アルゴノームⅠ   作:Type-Yasenbunko

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「我が心の善くて殺さぬにはあらず」
この世に正も邪もありはしない。それでも善悪を決めなければならないなら、自分の積み上げた人生を信じるしかない。それはきっと誰かとぶつかるだろう。
分かり合えるならばよし、さにあらずんば……
清濁併せ呑み、酸いも甘いも噛み分けて、全ての人の人生が薄皮となりこの世に重なっていくのです。


第61話「命の積層」

"You are too close, to quit now."

[お前はあとほんの少しなんだ]

"You gotta take another rep."

[お前はあともう一回、取りに行かなきゃならねぇ]

"You gotta take another rep, 'cause you never know, THIS MIGHT BE 'THE ONE'."

[お前はあともう一歩、進まなきゃならねぇ。今回が、『その時』だってお前には分かんねぇからだ]

"Keep walking. Keep walking. Keep walking."

[歩き続けろ。歩き続けて、歩き続けるんだ]

"You can't stop 'cause you are tired, you can't stop 'cause you are sore to quit."

[疲れても止めんな。しんどくても辞めんな]

"You gonna make it. You gonna do it. Go, take another rep."

[お前ならできる。お前ならやれる。さあ、あと一回だ]

"You got unstoppable fire. Go, take another rep."

[お前には燃えやまない炎が燃えてるだろ。さあ、あと一回だ]

"Don't you stop."

[止まるな]

"Don't, stop, WALKING."

[絶対に進むのを辞めるな]

 

キソーのHUDに突然新たな情報が流れてくる。

「……?!」

ホライズンが提供してくれていた戦域情報より更に広域かつ詳細な情報だ。

『なにこれ!?』

ヒマリが動揺の声。AIに有るまじき感情表現ではあるが。

『米軍より情報提供』

日米共有の暗号規約で情報を提供してきている。ヒマリの方にも平で流れてきてはいるようだ。

(米軍の、近うにおったんか?)

さまざま疑問は浮かんだが、なんでもいい、使えるものはなんでも使うだけだと山永は高速思考のまま思う。

『見つけた!!ブービー、サップ(支援型ドローン)寄越し……ってあんた正気?!!』

またしても素っ頓狂な声を上げるヒマリ。

『……もう、知らないからねッ!カッコイイとこ貰うんだから!!』

何やら二人でイチャついている。すると本命の北側の車列の画像が突然流れてきた。

『やりぃ!電子戦車両撃破!!』

文字とともにヒマリが嬉しそうに報告してくる。どうやら手榴弾を搭載したサップの操作権をブービーがヒマリに委任したようだった。何をやり合っているのか知らないが、こんな時だというのに相変わらずメタ(俯瞰)視点で山永はほっこりする。

「ようやった!!」

『後はベタ付けで核弾頭探してみる!……って今度は何?!』

まだ何か言っている。

「今そっち行くぞ!」

いつまでも従攻《搦め手》に付き合ってはいられない。残敵はルリにあしらってもらいながら、山永は連中の主攻に襲いかかるべく身を翻した。

 

その数分前、DEVGRUの後方支援として、二階建ての低層ビルの上に米軍のAMIが支援体制を確立し膝立ちで待機している。XM-41 HYDRA(ハイドラ)-X、米軍の最新鋭AMIだ。その分隊支援及び電子戦支援型。

"Launch the drones."

[ドローンランチ]

チーフの無線と同時に、ハイドラXの後方に控えていた六脚型UGVが姿勢を沈めた。M92A2 HIVE(ハイヴ)。六本の脚が屋上のコンクリートを噛み、背部コンテナが左右へ割れる。内部に並ぶ十五本の発射筒。

――バシュッ!

圧縮ガスに押し出され、黒い円筒が一機、空へ跳ね上がる。機体がUGVから離れた瞬間、胴体に畳まれていた四本のアームが十字に弾けた。続けてローターが回転し、折り畳まれていたブレードが遠心力で伸び切る。一度沈み込み、浮いた。

――バシュッ! バシュッ! バシュッ!――

 

【挿絵表示】

 

