【VRフリゲ】ブルーアーカイタフを再現してみた【1】   作:何処にでもある

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 あれ?…ええ? えっと……死体が喋ってる…ん…だよね? う…うへぇ?(ぐるぐる目ホシノ書き文字)




【ブルアカ】交わって箱が開く【ブルタフ】

 

 

「ひぃん…誰かお洋服を〜…」

 

 あれ、私いつ寝ちゃってたんだろう。先輩がダイビングスーツで廊下を練り歩いてる。

 あーダメだなぁ私、ずっと夜に見回りしてたせいかな……もう少し休んだ方がいいのかも。

 

「……あ、ホシノちゃんだぁ! "元気してた? 悪いんだけどタオル貸して〜。ずっと泳いでたからびしょびしょでぇ"」

 

 手を握られた。

 冷たくなってるけど、生きてる感触がしっかりとある……現実だった。

 

「……え、あ…あ、はい! 今すぐ!」

「あ、焦らなくていいよ〜。私はこの辺りを散歩して‭─‬‭─‬」

「絶対動かないで座って待っ…あーいえ、ついて来てください! 離れると嫌な予感がしますから!」

「廊下びしょびしょになっちゃうよ? "あ、今日の天気は悪いよねぇ"」

「そんなことどうでも良いんですよ!」

「"あ、ホシノちゃん髪伸びた?" 背も伸びて…似合ってるよ〜」

そんなことはどうでも良いんですよ!

 

 この先輩バカなんじゃないか? 人がどれだけ後悔して引き摺ってたと…。

 そう言いかけた言葉が唇まで出掛かったが、グッと堪えてタオルを取りに行く。

 

「バカなんじゃないですか? 今そんな事言ってる場合じゃないんですよ」

「"ホシノちゃん、逆になってるよ〜"」

「すみません、逆にしても同じでした」

「建前も本音も同じだったか〜」

 

 ああ‭─‬‭─‬同じだ。

 あの時と同じ、懐かしい会話。

 間違いなくユメ先輩だって、そんな実感で心臓が高鳴っていく。

 

「なんで死んだのに生きてるんですか?」

「え、生きてるのになんで死んだ扱いになってるの?」

「連絡、一つくらい寄越してくださいよ」

「私ホシノちゃんの電話番号は覚えてないよ」

「顔を出さなかったのは」

「外から見た今のアビドスってすごいんだよ? "絶え間なく嵐が吹いて海が荒れてるんだもん"」

「ああ…」

 

 その言葉に納得する。

 確かにあの日以来、この土地は一気に沼地へと姿を変えたんだったか。

 アビドス高校周辺はずっと小雨が降る程度だが、外側は何年も荒々しい場所に変化していると聞いた。

 まるで何者の侵入も許さないように……或いは、誰も外に出られないように。

 それを考えれば、確かに辻褄は合うだろう。実際に死んだのを見たのは……幻覚に囚われた時の記憶だ。自分の物ながら信用出来る訳がない。

 

「……じゃあ、もう一つ。あの時、どうやって生き延びたんですか?」

「むっふふ…とても頑張った! 結構賭けだったんだけど、上手くいってよかったよ〜」

「危ない橋を渡った…と。はぁ……色々聞きたいことはありますけど、分かりました」

 

 手を離して、銃をユメ先輩に突きつけた。

 カチャリと、無機質に発砲準備が終わる。

 

「ユメ先輩じゃないよねぇ、誰なのか教えて貰っても良いかなぁ?」

 

「ひぃん…"おっかないよぉ…でも、生徒に求められたなら─‬‭─‬"」

 

 気の抜けた声を漏らして、ユメ先輩の偽物は両手を挙げ‭─‬‭─‬真面目な顔になる。

 実物なのは理解した。だが、本物ならあるべきものが……()()()()()()()()()()のは、余りにも杜撰だと言わざるを得ない。

 生徒ならあるべき物が無いなどと……コチラを怒らせたいのか?

