリにコーヒーを出すように頼んだ。アイスブレイクを狙っているのだろう。

"If nothing happens on the way to Berbera, then all the better. But if something does, your vehicle will have the exoskeleton."

[ベルベラまで何も無ければそれでよし。しかしもし何かあれば、君の車両にはエグゾがある]

"......"

ルリは無言だ。山永が切り出した。

"......I'm sorry, but I refuse it."

[……すまないが、それは断る]

“...I see.”

[……そうか……。]

少し落胆したようにラース。するとすぐに遮るように山永は、

"Though, I'd like to offer an alternative."

[だが、代案を出させて欲しい]

"......?"

ラースの軽く驚いた顔。

"......Would you maintain my AMI?"

[俺のキソーを整備してくれないか?]

山永はニヤリと笑った。




なんだかルート変わってきましたねェ。
少なくとも装甲化されたキソーなら、山永の生存率は上がりそう。
ヒマリがあの頑固者のブービーを、徹夜で説得した甲斐があったというものですわ(笑)
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