次々に射出されたサップ(支援型ドローン)が、屋上の上空で花が開くように展開する。十五機は互いの位置を即座に共有すると、ハイドラXを中心に方々へ散っていった。離れた位置でも同様に無数の米軍のドローンが射出され、猛スピードで黒旗の本隊に突進していく。方や下の未舗装道路で土煙を上げながら4機のフロント(前衛)役のハイドラXが道路上を猛進していくのが見える。続いて屋上のハイドラX当人は床に置いてあったミニガンにそっくりのガトリング銃を手に取り、腰だめに抱える。XM312 Hailstorm(雹の嵐)。見た目はミニガンだ。だが撃ち出すのは通常弾ではない。七・六二ミリ径の誘導ダート弾だった。発砲後フィンが展開し、サップなどのドローンの赤外、レーダー波により誘導され、ドローンを撃墜していくスマート弾頭システムだ。HUDを見ると南及び南西から侵攻していた黒旗の車両がうっとおしい小蝿《山永》を叩き殺すべく彼の位置へ集まっている。本命を守るためだろう。散り散りになっていた本隊もいよいよ本気になったか、おそらく手持ち全てのドローンを射出し山永を推し潰そうとしている。本来は彼ら米軍のために取っておいたハズの切り札を、あのよく分からん日本人《ジャパニーズ》は引きずり出したのだ。

"......"

放っておけばやられるだけだろうが、そうはさせない。誰が世界最強か、お前らに見せてやる。オペレーターはそう思いながら、ヘイルストームを構え、

――ブゥゥゥゥゥゥッッ!!――

 

【挿絵表示】

 

距離600mで40ミル内に入ればほぼ間違いなくラジコンどもは撃墜だ。殺虫剤を蚊の群れに浴びせかけたようにぽろぽろと砕け、地に落ちていく。撫でるように横射してきれいさっぱりまるで掃除していくよう。

"......"

――ほら、綺麗にしてやったぞ。いいとこ見せろ男の子――

そう思うと、オペレータは電子戦支援に集中するのだった。

 

黒旗は山永を押し潰すべく、手持ちのドローンを全て吐き出し、山永を撃滅しようとする。しかし、

――ヂィィィィィッ!!――

突然汚い風切り音がなったかと思うとあっという間にドローンが撃墜されていくのだ。

――パァンッ! バチッ、バチバチッ! ドンッ!――

ここに来て彼らも悟った。米軍が出てきたと。

"......"

黒旗の隊長である彼は、強烈な圧迫感を感じていた。いや、これはジブチから逃避、隠遁していた時もそうだった。あいつらは本当にうっとおしい。我が物顔で人の土地を踏み荒らし、さも自分達こそ正義のような面をする。度し難い悪魔だ。

――連中に地獄を見せてやらねば。

彼がそう思った瞬間。

――ドドドドドンッ、ドガァァァアッッ!!――

突然正面道路左のコンクリート塀が砕ける。

"......!?"

山永だ。塀に銃弾を撃ち込んだ後、力任せに体当たりをして塀をブチ破り出てきた。ジャンプすると著明になりバレると思ったのだろう。そのままこちらに銃口を向け、発砲。

―ドンドンドンドンドンドンッ!!――

瞬く間に車両3台がやられる。近くで車両が自爆したが上手く爆風をいなして受身を取り、直ぐに応射。またアイツか、本当に小賢しい。何度追い散らそうとしてもしつこく追いかけてくる。

"!!...ابتعد عن طريقي"

[邪魔するな……!!]

ピックアップに積んでいたダーシュカを架台からピンを引き抜きもぎ取ると、彼は叫ぶ。

"!اقتلوا ذلك الرجل"

[奴を殺す!]

残った2機のマラーク(黒旗のAMI)に怒りのこもった命令を下す。先程から米帝のドローンらしき羽虫が狂ったように飛び回っていた。まるでキャンプレモニエの意趣返しだ。手にした重機関銃で1機撃ち落とし、その2機に左右に迂回するよう指示を出し、直ぐに荷台から飛び降りる。

――ガシュンッ!――

車両を突っ込ませ、自身の着地の隙を隠す。山永は移動間射撃で彼の乗った車両を当たり前のように破壊し停止させていた。

(そこまでだ)

我々はここまで耐えた。耐えたのだ。いかなる苦渋も苦痛も努力も飲み干し、ここまで来たのだ。必ずここで成就させる。持てるもののくせに持たざる者からさらに奪う、そんな邪悪に目に物見せるために。

"......"