 

「例え後輩でも─‬‭─‬真面目に、だよね。私は"K"ユメ……"先生だよ。最近シャーレに就任してキヴォトスに来た"元アビドス生徒会長……生きる為に幾つかの対価を払った、"先生"だよ」

 

 もにょもにょと口を迷わせながら、それはそう言った。

 

「………ユメ先輩じゃなく"ケユメ先生"、ヘイローが無かったりするのはそのせいだと?」

 

「…うん、そうなるかな」

 

 信用するには疑わしいことばかりだ。

 あの沼地の怪物が見せた幻覚をよりタチを悪くした物と言われれば、人を学習した産物と言われた方が、億倍も信用出来るし納得出来る。

 

 

 正しい選択は、引き金を引くことだ。

 

 

「……ホシノちゃん。信じられないならそれで良い。だけど、少しだけ見定めてくれないかな」

 

「命乞い? うへぇ…あのキノコ達の学習能力はすごいねぇ」

 

「"先生は…私は撃たれても構わない。だけど、ホシノちゃんがその選択を後悔するのは見たくない"」

 

「……ッ」

 

 少しだけ照準がブレる。

 

「"だからしっかり考えてから選んで欲しい。私が邪魔ならすぐに立ち去るから、私を…先生を信じるに足るか考えて欲しい"」

 

 やめて欲しいと、そう思った。

 

「"そうして選んだなら、私はそれを尊重する"。……それがホシノちゃんが誰も犠牲にしない道に続くと思ったなら、喜んで私は従うよ。だから‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬どうかな?」

 

 そんな顔で、そんな声で、そんな言葉を……言わないで欲しかった。

 

 本当に帰ってきたんだって、思いたくなるから。

 

「うへぇ…ま、世の中にはそっくりさんが3人居るってことで。今は見逃してあげるよ」

「やったあ! ホシノちゃん大好き〜!」

「うわっ!……離れてください! まだ信用した訳じゃありません……ので、今は先生、とだけ呼ばせて貰います」

「うんうん全然それでいいよ〜! いや〜そっかそっか、ホシノちゃんも先輩らしくなったんだねぇ」

 

 無邪気に抱きついてきて、無遠慮に頭を撫でて、へらへらと笑って……。

 本当に、本当に本人だと思いたくなる。

 違うと分かっているのに、何もかもが記憶以上にユメ先輩そのものだから、今すぐ抱きついて泣き付きたくなる。

 ……いや、キノコが化けている可能性があるのにこうなった時点で、もう心の底では認めているのだろうか。

 ここに居ると自分が信用出来なくなるから、余計に思考がこんがらがって仕方がない。

 

「はぁ……にしても思った以上に早く来たねー? シャーレ宛の定期便はまだ向こうに着いてないと思うんだけどー?」

「えー?なにそれー? "そんなのがあるの〜?"」

「……まさか手紙が届く前に来た訳じゃないよね? 船が無いと行き来なんて出来な……いや、まさか」

 

 仮にユメ先輩ではなく、本当にそっくりなだけの先生だとして……まさか船にも乗らずに来たなんて言い出すつもりじゃないだろうな。

 いやいや、流石にそれは無いだろう。だって今のアビドスはこの校舎から離れるほど危険が増していく魔の領域だ。

 月1で比較的穏やかになるものの、そうでなければキヴォトスの生徒でも死は免れない。ましてや外から来たという先生だ。一度海に入ったら2度と上がれないだろう。

 そして今、船は校舎から出発したばかり、乗って来るなんて絶対に無理だ。

 

「先生は昔ここに住んでたのでイケると思った! "泳いで渡れるかなって1週間くらい頑張った! 出来た!"」

こーのバカちんがー!

「ひぃん…"いたーい! でも生徒が困ってるなら駆けつけるのが先生だからぁ!"」

「自分の命は大事にしよーよー! ここって今本当に危険なんだからー!」

 

 両手でグッと親指を立てた先生をハリセンで叩く。

 どうやらこの阿呆は本当に泳いで来やがったらしい。バカなんじゃ無いか?

 いや大馬鹿だった。見た目も何もかもユメ先輩に似てると思ったが、まさか行動まで同じだとは思わなかった。もしや本人じゃないだろうな? 現状ヘイローの有無と名前以外全部同じだぞお前。

 そしてこの大馬鹿がキノコの連中じゃないのも確信した。アイツらは馬鹿じゃないから違う。

 

「はぁーもう……仕方ない。来ちゃった以上しばらくは置いておくしかなさそうだし、働かざる者食うべからずだ。みんなに紹介するから着いてきて」

「はーい! "あ、今のアビドスのこと何も知らずに来ちゃったから色々教えてね〜"」

「……大丈夫なのかな、この人」

「"マイ・ペンライ!" ふすん、先生にどーんとまっかせなさい!」

「今から思いやられちゃうなーもー…っと、その前にちゃんとした服、倉庫のやつ貸してあげるねー?」

 

