アルゴノームⅠ   作:Type-Yasenbunko

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獲物を前に舌なめずり、
三流のすることだな。
……と大先輩に言われそうですな、山永くん。
そして自衛隊あるある、「急げ!そして(ムダに)待て。」
まあ、必要なのです。
米軍も言っています。早い(速い)ことは、それだけで価値があると。


第58話

ベルベラへの道すがらのハーケイ車内。山永たちのハーケイはヴィーグルが編成したコンボイの最後尾を走っていた。撤収に関わる当日の行動の打ち合わせの際、山永が最後尾を走ることを自ら申し出たのだ。分厚いわけではないが、軽装甲化されている車両である。自衛隊車両でもあることで、目を引きやすく殿を務めやすい。ラースは助かると快諾したが、その直後、ルリが自分もハーケイに乗車すると言って話が拗れた。山永はルリとその話を既にしていたため知ってはいたが、流石に露骨すぎじゃねとあまり乗り気ではない返事をしていた。ルリがムッとした顔をしたのでそれ以上ケチは付けなかったが。案の定、ラースも自分とこの社員を自衛隊車に乗せるのは筋違いだと述べている。するとルリが真っ向から理詰めで反論し、ラースをやり込めてしまった。それを見て山永は、何年後かには我が身も同じ扱いになるんだろうなァ、下手なこと言えんなァ、怒ったら英語で詰められんのかなァと一人肝を冷やしている。因みにその場にトーマスが居たもんだからまたしても皆に言いふらされたらしい。結局その場では話が落ち着かず、後でラースが判断し皆に達することとなった。正直、その場で綺麗に決めてそのまま各車の有事の際の動きまで予行したかった山永だったが、流石にお客さんなのでそこまでは求めなかった。後ほどラースから連絡があり、結局、最後尾車になったという訳である。

『……襲撃とかなんもないじゃん』

「そう思っとったらこの前ドカンやられたし、あの夢信じんなら来るやろ。来んなら来んでいいが」

『……マジでスピリチュアル信じてんのがヤバいよね、人間って』

「……」

ぐうの音も出ない。というか山永だってそういうのは一切信じない方である。神様にだって人の人生いじられたくないタイプだ。するとヴェリティの訳を聞いて話の流れを理解したルリも、山永の肩を持つ。

"......You're not wrong. But this time, I believe it too. So please, put up with our human selfishness."

[……貴女の言う通りだけど、今回は私も信じてるから。人間のわがままに付き合って]

"......Well, if it's coming from you, Luri, I guess I don't have much choice."

[……ま、ルリさんに言われるならしょうがないけど]

「……なんか、オイが言うたらゴネ散らすんに、ルリの言うことは聞くとやな、お前」

『そりゃそうでしょ。信頼の差があるんだもん』

「……」

どうにも山永は女性には頭が上がらないらしいことを自覚した。ここで刃向かったとて何一つ生産性もないので、大人しく煮え湯を飲むしかない憐れな男がここに一人。

【挿絵表示】

 

"...Honestly, you two are still the same, even at a time like this."

[この緊急時に相変わらずなんだから、貴方たちは]

"Let me complain. Because you deal with me roughly."

[愚痴ぐらい言わせてくれよ。お前らが俺を雑に扱うからだぞ?]

"That sounds like your own fault to me."

[自分のせいだと思うけど]

ちなみにルリは運転席でM240(機関銃)を保持、助手席にAXMC(狙撃銃)を立て掛けて置き、山永は後部のガナーハッチの下で窮屈そうにM-2を抱えながら待機している。彼は1時間前程からこの姿勢で待機しているためヒマリに『早すぎじゃない?』と茶化された。山永は自衛隊で『急げ、そして(ムダに)待て』をやらされすぎたせいでついこうなりがちなのである。ちなみにルリは梯隊《コンボイ》行動がはじまってから座席を最大まで後部に引き、顔色一つ変えずずっとM240(機関銃)を抱えて運転席に座っている。

『ベルベラ市外縁まで、30分』

ブービーが伝えてくる。

"......It's coming. "

[……いよいよやな]

"Yes."

[ええ]

果たして、あの夢が本物なのか。二人の声に緊張感が宿っていた。

 

結局ベルベラ市の入口までは一切襲撃等の不測事態はなかった。ところが、思わぬ問題に出くわす。

[Si kastaba ha ahaatee, gaari ciidan oo aynaan garanayn ma dhaafi karno. Waxa naloo sheegay waa oo keliya in PMC la yiraahdo Vigle la sii daayo!]

[とにかく、よく分からん軍隊の車両は通せん。うちが聞いてるのはヴィーグルとかいうPMCの通行だけだ!]

なぜか市内の入口で、ソマリランド陸軍―正規軍だ―が検問を敷いていたのだ。各車両身分を検められた訳だが、最後尾のハーケイだけ明らかに毛色が違う。物の見事にソマリランド軍のアンテナにヒットしてしまった訳である。

"Oggolaanshuhu waa inuu horey u jiray. Fadlan hubi."

[話は通ってるはずだから確認して]

"Waxaan haysannaa oggolaansho ka timid Wasaaradda Arrimaha Dibadda. Fadlan arrinta dib u hubiya."