頭が透き通っていく。口の中に妙な味。目の前の山永は撃ち、隠れ、飛び出し的確にこちらの戦力を削いでいっている。核弾頭が積んである車両は最後尾から2番目だった。ここにいる無傷の車両はあと5台。これ以上戦力を減殺される訳には行かない。取り付いてでも核の道を拓かねばならない。

――ドドドドドンッ!!――

山永の隠れていると思しき家の角に12.7mmを注ぎ込む。いかな西側のAMIの装甲でもこれでは顔を出せまい。となると次は……、

"......!"

彼の思ったとおり山永は次は空中機動《ジャンプ》を狙ってきた。だが、お見通しだ。

――ガシュッッ!――

彼も同じようにジャンプし、お互い空中で撃ち合う。流石にどちらの弾も命中せず2人とも家の影に着地。今度は山永が彼に向かい、壁越しの射撃。だが、着地の一拍後には彼はまた空中に身を躍らせていた。当たらなくても構わない。山永に向けて制圧射。

――ドドドンッ!――

先手を取れた。着地狩りを防ぎつつ地に足を着ける。奴を掩蔽物に縫い止め、味方のAMIに回り込ませられる。味方のドローンがほとんど無くなったのは痛い。もともとマラークは西側ほど戦術動画リンクの性能は良くない。各ドローンの動画統合などもなく、グラス(メガネ)型のHUDのごく一部分にドローン1台の画像を投影できる程度だ。戦術支援も山永たちと違い、車両に載せた大型AIOSが行っている。これも核弾頭車と同じく後方の車両。このような制限の中、レモニエへの核攻撃を成功させたのは一重に彼らの執念に他ならなかった。

――ドドドドドンッ!!ガシュンッ!――

またしても空中射撃で着地狩りを防ぎつつ安全に家の影に着地。向こう(山永)も何度か顔を出そうとしていたが、その度に射弾で頭を下げさせる。いい調子だと彼は思った。と、

――ぶぅぅうぅぅぅ――

耳障りなローター音。ドローンだ。彼の頭の上で滞空している。どうやら監視しに来たらしい。

"......!"

舌打ちしつつ銃口を向ける。そのまま射撃しようとして、

――ぶぃんッ!!――

突然ぐぃんとトンボのように軌道を変え弾丸を避けられる。まるで操作を奪われたようだ。

『あ、こら!勝手に取るな!』

聞いた事のない言語が平の無線で流れてくる。少なくとも英語では無さそうだった。そこへ、

"الاشتباك وشيك."

[間もなく接敵]

グラスのHUDに表示が出た。味方が回り込めたらしい。これで踏み潰してやる。彼はそう思い、壁際からリーンしよう(覗き込もう)として、

――ドガガガッ!!――

12.7mmがが壁を抉り抜いて着弾する。舌打ち。押さえられたか。ふと嫌な手応えを覚え手元を確認すると、重機関銃が貫かれている。これは、もう機能すまい。

――やられた。だが、まだだ。――

彼に、いや彼らに降伏という概念はない。一度転がり始めた大岩は、何かにぶつかるまで絶対に止まらない。放たれた矢は的に当たるまで飛ぶことをやめない。いよいよ起爆も視野に入れるべきか。そう彼は思いつつ、腰背部のマウントに固定しておいたAKを引き出して、ボルトハンドルを引き装填する。山永のキソー相手にはなんとも心許ない装備ではあった。だが知ったことか。あの道を切り拓く。それが彼らの命の使い道。そう思っていた矢先、

――ガシュンガシュンガシュンッ!!――

凄まじい勢いで、山永のキソーが目の前を駆け抜けていく。やられた。こちらの核爆弾車両に気づいたか。

"......!?"

心の底からうっとおしいヤツだと、彼は思った。こちらがやって欲しくないことを心を読んだようにことごとくやってくる。無論、そのまま好き勝手させる訳にはいかない。

――パパパパッ!――

カバーポイント(掩蔽物)を捨て、通りに飛び出しながら彼も全速力で追いすがって移動間射撃。しかし流石にこの機動をやりながらでは当たらない。

――迂回させた二人は何をしてる!?――

彼は知る由もないが、山永の後ろを取ろうとした一人は米軍のハイドラに、さらに別のもう一人はルリの狙撃によって制圧されていた。グラスの端で戦術AIOSが核起爆の提案を始めている。

"......!?"

突然山永が大きく跳ねて前宙すると、逆さまになりながら重機関銃の弾を吐き出してくる。舌打ちしながらジグザグステップで射線から身を外す。

 

【挿絵表示】

 

しかしこれでは速度が出せない。山永との距離が離れる。当の山永は一回転するとそのまま全速力で道路を駆け抜けていく。

"......"