 そんな訳で生徒会室から3階の教室へ荷物を移した倉庫に立ち寄り……もしやと思ってユメ先輩のお古を渡すと、慣れた手つきでパパッと着替えを終えて出てきた。

 ……やっぱ本物じゃないか? 着こなし方が本人なんだけど。ボードを持ってメガネもして少しでも先生っぽさを出そうとしてる辺りが特に。

 だけど死んだのを直接見たしなぁ…毎月黒服と一緒に死体を見てるしなぁ…いやでもユメ先輩なんだよなぁ…。

 

「"先生が生徒の服を着るのは何だか恥ずかしいね…" もっと大人っぽい服ないの?」

「ピッタリだからイイじゃん。似合ってるよーユメ先輩そっくりだー」

「"違うよ? 先生だよ?" 先輩じゃないよ〜? ホシノちゃん」

「……そうだよ…ねー?」

 

 うへ…本人が違うって言うなら違う…かなぁ…?

 うへぇ…おじさん段々自信無くなってきたよぉ〜…違和感なさ過ぎてもうなんて思えばいいか分かんなくなっちゃった。

 

 まぁ、そんな風に頭がぐるぐるしても教室に到着する訳で。

 

「たのもー! "先生です! 助けを呼ばれたので泳いで来ました〜!" 制服はお借りしてるだけなので先生です!」

 

「……ん……ん?……ん……んん??」

「‭あーはいはい泳いで─‬‭─‬って誰よアンタ! それにあそこを泳いで来れる訳ないでしょ!」

「あ、もう来‭─‬‭─‬られたにしては早過ぎませんか? 定期便まだ行ったばかりなのですが…」

「…………♤♢♡♧????」

 

「ノノミちゃん、もう言葉になってないよーそれ」

 

 ものの見事に全員が宇宙が広がってるみたいに、困惑に包まれることになりましたとさ。

 ちゃんちゃん……で、済ませられたら楽なのになぁ…これ、説明するの私だよね……面倒くさーい!

 うへ……もうたぬき寝入りするしかない…!

 

「それじゃあ私はお昼寝するねお休みなさー‭─‬‭─‬」

「先輩? 敵前逃亡は許しませんよ? 説明義務を果たしてください」

「…………」

「…肩を掴まれたまま寝ないでください先輩。たぬき寝入りは分かってるんですよ先輩。せんぱーい!!」

「うへ…しょうがないなー」

 

 こうして私はアヤネちゃんに説明する事となった。

 以下はその間に行われた先生とみんなの交流の抜粋である。

 

「ん。お姉さん誰? 先生ってもしかしてシャーレの?」

「そうだよー。"生徒の為なら何処にでも行くその先生だよー"」

「そっか。それなら今後宜しくね。船は暫く来ないから、後で泊まる場所を案内する」

「"助かるよー!" 優しさが身に沁みる後輩だぁ…」

 

 シロコちゃんと先生は仲良くなれそうだ。

 ユメ先輩のことを詳しく話してないのもあるだろう。普通の生徒と先生の関係に落ち着きそうだ。

 

「……ユメ先輩?」

「先生! "K先生です!"」

「………うーん…はい! 一先ずそういうことにしておきますねー♡」

「"どうして"…やっぱり制服だと先生感出ないのかなぁ?」

「あ、コンソメ食べますか? 泳いで来たならすっごくお腹空いてますよね?」

「わーい! "やったあ! もうぺこぺこでぇ〜" ノノミちゃんありがと〜」

 

 ノノミちゃんはユメ先輩を知っているからか、少しだけぎこちないけど……一旦疑問を棚上げして一緒に食べることにしたみたいだ。

 

「………めない」

「ん? どうしたの?」

「私は先生なんか認めないから!」

「ひぃん…」

「うっ…そんな悲しそうな顔をしてもダメなんだからね! 今更連邦が助けに来るなんて……兎に角認めないから!」

「"あ、待って!"」

 

 セリカちゃんはユメ先輩のことは知らないけど……それとは別に先生其の物が受け付けられなかったみたいだ。

 先生が止める間もなく勢いのまま教室から出て行ってしまい、教室に気まずい雰囲気が流れる。

 

「ひぃん…名前も知らない後輩に嫌われたぁ…」

「あー…仕方ないよ。今まで助けて欲しい時に来なかったのはそうなんだし、それを自分達の力でやってきた誇りとかー…ま、ある訳だしさー。セリカちゃんの当たりが強いのも仕方ないさ」

「ん。勢いで出て行ったけど、今日は一際雨が強い日。遠くには行かないと思うし……先生に自己紹介してから様子を見に行こう」

「ええっ!?」

「先生も気になってるみたいですしね〜? 終わった頃には頭も冷えてるでしょうし、それで行きましょ〜♢」

 