[外務省には許可を頂いています。調べていただきたい]

【挿絵表示】

 

ヴィーグルの車両たちはさっさと港湾区画へ前進する中、ハーケイの車外でルリとヴェリティが代わる代わる検問の分隊長だか組長と思しき軍人と押し問答している。山永は引き続きキソーを脱がずに後部座席で窮屈に背中をまげ、待機していた。ルリの問答はヴェリティの気遣いでリンクで聞いている。彼らは頑として通してくれる雰囲気ではない。AKで武装しているが、一応銃口は彼女には向けられていないのでまだ銃口管理と良識はあるようである。ルリの方も機関銃は車内に残し、抵抗の意志はないとヘルメットを小脇に抱えて彼らを説得している。そこへヴィーグルのランクルが寄ってきて、話を聞きつけたラースがその車両から降りてきた。

[Salaan. Anigu waxaan ahay masuulka konvoyga PMC-ga.]

[こんにちは、このPMCの責任者です]

ラースがソマリ語でルリと押し問答している兵士に語りかける。

[Ma run baa inaad ninkan iyo gaarigan dalka ka saaraysaan?]

[こいつとこの車を国外に逃がすってのはホントか?]

今度はラースのAIOSが組長らしき男と話し始めた。

「なんとかなってくれェ……」

『情けないなぁ!』

「ここまで来たらオイにできることなんぞ無かて」

実際車内を確認されると、フル装備の山永が臨戦態勢で待機しているのである。見咎められた時のソマリランド軍の不審感たるや開幕寄り付きからのストップ高であろう。そんなゴタゴタの矛がいつまで経っても収まらぬその時。

 

――ドォォオンッ……!――

 

遠くで爆音が響き渡った。そこにいた全ての人間が爆音の方を向く。ロードナンバー1、ハディサ方面へと繋がる幹線道路の方からだ。

 

――ドゴォォォオンッ……!!――

 

さらに続けて、先程より大きくかつ腹が震える爆音が響く。全員が一瞬頭を下げた。

"Waa maxay dhawaaqaas?!"

[なんだあの音は?!]

"Weerar baa?!"

[攻撃か!?]

"HQ! Xaaladda noo sheeg!"

[HQ、状況教えろ!]

すると今度は、あの嫌な、まさにあのドローンの羽音が聞こえてきた。

 

――ドガァァアァンッ……!!――

 

吸い込まれるように兵士らの乗ってきたと思われる人検・車検(チェックポイント)後方で控えていた装甲化ピックアップトラックの荷台、機関銃が据え付けられた部分へ飛び込み爆発。

 

――ドガァァアァンッ……!!――

 

同じ機種らしきドローンが今度は検問区域の脇の路外を防御していた鉄条網に突っ込み爆発。それも有刺鉄線部分ではなくフレーム部分に飛び込んで破壊しようとしている。

「……!!!」

 

【挿絵表示】

 

ルリは素早くハーケイに近寄るように飛び伏せる。伏せつつもその目はそのドローンを目視、確認していた。

"Yamanaga!"

"Yes!!"

"The drone from the base!"

[基地で見たドローン!]

来たか、彼はそう思った。悲しいかな、あの夢とあの声は、山師では無かった訳である。

「ハーケイ始動!」

『始動します』

ランナップするハーケイ。爆発から一拍置き、ルリが迷いなく起き上がると扉を開け運転席から機関銃をひっ掴む。その間に山永はガナーハッチ解放、

"Munekiyo! Launch the drones! Verity, deploy!"

[宗清!ドローン射出!ヴェリティ、射出!]

"I know!"

山永とルリのドローンたちが素早くハッチから飛び出していく。山永3機、ルリ4機の計7機だ。

すると今度は山永らが通ってきた道路の向こうから土煙を上げながら猛スピードで迫る2台の車輌。

「……!!!!!」

――白のプロボックスと黒のハイラックス。レコンの画像を見た山永は、

「大当たり……!ジャンジャンバリバリやな!」

『言ってる場合?!』

「せやんな!」

なんなら軽く笑いながらM-2の銃身をガナーハッチから突き出しつつ身を乗り出す彼。ソマリランド軍は止まれと怒鳴りながら射撃を加えているが、7.62mmのライフルでは止まる様子はない。ルリも運転席のフロントドアを盾にしつつ、猛然と射撃。山永も火制の弱いプロボックスに12.7mmを叩き込む。

―――ドダダダダダッ!ドンドンドンドンッ!!―――

すると、蜂の巣になった二両は検問《チェックポイント》にたどり着くことなく力尽き、路外へ転がり出るとそのまま擱座した。

「……なんかこすか(ズルい)気のするが勝ちは勝ちやけんな」

機体のHUDの下で舌なめずりし、そう呟いた。戦闘開始だ。




夢のおかげで先手こそ取られたもののあっさり撃退出来ましたね!
まあ、ルリも居るし圧倒的に山永有利!
あ、前言ったか覚えてませんが兵士としての格は、ルリの方がビックリするほど上でふ。
普通にやり合ったら7:3、いや8:2のダイヤグラム取られる技量差です。
……ん?言われなくても読んでりゃ分かる?
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