ショートカットだ。直ちに決断し、進行方向左斜め前の民家、その先のアパートまで軌道を考えフルパワーでジャンプ。ガシャンガシャンと屋根を踏み砕きながら、本命《核弾頭》を守るべく全力機動《フルパワーマニューバ》。汗だくだ。頭が痛い。骨が軋み、腰が悲鳴を上げる。だが、

――だからなんだ。――

見えた。山永だ。山永の斜め前の民家に着地。あと1回全力で飛べばヤツに取り付ける。

直射火器のような弾道、ロケット(RPG)のように屋根から飛び降りる彼。届く。空中でAKを撃ち尽くしそれを投げ捨て、右手で手榴弾を腰から取ってピンを抜く。抱きついて自爆するのだ。あと少し、あと少しでヤツに手が届く。

「……!」

山永も気付いていた。伸ばされる左手を体を開きながら山永の左手の前腕が受け流すようになめらかに滑らせていく。タックルの軸をずらされた彼は、山永を掴むこと叶わず後ろに投げ飛ばされる。無様に地面を抉って滑りながら、なんとかもんどりうって体勢を戻しつつ、ちらと山永がいたと思われる方向を見る。手から離れた手榴弾が跳ねて道端へ。

(……どこだ)

見当たらない。と、

――ドドドンッ!!――

短連射が降ってくる。至近弾で当たりはしなかった。山永が彼を捌いた回転を活かして後ろ向きになりながらバックステップで走りながら射撃してきたのだ。

"......!"

1、2発掠めたが、当たったかどうか。少なくともまだ身体はまだ動く。

――ぶぅぅうぅぅぅ!――

また嫌な音。ヒマリの操作するドローンが、彼の頭上で小型榴弾を落とす。

"......!?!"

爆発。そして被弾。HUDの役目をしていたARグラスがひび割れ、機能をなくし、視界も悪くなる。

(……なぜだ。なぜだ。なぜ)

無様に転がりなんとか立ち上がりながら、ヘルメット型の頭部装甲を無理やりむしり取って、

(……アッラーよ、あと少しなのです。あと一歩、いや半歩)

もう一度、走りだそうとして、

(……それをお与えくだされば、我らは貴方の御意を世に知らしめられますのに!)

山永の重機関銃の黒黒とした銃口が彼を見つめていた。

 

その時山永は見た。目が合う。毟るように取り払ったヘルメットの下は彼と同じように酷く汗まみれに血まみれ。アラブ系だろうか、精悍な顔つきの男だ。その顔に一言では言い表せないような想いが乗っている。

 

――あと少しだというのにという焦り

――届かないと理解した悲しみ

――この世の不条理への怒り

――持てる者への羨望

――他にできることはなかったかという後悔

 

 

【挿絵表示】

 

 

言葉に表すにはあまりに濃すぎる無数の感情を綯い交ぜにして顔に乗せ、その男は山永を見ていた。

(……)

一瞬、ほんの一瞬、山永は憐憫を感じ、押金を押せなかった。彼と俺に、どれだけ違いがあったのだろう。生まれた国?環境?家族?彼と同じに生まれても、俺はこんな真似をせずにいられたか?彼と俺、どちらが正しいのか?彼を踏みつけにしてこの世を進めて、本当に世の中は良くなるのか?そんな妄想を一瞬脳に走らせる、濃密な表情。

(……)

その迷いはほんの刹那で、しかしその瞬きの重みがあまりに深く山永に突き刺さる。だが、ダメだ。

(……そいは、やっちゃいかん)

すまんなと頭の中で祈り、押し込む

――ドンッ!!――

いつもよりも重たい発砲音が、やたら山永の頭の中で木霊した。

 

「ヒマリ!アタリは!?」

『見つけた!コイツ!!』

黒旗のマラークの1機を撃ち倒し、直ぐに正気に戻って山永が尋ねる。マップに点滅させているのが核弾頭車のようだ。余りに連中を蹴散らしすぎた。もう起爆させるかもしれない。

「ッチ!遠かぞッ!!」

『どうすんの?!』

言いつつ直ちにダッシュ。しかし実際、核爆弾を見つけたところで山永に爆発物処理の技能など持たない。ブービーに聞いていたところ、専用の機材がないなら弾頭から起爆装置を引きちぎる他ないとのことだった。ルリのヴェリティも同意見である。

"We got it."