 そうしてこの後どうするかが決まった後、全員で先生に向けて自己紹介をすることにした。

 ……私とノノミはもう知ってるみたいだけど、念の為だ。……ユメ先輩とノノミって何処で会ったんだっけ。思い出せない。

 

「なら……私から‭─‬‭─‬アビドス高校1年、奥空アヤネです。会計をしておりまして、宿泊する間で必要な物がありましたら私にご相談ください。ご要望のものをそのまま出せる訳ではありませんが……代用品くらいなら用立てられると思いますので」

 

「"宜しくね〜" アヤネちゃん!」

 

「はい!……では私は少し席を外しますね。雨の強い日にセリカちゃんを1人にする訳にもいきませんから」

 

 私の説明を聞いてある程度状況を理解したアヤネちゃんが立ち上がり、そう言うとささっと精神回復剤と幾つか特殊な銃弾を詰めた弾倉をバッグに詰めてからセリカちゃんを追いかけに行った。

 ……セリカちゃんみたいに表には出してないけど、やっぱり先生が居るのは不安なんだろうね。

 まだ2年ほど雨に慣れてないのもあるだろうけど。

 

「ん。私は砂狼(すなおおかみ)シロコ。こう見えて2年。今は助けてくれるのは嬉しいけど、手荷物も無しに何が出来るんだろうって考え中…かな。よろしくね」

 

「わあ、"素直で嬉しい反面痛い所を言われちゃった"。あましょっぱい…」

 

 立ち上がる時に獣耳をふわりとさせつつ、シロコちゃんは先生と握手する。

 これが男の人だったら恥ずかしがって一礼で済ますんだろうなー…なんて思いつつ、今度はノノミちゃんが立ち上がった。

 

「十六夜ノノミで〜す! 得意な事は船舶修理とニコニコスマイル。嫌いなのは勝手に2度と会えない所に去っちゃう人、それから自分の命を軽んじてホシノちゃんを悲しませる人でーす! 最近はひょっこり帰ってきた上に(とぼ)けて判然としない人も加わりました〜! よろしくお願いしますね? せ・ん・せ・い♧」

 

「ひぃん…"圧が怖いよ〜"…手が痛いや」

 

 握手の時に力を込めつつ、ノノミはニッコリと先生に向けて言う。

 なんだかいつものノノミと比べたら刺々しいものの、擁護すれば私が責められる対象になるだろう。どうか先生はそのままサンドバッグになって欲しいと、そう思うばかりだ。

 ……もしかしたら私の代わりに怒ってたり?…いや、まさかね?

 

「うへぇ…大変そうだねぇ?……必要なのか微妙だけど、一応ね。小鳥遊ホシノ、あれから2年、あっという間に3年生。……時間って早いよねー? 私が先輩になるなんてさー」

「……そうだね。"先生にとっては一瞬だけど、ホシノちゃんにとっては長い日々なんだと思う。だから‬こそ‭─‬‭─‬これからよろしくね、ホシノちゃん"」

「うん、今のは先生の言葉として受け取るよ。よろしくねー? 先生」

 

 教室でゆっくりして温まった先生の手を握る。

 生きてるって熱がした。

 

 例え先輩でも、先生でも、確かに彼女は私の前に現れた。

 例え他人の空似でも、今だけはこの幻想に浸っていたいと思わせる相手。

 ユメ先輩かどうかは、黒服に確認すればいいだろう。

 

「‭─‬‭─‬うん! ()()()()()()してでも助けるよ!」

 

 だから、今は、今だけはどうか……この夢に浸らせてください。

 

 

 

 

 

「‭─‬‭─‬それで、確認は出来ましたか? ホシノさん」

「うん………ありがとね、黒服。おかげで目が覚めたよ」

 

 そうして青い炎と共に、幸福なユメは溶け落ちた。

 

 






 バグNo.11
 猿空間エスケープ
 プレイヤーのアバターに前verのNPCデータが混入するバグ?
 主に親和性が特別高いキャラが居るプレイヤー…つまり全員に発生したバグであり、アバターの固定と関係NPCの好感度以外には影響のない、NPCのジャンクデータが存在し続けるだけのバグ。別名おま環。修正された事により大半のNPCデータはAIの学習記録行きとなった。
 要はブルアカ世界で死ぬレベルの何かが会った生徒が、プレイヤーの先生アバターに其々の経緯で避難していただけなのだが……ややこしいことに精神のみの避難な上、生きたまま避難するとAIが肉体の方に入ったりする。

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