[任せろ]

突然回線に割り込み。マップ上に四つほどポインタが現れ山永と同じ速度で猛然と核爆弾の車両に突っ込んでくる。

「……?!」

前を走っている2機が車に飛びつくと、後部座席の窓ガラスを叩き割るように何かを投げ込む。

――パパンパパパンッ!――

破裂音とともに車内が真っ白な霧で白くなる。そのまま飛びずさりながら2機は車体のエンジン部にM-2(重機関銃)を叩き込み走行不能へ。スピンして低い石塀に突っ込んで止まったところに後ろの2機が取り付いた。迷いなくドアを引きちぎるように開け、中に潜り込む。

さっきの白い霧は冷却材だ。起爆装置を過冷却し、一時的に機能出来なくさせているだけで止まってはいない。だが、鈍った。その数十秒をDEVGRUは逃さなかった。小型マニピュレータが車内へ滑り込み、NESTパッケージが弾頭と起爆装置の接続を立体表示する。

"Isolate the firing train."

[起爆系統を隔離]

金属音と金属の切断音。

続いて、DEVGRUのHUD上で弾頭車両の共有表示が変わった。

――NUCLEAR DEVICE — FIRING TRAIN ISOLATED

[核装置――起爆系統隔離]

まだ安全ではない。だが今この瞬間、核は爆弾ではなくなった。

山永も車両に取り着いたが、よく分からない(彼我不明の)米軍に任せるだけだ。彼自身ただの普通科《歩兵》でEOD(爆発物処理)の識能など欠片もない。

『任せといていいの?』

とりあえず車両の横で荒れた呼吸を整えながら、四周を警戒しているとヒマリが聞いてくる。

「ようわからん。何とかしてくれそうやし、とりあえず任しとけ」

大してかからず、中の2機がラグビーボールのような金属塊と四角い機械装置を一つずつ持ち出すと、そのまま猛スピードで港に向け離脱していく。先の2機も離脱しようとして、

"Good work."

[いい仕事だった]

無線で山永に一言、残して猛スピードで去っていく。どこか山永の勇気を認めているような声音。同じ戦場に立った戦士同士にだけ通じるようなニュアンス。DEVGRU最大の賛辞。

「……こっちこそ、あんがとさん」

騎兵隊《キャバルリー》のような彼らに、山永も心からの賛辞を込め呟いた。

 

夕焼けの手前、海風が吹き、間もなくベルベラの街の日が暮れる。弾頭無力化、任務完了と正体不明の部隊から通信が流れ、低層アパートの屋上で監視警戒していたルリはひとまず安心した。だがすぐに、

"Munekiyo!?"

"I'm alive, Luri."

[生きてるぜ、ルリ]

直ぐに応答。ようやく心から安心する彼女。と、

――ガシュンガシュンガシュン!――

キソーが東から彼女の方に走ってくるのが見えた。ルリは思わず狙撃銃《AXMC》を抱えるとそのまま屋上から飛び降りる。隣の民家に一度着地してタン、タンと地上に降り立ち、

"......!?"

山永がキソー背面を解放して降りてくると、まるでハリウッド映画のごとく着地したルリをタックルするように抱き上げる。

"W-wait—! Let me put the rifle down!"

[ちょ?!やだ、銃ぐらい降ろさせて!]

 

【挿絵表示】

 

"My bad!"

[すまん!]

抗議の声を上げる。降ろされたルリが地に足を着け、ヘルメットを取り、銃を置いた瞬間、山永がまた間髪入れず彼女を抱きしめる。

"Thank you, Luri."

[ありがとな、ルリ]

そう言うと、奪うように口付ける。二人とも汗と埃でぐちゃぐちゃだ。山永は一切意に介していなかったが。

 

【挿絵表示】

 

唇を離し、ルリも山永の背中に腕を回しぎゅっと彼を抱きしめ返すと、

"Don't thank me like that. You're coming back with me."

[お礼なんかいい。あなたは私と帰るの]

山永は素直じゃねェなと笑いながら、

"I'm here. I love you."

[俺はここにいる。愛してる]

"Me too."

[私も]

彼女は初めて、自らの意志で、自らの欲しいものを手に入れた。










ここまで読んでくださったあなた。本当に、本当に感謝申し上げます。

あなたの人生に、前へ進む勇気を一欠片でもおすそ分けできることを祈って。

最後にエピローグとして、アルゴノームIIへの階をお届けして、このお話は終幕とさせて頂きます。
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